てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

アメリカにとって同盟とはなにか/中央公論新社

アメリカにとって同盟とはなにか/中央公論新社

¥3,360 Amazon.co.jp

寄稿集。いうまでもなく、こういうものは個人によって出来不出来の差が激しいですね。 感想というより、読んで思いついたことをちょっと。

 日米同盟・関係の起点は戦争・敗戦による占領と属国に始まる。沖縄の基地と初期の安保にアメリカの日本防衛義務がなかった片務性を見れば明白。基地の提供と、日本のアメリカ防衛義務の欠如は、事実上の沖縄放棄・領土割譲に近いですね。条約改正とは、日本全体にある不利な状況・条件を一地方に向けることで解決した。全体の不利益を沖縄に封じ込めた・抑え込んだ。そういう構造でしょうね。であるからこそ、これまでの一方的防衛義務が真逆になって一方的に安全が保障されるのですから。まあ日本の軍事主権回復の妨害とも取れますけども

 久保さんの話は参考になりますが、小沢・鳩山路線「常駐なき安保」の意味をあまり理解していませんね。それとも日米安保のテーマである極東の安全保障沖縄基地の米軍常駐ないと成し遂げられないと考えているのでしょうか?全部丸々米軍撤退せよとは言いませんが、相当数減らしても軍事的緊張が高まるまでは十分なはずですけども。なんかそういう対中国とかで過剰になっている人・論者が多いのか?沖縄の基地が整理・縮小されたら、極東の平和と安全がいったいどう脅かされるというのでしょうか…? 日米安保の片務性、アメリカを日本が守る必要はない!というので憤る人・世論があるといいますが(グランド・バーゲンとも)、そもそもアメリカがどう攻撃を受けて、それと対抗するために日本の支援がないと勝てないなんて構造がないでしょうに。ネットワークとして基地が沖縄になる。その戦略的重要性をなぜ無視するのか?アホか?

 アメリカの同盟国の質の高さ、サポート能力は他国に対して図抜けている。反米国家がバラバラであること、到底同盟になっていないことや、中・露などを見てもらかですね。

 そもそも反欧・脱欧をモットーにアメリカはできてきた。大きな権力にゆだねることすら消極的。それが世界大戦で方針転換する。冷戦によるソ連封じ込めで同盟という文化がなかったアメリカが、急速に同盟を築いていった。

 人種的対立から戦争になったという側面が先の大戦にあったが、アメリカ自身も公民運動で内部変質が起こる。また韓・台のような民主化など価値観の共有というテーマが起こってくる。人権・民主化という共通要素が重視れてくる。

 日韓豪の明示的な同盟条約から西へ向かえばむかうほど、非公式・内容がいものになっている。そして東南アジア中東は一番緊張度・問題が多い所。そこに安定的な、頼りになるパートナーlike日・独がいないのがアメリカのネック。イラク・アフガンでそれを作りたかったという所か。

 p35、ウィルソンの国際連盟参加失敗の件で、議会が最終的な判断を下すのを拒否した結果議会の連盟参加拒否というのがありますが、ここで辺に固執しないで参加していたらどうなっていたんでしょうかね…。 カリフォルニアでの排日移民運動に、日米建艦競争、日本の山東省要求。そしてウィルソンが対立したあとのハーディングの対日関係改善。ここらへん面白そうなところですね。せっかく四か国条約などで日本との関係を安定化させたのに1924排日移民法で日本の親米派も愛想を尽かすようなことになる。日米関係が根本的におかしくなったのはまあここでしょうね。結局、日米戦争で人種問題にメスを入れることになったわけで、それがなかったらそもそも戦争自体起こらなかったのに、いったいなんだったのかあの無駄な戦争は?という感じですね。まあだからと言ってなんとかすれば人種問題を未然にどうこうできたということではありませんが。アメリカの国内問題が国際的無知と相まって、惨憺たる被害をもたらすという初期の事例として記憶しておくべきでしょう。

 石川卓氏の同盟理論についてのまとめ、そこらへんが好きな人は良いかもしれませんが、理論まとめが嫌いな己はパス。

 「価値同盟」、アメリカと同じ価値を共有しているかどうか。使命的民主主義、価値観を追及するというのがアメリカにはある。外部を内部化=アメリカ化してこその完成!というテーマがある。国連にその目的があったが、失敗。ゆえに同盟や他の制度・機構にその役割・期待が込められている。重層的なアメリカの制度、多重構造・入れ子構造に注目すべきなんでしょう。きっちりシステム化されてなくても、どこかの構造の網に引っ掛かれば全体として安定するというね。まあ、否応なくそういった国際制度に参画して「アメリカ」を内側から変えていかねばならないのでしょう、その他諸国の外交戦略としてはね

