てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

フォーリン・アフェアーズ・リポート 2012/4

フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年4月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

カゼひいてた頃に読んでメモして、どういうふうにまとめようか迷っていたら随分間が開いてしまいました。まあ読んだ雑誌ってことで一つずつ書いとくことでいいかしら。

<特集 新しい世界に備えよ>
高齢社会を前向きにとらえよ
―― 危機を機会に変えるには /ジョセフ・F・カフリン、ケリー・ミッチェル
 まあ、そんなに言及することはありません。よくある高齢化社会の話。目新しいことはないので。高齢化社会となる以上既存の社会は大きく変容せざるを得ないということですね。非感染疾患(がんとか糖尿病とか)の増大故、医療制度は持たなくなる。アルツハイマーの治療・予防は財政破綻問題に深く関わっている。この新技術が財政破綻問題を左右すると。

不安定な新世界、動かない資金
――長期ビジョンとコンフィデンスの喪失 /ローレンス・D・フィンク
 重要な問題でありながら長期的なものであるために見落とされる高齢化の問題、増大する高齢者に「老後の貯蓄はどうなるか」というプレッシャーをかけ続けている。米では今後75年、ソーシャルセキュリティとメディケアで40兆ドル財源が不足している。ブラックロック試算で2011年末の時点で、年金基金財源平均で33%マイナス。確定拠出型では40%マイナス。
 日本の高齢化を考えると貯蓄大国&米国債購入というこれまでの図式が成立しなくなる。貯蓄大国の座から滑り落ち、米国債を売払わざるをえなくなるだろう。

 当然国際政治・経済の構造が一転する大事件なのだが、日本が米にとって不可欠な存在というのはこの米国債の購入にあると言っても良い訳で、それが出来なくなるということは日本のプレゼンスが大きく落下することにあるのだが…。高齢化社会というより少子化なんとかしろという圧力がかからないのは何故なのでしょうか?ジャパンイズバックなんてどうでもいいんで、財源を少子化対策に切り替えるほうが先でしょ、普通。

 新興市場国に経済成長のエンジンが動いたことで今の問題は説明できる。ウォール街の99%であれ、アラブの春であれ、根は同じ。そこから取り残された人々の抗議。投資家はそこへの投資で配当を得ているが、取り残された人々の低成長と低配分が問題の根源である。
 中国でも投資ではなく貯蓄に資金が回っている。これをいかに有効な分野の投資に回せるかがポイント。有力な投資先を見いだせるかが成長の鍵(まあ言わずもがな、当たり前の話ですけどね)。
 2011の秋に起きた欧州での流動性の危機。取り敢えず危機を先送りできたが、ギリシャ・スペイン・イタリアがこの時間的猶予のうちに経済を改善できるのか?仮にギリシャ経済が悪化することになっても欧州のファイアーウォールは強い。むしろユーロ経済の持ち直しが米経済に与える影響を考えるべき。今後 二年でどれだけ経済成長が出来るかどうかが、ユーロ経済のポイント。

なぜ世界銀行は依然として必要か
―― 変化する世界と変貌する多国間組織 /ロバート・B・ゼーリック
 世銀の歴史を振り返ったまとめのようなものですが、正直これ、いる?ってものです。世銀当初と時代・環境が大きく変わったため、新しい課題・役割にいかに対応・対処すべきかって話なんでしょうけども、それならば一旦世銀を廃止して、新しい課題に対応できる組織に再編すべきだと思いますけどね。世銀の仕事ぶりを知らないんで一概には言えませんが、ソッチのほうが効率的という感じがしますが。目的を達成した組織は解散しなくてはならないという基本を踏み外してまでやることないような気がしますが…?

<特集 宗教とアメリカの政治 Campaign 2012>
政治から離れ、宗教へ回帰する米宗教界
―― 宗教右派台頭の一方で進む宗教離れ /デヴィッド・E・キャンベル、ロバート・D・パットナム

Classic Selection 2011
ポピュリズムの歴史と今日的意味合い
――ティーパーティー運動が揺るがすアメリカの政治と外交 /ウォルター・ラッセル・ミード

