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てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

東京裁判とサンフランシスコ体制を結びつける愚かさ

外交関係

 靖国参拝に関連して河村市長は「A級戦犯を裁いた東京裁判を支持しない」と述べたようです。このような姿勢について、否定的な意見を表明する人は少なくありません。「東京裁判を受け入れた」からこそ、「先の大戦の非を認めた」からこそ、「責任者が処罰された」からこそ、今の国際体制・日本がある―まあそういう意見をよく見ます。現状認識・理解としてならともかく、そのような意見を学者でも平気で論じてしまうところに危うさを感じます。

 東ア戦後秩序・レジームは限界に達している。と前回述べましたが、何故そうなっているかといえば、そもそも戦後秩序のスタートとして、「戦勝国」「戦敗国」という歪んだロジックからスタートするからですね。加えて「善」と「悪」という善悪二元論の要素もそこに見出すことが出来るでしょう。

 「善」サイド、「戦勝国」サイドであれば、自分達有利のレジームですからそれでいいんでしょうが、言うまでもなく、「悪」「戦敗国」となった国はそんなこと許せるか!になるに決まっている。そのレジームの正当性を否定しやすくなる、拒否する傾向にあるわけです。

 実際、そういう図式が先の大戦で成立するのであれば、まだなんとかなるのでしょうけど、そういうふうに捉えるのは非常に無理がある。国家間の利益競争の場において、国益競争において、どちらか一方に理があって、もう片方に非があるなんていうケースは早々無いですからね。

 戦後秩序、国際秩序を論ずる際に、サンフランシスコ体制の出発点をまず受け入れよというのならわかるのですが、そこに伴う負の性質もまた同時に見ないとならない。そうでなければ昨今の問題を正確に理解することはまず出来ないでしょう。安倍政権が突然変異的に戦後秩序を否定しだしたのではなく、今後この傾向は日本政治・外交においてもうずーっと続いていくものと見るべきでしょう。戦争の記憶がまだ新しく、冷戦という状況下においてならともかく、戦後70年も経って、「そろそろそういった古い図式ではなく新しい図式でやろうではないか」と日本人が考える、そう主張しだすのは当然の流れなんですね。

 無論、安倍政権その周辺の「戦後レジーム」議論は、力学や国益の設定などが歪んでいる。そこに戦略性を見出すことが出来ないので賛同できないのですが、根底にある図式=東ア新国際秩序を作ろう、より正当性のある良い物にしていこうというロジック自体は正しいものだという理解をしておかないといけない。そうでないと、この地域における力学・構造を大きく読み誤ることになります(※追記:そのためにも、レジームの「脱却」というような戦後レジームを否定しよう、戦後レジームをマイナスのものと捉えられかねない用語の使用は避けるべきでしょう。改善・修繕といったような、ひとまずそれを基礎として中立的な立場を表明し、よりよいものを作っていくんだというポーズを取って中韓のような戦前日本を否定的に捉える国から反感を買うことや警戒されることを避けなくては成果を上げることは難しいでしょう。つまり、中韓の反感を正面切って買いながら、戦後レジーム脱却を唱える安倍氏では有意義な成果はまず期待できないと見ていいでしょう)。

 で、外交的に、国際法的に正当性があるものを考えると当然「法の支配」に則った秩序を構築するのが好ましい。新秩序は特定の国家に良いも悪いもない、戦争に勝った負けたなどの歪んだ力学を持ち込まないものでなくてはなりません。開かれた公平な秩序でないといけない。まあ、ウィーン体制のように敗戦国仏に責任を押し付けないものがいいでしょうね。第一次世界大戦の講和体制(ベルサイユ体制)で仏が敗戦国独に責任を押し付けた結果どうなったか?言うまでもありませんね。

 第二次世界大戦後の欧州を見ると、初期においては独を警戒する声があるものの、独の復讐を避けるためにも独を統一させようという動きは依然として有りました。まあ、そこら辺は色々錯綜するので詳しくは述べないですが、要するに戦後秩序の安定化のために多大な努力が図られたわけです。非戦&安定化をテーマに外交が積み重ねられていました。そこには独が悪いから~、あるいはソ連が悪いから~などといったロジックで外交が動くことはありませんでした。「戦略目標」を達成するための駆け引きの結果が、今の「欧州秩序」&「安定化」があるわけです。

 河村さんでも誰でもいいんですが、東京裁判が不当だ、サンフランシスコ体制が不当だという話・主張は、その後の新秩序の観念とセットにして初めて意味があるわけで。ただ不平不満・否定だけを言うのでは、そこに戦略性がないと見られるのはやむをえないでしょう。

