てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

【洋書】 The New Silk Road: How a Rising Arab World

過去記事の再掲です。元は10/10に書いたものです。

The New Silk Road: How a Rising Arab World is Turning Away from the West and Rediscovering China

The New Silk Road: How a Rising Arab World is Turning Away from the West and Rediscovering China

 

 ハイ、洋書の二冊目。コレ感想書いてアップするの忘れてた。本のストックがあと二冊か…。めんどくさいなぁ、まとめなおすのが(^ ^;)。別に誰に頼まれてるわけでもないんですけどね。一応読んだからには、少しでも世の中の洋書読みの役に立つべく書いときましょうと。あんまりないでしょう、洋書読んで感想書いてあるところ。こういうの書いたほうがオリジナル色を出せそうですしね。食いつく人はかなりのリピーターになってくれそうですし。

 洋書の書評書くなら、国際政治系書くなら、何よりまずEHカーの『危機の二十年――理想と現実
』書けよって感じなんですけどね。あれほど国際政治学で基本となるような、良書はないですし。つか、読みづらいですけどね、やっぱり(^ ^;)。んで、アマゾン見ればわかるように、訳おかしくね!?とか言われてしまうわけです。難しいでしょうね、あれ訳すの。


【本文、内容へ】 
 中国とアラブの新しいつながりをThe new silkroadと表現している。この繋がりは世界のパワーバランス・構造を根本からを変えることが大いにありうる。アラブ世界の成長とこれまで西洋に目を向けていたアラブが、中国に目を向け始めたこと。この変化が非常に大きいのだと、世に問いたいがために書かれたと感じた。

 まず、筆者の体験談が中心にあって、ロジックを中心に展開する書ではないため余り真剣には読まなかった。真剣に読まなかったといってもテキトーに読んだという意味ではなく、筆者の体験談・個人的エピソードが多いので、そこら辺はほとんど飛ばした。洋書はやはり全文を逐一単語にわたるまで読む必要はない。そんなことやっていたら絶対終わらない。
 まぁ、個人的英語リテラシーが足りないだけなんですけどね。そこら辺は許して下しあ。小室直樹氏のような一言一句逃してたまるか!というような名著なんてめったにないし、あればまぁ、何時間かかっても何年かかっても読み込みますけど。前述の『危機の二十年』は余裕で一ヶ月かかりましたから(^ ^;)。そうじゃないんでね、この本は。学術書になればなるほど、一つのメインストーリー・論旨展開の繰り返しですから。良書であればあるほど、最初と最後読んだら、八割方読んだも同じですからね。

 で、内容に入りますが、ほとんどメモ程度で終わってしまいます。1995年から2005年にかけてアラブの7カ国がWTOに加盟した。世界経済への参入が本格化した。しかし2001のテロ、9・11以来、ビザ問題などがあってアメリカ経済へのアクセスが容易でなくなった。その結果アメリカではなく、彼らは中国に目を向けるようになったのだといいます。なるほど!テロでそういう世界経済の流れがあったのか、その点は考慮してなかったな。つか、あんまり興味なかったんでサボってました、中東らへん。ここらへん専門外で全然わかんないし(´-ω-`)。
 西洋でよく移民問題、仏のスカーフなんかに代表されるようにアラブならずともイスラム圏との衝突はよく話題になってますね。ところが中国へ進出しているムスリムはモスクを立てても、そういう軋轢が中国で今のところ全く問題になっていない*1。中国には昔から、イスラムがいましたしね。
 筆者は安い商品・製品が中国の魅力であり、セールスポイントであるといわれている点を否定して、もちろんそれも大きいが、それだけではなく、今最も中国の売りになっている、セールスポイントは大量の人の移動なんだと説きます。
 経済はヒトか、カネか、モノが動くことで発展します。モノの凄さ=安さという面に必要以上に注目しすぎているというのが現在の中国分析にあるといえないでしょうか?もちろん己もそう思ってましたが、さまざまな地域に根付いている中国人コミュニティの存在にもっと注目してしかるべきだと感じます。