 NATOISAFを通じての欧州という地域を超えての軍事活動。NATOは衰退せず、今後国連よりも国際的軍事制裁機能を備えた機構になるでしょうしね。コソボくらいで、大規模な領域にわたって行うとは思えませんが。早く日本もNATO加盟しないと、9条改正なんてどうでもいいんで、そこをやらないと日本の外交課題は改善されません。はよ気づけ。

 戦後アメリカの同盟は英の同盟網・ネットワークを継承した。アングロ・サクソン主義、人種・文明論的性質がある。アングロサクソンが文明を伝播させていくというものがあった。

 2009年の日本での演説でオバマは「太平洋の大統領」という言葉を使い、2011年の豪議会でアメリカは太平洋国家だと言っている。TPPは何となく突発的な貿易圏構想のようにみえますが、実はアメリカの太平洋シフトという戦略というのが前々からあったんですね。中東外交が行き詰る中、確固たる後背地、米→太平洋→(※インド→)中東。まあそん感じの戦略構想があるのでしょう。

 ※アフガン・イラクの失敗有効な同盟を結べそうな国家樹立プランがとん挫した以上インドの価値はアメリカにとってこれまで以上に大きくなった。事実上核保有国として承認したように、いずれインドに対してもっと具体的な米印同盟プランを提示する日が来るかもしれません

 米にとって明確な同盟などが築けない東南アジア米州機構など地域機構が停滞しているアメリカ大陸・南北アメリカ。そこを一気に結びつけてしまおう。APECを拡大発展化させるという意図でしょうね。むろん、日韓とも視野に入っていますので米にとって極東・東南アジア南北アメリカオセアニアと正式な同盟および、非公式な同盟や協力関係、そこら辺を一気に包括しようというもの。そういう意図が見えます。ダイナミックで面白いですが、当然規模が大きければ大きいほどうまくいかないもの。成果が大きければ、反動の負の面も大きいもの。東=ヨーロッパからの中東アプローチが停滞している。だから反対方向からの西ルート=太平洋ってことなんでしょうけどね。ロシアの西か南か東か、一方向がダメならほかの二方向のどちらかに進出するってやつに近い発想ですね。ってことはアフリカからのアプローチが当然出てきそうなものですが、それは今どうなっているのでしょうか?

 米の太平洋シフトに伴いブレアがカトリックに改宗して(元から改宗する要素があったようですが)EU大統領を目指してEUシフトを目指そうとしたことなど、イギリスも米の西シフトに合わせて、東シフトを強めるかもしれません。英の栄光ある孤立&世界的ネットワークの伝統はアメリカに吸収されてしまったと言えますが、引き続き英は対等な同盟を結ばずにやっていくのでしょうか。昔は同盟という選択肢を選ばないという感じでしたが、今や選べないという感じになっているようにも思えますね。EUシフトして同盟云々より、英としては同盟という以外の制度・枠組みを考えてこの状況をうまく乗り切るすべを模索するのでは?という気がします。

 米韓同盟、「局地同盟」冷戦を全面化させないための半島に局地化する意味合いがあった。その局地的現状維持装置であった米韓連合司令部の解体と戦時作戦統制権返還の延期。アメリカは局地化のため、つまり南北当事者同士の問題に縮小させるため連合司令部を解体し、統制権を韓国に返す意図がある。つまり米が半島に対し、北に対し興味・関心・問題の優先順位を大幅に減らすという長期的視野で動いている。北はそれを当然阻止したい。だからこそ島を攻撃して危機をあおっていると。

 北は朴正煕時代の見捨てられの懸念があった時と違い、今は北が戦争を仕掛けても北が共産圏のバックアップを受けて何とかできるという要素はない。戦争を仕掛けたらある程度ダメージを与えられることができても、反撃であっという間に負けるだけ。当然米は駐在米軍を縮小させる、関心領域・問題レベルを下げる。

 基本的に韓国は既存の休戦や構造を発展させて問題を解消させる方針だが、北はそれだと損をするのであくまでも北とアメリカ当事者同士の問題(北VS最強アメリカが戦ったという価値、アメリカと同格だという主張がありますね)という前提を崩さず、それをアメリカが崩そうとするなら、こちらも従来の協定を守らないぞ!と破棄する手法に出ていますね。そして真っ先に損をする・あおりを受けるのは韓国ですね。

 ンであとは、前回書いたように「戦略的柔軟性」、「局地同盟」から「戦略同盟」に格上げされていくと。

 非公式な同盟関係台湾。台湾の防衛能力は中国のそれに及ばなくなるため、米では台湾から手を引くべきという意見が出だしていると(ブルース・ギリー、チャールズ・グレーサ―、マイケル・スウェインは仲介して信頼醸成、武器供与での中国への挑発を避けるべきか、まあそれはわからないでもない)。―というかまあ、じゃあ手を引いて、中国が台湾攻撃したらどうすんのって感じですしね。平和的統一を歓迎するのはわかりますが、まず軍事的脅威が念頭にあり、非平和的手段に出てきたら取り返しがつかないんですからね。軍事的手段で台湾に侵攻しても米の世論が、ほっとけ~と看過するなんてありえるのでしょうか?ただでさえチベットで厳しい見方をしているのに、第二のチベットを許すとは到底思えませんが。

