てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

ジョン・アイケンベリー著 リベラルな秩序か帝国か

リベラルな秩序か帝国か 上: アメリカと世界政治の行方/勁草書房

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リベラルな秩序か帝国か 下: アメリカと世界政治の行方/勁草書房

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 これをちらちら、パラ見したので、パラミシアなので、ちょっと書きます。書くことの程ではないんですが。以前、アフタービクトリー(1) 戦後構築の論理と行動書評― アフター・ヴィクトリー(2) のところでアイケンベリーさんの本は書いたのですが、今回のこの本は論文集ですね。これを読んで、うーんと思ったことを少し。

 まあ前回も本の内容の細部に至るまで書いたわけではないですが、歴史経緯をたどって、いかに立憲主義コンスティテューショナリズムが生まれ、失敗し、その教訓から現在に至る過程をアフタービクトリーで氏は描いたわけなんですけども、ちょっと今回これを読んで、アイケンベリーさん危ういなぁ~と感じたのでメモ的に残しておこうと。事実読んでいて、疲れましたからね、アフタービクトリー。

 というのも、読んでいて論文集の形なんですけども、正直何言ってるかわかんないんですよね。いや、わかるけど、論文を書く上で、一本・一本無関係の思いつきを書くわけではありませんからね。最終的に自分の言いたいメインテーマを打ち出すために一つ一つ細かい実証研究をやるもんですからね。最終的に論文のひとつひとつが建築物のパーツになるわけですから。十本くらい論文をまとめたら、最後になんという事でしょう、匠の手によって~となって、大きなロジックを提唱できる家・建物ができるわけですからね。

 一本毎にとりあえず、こういう結論=小結論がないといけないんですよ。それがちょっとない、薄い・弱いと思うんですよね。読んでいて。最終的にどんな建物ができるのかもよくわからないんですよね。氏のグランドビジョンが全く見えない。最終的にどこにたどり着くのか全くわかんないんですけどね?どういうことなんでしょうか。毎回おんなじ事言っているように見えるんですけど…。違う雑誌に同じ事をちょっと内容、見え方変えて投稿、またはコメントをしているだけという感じがするんですよねぇ…。

 言うまでもなく氏の唱えたロジック、コンスティテューショナリズムという論理は旧来のリアリズムの論理では冷戦以後の国際関係を説明できなかった。それを説明する最適な理論なのですけど、思うにその功績にとらわれすぎてやいないですかね?過去の話ばっかりして、未来の大事な今の話ができていない。その分析が乏しいと思います。

 その氏が言うコンスティテューショナリズムは理解できた、よし!じゃあそれを踏まえた上で次にどうすべきか。その分析が圧倒的にできていない、足りていないと思うんですよね。

 訳者は理論・現実その両面で優れているなんてありましたけど、むしろ理論・理屈一辺倒で、現実・現状を踏まえていないのでは?という懸念があります。アメリカが単独主義・一国主義・アメリカ例外主義のような極端な路線に突っ走った現実があり、そんなのは誰でも知っている。現に起こったんですから、ではそれがどうして起こったのか起源の分析、何より重要なのは今後アメリカが取るべき具体的政策。

 コンスティテューショナリズムだから多国間協調・制度・法を作るなんてことはもうわかったから、じゃあそこから具体的に何をするの?アリアハンから次どこに行くかって言われてロマリア行け、じゃあそこで何するの?っていう肝心なところでだんまり。なんかファミ通の攻略本かよ!っていうような投げっぱなし感があるんですよね。

 何時まで経っても、肝心な領域・問題分析に向かわない。そんな事論じてどうするの?としか言い様がないんですけどね。まあちゃんとしたことが書いてあるかもしれませんけどね。テキトーに目を通しただけですから。食いつくポイントがなかったんで。

 コンスティテューショナリズムなら、核レジームなり、貿易制度・通貨とかなんでもいいんで、具体的な制度研究をすること。それが重要なんじゃないですかね?それをあらゆる点で行った上で、最後にまとめて異なる層を積み重ねて、現状のコンスティテューショナリズムの進展具合を氏なりに分析する。安保はいいけど、経済のこの分野が弱いとか。その上で、今後アメリカはこの分野に力を入れて行けば問題解決!あるいはそれを阻むこういう阻害要因があるぞ!ここにいるぞ!