 この文章は面白かったのでまた別枠で書きたいと思います。

宇宙探索を続けるべき理由 /ニール・ドグラース・タイソン
 中国の急速な宇宙開発の進展で、米も対ソで宇宙開発を進めたような形で再び宇宙開発がブーストするだろうという話。投入資源という面では、EUや露・米と同等かそれ以上。
 この数十年の科学雑誌への論文投稿数は米は同等かそれ以下になっているのに対し、ブラジル・中国・日本・西欧の研究者のそれは伸びている。かつては留学生はそのまま米にとどまっていたが、米の反移民感情に加え、機会の多い中印東欧などに移っている(母国への帰国も含めて)。
 何故火星に液体がないのか?地球で同じことが起こる可能性はないのかを探求することは非常に重要。
 火星探索をめぐる競争が米中で起こる可能性はどれくらいあるのだろうか?対ソの月探索みたいなことになったりして。


<特集 集約的畜産と商業主義が家畜を苦しめ、危険な食品を作り出す>
集約的畜産の悪夢
―― 残虐な集約的畜産はもはや限界を超えている /ミュン・パク、ピーター・シンガー

 今話題の「動物はあなた達のご飯じゃない」の動きはまあ当然この頃にもう始まっていたわけで。Animal Welfareですか。現代の農業が効率と大量生産からして命ではなく商品を扱うようになるのは当然ですね。むしろそのような商品化されたものがカラダに良いわけないんですけどね。美味しんぼなんか昔散々やってましたけど。残酷だからとか言う前にまずそっちを先に見たほうがいいんじゃないですかね?人間が生きる以上生命を殺すエゴからは逃れられないんですからね。

暗闇で輝く豚肉と爆発するスイカ
―― なぜ中国の食品は危険なのか /トマス・トンプソン

 中国の食品の安全性の話で、それに対する意識が異常に低いのが中国なわけですが、米に輸入される中国産品は数多いと。日本の毒ギョーザのようなこともありうると。実際、ペットフードが問題になって反中感情が高まったなんてありましたが、いずれまたなんか問題起こりそうな気がしますけどね。まあ、日本では中国みたいな冷凍食品の農薬混入という中国レベルの犯罪が起こって、社会問題が中国並みに深刻だということを示してくれましたけどね…。

中国発サイバー攻撃とサイバーセフトにどう対処するか /アダム・シーガル

 米外交評議会の人です。表現の自由を巡って理解が異なるために、米中のサイバースペースをめぐる意識の共有はまず不可能。11年に中国が受けたサイバー攻撃は50万件で、うち15%は米から。中国が米にサイバー攻撃を仕掛けているという印象が強いですが、中国も同じように被害を受けているわけですね。原産国が米なだけにむしろ中国のほうが脆弱性が強いかもしれませんね。

 中国なんかもサイバー戦争を視野に入れていると言われますが、もし先進国の戦争が起こらば、間違いなくサイバー戦争が起こるわけですよね。新しい戦争の一つの形態・様相となるわけですが、それが民間に与える影響力がどうなるか?未だ分かり用はないですが、その被害が計り知れなくなるのならば、国際機関にサイバースペースの管理を委ねて被害を最小限にするような努力が必要となるでしょうね。まあ国家が国際機関にその分野で主権を移譲しない限りそういったことは防ぎようがないわけですよね。

 スノーデンの亡命云々ありましたけど、ウィキリークスとかそういったことも含めてサイバースペースに関する国際機関が出来たほうが安定するような気がしますけどね。まあ、アメリカさんはそういうの嫌いなんで絶対やらないでしょうけどね。ちょっとはそういったことでも進言してみたら世界から注目集めるんでいいんじゃないでしょうか?欧州と協力してそのスタンダードづくりとかそういう視点を持ったリーダーいないかなぁ…。サイバースペースへの「非戦」宣言とかどこの誰が一番初めにやるんだろうか?

 ベオグラード誤爆で愛国的ハッカーの攻撃を許容・賞賛していたが00年代半ばには否定的になった。やはりそういった人物・勢力が反共産党となって向かってくる危険性故かな?
 知的財産盗み出しをWTOに提訴、海賊国家認定で賠償請求・貿易制裁という手、または独自の貿易制裁という手もあることはある。が、現状法的・戦略的に難しい。

 んで、米のサイバー戦略は攻撃的である。サイバー軍を始めに打ち立て、サイバー空間を軍事化したのも米だと。ワシントンはこのような路線を止めるべきだと。中国はイランをサイバー攻撃したと見ている。

 11年03月オバマ政権でリビアの防空システムへのサイバー攻撃が検討された。法的・戦略的立場から行われなかったが、中国のサイバー攻撃に対する法的問題は更に複雑。正当な報復の範囲はどうなるのか?国際法にないためにわからない、不透明。報復として上海の照明を消す訳にはいかない。
 セキュリティ研究者には「ゼロ・デイズ」と呼ばれるソフトウェアの脆弱点を国防企業に売り渡した者もいる。政府・諜報機関においてその重要性は言わずもがなであり、その歯止めをかけないと今後どうなるか先が見えない気がしますなぁ…。

