てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

三井環氏と黒木昭雄氏の本

過去記事の再掲です。元は10/11に書いたものです。短かったので二本まとめた感想になっています

秋田連続児童殺害事件 黒木 昭雄       

秋田連続児童殺害事件―警察はなぜ事件を隠蔽したのか/黒木 昭雄

 元警察官であるジャーナリスト黒木氏が、秋田連続児童殺害事件捜査のずさんなやり方を指摘しています。次の三井氏同様、組織を愛するがゆえに組織の不正を許せないという点が共通しているところでしょうか。哀悼の意を込めていつかは取り上げたいと思っていたので、書いておこうと思いました。

 p32、家宅捜査まで18日間も手をこまねいておきながら、DNA鑑定でようやく逮捕。毛髪の任意提出を求めればそれで済んだ。18日もあれば証拠を隠滅されてしまう。起訴も危うくなりかねなくなる愚行。
 p58、連続児童殺害は給付金目的ではないか?事故死なら給付金はもらえない。もう一人別の児童が殺されれば、連続殺人事件と処理されて、給付金がもらえる。いずれにせよ、彩香ちゃん殺人を事故死とした時点で、犯人鈴
は警察を無能だとなめきった。つまり最初の捜査の時点できちんと捜査していれば、二人目の豪憲君が殺されることはなかった

 p66、秋田県警記者クラブを使って事故死と誘導した。八キロ先の上流から転落死したというのに遺体に傷一つない。警察犬活動報告書を意図的に自己に見せかけるために改ざんした。
 p77、記者クラブで記者に事件を説明する広報文の内容がずさんそのもの。警察医では損傷ないとなっていたのに、3ヵ月後、生前に殴られていた可能性が発見された。
 p81、マスコミ関係者にはトイレ・自販機を使わせない。それぐらいコントロールする。秋田は全国と比べても締め付けが厳しい。警察の意図に反したことを書けば絶対に情報が回ってこない。つまり記者クラブという存在は、行動からはみ出たものを排除する・シカトをするためのいじめ機関なんですね。 
 p94、豪憲君の父が因果関係の説明
を求めても、なめきった態度をとる警察。「質問状の解答をするのか、謝罪をするのか、そうでなければ警察署に行かない」と言ったところ、「いいから来てください、いいから、いいから」という態度。山崎警務課長という被害者対策の責任者がこんな態度。能代署のナンバーツー村上武則副所長はタバコをふかしながら対応した。トップの署長は姿を現さず、国賠対象になりかねないから、お答え出来ないの一点張り。

 p108、解剖を担当した秋田医大に警察発表と食い違っていたのに、なぜそれを指摘しなかったのか聞きに行くと、守秘義務があるから警察以外に解剖結果を公表することはないと述べた…。ああ、何という人間疎外、ロボット化。自分が何のために法医学者として解剖をするのか全くわかっていない…。自分のした仕事と、公表される結果が違ったのならば当然、どこかに告発・問い合わせをすべきではないか!!これは罪に問われないのか?なんて恐ろしい欠陥システム、間違いを、不正を正すことがないチェック不在*1
 p118、はじめから鈴香を見逃す気があったとしか思えない対応。
 p121、コンビニ強盗事件が起こっていたため、捜査人員を割かれたくなくて、殺人事件を事故として処理した?これは普通ありえない。能代署だけでは無理で、秋田県警の意向がなければ絶対に無理。寺田県知事もこの件に干渉しないと早々に述べた。警察の権力が強い?なぜ
 p129、栃木リンチ殺人事件神戸大学院リンチ殺人事件・桶川ストーカー殺人事件、すべてネガキャンで被害者に落ち度があったことにされている。しかし実際は捜査の不手際を指摘されても、間違ってもしょうがないよねという言い訳のための警察が流させているもの。記者にリークをしているのは当の警察本人少しでも間違えば、自分達に責任が及ぶ。そのために情報をコントロールする必要がある。記者クラブとはそのためのものなのだろう。氏がこういう低い意識を「ちょんまげ時代」と揶揄しているが、小室博士も役人の腐敗の根源にあるものを徳川幕府イデオロギーと呼んだ。わが国の役人は未だに幕府の役人なのだ…
 p132、筆者は
あの鈴香という女はまずい。早々に事故で行こうと秋田県警察のトップが決めた可能性を指摘している。
 p138、事故死に仕立て上げたいために、懇意の小野医師をわざわざ選んだ。豪憲君が1時間半だったのに、彩香ちゃんはわずか25分だった。
 p169、検察の冒頭陳述で、鈴香・検察・警察三者にしか知りえない闇を感じる。事件性を解明できなかった
彩香ちゃん事件と対照的に、豪憲君事件の詳細な動機を盛り込むそのアンバランスさ。さらに、自分が捕まる可能性がありながら、近所に彩香事故の再捜査の要求のビラを配り続けた鈴香の行動に何らかのつながりがあったとしか思えない。
 結論、第一の時点で事件として扱っていれば、
豪憲君が殺されることはなかった組織腐朽、機能不全の結果起こった深刻な事件である。

 警察の闇を追及し続けた、腐朽組織の是正を求め続けた氏の思いが汲み取れますね。合掌。
 

告発! 検察「裏ガネ作り」三井 環            

告発! 検察「裏ガネ作り」/三井 環

*2

 暴力団とのつながり、土地ころがし、女遊びで公金流用というストーリー・三井悪人説を作って失脚させた。親戚が法曹関係一族、法律一家であるために検察という組織に愛着がある。その組織がこんなことではいけないという義憤。

