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てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

ビルマ仏教徒 民主化蜂起の背景と弾圧の記録―軍事政権下の非暴力抵抗

本・読書―批評・批判・感想・レヴュー

 

ブログ引越し&見直しの再掲です。元は10/05に書いたものです

ビルマ仏教徒 民主化蜂起の背景と弾圧の記録―軍事政権下の非暴力抵抗― (世界人権問題叢書71)

ビルマ仏教徒 民主化蜂起の背景と弾圧の記録―軍事政権下の非暴力抵抗― (世界人権問題叢書71)

 

書評というよりチラ見したんで、ちょうどいいと思ったので書く。内容については触れてないです。

 んで、なぜ書くかと言えば、このビルマミャンマーへの関心の薄さから。日本の報道は海外情勢に対する関心がない。EU圏、アメリカ、中国ぐらい、後の地域は恒常的な関心がない。ビジネスマンやら政治家・銀行員etc海外情勢に深い関心を持つ上層向けの番組がないのはわが国にとって損失以外の何ものでもな い。

 己はイランに一番注目してるんですが、このミャンマービルマにも注目しています。ビルマというのは面白いもので、タイとチベットの混交のような国です。エジプト史然り、国を支配するのは宗教か官僚か軍隊かその三つのどれかしかありえません。軍隊の次に有力な仏教という宗教勢力が立ち上がったわけですね。八八年にも大規模な運動があって、今回が二度目になります。この蜂起はサフラン革命(僧侶の僧服の色らしい、実際には少し違う色だというが)と言われ、国に大きな影響力を持つ宗教組織が立ち上がったこと、そしてその弾圧ということでミャンマー情勢を決定的に変化させるターニングポイントとなります。
 海外の人間はステレオタイプなものの見方で、単純な民主化運動のように捉えていますけど、それは大きな間違いです。宗教勢力の蜂起を民主主義運動と単純に一体視するのは危険です。

 確かに彼らは民主勢力との妥協。憲政回帰に際して、彼らを加えるようにという要求を出しています。が、それを民主主義勢力と捉えるのは問題です。いや、確かに民主主義=民から選ばれたという点では間違いなく、彼らは民主主義勢力なんですけども、どんな国家を見てもわかるように、民主主義の初期には優れた「民主主義政治家」が現れることはない。

 仮にいたとしても、必ず選挙が有効に機能せず、権力は分散化して、たちまち混乱する。日本の今の現状もそうですし、明治初期政党政治が幾度となく混乱した例を見てもわかるでしょう。だからこそ民主主義政治の初期では財産制が採用されます。良いにしろ悪いにしろ、責任に見合ったものの意見を取り入れるのが民主主義で、財産制はその初期においては有効なんですね。税金しっかり納めているんですから。金も納めていない無産市民が多いときに、民主主義を導入すれば=国民全員に投票権を与えれば、どうなるか?無責任な人間が自己の利を求めて、思慮なく投票することになるでしょう。いずれにせよ民主主義というのは成立させる上で非常に長い時間と訓練が必要になるわけですね、これ肝要。

 ミャンマーの軍制は確かに好ましいものではないですが、まずビルマ人というものも成立していない、未だにゲリラ戦の真っ最中であるという事情を考慮すれば軍制も充分納得できるものです。彼らに民主主義を可能にする民意の成熟など決してないでしょう。ただ八八年はこれまでの社会主義政策の失政で、そういう危機下において選挙を導入して、しかも大敗して、選挙結果をひっくり返すなどという愚の骨頂の事態を招きました。

 こういうときこそ、上院・下院制で上院掌握で影響力を残る形にするというシステムなどを作ればよかったのです。こういう政治のノウハウ・政治ブレーン欠如は目に見えてわかりますね。ちなみに新首都は占い師の言によって決めたと言われますが、これは宗教勢力=仏教との決別という意味合いがあるんではないでしょうか?とすると、彼らの蜂起の理由がわかる気がします。そうだとすると面白いですね。

 07年の蜂起までいくらなんでも間隔が空きすぎです。つまり、彼らには政治に対する熱意、民主主義の実現などの理念で動いているわけではないといえます。世論はそんなすぐに成熟しません。経済的背景、ガソリン高騰=生活苦がありました。

 タイと似ているというのはタイが仏教の下地がある国で、経済格差が広がり、絶え間なく政争を繰り広げている国であるという点です。タイは軍によるクーデターが起こって王が調停するというパターンが続く不思議な国です。軍が変則的な上院=既得権益、既存勢力と見てもいいでしょう。世界的な経済不況から、経済的影響から不安定になったということ。

 また北朝鮮が経済的苦境があるといえども、長期的に安定して政体が存続しているという点から変則的な北朝鮮の軍制と見ても良いかもしれません。異なっているのはタン・シュエ上将という人が強い影響力を持っているとはいえ、世襲王朝でもないし、独裁者でもないです。軍の寡頭政=何人かの有力者が政治を握っているという点です。
 そして最も注目すべきはチベットとの共通点でしょう。チベットは知ってのとおり、チベット仏教といった宗教勢力が非常に大きな影響力を持ちます。たとえダライラマが死んでも、新ダライラマが擁立され、亡命政府は永続的に続くでしょう。このビルマのケースで重要なことは、今後宗教勢力が影響を持つかどうかということです。もし、この宗教勢力が勝利することになれば、当然この影響力は跳ね返る。つまり中国情勢にも決定的影響を与えるし、タイのような仏教の影響が強い東南アジア諸国の仏教勢力もイスラムのように、今こそわれら仏の意にかなった政治を!ということになるでしょう。まぁ、巨大なムーブメントになることはないにしても、少しは影響を与えることになるでしょう*1

 ビルマの位置を考えれば、タイと中国とインドの間に位置する。日本にとってはこの三国の要にある国に影響力を発揮したいところ。そしてそれは決して不可能なことではない。あと20年もすればまた情勢が悪化する。そしてどんな形であれ、憲政の道を歩き出したミャンマーにとって軍制が続くことはありえない。 なんせ情勢不安定の原因だったカレン族との内戦も殆ど落ち着いたし、しばらくその栄光の恩恵に預かってもそれが十年以上も続くことはありえないだろうし*2

 さて、本とは全く関係のないミャンマーの話をつれづれと書いた後で感想。この軍の弾圧によって被害を受けた人々のレポートですね。己としてはむしろどうして宗教勢力外までの影響力を持っているのかという、政治的基盤の話がもっと知りたいところでした。だからチラ見です。まぁ、いつも読んだ本忘れるんで、記録しておきたかっただけですね。ビルマ情勢・ミャンマー情勢、およびその周辺への影響について語っただけでしたね、今回は。

*1:そういう意味でダライ・ラマ氏が女の子に生まれ変わりますといったのは、興味深い発言ですね

*2:と書きましたが、今のミャンマーアウン・サン・スー・チーなんか見てるとどうでしょ…?