てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

米中冷戦と日本③

米中冷戦と日本 激化するインテリジェンス戦争の内幕/PHP研究所

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あ~やっと終わりました。つうか、こんなに書く必要があったのか?3つで終わるかと思っていましたがダメでした。4つなってます。読む人いるのかって話ですけどね、まあ一応。

 p162~164、米紙などのリークで、CIAはビンラディン殺害作戦のような、米軍特殊部隊と共同の秘密作戦の展開を検討しているらしい。イラクに潜入しているアルカイダ系組織のテロリストは推定八〇〇~一〇〇〇人、このうち中核要員は約二〇〇人とみられている。

 二〇一四年を期に撤兵して、アフガニスタンの治安責任をアフガン人部隊に委譲し、米国を含む北大西洋条約機構NATO)諸国は段階的に部隊を引き揚げる予定。対テロ戦争・「見えない戦争」に関して秘密工作という形で、特殊部隊とCIAが中心となっていく方針。

 対テロ戦争は、前政権が特殊部隊を派遣したアブサヤフ掃討作戦を展開したフィリピン、麻薬組織・左翼ゲリラに手を焼くコロンビアなども含めて六〇カ国。オバマ政権でそれが一五カ国増加。オバマ政権は、アフガニスタンに隣接するパキスタン北西部の連邦直轄部族地域(FATA)に対する無人機による爆撃をいっそう拡大。さらに中央アジアタジキスタンなどから、中東のイエメン、サウジアラビアなど、そしてアフリカのソマリアスーダンアルジェリア、モロッコに至る広範な地域で、秘密工作を展開している。

 主体は、米軍特殊部隊(SEALs)と米中央情報局(CIA)。ペトレアス米中央軍司令官(後にCIA長官)は二〇一〇年九月三十日に署名した「統合非通常戦争機動部隊指令」で、特殊部隊に対して、中央アジア、中東、アフリカの各地域で情報活動を行う権限を付与する、と指示。

 他方、CIAはすでに軍事作戦を実行している。パキスタンやイエメンで、無人機プレデタ―をテロ組織の拠点に飛ばし、ヘルファイアー空対地ミサイルを発射して、テロ容疑者らを殺害する作戦を展開している。

 特殊部隊が情報工作に、そして情報機関が軍事の分野へと互いの境界を越えて乗り出した結果、軍と情報機関の間の垣根が曖昧化。軍部は情報機関化し、CIAは準軍事的組織に変わろうとしている

 こういう境界線が曖昧なものこそ統括組織、新しい部署を上に作ってキッチリ今何が行われているのかを押さえとくべきだと思うのですけどね。無論そういう統合が進んでいますから掌握していることはしているんでしょうけど、それぞれがバラバラに実行する危険性をどうしても感じますね…。軍産複合体なんか目じゃないくらい、軍と情報機関が融合していくのは危険だと思いますが…。

 いずれにせよ見えない戦争に対して、力で向かって行くことはかなり厳しい傾向ですよね。そうするなということではなくて、危険なものに対して力で対処する一方で、テロを生み出す背景を力以外のもので変えていかないといけないですからね。軍事は必要不可欠ですが、その一方だけが目立ってしまうと、米つまり現行の国際秩序の未来はかなり暗いと言わざるをえないでしょうね。米主導の現行国際体制を代えたいと願うテロリストは今の状況で行けば、財政赤字でドルの支配が成立しなくなりますから、彼らの思う壺ですね

 p165、イラク駐留米軍部隊が撤退を完了する直前、二〇〇七年にイラク中部カルバラで米兵五人の殺害に関与した疑いで拘束されていたシーア派民兵組織ヒズボラ司令官、アリ・ムーサ・ダクドゥク容疑者の身柄が、米軍からイラク側にと引き渡された。ダクドゥク容疑者はイラン革命防衛隊の指示を受けてイラク国内で対米軍テロエ作を指揮していた。情報が漏れて「インテリジェンス活動を損なう恐れ」があるとして、米側はダクドゥク容疑者訴追に必要な証拠をイラク側に提出していなかった。このため、二〇一一年末にイラク地位協定期限切れになり、同容疑者を拘束する権限を失ったためイランに引き渡された。

