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てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

権力の読みかた 萱野稔人

ブログ引越し&見直しの再掲です。元は09/12に書いたものです。

権力の読みかた―状況と理論

権力の読みかた―状況と理論

 

 今回は、たまたま図書館で手に取ったこの本。萱野稔人(かやのとしひと)さんです。どうやらこの本もまた、雑誌寄稿の何冊かのまとめみたいな感じの本ですね。全体の構成として前回までの金と暴力、国家論という二つのテーマを引き継いだ上で、権力とは何かを問い直すもののようです。己は前作を読んでいないために分かりませんが、フーコーやハーレントなどの政治思想の研究者なのか?そこら辺から権力の分析がでてきます。ただ己は、古典を引用するからには分かりやすいまとめがあること、先に問題があって、その問題の深遠を解き明かすために引用すること、という二つの条件を満たしていないものは読まないので飛ばしました(^ ^;)。サーセーンm(_ _)m 。それなのにわざわざ、この本をレヴューするのは日本の政治分析や仏の政治分析などが結構面白かったので取り上げてみました。

 例えば、民営化・構造改革についての分析です。彼は民営化とは何かといえば所詮、権力・既得権の構造分配が変わるだけで しかないとします。小泉政権の郵政改革で起こったことを見れば、総務省の管轄から、金融庁の監督下に入っただけ、財務省天下り先が一つ確保されただけに 過ぎないと見ます。財務省の支援を取り付けた、小泉氏が財務省と手を組んで、あるいは逆らわずに改革を進めたために抵抗を撥ね退けることが出来たという江田憲司氏の言を思い起こさせますね。また紺野典子さんも述べていたと思います。金融庁ホリエモン村上ファンドの事件で一連の判断をしたのも、あーいう事件が起こったときに自分たちの裁量権=既得権を確保するための先例作りであるとします。
 民営化という規制緩和によって、多くの保障がなくなり、自由市場という名の荒野に放り出される人々が増え、どんどん経済も人間も先細って行く社会になる。
 また民営化という現象は戦争にも共通しています。PMCに代表されるような民営化された戦争会社がその良い例でしょう。

戦争請負会社

戦争請負会社

 

 この本が評判が良いらしく、いつか読んでみたいと思っているのですが、中々読む機会がありません (´;ω;`)ウッ…

民営化される戦争―21世紀の民族紛争と企業

民営化される戦争―21世紀の民族紛争と企業

 

 筆者はこちらの書から主に引用をしていました。しかし己としては本山さんはちょっと…という思いがあるために、上の書を薦めたいと思います。

 で続き、なぜそのような会社が存在するかといえば、民営化を進めていくと新しい技術がどんどん生まれるために、民営化は更なる民営化を生む(個人的には米兵の死傷者というリスクを会社に勤める者にして、国家の責任にしたくないからだろうという面もあると思う。)。戦争を遂行する上で複雑なハイテク技術が導入されていき、それについていけないために否が応でも民営化されていく。戦争をやればやるほど、民営化された会社は栄えていく。当然戦争という性質上、時の政府と関係が強く天下りのポストになる。チェイニー副大統領が政権から退いた後、PMCの顧問?として天下ったのは最たる例。
 そもそも米という国は植民地主義というのをフィリピンまでで領土として組み込むという政策をとることを放棄した。そのため米大陸特に中南米の諸国家に対し、「領土なき植民地政策」として、不都合な政権が出来た場合に実力で打倒し、自分たちに都合よい政権を作り変えるという政策をとってきた。これは冷戦という時代、中東・その他でも同様だった。そして長い介入政策、傀儡政権作りのノウハウを持つ以上、自然に米の言うことを聞くのならば、ダーティーな政権でも構わないという考え、それどころか麻薬・犯罪組織を時の政権に仕立て上げるという考えを持った。しかし、冷戦が終わりそのようなダーティー政権にはもはや用がなくなった。暴力を司るダーティーな政権をより合法的な正当性を持つものに挿げ替えようという動きを、米は世界中で展開するようになった(思えば韓国や台湾などの民主化もこの流れにあったといえる)。
 アフガンでソ連に対してタリバンを育成して戦わせたが、用済みになったら彼らの政権に協力するより、もっとクリーンな政権に作り変えようという大きな流れが底流にあった。だからこそアフガン戦争というものがあった。民営化、クリーンにすることでより、米との利権が拡大する(大きな流れでは理解できるが、細かい具体例はなし)。民営化というキーワード一つで昨今の国際情勢が殆ど説明できてしまうというわけだ
 ヤクザが、土建屋として成立していたのは彼らが労働者を厄介な労働争議などに発展させず対処してくれていたというメリットがあったから。そのヤクザを取り締まり、ばらばらになった個人が不安定な非正規雇用として表出している(よって今後秋葉原の加藤事件のような事例がますます増えるだろうと思われる)。
 民営化によって新しい官僚の管轄領域が増える。利権が増える。究極のところ民営化というのは新しい権力行使者のためのものでしかない
 仏は何だったかな?忘れちゃった。労働が不安定になる=移民が仕事を奪っているからだ!=移民排斥・極右的になる。
極右はロウアークラスに圧倒的に多い。で、ナショナリズム、自分を正当化してくれる思想に奔るのだと、そんなんだったか?。

 

んなところでまとめを終わりにして、己の感想を。
 自由を要求するはずの民営化(個人の自由を保障するはずの財産獲得チャンスの増大)が究極的には自由を奪っていく―という大いなる矛盾が前提に存在する。これは官僚制につきものであり、ウェーバーの官僚制、社会研究からも言えることです。筆者の意見にある程度賛同出来るものの、賛成出来ない点もあります。それはまず日本の場合、官僚制が非常に強いものであるということ、もしハーヴェイロードの仮説ではないが、政官の関係がきっちりしたものであった ならば、ここまでひどい状況にならなかったのではという、根本上のシステムの問題について言及されていない点。次に、民営化の負の面に言及するのは良いが、 正の面はどうなのかという検討がないこと。民営化の性質を分析した点は肯定できても、民営化しなければ良かったという話しでは当然ないからです。郵政民営化は財投債=天下り、官僚制改革だったのだから。
 問題はヤクザをそのままにしておいて好き放題暴れさせておけばよかったわけではない。システム移行に際し、予想されうるであろうセーフティーネットから零れ落ちる人たちをいかにして救うのかという発想ではないのか?例えば談合という問題もこの一連の流れにあるといえる。談合というシステムは全体の利益を確保するために必要不可欠である。しかし、談合というシステム以外により法に適した、公正なシステムを生み、かつ業界の崩壊に至らないシステムおよび移行システムを設けるべきだと己は考えます。
 またオバマは環境を一大戦略として取り上げ、この分野に重点投資をして雇用を生める産業にすると宣言した事を思い出しました。それに対して、この一連のブッシュの戦争は民営化に基づく「世界民営化計画」、という世界に向けた大戦争であり、オバマのように戦争によって、一大雇用を生みだそうとしたのではないかと思いました。冷戦が終わり、軍需産業およびその関連産業などを考慮し、彼らに対する市場振興政策を採らざるを得なかったのではないでしょうか?織豊政権が、その圧倒的国内兵力、専門化された兵士の数によって必然的に中国に進出していかなければならなかったように。

 とすれば、ここ何十年か間違いなく最低の大統領としての烙印を追わされるブッシュ*1大統領というものも、未来へ向かう一つの必要不可欠だった過程、移行システムの一つと考えられれよう(とでもしなければ、あまりにも彼がかわいそう過ぎるだろう。同情はしても共感は出来ないが)。

*1:未だに米では人気のある大統領だとか…