 東南アジア・中東においてアメリカは同盟国を持たない。イスラエルとは正式に同盟を結んでいない。繰り返しだが、中東に頼りになる同盟国がいないことこそアメリカの中東政策の悩みの種。サウジ王政も好ましくないが、反米テロ国家になることはもっと好ましくないといったところだろう。アメリカにとって手詰まりはこの王政や独裁体制を親米民主国家に移行させるプランがないこと、それが崩壊してしまえば反米テロ国家になる。エジプトでの独裁崩壊での懸念ゆえ、革命に対して慎重だったのもそのため。

 ニクソン政権、半島での局地化同じく「ベトナムでのベトナム化」&「中東での中東化」、そのためのイラン同盟化戦略。思うにこの路線での日本重視=負担増加養成=沖縄返還があったのですから、沖縄の軍事基地負担を減らしたり、日米行政協定の問題に手を付けるために、アメリカの世界戦略に積極的に協力するという方針があり得たはずなのですが…。まあ、例のあれですね…。

 1979年にこのニクソン構造、中東秩序は崩れます。イラン革命イラクフセイン政権で同盟国の乗り換え、エジプトとイスラエルの和平樹立でイスラエルの安保に一区切りがつく。崩れはしましたが一応の安定は保たれたわけですね。今と違い冷戦の時期ですから、ソ連はアフガンに侵攻。西側のイスラム革命の恐怖同様、内部に多くのムスリムを抱えるソ連としてはアフガンを抑えて革命波及を予防したかったという要素もあった。今の米とテロの関係にもう一つソ連というアクターがあったという違いは大きかったでしょうね。ソ連からすればエジプトにイラクを抑えられて、気が気じゃなかったというのもあるでしょうしね。そう考えるとおかしくもなんともないんですね、ソ連のアフガン侵攻という選択肢は。

 コントラ事件にあるようにイラク・イラン・エジプトどれを同盟国にすべきかという判断は簡単に下せなかった。エジプトのイスラエル和平によってイラクのアラブ世界の盟主!反イスラエル民族主義を抱えた大国化というテーゼが出てきたから。ちょうど極東の反日!というのと、反ユダヤイスラエル!という図式は似ていますからね。その反!を旗印にフセインはアラブ世界のリーダーという路線を選択してしまうわけですイラク軍国主義世俗主義は現実主義的で好ましいステップに見えますが、その現実主義はやはりなにより反イスラエルに向けられており、近代化を目的としたものではなかったということなんでしょうかね?

 エジプトに軍事援助、兵器提供・人員訓練・共同演習「ブライト・スター」。同盟関係と言えるのに、明確な条約はない。面白いことに1978年のキャンプ・デービット合意と翌年の平和条約に基づいて同盟が成立したとみられていること。ほとんど「三国同盟条約」に近い形になっている。追記しておきますが北の目的とはこのエジプトのケースを想定した三国同盟なのかもしれませんね。あるいは日本を加えた四国同盟か。

 レーガンとベギンの間でMOU相互安保が結ばれる。中東安定化のためのイスラエルから、対ソを目的としたそれへと格上げされる。しかし中東情勢は一筋縄ではいかず、米のサウジアラビアへのAWACOS・兵器供与などに反対して関係が悪化。イスラエルは一方的にゴラン高原の併合を宣言し、MOUは破棄された。極東と構造が違うのは日本はアジアに対して民族主義・領土拡張をもはや望む事はなくなったが、中東ではイスラエルもまた民族主義の高まりがあり、衝突する可能性がアラブ側一方ではないということ。

 湾岸周辺国と個別の防衛協力協定を結んでいる。条約だと議会の承認を得なくてはならないが、取決めレベルなので公開・承認は必要ない。しかしこれによって非NATO重要同盟国扱いになっている。

 湾岸戦争は米が大規模地上軍を派遣したという点で画期的だった。イラン・イラク二重封じ込め戦術で、イスラム革命もアラブ民族主義もふうじこめられることになった。が、結果イスラムの反異教徒感情を刺激し、国家単位ではないテロという手法を選ばせることになった。以後サウジ・エジプトだけでなく、リビア・イエメンといった価値観を共有しない国に対テロの協力関係を公式・非公式に取り結んでいく。

 東南アジア=潜在同盟。中国の脅威が現実化した場合、同盟が顕在化していく構造になっている。

 最後の章の防衛大学の人、神谷さんってのはひどいな。単に米の言い分をそのまま紹介しているだけなのだろうか?日米安保の機能不全は鳩山政権にあるとか、いったいどこの国の軍人のセリフなんだろうか…。属国構造をどうすべきか!とかなんで論じられないんでしょうね。そこを論ぜずして日本の安保もくそもないんですが…。