てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

書評―【後編】 勝利をよぶ身体 誰も解き明かせなかった最強格闘家11人の「極意」/高岡 英夫

 

勝利をよぶ身体 誰も解き明かせなかった最強格闘家11人の「極意」

勝利をよぶ身体 誰も解き明かせなかった最強格闘家11人の「極意」

 

 

第1章 吉田沙保里―なぜ「タックルの女王」なのか

第2章 白鵬―「後の先」を追求する男

第3章 エメリヤーエンコ・ヒョードル―皇帝の秘密

第4章 桜庭和志―野生の強さを持つ男

第5章 ヒクソン・グレイシー―均整美から生まれる極意

第6章 藤原敏男―蹴撃の魔術師

第7章 山下泰裕―ヘーシンクとならぶ「柔道の巨人」

第8章 マイク・タイソン―サイエンティフィックな野獣

第9章 アントニオ猪木―格闘芸術の創始者

第10章 ブルース・リー―男がしびれる天才

 

で、続きです。

 70年代キックボクシングブームの中心だった藤原敏男。もう全然しらないですね~。当時そういえばキックボクシングブームがあったらしい、くらいしかわからないです。今の様相を見れば日本人スターが必ずいたということはわかりますが。

 

 日本刀のような切れ上がる回し蹴りはどうやって生み出されるのか?見事に発達した上下の軸に丹田。裏側からいくつも意識が入っている。裏側、背後にある意識が一本足で不安定になるのを支えている。足や腰が巨大な手で支えられているような感じだから、間合いも相手より、どうしてこのタイミングでは入れるんだというところで入ってこれる。腰裏のクロスしている意識が裏転子によって前方に放り出されたエネルギーを、脚・腰を回転させて軸に移っていく。普通は軸足を安定させて、蹴り脚にエネルギーを伝えるが、彼は逆。一流の蹴り技は蹴ったあとで、腰の回転エネルギーが作られる。これは柔道山下の大外と同じ。

 

 センターとクロススライサーが優れた攻防一体の技術を可能にする。今の格闘技の重量級はこのような優れた攻防一体はなく、全盛期のキックボクシングの中量級の技量に追いついていない。攻撃と防御は本来異質。少しレベルが上がると連続してできるようになるが、共存まで行かない。時空間的に同時に存在しうるようになる。蹴っているときでも相手に向けて垂直であるから、防御も同時にこなせるようになっている。

 

 クロススライサーで上体と下体が別々に切り離されており、蹴りをやっていても上体がそれに影響されないで動かせる。センターによって吊られているからたやすく正面を向いて屹立できる。これは認識の優位も生む。本来腕を回してバランスをとるが、彼はそれだけでなくセンターがあるから見事に屹立する。であるから、蹴った瞬間にはもう上体がパンチを打てるようになってる。

 センターが見事だから、きれいな立ち方。外部に間合いを感知するレーダーのように外部センターがある。キックボクシングの特徴か?横にあるから、スパッとくる真正面のパンチをたまにもらう。これは彼だけでなく競技者そのものの傾向かもしれない。流舟の上昇力と前方力が蹴りながらも、どんどん前進することを可能にする。格闘技は前方力がいかにあるかが非常に重要な要素。単に走るだけでは開発しきれない。

 

 優れた格闘家やサッカー選手は腰ではなく、胸。中丹田主体で蹴っている。上体で支え、下体はフリーになる。だからこそ見事な蹴りが出来る。藤原の上丹田は球ではないが発達しており、見事に整っている。

 

 

 山下泰裕は見事なセンターを持つ。第一軸(正確には一と二の間)と第三軸が通っており、側軸が三本ずつ、計六本あるから倒れるわけがない。この巨大な軸こそが彼の強さの秘密。無差別級金メダリスト上村春樹氏は自分のセンターをぶつけても山下はびくともしなかった。チラッと時計を見たときだけ崩れたがそれでも投げられなかったといっている。

 

 潜在的な下丹田にアンダーアーダーがある。山下は巨大な推進力があるから、前述どおり、投げる前に既に相手を崩している。脚を刈る前に技に入る時点で相手が投げられている(つまり、半分空気投げのような状態、下方座り込み投げ?猫のように丸まって相手が勝手によけるようになるから、球払いとあわせて猫払いとようぶことにしましょう(笑))。右肩で引き上げようという意識に、右足の意識が濃い。ひきつけることによって業を成立させている。

 

 投げ技に重要なパームが優れている。間合いを計るリバースの発達。これにより優れた観察が出来る。リアウォールによる背面の支えがあるから、前に出れるし、直立しながらでも技がかけられる。直立姿勢だと技をかけられにくいが、同時にかけにくくなる、その矛盾を解消する。そしてマグマを思わせる見事な中丹田。

 

 ヘーシンク×神永戦は日本が堕落する前兆。全く集中できなかった神永。ヘーシンクは巨大な心田流と、熱くて重い流舟があるから、相手は不安で浮ついたようになってしまう(安定すること、不動心のようなものを備えると相手が優れた能力を持っていても浮き足立ってしまうということか、なるほど)。巨大な縦構造の下丹田にセンターは雄大さを感じさせる。まさに怪物といって良い存在。『脚揚流』という足元にあるちょろちょろという意識があって、自由自在に足を使うことを可能にする。サッカー選手でもこれほど発達していない。これがあるから、ちょろっと足をかけるだけで相手を投げることが出来る。ヘーシンクには技がなく、体格・力だけでやっているような印象を感じさせたのはこのため。その裏にはものすごい極意によって支えられている。

