てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

1Q84面白いな~

  一巻読みました。村上春樹ってすごいな~。オーウェルの1984年に触発されて読み始めたけど、本当に面白いわ。アフターダークみたいに、両者は全然別の人生を歩みながら一瞬交差するみたいな書き方かな?と思ったけど、そうではなく、普通に今後絡んでいきそうだ。今後の展開が楽しみだ。

 いつか、小室直樹が三島の『豊饒の海』に見事な解説を加えたように、己もそんなことをしてみたいものだ。しかし文学と音楽わかんないから無理だな。

 村上春樹は現実を淡々と描く上で、作為をもって、世界のずれを描き出す。「?、おや?あれ?なんか違うぞ、おかしいぞ…」という、まるで安西先生が山王戦でやろうとしたように、少しづつ現実の中にフィクション・ファンタジーのような幻想を作り出す。岡本太郎芸術は爆発だといったように、抽象的なものに奥深いメッセージを隠し、それと同時に具象を描く。その両者が絡み合って、なんともいえない崇高なものを作り出す。そしてまったく無意味なものを混ぜて、意味と無意味をまぜる。それらの対比が芸術を作る。抽象・具象、意味・無意味、相反するものが混ざり合うことで、爆発が起こり、芸術が生まれる。

 村上春樹も、この岡本理論と同じ手法をとっている。意味の中に、無意味があり、徹底的に抽象化、記号化して、物事の本質を描いているから、意味を持たせなくても、必然的にどのようにでも読めるようになる。たとえば父権とか、性の話とか、作者がメッセージを一つに絞らなくても普遍的なテーマである限り、いつでも読み続けることが出来るわけだ。

 博士がこれまでの小説の変化を見よ、主人公たちが何をして仕事をして、生活の糧を得ているのかまったく問題になっていない。ところが横溝正史松本清張では、どんな仕事をしているかがテーマになっていると社会構造の変化を指摘した。それと同様、村上春樹の小説を読むと、仕事や共同体ではなく、個人がどう生きるかそれが前面に出ていることが如実にわかる。

 さらに特筆すべきことは、これまではポルノといったそれ専用の目的でしか描かれなかった性描写が特に描かれる。メインテーマになっていることである。これは現代の人間にとって、いかに性愛・セックスの問題が大きくなったかということを示す格好の事例である。まあ、因果関係が逆だけど。

 村上春樹とはこの一例を持っても特筆されるべき作家であることがわかる。

 まぁ、気になったというか、重要なポイントになる点をいくつか取り上げると、コミューン・学生運動から始まって宗教団体に行き着く。オウムを連想させる、宗教団体のあり方、そして人の生き方。新興宗教というのは一つの大きなテーマだ。しかし、むしろその宗教がダイナミックでないことこそが、現代の真のテーマなんだと己は思うんだけれども。
 共産主義政権の崩壊だったり、国内・世界情勢の変化を匂わせるもの。カフカもそうだったし、過去の大きな戦争を匂わせる材料を必ず入れてくる。それによって世界が暴力をはらんでいること、戦争をはらんでいることを必ず認識させる。そうじゃなきゃ、村上春樹作品は成立しない。
 幼少期の虐待、DV、幼少期の有無を言わせぬ親から押し付けられた信仰、主人公二人は幼少期に親から有無を言わされぬ生活を送っている。外から押し付けられる暴力や苦しみはその人間にとって不可避なテーマだ。そしてそれにどう立ち向かうかも。少年ジャンプなら少年が戦って成長していくところだ。
 両者とも放埓な性生活を送る。前述どおり、性が重要なテーマとなる。
 殺し屋と小説のゴーストライーター。ちょっと語弊があるが、作品を書き直すことによって、重要な変化・転換を迎える。もし、村上春樹でなければ、何だこの三文小説、ハードボイルド(笑)で、読むのを止めてしまうところだ。人間の身体を扱うことを生業とし、精通する女に、モノを書き表す男。動くものと語るもの、ちょうどいいバランスになる。
 1Q84、二つ出る月。主人公の女性青豆はさっき言ったような、少しづつ現れる違和感に対して、異世界のような実感を覚えるこの世界に、1Q84という名前をつける。そして、実際に月が二つ出てくるというありえない現象を持って、その実感は確信に変わる。まだ、本人はそうでもないんだけれども、読者的にはね。
 リトル・ピープル、なるほど!と思った。ビッグ・ブラザーのような存在しない独裁者、スターリンのような存在はいくらなんでも現代には登場しえない。その新しい存在としてリトル・ピープルという概念を持ち出してきた。己としては現代社会を支配する構造としてもっと、巧妙なしかし時に傷つきもするビッグ・ブラザーなき、インナー・パーティのような支配者の存在を想定していたが、村上春樹はこのリトル・ピープルという観念を持ち出していったい何を描こうとするのか!(゚∀゚ )三 三( ゚∀゚)
 ギリヤーク人。アイヌが追い出した先住民族、これはかなり興味深い存在。一種の古代共同体で生きる原始人のような存在として語られる。アイヌよりさらにこういう存在を持ち出してくるところが、憎たらしいところだ。チェーホフの観察を通じて、近代国家の人間の真逆の存在、逆説を訴えかけてくる。関係ないけど、こういう少数民族にどれくらい精通しているかということは外交にとって非常に重要。己も知らなかった。北方外交は絶望的ですねorz
 ふかえりというディクレシア(うまく書くことが出来ない障害)を持つ女性の『空気さなぎ』という作品にリトル・ピープルの存在が書かれて、この小説が今後のストーリーに非常に重要になるのだろう。問題の教団に生活していて、そのことを小説に書き表したのだから。
 そして教団の教祖が少女レイプを行っている存在であるが、その正体は一切わからない。疑似ビッグ・ブラザーのようなものとなっていくのだろうか?

 以上、読んでない人にはまったく意味がわからない、メモでした。作品の解説をすることがいつかはあるかもしれません。これ四部作?うーん。もう、一部読んだだけで、凄さがすごい良くわかる。四部作で想像するのが、三島由紀夫の自決。自決をほのめかすような行動がなければいいが。最高傑作を書き終えて、自決をするようなテーマではないと思うんですけどね、本人からしてそういう人間ですし。

1Q84 BOOK 1/村上 春樹
1Q84 1-3巻セット/村上 春樹
アフターダーク (講談社文庫)/村上 春樹