てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

日本の正当防衛の謎

 東京都足立区でナイフを持った暴漢に女性が襲われ、その女性が抵抗した際に太腿を刺し、その男を殺してしまうという事件がありました。

 この事件の解説で女性を襲おうとした男が反撃されて死亡?「正当防衛」が成立する条件とは というのをみましたが結局この事件はどうなるんだよ、結論書いとけよ(´-ω-`)と思いました。なんでしょう?外れたら叩かれるからお茶を濁した感じですか?読んでいてこの要件に当てはまるかどうかは自分で判断しな!ってかんじですかね。

 そもそもこの事件はまだ詳しいことが確定していない、被害者の女性に二時間の空白があるとはいえ、基本的には強姦事件を被害者が返り討ちにしたということでしょう?(それがひっくり返って実は知り合いだったとかならまた話は変わるのですが、それ前提で話を進めます)

 それなら、犯罪者を返り討ちにしたのだから当然「正当防衛」が成立して無罪になるに決まっている。これを過剰防衛だと云々する事自体が狂っている。なんですか?人を殺すくらいなら、犯罪者に襲われようと殺されろってことですか?実際の戦闘で多少経験を持った者でも、余程の訓練を受けた者、体格が良く運動神経が良い者でも、きちんと適切な対応が取れるとは限らない。実戦で相手を傷つけない適切な対処が取れるとは限らない。

 実戦で、実力差があっても相手を傷つけずに勝つというのは難しい。まして相手がコチラを襲う準備を整えているのに対し、コチラは素の状態で戦わなくてはいけない。格闘技の試合のような事前に準備を整えて五分の条件で闘うというのとまるで違う。達人でもない限り、不意に襲われて相手を傷つけずに制するなんてまず出来ない。まして素人の10代の女性でしょう?

 一応表面上、傷害致死という形で相手を死なせてしまった。殺人者という不名誉な鎖で縛られる。これを正当防衛で正当化・免責してやらなければ、彼女に罪の十字架を追わせる最悪のケースでしょう。強姦されかけてしかも、殺人者のレッテルを張られるなんて…。どんだけ踏んだり蹴ったりなんですか?襲われる&人を刺すというトラウマ(というか心の傷)を背負い、今後も裁判&警察に事情聴取とか、どんだけコスト払わなくちゃいけないんですか?

 Jーcastの記事だと、まあ正当防衛で不起訴だろうと。この事件についてではありませんが、プレジデントのこれ、正当防衛と過剰防衛の境界線はどこにあるか―この表を見ると正当防衛の基準が書いてあって、まあ今回は成立するでしょうね。自分で刃物を所持していたわけではないことに、逃走するために相手の「足」を刺したわけですから。腹・胸などを刺した、または必要以上に脚を刺したとかならともかく逃走するためですからね。

 ナイフを奪ったのなら刺さずに相手に突きつけて脅すだけで十分とか、緊急時に、不意に襲われている時に正当な判断が出来るわけではないことを考えると、そうしなかったとしても別に問題にはならないでしょう。それを過剰防衛とか頭湧いてるとしか思えない。


■過剰防衛=犯罪ではない

 そんなことを思って、色々正当防衛ググっていたら、日本では人を殺した場合、正当防衛は認められないというのは事実ではない というのを見ました。Wikiなんか見て初めて知りましたが、「過剰防衛」というのは犯罪・刑事罰の処分対象ではないと見たほうがわかりやすいんですね。てっきり「過剰防衛」で罰せられるものかと思いましたが、「正当防衛」で完全に免債されないが、犯罪ということにするわけにもいかない。

 正当防衛―過剰防衛―犯罪(傷害・殺人)

というような段階で把握・理解すべきものであり、グレーゾーン・判断がしづらいケースに適用するようなものみたいですね。悪質な過剰防衛=殆ど犯罪と紙一重のようなケースなら、刑が与えられますが。それでも防衛の延長上にあったのだから減免するという発想。

 だから正当防衛とは言いがたいが(要件を満たしてはいないのだが)、まあそうなるのもやむをえないだろう。相手の攻撃手段を上回る武器で反撃した、あるいは反撃し過ぎた。そういう正当防衛よりの過剰防衛という判断もあるわけです。そうなると執行猶予付きで事実上の無罪になるわけですね。

 例えば強盗に襲われた。相手は素手だが、こちらは武器で応戦してしまい、ボッコボコにして警察につきだした。行動不能に陥る程度ならともかく、場合によっては死んでもおかしくないまでに加撃を加える事はダメ。そういう時には左の正当防衛よりの判断から、ドンドン右の過剰防衛、犯罪へと判決がスライドしていくわけですね。要するに身を守る程度の最小限の反撃が完全に免債されるということですね。