 マリキ首相自身が一九八〇年代、イラン系組織の工作員だったという情報がある。CIAに情報源を持つ、『ワシントン・ポスト』紙コラムニスト、デービッド・イグナシアス氏いわく、一九八五年のTWA機乗っ取り事件で、パイロットの背後に立つ人物がマリキ氏に酷似しているという。

 人造モザイク国家においてマリキ首相が党派性をむき出しにし始めた、イランに媚び始めたことを、実は~的な形で書いていますけど、これはむしろイラク戦争後にはこういうことが起こるとほぼ予測されていた当然のことに思えますが…。米寄りの情報源ばっかでそういう見方ができていない可能性が筆者にはあるのかも?

 p167、特殊部隊員の兵員総数はこのところ、毎年三~五%増加しており、全部で六万人近くに上っている。予算額は、二〇〇一会計年度の二一億ドルから、十年後の二〇一一会計年度は九八億ドルと四・七倍増を記録した。

 p169、二〇一〇年秋以来、オバマ政権無人偵察機によるパキスタン北西部攻撃を強化していたが、これにはビンラディンに対するプレッシヤーをかけるという意味合いもあった。大統領選で、令状なしにテロ容疑者を無期限で拘束してきたグアンタナモ収容所の閉鎖を公約にしていたが、あっさり反古。それもあってビンラディン殺害という成果を欲しがった流れと。

 p172、オバマ政権は二〇一〇年の一年間で無人偵察機一一八回も出撃させ、推定五九一~九八五人もの死者を出した。二〇〇四~二〇一一年の間、パキスタンにおける無人機攻撃による死者数は、誤爆による一般市民の死者も含めて、推定一六九五~二六五五人にも達した。

 パキスタンパキスタンに駐在しているとされる三三五人のCIAキャリア秘密工作員・契約スパイ。特殊部隊員の撤退を求めている。この数は全体の二五~四〇%といわれ、この推定が正しいとすれば、米国は合計で、実に一〇〇〇人前後にも上る工作員や特殊部隊員をパキスタンに配備していたことになる。

 ビンラディン殺害を巡るパキスタンとのゴタゴタは周知のとおりですね。パキスタンの内部、政府にまでビンラディンとのつながりがあった人物がいたと言われるくらいですからね。

 p176、ソマリアの首都モガディシオにあるアデンアツデ国際空港の裏手に二〇一一年春CIAの秘密基地が完成。基地内には十数棟の建物があり、米国が支援するソマリア暫定政府軍の兵士に対して対テロエ作訓練を行っている。またCIAの資金で運営されているソマリア情報機関、国家安全保障局の地下に刑務所が設置されている。この刑務所にケニアなどからも移送されたアルカイダ系テロ組織、アル・シャバーブ所属のテロ容疑者らが収容されている。

 ソマリアにおける米国の対テロエ作の主管官庁はCIAで、首都モガディシオに駐在するCIA工作員は約三〇人。CIAは主としてソマリア国家安全保障局要員の訓練に従事している。それに加えて米軍統合特殊部隊(JSOC)がアル・シャバーブのアジトなどに対する無人偵察機攻撃を行っている。アル・シャバーブは首都に本拠を置いていたが、幹部数人を失い首都から南部へ撤退。

 また、米非営利企業バンクロフト・グローバル・デイベロップメントという会社が、ウガンダ人やブルンデイ人から成るアフリカ連合平和維持活動(PKO)部隊に対して、軍事訓練を行っている。計九〇〇〇人のPKO費用は米国務省ウガンダ、ブルンデイ両国に支払い、両国がバンクロフト社に支払う形式となっている。米はそう見えないようにあの手この手を使っているが、そもそも現ソマリア暫定政府そのものが米国がつくった愧儡政権。

 モガディシオのCIA基地は別名「グアンタナモ」と呼ばれている。まさにキューバグアンタナモ基地にあるテロ容疑者収容施設と同じ。「グアンタナモ閉鎖」を公約しながら履行できないオバマ大統領は、新テロ戦略に従って、こうした基地を増やそうとしている。 

 p177~83、オバマ政権は発足以来、対テロ戦争の主戦場をアフガニスタンと位置付けた。ゲリラ戦闘の専門家の二人―アフガニスタン駐留米軍のマクリスタル司令官と後任のペトレアス司令官(後にCIA長官)の戦略に従いアフガン駐留部隊を三万人増派。