 東アあるいは太平洋を含めた領域に及ぶ関係国に平等で公平な秩序、誰もが得をする&損をしない新秩序という理念・理想を打ち出さない限り意味が無いですね。米に警戒されて潰されるのがオチでしょう。

―で、とりあえず戦後秩序をむやみに否定する愚を批判したところで、その対偶の批判を。

 東京裁判とサンフランシスコ体制をセットにして、東京裁判を否定するのは戦後秩序の否定だ!だからそんなことは許されない!という意見を本当によく見ます。別にどうでもいい人の意見なら気にすることないんですが、この人はできる・わかってるなぁという人までそういうことを言うからかなり困ります。以前述べた通り、橋爪さんもそうですし、ツイッター見る限り韓国研究者の木村氏や浅羽氏もおそらくそういう意見でしょう。

 まず、そこら辺は国際法的な見地において見るべきであり、見解が分かれる領域であるはずですよね。まず、それを理解されているのか?どうなんでしょうか。それはまぁいいとして、どうみても東京裁判というのは「事後法」と「力の支配」に基づくもので、正当性は乏しい。そのようなものをサンフランシスコ体制とセットにするということは、むしろサンフランシスコ体制の正当性を大きく損なうことになる。そのことを理解されているのでしょうか?戦後秩序を現状維持にしておきたいのなら、むしろ東京裁判を切り離す方が、まだロジック的には筋が通るんですが、そういう発想は何故ないんですかね?

 橋爪さんの言うとおり、たとえそれが理に適っていなくても、現状有利だからそれに乗っかっておくという意見を唱える人もいるのでしょうが、それについては当然、「いや、もう、それに乗っかるのは有利ではない!日本にとって不利だ!」と言う意見は絶対出て来るんですから、個人的に無理があると思います。

 それが有理・無理はともかく、繰り返しになりますけど、「戦後~年。何で未だに自分達日本だけが悪い!&不利なんだ!」という意見はもう今後絶対覆らない。というか時間が経てば経つほどその声は確実に大きくなる。そういう力学を無視すると、この地域の力学・流れを大きく見誤るでしょうね。まさにオバマ政権の外交失敗はここにありますしね。

 ※余談、同じく中国・韓国の「反日」というのも似たようなところがあって、彼らには日本にしてやられた、一方的に負けたという歴史事実をもう取り返すことが出来ない。彼らの「傷つけられた」という感情を取り戻すことが出来ないわけです。彼らのモノの見方だとその事実が非常に重いことであって、これを何とかしたい!なんとかして日本に勝った!という事実を作りたいわけです。これが戦後~年経って、時間が経って記憶が薄れて平和や相互信頼が積み重ねられていくという通常のケースと逆行する理由なんですね。

 むしろ、今の韓中VS日本は今後どんどん大きくなるでしょう。「対日威信回復」と「戦後新秩序」という異なった力学ではあるのでしょうけどね。もひとつおまけに付け加えると、この「戦後新秩序」の部分を安倍政権は「対中韓」や「対反日勢力」という韓中がやっていることと同じ不毛な目的に置き換えかねないので、己は現政権に否定的になるわけです。

 結論として、今の安倍政権のロジックだけでなく、それを否定するロジック(反参拝派のロジック)もまたおかしい、正確な認識に基づいたそれになってないということですね。この問題について大体、AとBの二項対立のような形になっていると思いますが、そのどちらも間違っているということは、危険な方向に行く、未来に期待が持てないと見ていいでしょう。

 どちらも間違っているというのは特定秘密保護の反対運動の誤りのそれと同じですね。結局、今の靖国の構図も、「サヨクが反対してるなら安倍や自民が参拝するなら賛成」という構図になってるんでしょうなぁ。国内政治において安倍参拝が肯定される図式はそういうことでしょう。なんか「反対だから賛成」という力学が日本の政治で強すぎないですかね?主体性が乏しいということなんでしょうか…?

  「安倍の」靖国参拝をただ否定すればいいのに、なぜ東京裁判まで話が及ぶのか。論理がどんどん飛躍して自滅している気がします。特定秘密保護法で冤罪の可能性・危険性をなくせというだけでいいのに軍国主義への回帰とか余計なことを主張して自滅したのと同じですね。右とか左とかそういう余計な、変な価値観から物事を見て、結局いつもの使い古された政治主張をして自滅する人が多すぎな感じがしますね。この問題に対する色んな評論は、物事の両義性+と-を検討できていない。長所・短所それぞれで論じないから非常にバランスが悪いといういつもの感想になりますね。

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