てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

書評― 日本人の「覚悟」日下 公人

 引っ越しついでの見直し&09/12の再掲。

日本人の「覚悟」

日本人の「覚悟」

 

 今回は日下 公人(くさかきみんど)さんです。この人は己の尊敬する人の一人で、著作が出るたびに必ずチェックする人です。勝手に、心の中できみんどのじっちゃんと呼んでます(^ ^;)

 大体、本には「○○年で~問題が起こる!」という危機を煽る本・警鐘本、危険が危ない的な本と、この本のような単純に分か りやすく現代で新しく取り上げられる問題を、今どうなっているのか簡単に教えるハウツー本のようなものに分けられます。特に、きみんどのじっちゃんは難し い言葉を使わずに、大枠から考えていくという自分のスタンスに共通するものがあるので好きです。
 今回も~危機、日本は「もうだめだぁ、おしまいだぁ」とどこぞの王子が寝事を言っているのを「何、寝言言ってる!そこまで性根が腐っていたとは、消えうせろ!二度とその面見せるな!」と緑の人ばりに日本が危ない的な話を一掃してくれます。
 宗教や文化に造詣が深い人はやっぱり話す内容の深みが違いますね。知情意の話から、官僚批判・現代社会の問題を、知識偏重の愚に基づくものであると説くなど、大枠から攻めてきますねやっぱり。経済に重要なのは当然、信頼である。信頼が礎にあるから円滑に上手くいく、日本の凄さはその信頼力の凄さ。信 頼力を作るのには覚悟があった。覚悟という行動がイザというときの信頼につながるものだった。
 また、いつもの戦前真っ暗的志向の常識を覆してくれる指摘がありますね。体罰について、体罰はすべて悪かったのではない。最初の三ヶ月は兵隊として一人前になるために必要な体罰 で、それが出来なければ、隊全員に迷惑をかけるために耐えることが出来た。意味のない体罰がダメだった。インテリ層がそれを恨んで、農村出身の上官にいび られたと書くからそれが広がった。体罰の代償に、将来の出世にかかわってくる負の記録、ミスの記録を残さないからむしろ有難かった―という指摘などは、流石 へぇ~と思わせてくれます*1

 一つ気になったのは、あまりにも苦しんでいる人々の状況を見ていない傾向があるのではないか?という点を上げておきたいと思います。雨宮処凛さんとか、這い 上がれない、がんばろうにもがんばれない前提がまずそこにある状況を説いています。そういう人がいる昨今、この傾向でいいのかな?という気がします。どちらかというと 己も、出来ないのは本人のやる気・努力が足りないのだというスタンスにあるのですが*2

○日本の新書は世界のどの国より分かりやすくレベルが高く、いずれ翻訳され世界中に広まる。そして日本語で原書を読むようになる。
○日本の社会は縁が深く、思っている以上に日本人は孤独ではない。

 この二点が少し気になりました。世界は広い。言語に力があり、英語力・日本語力というものがあるのなら、英語力は圧倒的。世界中に使われ、その発信力は 並ではない。参入規模・人口が大きいため、そのようなことが起こるとは考えづらい。何より日本語を学ぶとは思えない。日本社会が、日本語能力の高い外人に それにふさわしい仕事を任せるような状況にならない限りないと思います。漫画とアニメ以外に日本語を学ぼうという動機がないし、何より日本語というものを分かりやすくその国の言語から捉えて、教えることが出来る先駆者がそう何人もいると思えない。
 『孤独なボウリング』に代表されるようにどんどん希薄化する現代社会のコミュニティ。表面上はともかく、実質的な関係性を分析しなくては分からないと思 う。自分の実感では人間の孤独化は想像以上に進んでいると思われる。都会・地方で全く違うと思うし、世代によっても全く異なるだろうし。


1/7追記
 全部目を通したら明らかに誤りがあったので、その指摘。日本の首相は潜在的にヒトラーに相当するほど権力が強い。小渕総理は総選挙で勝利すれば、それが可能になるから、勝利した後でやると言っていた。
 日本の首相の権限は民主主義政体として明らかに不適合なくらいに弱い。何故こんなことを言うのだろうか?どこからそういう判断をしたのか謎?きみんどさんが明確な間違いをするのを始めてみた気がする。
 ○江戸時代、蘭人が残した記録日本には子供の泣き声がしない。蘭では親が子供を叩いて憂さを晴らすのが日常茶飯事だった。日本ではそれがなかった。
 ○フィリピンで日本兵の残忍さを示す漫画が今でもある。英が情報戦として、日本=悪を植えつけるために残したもの。
 ○安倍氏の外交的業績。温家宝来日時、李登輝訪日を拒否することを撥ね付けた。来日時、そっと耳元で中国にも拉致問題がありますよね?とたずね、温首相は嘘をつくことになってしまうから、ありますとも、ないともいえないため、私にはその情報は届いてませんと逃げた。耳元でささやいたのは、周りに聞こえるように言うとミスとして後で糾弾されるから、そう気遣ったという妙手。さらにメルケル首相が中国に対し、強くサミット参加拒否を言えない時に、安倍氏が国 際条約を遵守していない中国にその資格はないと撥ね付けたことで、日本が言っていますからと逃げ口上を作ってあげて、借りを作った。
 ただ、安倍氏が温氏に行ったことは外交的にスタンドプレーにならないのかな?と気になりました。事前に交渉内容は駐日大使や外交担当者と詰めているはずで、それを守らないというのは外交ルール的にOKなのかどうなのか?
 ○麻生氏の米への核武装発言。米が拉致を無視するなら日本は核武装するという発言があったからこそ、緊急で国務長官拉致問題を無視することはないという声明をした。この発言はどうなんでしょうか?己の思う対北、北東アジア外交からするとあまり有意義とは思えないのですが…。もちろん核武装自体は有効な外交交渉カードの一つですから、それを否定はしません*3

*1:ただ、今になって思ったのですが、出世の妨げにならないようにと、温情で体罰・暴力で失敗やミスをチャラにすると、その本人にとっては有り難いでしょうけど、組織におけるちゃんとした人事評価ができなくなるというマイナス点もあったのでは?。上への報告には失敗ゼロという同じ二人の人物がいた時、かたや本当に失敗がゼロ、もう片方はミスしまくりで体罰もらいまくりということですからね…。組織論としては、あってはいけないことには違いないでしょう

*2:そんなスタンスも今は昔?。

*3:核武装事態はナンセンスですけどね。