 しかし、米国家情報会議(NIC)がまとめた国家情報評価(NIE)文書では、ゲリラ戦闘より特殊部隊の作戦を評価。アフガン駐留部隊の削減も特殊部隊重視の新戦略故。

 ビンラディンを追い詰めた裏には、アフガン・パキスタン国境の「連邦直轄部族地域(FATA)」にアジトを置く国際テロ組織アルカイダとその支援組織に対するUAV攻撃の成功があった。米紙によると、こうした攻撃で殺害した過激派は、二〇〇一年以降で約二〇〇〇人。オバマ政権がUAV攻撃を強化した結果、過去一年半でアルカイダ指導部三〇人のうち二〇人を殺害した。

 UAVによる攻撃は、アフガン、パキスタンにとどまらず、二〇一一年四月にはリビアカダフィ大佐派の部隊、さらに「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」幹部で米国籍を持つアンワル・アル・アウラキ容疑者を殺害。

 オバマ政権対テロ戦争は、二〇〇九年十一月に、イスラム教徒の軍医がテキサス州フォートフッド陸軍基地で銃乱射事件を起こし、四二人を死傷させた事件、クリスマスの日にノースウエスト機に爆弾を仕掛けようとして不発に終わったナイジェリア人の事件を受けて、さらに拡大した。

 とくに、両事件の犯人とイエメンのテロ組織「アラビア半島のアルカイダ」の関連が指摘されるに至って、オバマ政権は強硬策に出た。フォートフッド基地乱射事件の犯人とアウラキ師はeメールのやり取りをしていたほか、クリスマス・テロ未遂事件の犯人が「アウラキ師はテロ計画に参加していた」、と供述したとの情報もあった。

 両事件の犯人との関係が指摘され、オバマ大統領からCIAに暗殺指令が出てアンワル・アル・アウラキ師殺害された。「CIAによる暗殺」は冷戦時代の秘密工作であったことで、CIAは外国首脳の暗殺を手がけた時代もあったが、フォード政権時代に禁止、レーガン大統領がその点を明文化した。CIAは本来、文民から成る情報機関であり、司法機関でもなかったはず。

 それまでも、アウラキ師が潜伏するイエメンでの対テロ戦争の行方が注目されていた。米国籍を持つアウラキ師殺害は、裁判なしで「死刑宣告」を下したのと同じことで法的に問題がある。全米公民権連盟(ACLU)は憲法違反だとして、政府に対し殺害の停止を求める訴えを起こしたが、却下された。

 こうしたオバマ政権の強硬策は、CIAおよび統合特殊作戦司令部(JSOC)が実行。コーディネーターのキーマンはジョン・ブレナン大統領補佐官(テロ対策担当)。彼は「ハンマーではなくメスで」アルカイダを追及すると明言している。

 ニューヨーク・タイムズによると、十年前の米国のUAV保有数はわずか五〇機だったが、今では約七〇〇〇機。しかし、UAVは一機あたりの価格が安い。最高性能を誇るF22戦闘機が約一億五〇〇〇万ドルなのに対して、空対地ヘルファイアー・ミサイルを搭載するプレデターやMQ19リーパーなどの最も価格の高いUAVでも一〇〇〇万ドル程度。国防総省の次期会計年度UAV調達予算は五〇億ドル。民間調査機関の推定だと、向こう十年間のUAV調達費は九四〇億ドルとも予測されている。

 いまや、戦闘機や爆撃機のパイロット訓練を受けている兵員より、無人機パイロット訓練中の兵員のほうが多いという状況。空母に搭載する次期艦載機にも無人機が登場する。

 高価なハイテク兵器ではあるが、有人の戦闘機。爆撃機に比べると、けた違いに安価で、オバマ政権財政赤字削減策に貢献できるという計算だろう。

 同紙が紹介しているUAVは、プレデターやリーパー、ミサイルなどの攻撃兵器を搭載しないグローバル・ホーク、空母搭載用の海軍初のUAV、X147Bなど一〇種類。グローバルホークは、福島第一原発上空から事故状況を示す写真を撮影したことでも知られている。

