書評― 唐の北方問題と国際秩序 (汲古叢書) 石見 清裕
ブログ引越し&見直しの再掲です。元は09/12に書いたものです。
唐の北方問題と国際秩序、この書を取り上げるのは石見清裕さんという人物を取り上げておきたかったからです。需要は皆無でしょうが(^ ^;)。というのもこの石見清裕さんが優れた研究者であるからです。前回の唐とシルクロードの本の中で彼の説が取り上げていたのでついでに。
唐という国家が成立したのには突厥の影響力が大きかったこと、特に今にも北方遊牧民との戦いで成立したての王朝が飲み込まれてしまいかねないという危機感こそが、唐の玄武門の変、李世民(後の太宗)のクーデターにつながったのだという説を説きます。これに対して反論もあるようですが、自分としては筆者の説に十分に同意できます。
己はこの書を十分に読めません。そんな漢文能力ありませんから(´-ω-`)。しかし彼は、はじめに・終わりに・章立て―が完璧というほどにしっかり出来ていました。途中の諸文で史料を検討し、論理を展開していくのが正確にわからなくとも、どのような論旨であるかがわかったため。己のような素人でも、理解することが出来ました。中国および周辺遊牧民研究者の本には、このように分かりやすく文献解読能力がないものでも読めるように設計してある本が、あまり多くありません。このような書き方をする人々が増えることを切に願います。