 ―そういうロジック・提唱がないんですよね。ネオコンがアホとか正直国際関係をやってる人間でそう言わない人間はいないくらい常識ですから。単にそいつらアホだからパージして、コンスティテューショナリズムをやりましょう!それでおk!めでたしめでたし?

 うーん、なんか昔一発当てていいこと言った、いいロジックを発表してから、先に進んでないんじゃないんでしょうか?何やってるのかよくわからない感じがしますけど。一発芸人がおんなじネタを延々やってるだけみたいな?

 というのも、9.11を真珠湾と表現したり、イラクをテロリストの総本山みたいなこと言ったり、ちょっと歴史をやってれば、他の国の歴史、一国史でも地域史でも知っていれば、そんな事言わないだろうという…。ちょっとどうなのかなぁ?という記述があるんですよね。この人基礎がしっかりしていないんじゃないかな?国際関係学ではいろんな人のを読んでいて精通していても、歴史学社会学みたいなところを疎かにしている専門バカのそれがあるのかなぁ?

 一番重要なことって、アメリカが今後どうすべきかということですよね。さっきちょっと書いたように、アメリカの進路・指針・理念・グランドストラテジーを考えるために世界の分析と反米の構造を正確に押さえなくちゃいけない。

 その最初の一歩で氏は躓いている気がします。すなわちアメリカ歓迎主義。まあ、そんなもんないですけど、アメリカはなんだかんだ言っても世界から好かれている、良い国だと思われているおめでたい楽観論。そこどまりなようなにおいがしますねぇ。

 普段結構反米的なことをよく書いてますが(ん、書いてたっけ?どうだっけ?)、己が言いたいのはアメリカクソ野郎だ!それがわからないこいつはアホだ!なんてことではもちろんありません。氏が長々書いたようにアメリカはデデーンと世界中を支配しようと軍隊を展開させたのではなく、招かれたわけです。強制ではなく自発に基づいた大国・覇権であり、ゆえに帝国とは異なるのだと。

 それはもちろんそうで、そこのところを否定したら話しになりません。アメリカが世界システムの中枢を担っている。世界を支えているアメリカなくして世界は治まらないというところに来ている。当然そのアメリカという存在を肯定するに決まっているわけです。

 ところが同時にアメリカは反感・憎悪をも買っているわけです。チャルマーズ・ジョンソンチョムスキーのようなアメリカ帝国論を妄想だ!と退けてしまうようなスタンス、立脚点ではそこから先に進めないのです。まあ、チョムスキーはちょっと行き過ぎってなところがありますけどね。アメリカクソ野郎!で終わっちゃうようなところがなくもないですし。

 実際米に対する憧れというのは世界にどこでもあるでしょう。同時に憎まれてもいる。そこを無視しちゃあ、話しにならんのです。なぜ世界のリーダーであるアメリカに愛憎が半ばしているのか?そこを見ないと。その両義性がポイントなわけですからね。

 それはネオコンのようなちょっとおかしい人たちが湧いて出てくることともつながってきます。ネオコンは突然変異の空から降ってきた隕石ではなく、出るべくして出てきたものです。アメリカにはその種と根がしっかり根付いているから、ネオコンという花が咲いたわけです。その事実を無視して、「ネオコンには参ったねぇ~、やれやれ。もうあんな奴らは出てこないからドンマイドンマイ」では話しにならんとです。エライ人にはそこがわからんとです。

 アメリカは世界のリーダー、世界システム経営者の中心なのですが、リーダーには二種類あります。すなわち良いリーダーか・嫌なリーダーか。わかりやすくするために、もっと極論して単純化すれば、良い上司か・悪い上司なのかというサラリーマンの永遠のテーマです。