 なかでも最も注目すべきは、ハチドリ形の超小型UAV。機体の長さ約一〇センチ、翼長約一六センチ、重さ約二〇グラムながらビデオカメラ搭載。まさにハチドリのように羽ばたきをして時速約一八キロの速度で飛ぶ。国防高等研究計画局(DARPA)の発注で、カリフォルニア州のエアロバイロメント社が二〇一一年二月、試作機の製作に成功したと発表した。さらに国防総省は、二〇三〇年までにトンボ形のスパイ機を開発する計画。ブルッキングス研究所はUAVはかつて巡航ミサイルに似た武器と言われていたが、「いまやスマートフォンに近い」と指摘している。

 巡航ミサイルならずともミサイルは威力が大きすぎて容易には使えない。核のように威力がありすぎる兵器は使えない時代にあって、今後このような小回りの聞く精密機械兵器、使い勝手のいいスマート兵器がどんどん重要になるんでしょうね。当然、無人爆撃機というのが憎まれる象徴にもなるでしょうし、対米イメージを悪くするのも間違いないですしね。パイロットが無傷、人的損失を出さないというメリットを敵サイドにも適用されるようにならないと米の本当の優位は生まれないでしょうけどね

 しかし、UAV技術の世界への拡散は、多々問題がある。イスラエルが中国やロシアヘ同国独自の技術の輸出を図り、米国が反対した経緯がある。また中国はすでに「翼竜」「翔竜」と名付けたUAVの輸出を計画している。

 日本は二〇一〇年、グローバルホークを三機導入する方向で検したが、世界の主要国は高性能UAV開発に向け、すでに大きく動き出している。

 p191、ウィリアム・リン国防副長官(当時)が二〇一〇年明らかにしたところによると、米国に対するサイバー攻撃はこの十年間で大幅に増加、一○○以上の外国情報機関が米国のネットワークに対する侵入を試みている。サイバー攻撃能力を持つ国は中国やロシアだけでなく、アルカイダハマスヒズボラなど米国が指定する「テロ組織」までもが、米国に対するサイバー攻撃の意図を明らかにしている。

 これを真珠湾攻撃になぞらえて、「サイバー真珠湾攻撃」として警戒する専門家が多い。まさに、中国はそのような形でサイバーによる先制攻撃を狙っている、との見方も強い。毎回思うんですけど、いい加減パールハーバー言うの辞めさせて欲しいですね、日本の政府・外交筋でしっかり抗議しないと、まあ秘境呼ばわりの意図がなく、いきなり予想もしなかった事態という意味での言葉ならあれですけどね、未だに騙し討とか平気でいいますからね…

 オバマ政権は二〇一〇年五月、「国際サイバー空間戦略」を発表。自由・安全を求めた。規制を続ける諸国に対して圧力をかける狙いもあるが、インターネットを使う以上、情報が国境をこえて容易に入ってくるという自体は変わらない。インターネットという技術を創りだした米が、情報閉鎖を維持しようとする体制に穴を開けるのも容易いか。

 p202、米陸軍のブラッドリー・マニング上等兵がウィキリークスに機密文書を漏洩。これはベトナム戦争秘密文書「ベンタゴン・ペーパーズ」をニューヨーク・タイムズの記者に渡した事件としばしば比較される。

 しかし、その量はウィキリークスが入手した米政府機密文書は、イラク戦争三九万一八三二件、アフガニスタン戦争七万六六〇七件、国務省の外交文書二五万一二八七件と、比較にならないほど膨大。

 米国防総省の中枢にいたハーバード大学出身のエリート、エルズバーグ博士は、ベトナム戦争に幻滅し、ベトナム戦争の歴史と戦略を記した「トップシークレット」の文書を漏洩した。が、当時はインターネットなどなかった。