 ブラジル・インド・インドネシア南アフリカといった新興諸国と協力してサイバー空間の規範づくりをせよと提言してますね。そのとおりでしょうね。グーグルの撤退は中国からのサイバー攻撃に対するもの。そのコスト対策が大きいんでしょうね。なかなか有益な文章ですね、これ。


<特集 3・11と日本のエネルギージレンマ>
日本のエネルギージレンマ
再生可能エネルギーへのシフトを阻む文化的要因 /チャールズ・ファーガソン

 原発が担っている30%の電力を他のエネルギーで代替できるとは思わない。地熱エネルギーや、独と同じ緯度でも独が風力・ソーラーで行っているようなことが出来ると思うが、日本の電力生産制度が再生エネルギーへのシフトを阻む制度的・文化的傷害を持っている。つまり電力会社の地域独占体質と地方・中央政治家ががっちりそれを邪魔している構造になっているわけで、まあここを何とかしないと無理ということですね。小泉が脱原発やりたがるのも郵政民営化の構図と同じ、電力独占状態、その事実上の公社の民営化だからでしょうね。民営化したらそこに多くの子飼いを送り込んで政治的影響力を持てるというところでしょうか。Jrに電力民営化やらしたらいいんじゃないっすかね?

フクシマ危機を前にホワイトハウスはどう動いたか
―米市民の保護か日米関係への配慮か /ジェフリー・A・ベーダー
 大して面白く無いんですが、米軍・政府にとって今回の事故は意思決定という点で非常に意味が大きかった。一つの適切な行使が出来るかどうか、ミスをすれば同盟国に与える影響が大きく、撤退・避難の決断をすれば信頼を損ない外交的に大きな損失を与える問題だったわけですからね。そういう点でこの意思決定が試された事例となるリポートは非常に重要なんでしょうね、成功といえども失敗しかねない可能性が多々あったわけで、その検証が非常に重要と。

 日本政府が適切な情報を公開していないのではないかという不信・いらだちが当然出てきていましたね。

イスラエルのイラン空爆後、何が起きるか /エフード・エイラン
 前イスラエル政府官僚による分析。イラン空爆をめぐるイスラエルの好戦性、強行的な姿勢の話ですね。81年のイラク・07年のシリアの例のように核施設の攻撃をしても、反撃が起こらないと軽んじていると。06年のレバノン紛争のようにヒズボラが大量のロケットを打ち込んでくるリスクは承知。つまりヒズボラとの限定的戦闘にとどまると見ている。ヒズボラとの戦闘は遅かれ早かれ避けられない。ならばヒズボラを叩くべきだというロジックが支配している。

 報復テロはイランの2月の失敗(グルジア・インド・タイ)のケースを見ても、9.11以降の世界的テロ対策の流れにあって難しくなっていると見ている。そのリスクは低いと。民間防衛大臣が暴露したように、イスラエル人の四分の一がロケット攻撃を耐えるシェルターを持ってないし、化学兵器対策に必要なガスマスクも60%しかない。十分な民間への防衛が整っていないのに軽率に攻撃に踏み切ろうとしている。

 決断をするのに必要な最悪のケース、紛争の長期化を想定していないのはたしかに危険と言わざるをえないでしょうね。空爆で核開発を3~5年遅らせられると(つうかそろそろ日米韓で北の施設への空爆議論したほうがいいんじゃないですかね?)。81年のイラクの例のように空爆しても米との外交を一時的な緊張で乗りきれるとネタニヤフは計算している。選挙を控えたオバマイスラエルを公然と非難することはないという計算もあるだろう。

 今、国際制裁が進みつつある中、空爆でその構造を壊す必要があるのか?再度イランが核開発をした時、国際レジームが発動しにくくなるというコストをどう見ているのか?世界市場へのエネルギーの影響は?小国イスラエルには国際的視野が欠けていると。また、当然空爆により保守派のもとで団結し、体制変革の芽を摘んでしまうことも論じられていないと。

 指導者層への伝統的な信頼と公の議論がイスラエルの立場を危うくするという態度がこの現象の基にある。政治的・外交的余波を考えるべき。82年のレバノン戦争が十分な情報開示ないまま始まりその終結に20年かかったこと、市民の圧力で終わったことを考えなおすべきと。

 イスラエルは今の中国や満洲事変あたりの日本のような強硬論が主流なのでしょうなぁ。なかなか興味深い文章ですね。