てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

フォーリン・アフェアーズ・リポート 2012/7

フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年7月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

¥2,200 Amazon.co.jp

<特集 ユーロ危機とドイツの決断>

ユーロ崩壊というドイツのオプション

/セバスチャン・マラビー

 ユーロの崩壊は独が選択したときおこる。どちらを選ぶのも独の自由。ユーロの歴史は92年のハッキリとした成功からハッキリとした失敗に向かっている。

ヨーロッパ経済の近未来 ― 債務危機と銀行危機の悪循環

/ウィレム・ブイター

 可もなく不可もなく。ユーロ圏内でのインフレを2%内に抑えるために独やフィンランドなどが高いインフレを引き受けざるをえないだろう。

世界はドイツの決断を待っている ― 1930年代の教訓

/マーク・ブリス マティアス・マタイス

 ブラウン大教授とアメリカン大准教授、それぞれ国際政治経済の専攻ですね。11/11のFAでの寄稿で述べたように、独がユーロ安定化のために経済覇権国としての役割を果たすべき。それなくしてヨーロッパの危機克服はない。チャールズ・キンドルバーガーが言うように経済覇権国は市場の安定化のためにより多くのコストを払うべき。

 キンドルバーガーがそのような主張をしていたのは知りませんでしたね。もはや覇権国・大国がより多くの責務を模索して担っていくというのが理論として根付いていくのでしょうか?相互依存論とも関わってくる話なので、今後これが主流になりそうですなぁ(もうなってるか?)。ふたりとも国際政治経済学の人ですし、この分野ではもう常識なんですかね、やはり。

 ドイツが反インフレ路線を捨てリーダーシップを引き受けるかどうか、二つのハードルがある。キンドルバーガーが言うように1930年代の間違いを繰り返せば、ECBが英の役割を独が米の役回りを演じることになるかもしれない。無論EUだけでなくグローバル経済レベルの問題になる。

不確実性に覆われたヨーロッパ経済 /マイケル・スペンス

 特になし

<特集 TPPとアジアシフトの行方>

何がTPPの進展を阻んでいるのか ―条約案の情報公開か、交渉の決裂か

/バーナード・ゴードン

 ドーハ・ラウンドの停滞→二国間FTAsへ→TPPという流れ。結局二国間が与えるポテンシャルはそれほど大きくない。

 貿易は外国企業を利し、雇用を奪うというマイナスイメージが米国内に強い。グローバル化が進めば進むほど国内にそういった声が強くなるのは避けられない現象でしょうな、多国籍企業が出てきて格差が広がれば広がるほど尚更。不透明な交渉過程への懸念に、国内団体への反発を封じ込めるかどうか。

 個人的に貿易の自由化というのはいいものだとは思いますが、政治学者であるが故か単純な肯定意見のように思えます。そりゃ障壁なくなって域内深化が出来ればいいんでしょうけど、EUのような政治機構があるわけでもない、政治的統一性がないこの地域において、経済的な一体化のみが進むのは果たして本当にいいことなのでしょうか?EUならまだ今のようにこの問題を何とかしようというEUという政治的努力が働くわけですけど、ここにおいてそんなものは働きようがないでしょうからねぇ…。そして経済的な責任が米日に更に重くなっていくことになりますが、その両国にこれまで以上に政治的負担を担うと言ったビジョンまであるのかといえば、そんなものはないでしょうからね…。そういう経済視点オンリーで政治の視点が抜け落ちているTPPにはどうもすんなり賛同できませんね。

 結局グローバル企業が得して格差が広がるという問題を更に深刻にするだけという気がしますが…。EUは一蓮托生・運命共同体の意識があるでしょうけど、米が潤って小国が国内企業壊滅・経済悪化となった時、果たしてそのような国の救済に命がけで問題に取り組む覚悟がありますかねぇ?経済だけの問題では無いという観点が必要という気がしていますね、最近。米がEUで言われる独のようにこの地域において必要以上の責任を引き受けるという姿勢がない限りTPPは無理でしょ。というかそれなくしてやるというのがもうね…。