 フラッシュメモリーにコピーし、音楽ソフトを装って簡単に持ち出した。英紙『デーリー・メール』によると、マニング上等兵が入手した外交文書のメモリー量は一・六ギガバイトと言われ、フラッシュメモリー一本で十分。マニング上等兵は逮捕前、米軍のサーバーも、ログインも、安全管理も、防諜もみんな弱いと話していたという。

 p206・207、ウィキリークスが入手した文書の中に、二〇一〇年二月二十二日付で、在ソウル米大使館から国務省に送られた電文があった。それによると、中国政府高官が、「金正日総書記の死後、中国は北朝鮮の崩壊を止められない」「中国は、韓国に支配され、米国との関係を維持した統一朝鮮が反中国でなければ、違和感を持たない」などと発言したとされる。

 しかし、中国は「緩衝地帯」としての北朝鮮の存続を必要としており、こうした中国政府高官の発言は信用できない。中国側は、意図的にこうした情報を流し、米韓両国の出方を探るとともに、相手側を攪乱するのが狙いだろう。

 ウィキリークスが入手した日本関係の国務省公電は七〇〇〇通近くに上ったが、その内容が公になったのは二〇一一年五月のこと。『朝日新聞』がウィキリークス側と交渉して入手し、以下のような電文内容を順次報道した。

・在沖縄米海兵隊のグアム移転に関して、費用全体を膨らませることにより、日本の負担比率を(見掛け上)減らす

・縦割り主義でリスクを避けたがる日本官僚組織が、危機に対する脆弱性を高めている

・外務省高官は、北朝鮮が日本人拉致被害者の一部を殺害、一部は生存、と考えている

・外務省高官は、鳩山政権の官僚統制、米国に挑む大胆な外交政策を「愚か」と表現

・日本各地の原子力発電所のテロ対策に、米側が憂慮

・「核密約」の公開は、米国の世界戦略に影響を与えかねない、と米側が懸念

・日本の北方領土交渉は計画も指導者も欠如、と在日米大使館公電

 p226~、中国の核弾頭保有数について、米情報機関の推定では三〇〇~四〇〇発だったが、二〇一一年米国防総省の元戦略担当官フィリップ・カーバー・ジョージタウン大学教授の研究で、その一〇倍近い約三〇〇〇発との結論が出され、話題になった。

 共和党が多数を握る下院では、二〇一二年、軍事委員会戦略戦力小委員会が同教授の研究を基に中国の核戦力の実態を再評価する「チームB」を設置する法案で合意した。

 対中戦略を掌握する政府専門家(チームA)を批判する民間専門家グループは「チームB」と呼ばれる。その元祖は、一九七〇年代に旧ソ連の核戦力評価を見直したチームB。

 二〇〇八年の四川大地震の際、同教授らが核兵器格納基地と見られる奇妙なトンネルが崩落した写真を見たのがきっかけで研究に乗り出した。中国の核基地は全部で約八カ所あるが、いずれの基地も地下トンネルが張りめぐらされている。

 中国語ができる学生らを使って、参考書籍や戦略教本、インターネット情報などを分析した。とくに、中国人民解放軍戦略核ミサイル部隊「第2砲兵部隊」のマニュアルを入手して以後、研究が大きく進んだ。

 これら資料を基に、トンネルの全長をのべ四八○○キロ以上と推定、トンネル内に設置されたミサイル移動装置、核弾頭貯蔵庫などから、核弾頭総数を三〇〇〇発と割り出した。

 ゲーツ米国防長官(当時)は、カーバー教授らの研究に関して説明を受けた後、二〇一一年一月北京の第2砲兵部隊司令部を視察した。米国防総省の年次中国軍事力報告書は二〇一一年に初めて、第2砲兵部隊のトンネル建設に言及した。

 この研究に対して、「憂慮する科学者連合」などリベラル系団体は「調査方法に問題がある」と批判的。だが、核拡散防止条約(NPT)で認定された五核保有国のうち、中国の核兵器情報公開が最も遅れている。米露の核軍縮は今も進行中だが、中国は一方的に核軍備を増強してきた。

 中国は、一つの弾道ミサイルに複数の核弾頭を装備し、それぞれ別個の目標を攻撃できる弾道ミサイル複数目標弾頭(MIRV)も保有している。米国に着弾可能な核ミサイル弾頭は一〇〇発を優に超える。すでに相当の核能力を保有しているのだ。しかも米露間で進んだ相互の戦略の理解と透明性が現在の米中関係ではまったく見られない。