二章
 中国は石油資源の需要が増える。そして石油戦略上、中国は中東・アフリカへ展開する。今後石油の値段が上がっていく(この辺の根拠はイマイチ?短期的予測か?)途上国の台頭=石油消費量増と世界的金余り。イラクだけじゃなくて、ナイジェリアとヴェネズエラの政情不安がある。ま、こういうところから言っても、石油の値段が上がることは間違いない。ただそれと同時に省エネ技術も発展するし、代替エネルギーも出てくるし、どうだろ。環境上中国も省エネやらないと公害がえらいことになるだろうし。あとアラブの石油の世界比率が28%ってあるけど、そんなに少なかったっけ?2030年には38%に上昇するとの予測がある。そして中国はこのままいくと現在の世界消費量9%から2030年には40%に上昇するといわれていると。

【中国=サウジアラビア
 サウジアラビアはアメリカに依存しすぎており、イラク戦争もあって中国にヘッジする。中国にとっても最も大きい石油のパートナー。民主主義と人権を持ち出さない中国は受け入れられやすい。この中サ関係は当然、アメリカにとって脅威になりうる重要な変化。当然サウジは、完全に北京を向くようにはなっていない。他の中東諸国含め、まだまだアメリカ重視。中国がアフリカに石油を求めて進出したのは記憶に新しいが、そこは欧米が未開拓、付け込める余地があるため。そして中央アジアは歴史的経緯からうまくやるのが難しいためでもある。そういえば、中国がスーダンに進出して非難を買ったが、その根本的原因はイラク戦争で中国の石油利権を締め出したことにあるとも言えると己は思う。

 あとは取り立てて面白いと感じるところはなかった。三章からツまんなかったので飛ばしました。章割がしっかりしてないし、最初と最後でしっかりまとめてないから、もう読む必要ないなと思って、面白そうなトピックがあったら読んで、なかったらそのままスルーの拾い読み。イントロダクションの説明で面白いと思った五章だけですね。

五章
 中国の女性進出が、アラビア一帯で働く女性の姿が、アラブの女性労働者を、女性の社会進出を促しているといった指摘などかなり面白かったですね。ゾンバルトが指摘するユダヤの女性労働者のそれと重なって。アラブの29歳以下の失業率がどこも20%近辺で非常に不安定な情勢を作り出している。アラブでは結婚に非常にお金がかかる。お金がないと結婚できない。よって、非正規ではなく、正規雇用を見つけられないと結婚もできないという二重の意味で社会に対する喪失感を抱きやすい(ついこの前アノミーで触れましたね→【自殺論とアノミー】 人類が直面する諸問題はすべてアノミーである!
。つまりアノミーにつながるわけです)。コネがないとまともに就職できないという問題がある。んで、この地方ではその結婚問題のために合同結婚式という統一教会みたいなことが珍しくないみたいですね。なるほど、そういわれると、合同結婚式というのは貧しい人間が結婚という門出を共有するためのシステムなのかと認識を改めた。(どうしても統一教会的なマイナスイメージが強いですからね)
 中国の製品によって安い製品が手に入るようになり、婚姻費用が下がるようになったのだけれども、交通費など、物価の上昇があっておんなじ。中国の成長によって石油が売れて、経済成長を後押ししてくれる。が、同時に労働集約型産業で、中国と経済構造がかぶるから、おもちゃとか布とか、単純労働市場を奪われている。中国が経済成長で通貨が高くなれば、EU圏のシェアを奪える。つまり中国の成長はただ中国だけの問題ではなく、いまや中東の構造問題にまでリンクし発展するようになっている。中国がつまずくようなことがあれば、当然アラブ内に波及し、失業率が高まり、その結果不満を抑えるシステムとして宗教しかないから、ますます宗教に依存するようになる。宗教的パッションが高まると、それがEUや米のテロリストに波及してテロ問題が再び勃発するという流れまで出てくる!

 なるほどなるほど。この流れはかなり参考になった。あとアラブって小麦の世界市場の約30%占めるらしいです。確かエジプトでも穀物価格の上昇で暴動があったみたいに、小麦・食料でも重要なんですねここら辺は。一応メモ。
 アメリカは圧倒的に理解力が足りない。イギリスの帝国統治の場合、アイルやスコットなどが周辺国の情報収集に大いに役立った。彼らが中心となって統治する国・地域の情報が入った。彼らは現地の事を理解しようと率先して学んだから。アメリカの場合はそういう能力が圧倒的に欠けている。
 サウジアラビアと中国間の人口移動はまだまだ少ない。今後どうなるかかなり重要なキーになる。二国間関係は深まることはあっても、薄まることはない。当分経済のみだが将来どうなるかわからない。アルジャジーラはその地の人間がいかに物事を考えているか、捉えているかを示すため重要。中国にもウイグルのようなムスリムがいる。彼らの反抗はやむことはない。この動向もアラブ=中国関係に大きな影響をもたらすため重要。

