てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

バッシャール後のシリア ― 破綻国家化を回避せよ/ダニエル・バイマン

前記事(フォーリン・アフェアーズ・リポート 2012/5)の続き、分割です。

バッシャール後のシリア― 破綻国家化を回避せよ /ダニエル・バイマン

 ヨーロッパ外交評議会シニア・フェローの分析です。非常に参考になりました。大きくなるアサド政権への非難。反政府勢力の支持でアサド政権を崩壊させることはイランの同盟国でなくなることを意味するからプラスと言える。しかし破綻国家と化して混乱が続くリスクもまた大きい。当然迂闊には踏み込めない。

 制裁などあり、観光・原油収入の低下により経済悪化、シリア中間層も政権を支持するかどうか微妙に。いずれイラクレバノン国境沿いにブラックマーケットが出来る。つまり政権と近いものが潤うことになる。しかし政権が崩壊すればブラックマーケット経済どころか、ブラックマーケット自体も崩壊し、経済が破綻する。

 アサド政権は正当性がない、国民の支持を得て成立したものではない事がポイント。アサドがその座を降りても、アサドの流れを組む次のリーダーが立てば権力基盤固めのために反政府勢力と戦うことは必定。つまりアサドがただ降りて別のリーダーに変わったからといってそれで安定化することも考えにくい。

 シリア国民評議会SNC、自由シリア軍FSAも内部対立があり意思統一された機関とは言いがたい。バッシャールは父ハフェズ同様、アラウィ派を基盤に公権力を独占してきた。キリスト教徒、ドゥルーズ派、スンニ派中間層(ビジネス階級)と経済利益を共有する。彼らをターゲットとして政権運営をする構造を築き、多数派のスンニ派大衆を一番外枠におく構造を作っていた。

 当然、反体制派集団には、こうした不公正是正の主張が含まれる。ジャーナリストのニール・ローゼンいわく、「紛争が長期化すれば、戦いの構図がスンニ派武装グループ対アラウィ派武装グループヘと変化していく危険がある」。つまり、アサド政権が崩壊しても、紛争が永続化する恐れがある。

 トルコは国内に自由シリア軍の指導層を受け入れている。サウジアラビアカタールは反体制派に武器提供し、イラクやシリアの国境付近のスンニ派にシリアの反体制派を支援させている。アメリカはこれらの軍事援助の提供について自衛の権利と説明しているが、当然それぞれの勢力の意志利害は一致しない故にアサド政権崩壊後、統一された勢力を支援することは難しい。

 テヘランはシリアのタルトゥース港に戦艦を寄港させた。シリアのファース通信社は、この事実をもって、「外国勢力が軍事介入すれば、地域戦争ヘエスカレートしていく」と介人をけん制している。

 シリアの国内避難民はすでに20万か?ヨルダンに8万人、トルコに1万人、レバノンに1万8000人のシリア人難民がいると考えられている。混乱→難民増加→近隣国が受け入れ→難民が紛争を拡散ということもありうる。すでにトルコはFSAのリクルートと組織化の拠点とされている(書いてないので推測だが難民キャンプからリクルートするということ周辺諸国が紛争の供給源化するということだろう)。似たような拠点がシリアの周辺諸国の多くに誕生すれば、周辺国は否応なく紛争に巻き込まれていく。難民は身の安全だけでなく、復讐も願うものか、なるほど。

 イラクでは、イランやアラウイ派と手を組んでいるシーア派に対して国内スンニ派が反発を強めるという事が考えられる。レバノンも、避難してきたスンニ派が、この国の多数派であるシーア派に対するレバノン内のスンニ派をたきつけ、1991年に内戦が終結して以降の、「不安定な平和」を揺るがすかもしれない。

 シリアが破綻国家と化せば、アルカイダ・テロリストがここで勢力を蓄えるだろう。アルカイダアイマン・ザワヒリは「シリアのライオン」たちを称賛し、ジハードを呼びかけている。

 反体制派が追い込まれても、彼らがテロリストに支援を求め、より酷いテロが起こる可能性もある。

 アサド政権崩壊で直ちに破綻国家になるわけではないが、そうした事態に陥るのを避けるために、また仮に破綻国家に転落しても、被害を最小限に抑え込むために、今からポスト・アサドを考えなくてはならない。アサドが生き延びる分、シリアは国家破綻ヘと近づく。この意味で、彼を早い段階で退陣させることはアメリカの利益になる。

 イランやロシアなど、アサド体制に友好的な諸国に対して圧力をかける国際

的連帯「シリアの友人」が組織された。だがより重要なのは、シリアの反体制派集団とのコミュニケーションを図るために、トルコ、ヨルダン、サウジ、欧米諸国を含む小規模な「接触グループ」を立ち上げること。これによりポストアサド政権のために反体制派の連帯を組織することがポイント。

 既に事態は悪化しており、シリアの反体制派がすでに武装している以上、支援をして最小限の被害で済ませることを考えるべき。社会の軍事化が暴力と社会の過激化ヘとつながっていかないように状況を管理していくことを考えるべきだ。

 さらに、国際的連帯(「シリアの友人」)に参加した有志国は、反体制派集団の指導者たちに、体制移行に向けた暫定統治システムを準備し、内部抗争の火種を事前に摘み取るための交渉を試みるように直ちに促すべき。新政府の枠組みが準備されていれば、その機会が訪れたときに各国の外交官たちは迅速な行動がとれる。

 なるほどなるほど。シリアの友人という米欧に好ましい枠組みができている以上、ロシア・シリアは排除されることになりますが、それはやむをえないことなのでしょうか?そうすることで却って事態を不安定化させるリスクはないのでしょうか?この地域ではそうしないとより別のリスクが大きくなるということなんでしょうかね?まあ外交的ベスト・正解は反体制派の組織化とネクスト政権への速やかな権力以上&安定化ということですね。少数のアラウィ派が政権から転落して多数はのスンニ派政権になるんでしょうか?どういう枠組みがベストなんでしょうか?そこら辺は今でも曖昧なんですかね?政権に近かったからこそ安心できた少数派のアラウィ派が単なる一少数派に転落して大丈夫なんでしょうかね?ココらへんはイラクバース党に近い図式なんですが…。シリアの少数派政権の転覆というのがイラクの情勢とリンクしそうですねぇ。