中国脅威論はあってもロシア脅威論がない理由
―という話を以前したので、穴埋めに取り上げてみました。
中国脅威論というのは日本がしっかり対処すれば勝てる、なんとかなるから語るのに都合がいい。危機を煽りかつ最終的な着地点・オチがしっかりしているから盛り上がりやすい。しかし、ロシア脅威論が盛り上がらないのは勝てそうにないから―というのを見て思ったこと。
フォーリン・アフェアーズで太平洋重視のピボット戦略は、中国の反発を招くから改めるべきだっていうのがありました。が、それが実はロシアへの警戒心を下げた=ウクライナで強硬に出ても大丈夫!ってのと繋がっているとは考えていませんでした。中東から一歩下がって中国警戒第一にシフトしたのですから、当然そこには米のロシアへの警戒・問題が起こるということをあんまり念頭に置いてませんからね。
ちゃんと理解されているかどうかわかりませんが、ウクライナへのロシアの攻勢というのはそこまで問題というわけではないんですよ。EUの勢力圏にしっかり組み込まれているポーランドとか、そういうとこにちょっかい出したとかならともかく、ウクライナというのはEUもここに手を出したら戦争だぞ、ウクライナはレッドラインだぞ!っていうところじゃありませんでしたからね。中間・緩衝地帯でしたから。
で、そういう問題が起こって冷戦再び!みたいなことが言われて、ロシアの脅威が語られるわけですが、米欧にとって重要な問題であっても、まあ日本にとって、あんまり脅威対象ではないからですよね、ロシアは。
ロシア脅威論が何故無いか―これは、ロシアはユーラシア連邦を狙ってウクライナとかまだEU圏内に入ってない欧州とロシアの間にあるどっちつかずの国々に関心があるわけで。極東に死活的利益があるとは考えていないですからね。中国は尖閣や南シナ海周辺・台湾に死活的利益があると考えているわけで、日本の危機に直結するリスクが高いですからね。
今のロシアは冷戦時代の世界的拡大を図っていた時とは違い、東欧・中東周辺に限定されていますよね。世界中どこでも食指を伸ばしてるわけではないので、今やアフリカに手を伸ばしている中国のほうが脅威と映っているわけですね。それに加え極東のもう一つの大国日本とホットウォーをしかねないので、国際秩序をグチャグチャにしかねない懸念が大きいわけですね、中国は。
経済的な台頭もあり、中国の意向で現行金融秩序とかにも大きな影響力を与えかねない!っていう経済的な影響力もそこに加わってくるでしょう。まあ一朝一夕に中国が今の現行金融システムを自分たちに都合のいいようなものに出来る段階ではないんですけどね。米欧が停滞している経済・金融不安があるからそういう話が出てくるってだけって感じですが、中国の成長がもしかしたら?ということが考えだされている事も見逃せないのでしょうね。
それと、ロシアの場合は、近代国際社会のルールをちゃんと踏まえた上で外交を行っているというのが大きいですね。意思疎通がしっかりできる。相手の主義主張に賛同できなくとも言ってることのロジックは理解できますから。中国の場合ちょっと大丈夫かな?っていうところがありますからね。