 しかし往々にしてやり過ぎるケースが有る。もみ合っているうちに相手が頭をぶつけて大怪我、傷害、あるいは死亡そんなケースになることもある。そういう時にはすんなり正当防衛とするわけにもいかない。また証言者や物的証拠・情況証拠いろいろな条件が完全に揃って「正当防衛」と明確に認定するのが難しいということですかね。

 今回の場合、いわば傷害致死のように正当防衛致死=過剰防衛という解釈がされない可能性もなくはないということでしょう。おそらく正当防衛で致死という判例自体少ないでしょうしね。駅で男の酔っぱらいが絡んできたのを女性が振り払ったら足がもつれてホームに落ちたそこに電車が来て死んだというケースくらいでしょうか?

 でも①相手が犯罪目的で襲いかかる、②凶器も相手の物、③反撃は逃げ切るためのもの。ただ目撃者がいないので正当防衛にも、過剰防衛にも判断は難しいでしょうね。あとは彼女がなにか犯罪歴があって、日頃から犯罪を犯しかねない人物ということでもなければ、捜査を進めてまず死亡した方が容疑者で間違いないということになって正当防衛、もしくは起訴自体ないか。正当防衛が間違いないというような事件でも死亡した場合不起訴ってケースがあったのかどうか疑問ですが、やはり起訴自体は形式上でもするんでしょうかね?貴重な判例になるでしょうしね。

 日本の検察は起訴しての有罪判決が取れるかどうかが検事の評価に関わってくるので判例が重要な事になるから負けるけど形式上起訴しときますということはあるのでしょうか?ちょっと考えにくい気がしますが…。いずれにせよ彼女に万一無罪よりの「過剰防衛」という判決が降る可能性があるわけですし、過剰防衛とはいっても犯罪ではないのだという認識を広めておく必要があるのではないでしょうか?彼女に世間・周囲から犯罪者!というレッテルを張られる恐れを考えると過剰防衛という一般認識は何とかすべきだと思います。

 絶対馬鹿なやつは「あいつ人殺してるんだぜ~」とかやりますからね。己なんかはむしろ、あんたは大した女だ!世の女性はこのように勇敢でなくてはならん!と褒め称えますけども、彼女の心の傷は一生消えないでしょうからね。


 強盗・強姦・傷害というより、むしろ隣人、親しい間柄でケンカとなった場合の量刑を想定しているということなのでしょうか?簡単にケンカしてどちらか一方が傷をつけても正当防衛が成立するようなら、めんどくさくなってしょうがない。簡単には正当防衛なんて成立しないからケンカなんかくだらないことするなよ!という前提で出来ている。そういう法理から正当防衛の観念が発展してきているのでしょうか?明治の頃なんかそりゃあケンカ、力づくで物事解決したらぁ!って時代でしたでしょうしね。その名残、延長上でしょうか?正当防衛の成立の難しさは。

 ケンカ・暴行・傷害と言っても、隣人・知人関係のそれと、全く見ず知らずの赤の他人関係のそれとは全く異なると思うんですけどね。それは現代の法律では明確に区別されてはいないのでしょうか?判例だとどのように解釈される傾向があるんですかね?

 近代というか現代ですか、国が発展して法治が強まると私的な撃退すらも認められなくなるのは。盗賊や物取り・犯罪者を撃退した場合、勇士や烈女として賞賛されるものでした。最近インドかアフガンかどっかでアルカイダゲリラが押し入ってきたのを、隙を見て女の子が機関銃奪い取って撃退したっての見ました。で、当然彼女は政府から素晴らしいと表彰されていました。明治くらいでもきっとそういう空気はあったと思います。柔道家の鬼横山だったか?強盗をふすま毎日本刀で一刀両断したとかそういう逸話残っていますしね。

 しかし田舎なら皆顔を知って、相互扶助が成立していますから、強盗なんてのはよそ者しかありえないので、一致団結して叩きのめすという形が当然なんでしょうけど、都市化していけばそういう前提にはならない。一個人の暴力行為はできるかぎり歯止めをかけたい。または近代国家の治安維持の原則として食っていけない落伍者が犯罪者に陥るのを徹底的に取り締まらない。仮に強硬に取り締まったら、生き残りのために闇結社・秘密結社化に走って、結果的により治安が悪化するから―そういう観点から現在でもあまり正当防衛が簡単には認められないのか?だとしたら生まれが貧乏で満足に学校にも通えず~とかそういうケースだけに限定していいと思うんですがね。

 まあ近代裁判では目撃者、証人がいないとなかなか明確に正当防衛認定しづらいでしょう。今回の事件もその点をどうするかというのが一つのポイントでしょうかね。

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野獣警察 1