アジアシフト、アラブの春北朝鮮とイラン― オバマ外交の功罪を検証する

/マーチン・インディク ケニス・G・リーバーサル マイケル・オハンロン

 ブルッキングス研究所の人たちの論説ですが、元政権スタッフで外交担当していた人達であって、かなり見方が甘いという気がします。オバマ外交はここまで合格点だと。そりゃこんな見方してりゃあそうなるわなという感じですかね…。既存外交、現状の説明だけで今後のキーとか地域の基本ロジックとか浅い気がしますね…。オバマは前任のブッシュとは関係ないとはいえ、ブッシュ外交・戦争で同盟国は外交的損失を受けた。それについてのフォローがないのに、同盟国すっ飛ばしてイランとの関係改善とか、中国とのG2とかどういう神経してるんですかね…。自分達が同盟国を守ってやってるというメンタリティ故でしょうか。守ってやってるんだからつべこべ言うなという。まあイスラエルは対イラン強行なんでまたチョット話は違うんでしょうけどね。

 「望まれない駐留はせず、撤退を要請されれば立ち去る」というアメリカのやり方の再確立とありますが、日本が要請しても撤退するんですかね?09年のイスラエル訪問なきカイロ演説とかそういう配慮がないのは民主党外交のテンプレなんでしょうか、もはや。パレスチナグアンタナモも進まず選挙前にイスラエルよりに回帰すると双方の信頼を失うという結果に終わっただけだった。

 まあ結局はアメリカのリーダーシップ維持といういつもの目的に回帰してしまって世界システムの安定とかそういうのは米人の念頭にあまりないということでしょうか。

<特集 起業と雇用と経済成長>

起業、インキュベーター、 ベンチャーキャピタルのメカニズム

/スティーブン・J・マルコビッチ

起業型経済の構築を

/カール・シュラム

 二本とも起業のためにあるべき社会とは~的な話でした。特に目新しものもなかったので書くことはありません。

なぜイランは核兵器を保有すべきか― 核の均衡と戦略環境の安定

/ケネス・N・ウォルツ

 イランは不合理なプレーヤーではない。核保有国がテロに兵器を供給するという無謀な行動に出た例はない。核の監視は厳しくなっており、米はどこで生産されたか知ることが出来る。核保有の結果その兵器庫を攻撃されるリスク故に保有国はより行動に慎重になる。中国・インド・パキスタン、全ての国でそうなった。イランもそこから外れるとは考えにくい。イスラエル核武装が中東での核拡散を引き起こさなかったのに、イランの核武装がそれを引き起こすとは考えにくい。印パの事例のようにむしろイランの核武装によって関係が安定するだろうと。

 中→印→パと、核拡散していったように、イスラエル→イランという図式であり、イランの核武装でまた核武装を志向する国が将来的に出てくるということになってもおかしくないと思うんですが、それはどうなんでしょうか?他にイランと死活的な対立をしているという国がないので、ウチも核武装する!って感じの国が見当たらないのは確かなんですけどね

マフィア国家の台頭 ― 融合する政府と犯罪組織

/モイセス・ナイーム

 犯罪組織が政府に入り込む「マフィア国家」の台頭。裏の存在ではなく、堂々と表にいる。テレビ局・大新聞の支配者だったりする。

 アブハジア南オセチアの分離独立でグルジアとロシアが衝突したのはそこに犯罪組織とロシア政府との繋がりがあったのもひとつの要因。

 ICPOなど国際的な協力ができないのは、マフィア国家の警察などのトップは犯罪組織との繋がりがあり、そこから情報が漏洩してしまうので。迂闊に情報提供などで協力ができない。

労働組合の衰退と中間層の未来

/ブルース・ウエスタン ジェーク・ローゼンフィールド

 社会学者は珍しいですね。衰退する労働組合・運動の話。これまで批判的に語られる組合だが、リチャード・フリーマンとジェームズ・マンコフいわく、労働組合が強かった1980年にそれによって押し下げられたGDPは0.25~0.4%程度、その代償としてもたらされた社会的安定性を軽視すべきでない。格差と不平等は今や政治学用語の一つ。ウォール・ストリート占拠運動でも組織化なくして成功はありえない。このような人々を労組は吸収すべき。労組という既存の組織ではなく新しい組織のほうがいいという気がしますけどね。またその成功のためには労組が進んで労働生産性を高める、企業収益を高める有意義な物にならない限り発言力を持たないだろうというのも同感ですね。

