てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

改革という政治ゲームの話、改革は新興階級あって初めて成功する

 

 改革の本質というか、力学・構造の話を一つ。既存構造を抜本的に転換させるためには、既得権・支配の頂点にいる者達をひきずりおろさなくてはならない。衰えたとはいえ、現行のそれらを引きずりおろすには、強力な特定の階級・階層の台頭及びそれへの支持がいる。改革を支える強力な新興階級なくして改革は成功しない。歴史を見ても新興階級なくして、改革が成功した例はない。よって現日本の社会・社会構造を見るに、革命はもとより、改革が成功する余地は殆ない。

 橋下・渡辺といわれる、次代の改革を率先する改革政治家にも、小沢同様に強力な支持階級・階層がない。改革が組織化・構造化されていない以上、その基盤は極めて脆いと言わざるをえない。小沢という先駆者、改革政治家の第一人者ができなかったことを彼らにできるとは到底思えない。無論彼らには時間があるのだが…。小沢自身が言うように、小沢には最早時間が残されておらず、次世代の新政治の構造を作ることは出来ても、自身が改革の先頭に立って政治を執ることは出来ないだろう。

 【ポイント】 日本に新興階級がない=改革は出来ない


 とはいっても、改革というのは革命ではないから、既存権力にある階級を根本的に叩きのめすわけでは勿論ない。大体妥協が成立して、既存権力の何割かを必ず抱き込み、彼らと融和して新しい秩序を作ろうとする。改革を潰そうとする方も新興階級を何割か上層に取り込んで改革圧力を減らして潰そうとする、自己の好ましい体制を守ろうとする。政治とは畢竟、上がこの秩序構造を維持するか、下がこの秩序構造を打破するか―というパワーゲームである

 小沢・渡辺・橋下同様に、現太子党の中の改革派である安倍晋三の未来も極めて暗い。前者と同様に新興階級を権力基盤に取り込んで、従来の構造から変質をはかっているわけではないから。安倍の行動、憲法を変えて抜本的に構造を変えようとする目算は極めて正しい。が、彼は根本的なことがわかっていない。

 安倍のように構造を根本的に変えて改革を行おうとするのならばそれによって新しい利益を得る、改革利権の新興階級を基盤としなくてはならない。彼にそういったセンスはない。旧来構造のままそれによって得をするわけでもない政党に身を置きながら改革をやっている。故に矛盾した政治力学上必ず失敗する*1

 【ポイント2】 改革の定石を無視した安倍改革は必ず破綻する


 そうそう政治ゲームは既存階級の階層ピラミッドを上昇するか、没落するか。それら諸階層の離合集散ゲームであるから、上主導の連立政権になるか、下中心の連立政権になるかで改革の違いが出るわけやね。バランスが大事でどっちの連立政権が多すぎてもいけない。適度に入れ替わるのが好ましい。日本のように上中心ばかりのような政治構造だと、社会の流動性・変化に乏しいから淀んで朽木が溜まっていくように、社会構造が停滞・腐りやすい。

 それだけならまだいいが、革命時代の仏のように上が突出して中間層すら脆くなると、下層の砂粒化した大衆が団結して社会全部を崩壊させようとしてしまう=革命圧力が高まる。中間層や下層が団結せず、砂粒のように盲目的に動いて、divide and controlが成功すれば、上層は暫くはしめしめと言ってられるかもしれない。が、中間層や下層が有効に組織化されていなければ政治ゲーム自体が成立しなくなる。ゲーム・取引ができなければ彼らは追い詰められ、いずれ暴発する。そして社会自体が大混乱に陥る。

 政治ゲームが成立していない日本では、必然的に政治に希望を見出すことが出来ないから、政治的・社会的に暴走という事件が発生しやすいように思える。個人が通り魔のようなアノミー的犯罪に走るのはそこにあるのではないか?まあ、社会的にアキュート・アノミーにあるからと言われればそれまでだが。大衆を保護する階層・階級の喪失が今後続いていけば、国民が全体的に没落して仏革命のような状況になるだろう。昨今の社会犯罪・不安などはその大きな社会の混乱が引き起こされる前の軽い段階・兆候とも解釈できるかもしれない(勿論将来的にそうなればという話だが)。個人を保護する中間共同体がない、機能していないという日本社会の病理はいつ解決されるのだろうか…。


 ※おまけの追記、畢竟、―日本の政治って財務省勢力(保守派)VS通産省勢力(改革派)じゃなかろうか?岡田克也さんなんか現在の通産省勢力真っ盛りの最中、通産省勢力のトップとして、それらをまとめて先頭切って動いたら面白いんだけどなぁ。高橋さんは財務省を飛び出して改革派になっているし、みんなの江田さんも通産省だしね。言うまでもなく、古賀さんも通産省通産省勢力の結集というのがひとつの改革のポイントになるかもしれませんね。*2

*1:書いていませんでしたが、失敗する以外に変質するという要素を書いておくべきでしたね。改革すべきこと、問題の本質を見抜いていないのは、日教組や朝日という特定の敵勢力を作って、それを非難して満足していることからもわかるように、彼はそもそも出来が悪い。地頭も良くないし、未開の地に踏み入って泥にまみれて一から新勢力を糾合する。自身のオリジナルの政治勢力基盤を作り上げるということもやっていない。党内政治において多くの有望なニューリーダーたちの熾烈な競争に勝ってきたという背景もない。そんな彼が改革路線を放棄して変質するというのは当たり前すぎるほど当たり前すぎる結果でしたね。彼には信念というものがない。せいぜい祖父とかそのあたりの世代への思慕、自民党政治は正しいんだ。野党は無責任に現実を無視して文句ばっかり言っている位の感覚しかないでしょうからね。

*2:通産省系は天下りポストが乏しくて、外に活動・生き残りの余地を求めなくてはいけない。だから通産省系の元官僚の肩書で活動している人が多いという指摘を見かけましたが、そうだとすると通産省系をまとめるなんて言うのは夢のまた夢というのが現実なのかもしれませんね