てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

<PC用> 【つぶやきまとめ】 中国と近代化云々の続き

前回がこちらで→<PC用> 【つぶやきまとめ】 中国人と近代化について

 <携帯用> 【つぶやきまとめ】 中国人と近代化について

 
その続きです。

書き忘れてた中国の「近代化」についてちょっとグダグダ語ってみようと思います。

「近代化」という言葉をどういう意味で使っているのかわからないから、あれなんだけども、少なくとも当時の中国に近代化が可能であったとは到底思えない。近代化とは身体と頭脳の分離と再集合。末端の労働者と中央の司令部に明確に別れる。まあ分業を最高まで推し進めた社会のこと。

この己の考えはゾンバルトに基づく。さらにウェーバーの考えによれば近代化=近代資本主義(それ以前の資本主義は前近代的資本主義であり明確に区分される)。これはまた、まあ大塚久雄教授の受け売りなんだけども、または小室直樹博士の。近代資本主義はどこまでも利潤を追求する。しかし前近代社会は違う。

アメリカの学者がインドのある村に経済開発の支援に行って、指導したら生産力が倍になった。これでGDPも倍増し、豊かになるだろうと思ったら、その分働かなくなって生産性は変わらなかった。なぜか?それは労働のエトスが近代資本主義諸国とは違うから。近代化するには近代国家にふさわしいエトスが必要

日本の場合、天皇教によって一神教を創りだした。西洋の枢軸はキリスト教にあると見ぬいて、日本もそれを導入せねばならないという気づきによって天皇は神になった。また労働のエトス、勤勉・禁欲のモデルとしてあちこちに二宮金次郎像が作られた。これにより日本に近代化のエトスが根付いたという。

日本には近代化のエトス、近代法=資本主義=民主主義という三位一体の不可分の概念の前提である「契約」や「国民」という観念が論理上の基盤は整備された。翻って中国はどうだろうか?「中国人」というものがいないとは言わないが、中国は北京人や上海人など地縁に基づいたアイデンティティを持つ。

その地縁にアイデンティティが強い。今でも契約の観念がないように彼らは「関係」クゥワンシー、コネを最優先に動く。そういう国に近代化が可能であったかとは到底思えない。またインドや中国において近代化が初期に挫折した理由を『リオリエント』著者Aフランク氏はこう考えている。

リオリエント 〔アジア時代のグローバル・エコノミー〕/アンドレ-グンダー・フランク

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↑長いので読むの大変ですし、最後の結論がちょっとあれですけども、名著ですよ。読んで損はなし。

そもそも16世紀をみても欧州経済はインドや中国に到底及ばなかった。GDPで追い越したのは19世紀それも後半に至ってから。印・中などの大国の周辺領域に海洋ルートを伝ってコバンザメのように渡り歩いて、僅かなおこぼれを得ていただけ。欧州が東洋諸国を追い越したのもそんなに昔の話ではないのである、むしろつい最近の話なのであると。

ではなぜ西欧諸国が一旦追い越すと抜けなくなったのか?近代化のエトス云々もあるだろうが、根源的な理由は彼らに機械化の必然性がなかったということ。人間が無数にある国に機械化をして産業革命をする必然性がない。近代化されて、機械か・産業化したらむしろ失業者だらけになり、国が不安定化してしまう。

ここからまた拙意見に戻る。民主主義というのは根源の原理として少ない人間の力を最大限に発揮させるというものがある。その初めの前提「少ない人の数」が成立していないのだから、資本主義・民主主義が彼の地で育ちにくいのは必然と言っても良い。要するにその必然性・前提がないから起こる余地がそもそも非常に小さいのである。

そもそも近代化が不十分な中国において列強が我先にとやってきたように、その未開発でも列強の重大な国益につながっていたという事実を注視すべきだと言えよう。前近代社会でありながら非常に意義が大きかった。そのような前近代社会でありながらも列強を惹きつけるような国力を持っていた中国には産業化圧力が少ない。産業化して列強と互角にわたり合うことは到底無理だと考える。

無論人文科学は再実験ができないのでそうでない可能性も勿論あるのだが、寡聞にしてこうすれば近代化ができたという研究を聞いたことがない。あるとすれば上海・北京のような土地に絞ってその政権・軍閥が先に近代化を達成し、中国をリードするという形であろうか?そのような話なら興味深いとは思う。

まあ、こんなところで中国に近代化はできたかという話おしまい。個人的にウェーバー理論と絡まって興味深いところだったんで、色々考えてみました。そんだけ~。

ちなみに中国の学者さんでは

中国近世の宗教倫理と商人精神/余 英時

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なんていう研究があります。まあなんというんでしょうか、ウェーバーが言いたかったことをあんまりよく理解していないんだろうなあ、という気がします。一神教・禁欲・目的合理性・近代化・民主主義・資本主義などなど、そういった一連の展開をあまりよくわかってないんじゃないかな?と思いました。