 

 

 マイクタイソンは非常に科学的に訓練されたボクサー。右ボディから右アッパーという非常に難しいコンビネーションを彼はやっていた。これで数々のKOを築いた。左右はともかく同じ側の連打は非常に困難。

 

 右の腹にある円状のディレクターと側軸がこの難しいコンビネーションを可能にさせている。両肩・背中に幾重にも熱性のまとわりつくものがあって彼の身体を温かいものにしている。だから彼の体は熱く、ゆるんでいる。アイアンマイケルではなく、燃え滾ってどろどろに溶けている赤い鉄が正しい。

 

 タイソンは頭や肩、体幹部に外流輪と呼ぶ輪をもっていて、これがウィービングやスリッピングを可能にする。普通空間に移動して、身体を持っていくが、これがあるために初めから周囲の空間に移動しているも同然である。これがタイソンのよけると同時に攻撃という動作を可能にする。

 

 リーチが短い彼は相手の懐に入らなくてはならない。しかしそういう近接した距離からも相手が予想もしない角度からパンチが打てる。接近しながらも左右の側軸で水平移動するから、相手は予想できない。

 

 タイソンは足裏の拇指球を使わずにベタ足でスッと入り込む。拇指球は打つ瞬間で移動には使わない。そのためマイケルジョーダン同じくふくらはぎは細い。インサイドジンブレイドが見事に発達し、相手からは思わぬ速さに感じる。タイソンの裏転子は異常に発達し、虎、チーター並みの前進力でまさに野獣並み。

 

 師ダマトが闘志は技術を凌駕するといっていたように、タイソンは見事な中丹田を持っている。これがあるから恐れずに前に出られる。

 

 素晴らしい身体意識を持っているタイソンであるが実はセンターがない。ジョージ・フォアマンがアリに敗れた後牧師となって見事に復活したように、宗教に限る必要はないが、高い精神性が必要とされる=センターを育てる。引退した彼はサウジアラビア入りして、メッカ巡礼した。彼はその重要性に気づいたといえる。

 

 

 猪木のデビューは大木という選手とのデビューだったが、体格が立派だった大木と対照的にまだひょろひょろと思わせるほど細かった猪木の素晴らしさが目に付いた。ひと目で彼は天才だと思った。そのしなやかさが群を抜いていた。強くなる格闘家は鍛える前はひ弱なほどしなやか。しなやかさのレベルは力道山が静止画なら、猪木は動画。それぐらいレベルが違う。

 

 スキーヤーに見られる足裏の発達。インサイドジンブレイドにより一見ひ弱そうで倒されそうだが、逆転してしまう竹のような強靭さとしなやかさを同時に感じさせたはず。ウォールが倒れながら相手を巻き込み倒していく動きを可能にする。開側芯が股関節をゆるめ、舟が上方に浮かせるので居着きを防ぐ。巨体なのに、どしっとしたイメージを感じさせないのはこれによる。クロススライサー・ベストがあって上体を緩々に緩めながら相手に対峙出来る。よって相手はとらえどころがなくなる。

 

 巨大な中丹田は格闘芸術家と呼ぶにふさわしいもの。中丹田があるなら胸を張って、どうだ!というようなポーズをするはずだが、彼はあまりそういうポーズをしない。どちらかというと身体を丸める。それは彼は背中で観客の熱性を受けるから。背中にもう一つ中丹田がある。冷性の見事なセンターによってこれほどの熱があっても落ち着いていられる。

 

 タイガージェット・シンやスタン・ハンセンハルク・ホーガンなど、アメリカではイマイチでも猪木によってその才が開花された。それほど見事に試合をコントロールできるのはこのすぐれた熱性と冷性を兼ね備えているから。猪木はイラクにでかけたように、裏転子があるように強烈な行動力がある。だからこそああいう行動につながる。プロデューサーや事業家となるのもこれだけ優れた身体意識が備わっていれば必然。

 

 

 歴史上これほど中丹田が発達している人物はいないのではないかと思うほどの見事な中丹田。ブルース・リーがヌンチャクなどもって胸を開くシーンが印象に残るのも、美しい上半身をしているのもこの中丹田による。中丹田ができるとサイズ、骨格、筋肉が美しくなる。背中に現れる中丹田はせいぜい直径10~15センチ。しかし彼は背中全体に及ぶ中丹田を持つ。

 

 この強大な熱性の気が脳に入ってしまうと危険なのは、古くからヨガなどで言われている。彼の場合脇にまで収まっていなければならない熱性が肩にまで及んでいる。これが脳に入ってしまって病んでしまった。

 

 彼の身体意識はスターの典型的な構造。あふれる情熱がありながら、顔面には冷性の気が降りて、クールな表情をする。だからこそ今でも多くの人を魅了する。中丹田が下降して下丹田の形成を妨げている。もし彼に下丹田があったら、彼は英雄になっていた。大山倍達の様な組織を作ったかもしれない。しかし、映画スターにとってはそういう重々しさや権威はかえって不要になる。

 

 伝統的な寸勁ではなく、発達した側軸と筋肉の瞬間的な爆発力でやっていた。見事な背面のクロスラインが美しいぴたっとしたサイドキックを可能にした。

 

というところで10人紹介しておしまい。もっといろんな人物の身体意識解説聞きたいですね~。