中国には法律はあっても、法の支配がない

/陳光誠(チェン・グアンチョン)

 紙の上では法律があっても、当局はそれを守らない。まあ、例のあれですね。中国には近代法としての法律がない、十分に機能していないという事例ですね。

イスラムのモデル国家は トルコかイランか

/ムスタファ・アキョル

 チュニジア、エジプトの選挙で勝利したイスラム系政党の指導者たちがアピールしたのはイラン流の神権政治ではなく、トルコモデル。そしてハマスも同様の路線をアピールした。

 トルコはシリア国民評議会自由シリア軍を国内に受け入れている。イラクでもイランのシーア派に対して、トルコはスンニ派とクルド人の擁護者の役目を果たしている。2011年9月にNATOミサイル防衛システム(早期警戒レーダー)のトルコ配備でイラン=トルコ間の緊張は高まった。トルコ政府はシステムの導入はイランによる攻撃を想定したものではないと主張したが、テヘランは12月にアメリカやイスラエルから攻撃を受ければ、イランはトルコを攻撃すると表明した。

 欧米の専門家の一部は、トルコでイスラム系の公正発展党(AKP)が権力を担うようになって以降、「トルコは欧米を離れて東の世界へと回帰していく」と考えるようになったが、トルコ外交はそんな単純なものではない。

 2010年5月、トルコがブラジルとともに、イランと核燃料スワップ合意をまとめると、欧米の懸念はピークに達したがそれは正確な見方ではない。穏健派と過激派の狭間をトルコは選んでいる。ムバラクチュニジアのベンアリのような指導者を「穏健で世俗的」と欧米は評価するが、現地の民衆にしてみれば、彼らは正統性(民衆の支持)を欠く残忍な独裁者にすぎない。選挙で選ばれたわけでもない「欧米の手先」でありイスラム過激派は「純粋で高潔だ」となるためそのような声を封じ込める必要性がある故ののトルコの第三の道外交。

 イスラム主義政党は、金利のないイスラム経済の導入を求めたが、AKPはグ

ローバル経済に参加する道を選び、リベラルな経済政策をとった。政府は貿易と投資をさまたげるような行動を避け、近隣国との「ゼロプロブレム外交」を目指した。

 AKP以前のトルコ政府は国内のクルド人イラククルド人と手を組んで、クルド国家を立ち上げるシナリオをこの上ない国家的脅威とみなしてきた。だがAKPはイラククルディスタンと協力して新経済ゾーンをつくる関与政策に転換(イラク戦争以後、むしろクルドを通じてイラクすらコントロールできるくらいの感じになっているのでしょうか?)。この10年にわたって、数多くのトルコ企業がイラク・クルデイスタンに進出し、AKP政権もこの地域のクルド人との関係改善に努めた。例えば、2011年にはエルドアン首相は、イラククルディスタンの中心都市であるアルビルにトルコが建設した国際空港と領事館のオープニングに列席している。

 アンカラがエジプト、ガザ、チュニジアの現地情勢を気にするのは、現地の民衆が宗教的で、トルコとの歴史的な絆を持っているから。それでも、AKPは可能な限り現実的であろうと努め、湾岸、レバノン、シリア、イラクでの宗派対立のどちらか一方に加担するのを避けている。

 トルコ外交の課題は、イランと欧米の仲介に成功していないこと。国内のシーア派の支持を得られていないこと。今でも彼らはアンカラでなくテヘランを向いている。シーア派のマリキ首相はイラクのトルコの干渉を批判している(スンニ・シーアの仲介もまたというところだろう)。

 エルドアンいわく、世俗国家とはあらゆる宗教・宗派と等距離であること。イランよりもトルコのほうが中東諸国に魅力に移っていることはグッドニュースと。

<特集 Campaign 2012>

米経済を左右する 連邦準備制度理事会のパワー

/シルベスター・エイジィフィンガー

エディン・ムジャジク

大統領選挙と消費者信頼感指数

/米外交問題評議会・地政経済学センター

 二つとも特に触れることはないです。