【雑感―将来の世界のパワーバランスについて】
 大局的には西欧・米の世界的シェアはアラブ・アジアに移っていく。これは間違いない。ただそれがどのような形になるか、いまだ誰にもわからない。日・中・ASEAN・印これだけで世界人口の半分近くになる。そして経済成長を考えれば、この地域は世界の中心センターになるのは間違いない。アラブもアフリカも気に食わない欧米より、より価値観が近いこっちにシフトチェンジしやすいだろう。
 アラブのオイルダラーの投資が米ではなく、この地域の巨大マーケットのどこか、金融センターが生まれれば、アメリカ優位は消える。アメリカの二本柱は軍隊金融だから。金融力は支配力といっても差し支えないほど重要だ。
 しかし細かい指摘、それがどうなるか、どういった世界的な構造変化が起こるか、それによってどういう問題、米との衝突など具体的な話・ビジョンなどがないから個人的には?という感じ。アラブ圏疎いからそこら辺の解説を望んでいたが、イマイチに終わりました。もちろん上に書いたような有意義な話もありましたけどね。分量・ページ数と比例してという意味です。

 で、その他一本単独で書くまでもない洋書の話を。サラッと触れておきます。Internationalizing China: Domestic Interests and Global Linkages (Cornell Studies in Political Economy): David Zweig
は国際化が進む中国の構造を多面的に分析して、今後どうなるか!ていう感じの本だと思ったら、よくわからん。なんか経済の話ばっか出てきて、面白くないので止めました。Sovereign Rights and Territorial Space in Sino-Japanese Relations: Irredentism and the Diaoyu/Senkaku Islands (Asian Interactions and Comparisons): Unryu Suganumaは今話題の尖閣ですね。どういう論評をするのか、気になるところ。んで、参考文献が新聞ばっかであんまり?結論は主張がどうあれ、領土紛争というものを力ずくで解決するようなことは今後の領土紛争ケース、判例として好ましいものではない。両方しっかり納得いくものをやりなさい。共同開発が一番双方のためになるというごく当たり前のものでした。んで、おしまい。 China's Just World: The Morality of Chinese Foreign Policy: Zhiyu Shi, Chih-Yu Shihは中国の政治については道徳・moralityというものが非常に重要な要素である!という拙問題意識と非常に近くて、メチャクチャ食いついたんですが、イマイチでした。イントロダクションと結論が、まぁ、わかりづらく、(´-ω-`)となってしまう。問題意識も、中国の政治を見るうえで道徳、つまりは理念という要素を軽視してはならない、そこから分析せよ!というのはかなりいいんですが、そこにいたるまでが、なんかグズグズでしてね。時系列で建国から、現在まで書く章割だったので、飛ばしました。一章、一節ごとにまとめもないですしね。

 さて、また洋書を仕入れてきたが、感想を書くのに値するものになるかどうか…。china risingとthe new silkroadと書いて検索するとやっぱりいっぱい出てきますね。特に中国の台頭はね。類似の本を読んでみましょう。

【中国の正確な理解に重要なこと、中国人の行動理念とは何か!?】
 他の方のブログを見ても中国はダーク中国のイメージしか書かれていませんが(^ ^;)、両方しっかり見ないといけない、特に中国人が自分たちをどのように認識しているのか、鏡像体験ですね。どのような主張・ロジックに基づいて世界や自己を捉えているのかをしっかり抑えなくては、情報分析・戦略を立てようがありません。中国の歴史を振り返ってみると、初期は毛沢東時代のように戦争を中心に据えた国家ですが、周恩来・鄧小平以後は確実に変化して今に至ってますからね。軍事主導から、政党主導(一党独裁ですけど)、そういう面を見落としてはならない、そして平和五原則に代表されるような、いわゆる中国の平和戦略、平和台頭、共存というメッセージを見過ごしてはならないでしょう。むろん、中国は平和勢力!なんてバカなこといいませんけどね。つか、敵か味方かなんて二元論的なものの見方は無意味・不合理ですね。

*1:まあ、今はウイグルなどがあってまた話が少し変わってきてるんでしょうけど