 やくざ組長との恫喝まがいの取調べが記されているが、検事というのはもっとも悪質な裏社会との取り調べをもっとも難しいものとして考え、それにあわせて技術を磨いていくのではないか?だからこそ、平気で恫喝・脅迫による調書主義が成立したような気がする法務省は8高検を集めて対策を協議。これを機に裏金を止めるべきだという声も強かったが、法務省にこれまでの使途を説明せねばならなかったため、しなかった。

 p45、一年目は正式な目的に使うようなマニュアルを作ってやっていたが、二年目にはもう元に戻った。
 p47、平成十四年五月七日、元副検事高橋徳弘と文芸春秋と新潮社に裏金を実名で告発。そして当時の森山法相が裏金は事実無根と答弁した。
 p58、告発に踏み切ったのは個人的な恨み「関西検察のエース」といわれた加納駿亮氏へのものから。

 p60、平成八年十一月の京大医学部付属病院の臨床実験にかかわる贈収賄事件。氏はこれは無罪だと見ていたが、加納氏が逮捕に踏み切った。つまり失敗した。ところが彼はこの責任を取らなかった。組織では失敗すれば責任を取るのが当たり前。自身も一時失敗して責任を取った。そうしない氏への怒り。
 p63、責任をとるべきだという持論を持っていた三井氏を疎ましく思った彼は法務省高松高検次席検事の昇進を潰した。
降格と俸給の押さえ込みまでされて、彼への怒りは頂点に達した。
 p74、関西検察のドン逢坂氏に告発をやめてくれと呼び出される。そうすれば検察組織と対立した旧OB田中森一のようになるぞと脅される。
 腐朽官僚のOBが退官後も自己の影響力を保持するために、人事に影響力を及ぼす。そして腐敗構造は永遠に引き継がれるという構造はどこの省庁も一緒ですね
 p86、加納という犯罪者を見逃し、裏金を告発する三井氏を有罪にするという取引で、検察は現政権に逆らわないという密約を結んだ。この獣道へ進んだことによって最早検察は死んだに等しい

 

便宜上、順不同。
 p36、公金流用の調活(調査活動費=裏金)七奉行という存在、好き放題裏金を使いまくり。M・O・K・T・Nと伏せてある。さて誰なんだろうか。
 p43、「正義を求める検察組織の一員から」という内部告発で、新聞社・菅直人中村敦夫議員に告発文章が送られた。こんなに絶好の組織改革のカードを握っている菅直人が、まさか今こんなことになるとはね…。当時は思いもしなかっんでしょうな。菅直人ならこの不正を正してくれるという期待の星だったんだろう…
 p94~147、氏が検察によって嵌められ、戦うプロセスが記してあります。

 p183、氏が知るだけで、土肥元総長は一億二千万以上、逢坂元検事長が四千百万以上、荒川元検事長は四千五百万以上。過去に一人だけある検事正が私は裏金は要らないといってすべて返納した例があるらしい。誰なんでしょうね?まさに掃き溜めの鶴ですね、この人物をトップにして、検察改革をやるべきでしょう。
 裏金が暴かれるということは現職どころかOBまで犯罪に問われる。OBと現職は運命共同体
 p187・88、原田総長・但木事務次官が料亭に集まって三井逮捕の御前会議を開く。この謀略にかかわった検事は次々と出世。主任検事・大阪地検の大仲検事は大阪特捜副部長。捜査を指揮した高田特捜部長は大阪高検総務部長。高検総務部長の落合氏は刑事部長を経て仙台高検の次席検事に。
 何より驚くのは監督責任を問われるはずの大塚清明氏が、一時減給処分を受けたのにもかかわらず、最高検検事長、最高検公判部長、名古屋地検検事正と三段跳び出世をしていること

 p207、平成14年に起こった暴力団射殺事件は三井氏失脚のために暴力団と手を組んだ検察が背後にあり、検察工作派と裁判対策派の内ゲバ。つまり三井冤罪事件は暴力団を勢いづかせ白昼堂々の射殺事件を引き起こすことになった。
 p214、昭和55年の鉄道懇談事件以後、不正経理に対する告発が相次ぐ。尼崎市議員・宮城県元知事・北海道庁職員・警視庁赤坂書院・東京都監査委員・北海道庁職員・秋田県庁職員。しかも検察審査会はこういう不正、不起訴を不当とするものとしてあるのに、仙台市オンブズマン本間俊太郎前知事の1千万の裏金を、検察審査会にもって行き、不起訴不当としたのを起訴猶予にした。検察審査会は知事はともかく、かかわっていた県職員に対し起訴猶予不当と議決したのに、地検は起訴猶予にした。民間企業や個人に対する脱税は許さないのに、時には国税当局の告発を待たずに摘発するのに、役人不正には一切対応しようとしないのだ。こういった公費天国批判キャンペーンは朝日新聞からであり、こういった不正追求に関しては朝日はさすがといわざるを得ない(ほかに余計なことやらなければいいのに…)。
 p241、これまで飲み食いにしか使っていなかったから、調査活動費の使い方を是正したときに、使い方がわからなかった。

 この本は一番古いものなので、最新事情は書かれていません。またオイオイ、氏の著作を読んで行こうと思っています。すでにストックはありますしね。↓のどれかをいつか書きます。((誤字が9くらいありましたね…(´-ω-`)))
 

検察の大罪 裏金隠しが生んだ政権との黒い癒着

検察の大罪 裏金隠しが生んだ政権との黒い癒着

 
検察との闘い

検察との闘い

 
ある検事の告発 (双葉新書)

ある検事の告発 (双葉新書)

 

 

*1:まあ、本来警察が発表を改ざんするなんてことがあるわけない話なんですけどね。そう言う時にどこに相談するかとかすらきちんと定められていないとすると…

*2:タイトルでぼくら三人にせ金づくりを思い出しましたね、懐かしい