 ソ連のような極悪非道の悪い上司なんてことはありませんが、だからといってベストで部下から厚い信頼を得ている良い上司でもない。そういう事実を見据えないといけません。事実はむしろ嫌がられる部類に入っているという事実を見据えないといけない。アメリカが目指すべきは世界中から讃えられるリーダーに決まってるでしょう?どうしてそのビジョンを打ち出さないのか不思議でしょうがない。何やってるんでしょうね、今の主体の人達はよくわからん。

 まあ、ソフトパワーとかスマートパワーをナイさんが言ってるのはそういうことなんでしょうけど、核ついている・うまく行っているとは到底思えないですねぇ。多分、そういう基本的な理念・出発点を疎かにしているからだと思うんですけどね。

 星野さんみたいに理想の上司ランキングに常連にならないとアメリカはいけないわけです。理想の上司とは何でしょうか?当然部下に嫌なことを押し付けたりしない、コミュニケーションをしっかり取ってくれて、こちらが思うことをしっかり把握してくれる人。部下の何倍も汗をかいて、その報酬は部下にしわ寄せが行かないところで満足する―まあちょっと国際関係とJobの話を同一するのが難しいので変な感じになりましたが。もうちょっと考えればもっとうまく言えそうですが、論文でもレポートでもないんでいいでしょう。こんなかんじで。

 今アメリカは慕われるリーダーか?おお、アメリカさんパネェっす。一生ついてくっす!となっているでしょうか?むしろ、なんだよあいつ!強いからってえばり腐りやがって!と渋々周りが嫌々で従っている状態ではないでしょうか?力で君臨する嫌なリーダーから、信頼と尊敬でリーダーはあいつしかいないとみんなが押し上げて推戴してくれるリーダー。その両極端のライン(アラインメント)の中で、どうも嫌なリーダーの方に近いところに今アメリカはいる。

 アメリカ自身では決められない。他者からの評価ですからね。当然自分たちで自分を評価したら単なるナルシストですから(笑)。他国の評価を丹念に分析して、それを克服していかないといけない。良いリーダー・尊敬されるリーダーになるためにはどうすべきか!そういう方向に学問・政治を持って行かないといけない。

 昔は招かれていた。しかしソ連がいなくなったから軍隊や基地は必要なくなる。もう招かれざる客になっている。そのためには撤退するか、それかより必要性を認識してもらうために駐留コストを下げたり、そうすることで見返りを与えなくてはいけない。そういう当たり前のことを見過ごしている。

 まあ、ど失敗してますよね。氏を見ても好意的なそれを拾ってきて、それで好かれているんだ!で満足している感がありますからね。戦前は米ソの二大帝国であって、一大帝国になったらその分以前よりアメリカとの関係、待遇が改善されなければ相対的にアメリカは傲慢に見られるに決まっているんですけどね。特にソ連の脅威がなくなったムジャヒディンなんかまっさきにアメリカに歯向かいましたし。ムスリムイスラム世界に対するこれだ!ってものも未だに打ち出せていませんよね。まあ、一枚岩で捉えるのは論外になるんでしょうけど。

 英米関係のところで、英は帝国主義で米は自由をもたらす解放者みたいにアメリカ人は常に振る舞って現実を無視して外交を崩壊させたケースがしばしば出てきますが、自分たちは善であるかのようなおめでたい対応が、外交を・世界を混乱に導いた事実を認めていないところがアメリカの成長しないところでしょうね。

 まあ、そんなことを感じたのでとりあえず備忘録的に残しておきます。そういや米のベストセラーで日本の企業や官僚がロビー活動で経済政策を操っていた!なんて本があったらしいですが、どうなんですかね?日本経済絶頂の頃ですから、なんか虚像が膨らんだ、眉唾って感じがしますが。それとも日本がロビー活動の魁?中韓に今押されがちとか?