てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

フォーリン・アフェアーズ・リポート 2012/1

フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年1月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

漂流する先進民主国家― なぜ日米欧は危機と問題に対応できなくなったか

/チャールズ・クプチャン

 クプチャンとブレジンスキーの論文はありきたりですね(「欧米世界」をユーラシア、日韓へ拡大し、日中和解を模索せよ―というのをブレジンスキーはこの号に書いてますが、まあ、いつものって感じで特に取り上げるような目新しい物がありません。タイトルそのまんまですもん)。

 この号じゃありませんでしたけど、民主主義が~と語るフクヤマの論文も民主主義というものを的確に捉えられていない、ポイント抑えられていない気がします。そういう話はだれだって言ってるし、知ってるよ―レベルで留まっているって感じがしますね。格差が開いて、民主主義の担い手である中産階級が減って、システムの危機に陥っている。対照的に中国のような非民主主義国が台頭している。全体主義ファシズムの時代のような危機に似ている。さあどうするか!?ってところですね。

 どうでもいいですけど、クプチャンってこのフォーリンアフェアーズ出してるCFRってところのフェローなんですね。なんでそこそこよく名前聞くんだろうか?と思ったらここの人だからですか、ヨーロッパ担当ということで、まあなんというかご察しですね。米欧の専門家って世界的な視野に欠けていることがよくある、?って人多いですからね。

 で、ジョージ・ケナン特集なんですけど、論文に触れることは特にありませんが、相手の主張・意図を正確に理解してそれに対応する重要性を理解しているところを見ると、本当に優秀だった人なんだな~と思いますね。ソ連の挑戦も民主主義故の現状制度・システムへの挑戦と捉えるべきだと。それに上手く対処して自己変革をしてより高みに自分たちを成長させることこそ、答えだと。さすがですなぁ、そのとおりですね。日本の沖縄の基地感情を理解せよとか、今の人に見習って欲しいですね。

追い込まれたウクライナの危険な賭け― ロシアかEUか、それとも革命か

/ラジャン・メノン、アレクサンダー・J・モティル

 ヤヌコビッチの経済政策の失敗について言及してあります。まあ、このウクライナの政治的土壌から、政治経済を理解した有能な人物がホイホイ出てくるというのは考えにくいところ。EUとの経済協定とロシアの関税同盟どっちもいただこうという欲張り外交は面白い発想ですね。出来たら凄いですが、そりゃ無理ですよね。双陣営が中間血・緩衝地帯を作りたい、信頼醸成のメカニズムとして有効に使いたいというものがなければ無理でしょうね。既に衝突の危険性は経済政策失敗のこの時点で考えられたんですねぇ。ただ、まだ実際に衝突になるとまでは書いてない段階でした、ロシアが黙ってみているとは思えないレベルです。ウクライナがホットないま、なかなか参考になる文章かと思います。

<特集 権威主義体制と近代化は両立するか>

「競争的権威主義」国家は帝政ドイツと同じ道を歩むのか

ビスマルクの遺産と教訓 /マイケル・バーンハード

民主主義体制ではなく、ロシアからペルー、カンボジアからカメルーンにいたる国々のことを従来の権威主義体制(民主主義体制と全体主義の中間のようなモデル)を更に進めて競争的という冠を貸しています。そういう話なら別に特に目新しいものではありませんが、この競争的権威主義体制のルーツは帝政ドイツにあるという切り口がなかなか斬新で面白いと思いました。言われてみりゃそりゃそうなんですけどね、気づきませんでしたね。

 重要なポイントは、どのような社会階層が台頭してくるかよりも、エリートが権力を掌握する手綱をどれだけ緩められるかということ。

 ドイツは、権威主義的経済開発の新モデルを前提に資本主義化・近代化のみちを進んだ。「上からの革命」ですね。この体制は、国力を強化する産業を重点的に育成する一方で、政治的に野党勢力を抑圧するか、取り込む手法をとることを特徴とした。より先を行く西洋に追いつくために、ドイツ政府は軍事力の増強に不可欠な重工業を推進するとともに、ユンカーを支える農業を関税で保護した。ブルジョワ層、中産階級、労働者階級という三つの社会集団の台頭がいろいろ絡み合ってくるんですが、ドイツはまず戦争で勝てる力を手に入れなくてはならないという明確なゴール・進路がありました。そのために国内の勢力を弾圧したりして対立すれば、むしろマイナス。それよりかは時に妥協をする事こそ有効と知っていたからこそ議会によって諸勢力の調停という手法を容認したわけですね。議会の本質は民主主義よりも、異なる勢力・階級の利害調停ですからね。細かいドイツの実情は飛ばしますね、この論文にそこまで詳しく書いてあるわけでもないですし。

 非民主的政府が、民主体制を模倣しながら大衆を管理していくハードルは高い。選挙などを部分的に導入すれば、伝統的支配者や独裁的支配者は、新興の政治プレイヤーを取り込むことで、完全に権限を手放すのを回避できる。しかし、選挙や議会で望むものが得られないとなると、不満を和らげるどころか、緊張・不安定化を招いてしまう。ドイツはいつもこの問題にぶつかっていた。

 諸勢力を見事にコントロールしたビスマルクの手法の見事さは言うまでもなく、カトリック社会主義者などを攻撃、ビスマルクカトリック教徒、そして労働者の政治勢力に対抗するために、リベラル派に何度も手を差しのべたが、基本的には対立。特に、リベラル派が支持した自由貿易をめぐって大きく対立した。任期の終わりまでには、ビスマルク反ユダヤ主義を切り札として用いるようになり、リベラル派と明確に対立するようになった。ビスマルク反ユダヤ主義を利用して議会をコントロールしようとしていたという点は要チェックですね。今の中国の反日に通じる視点ですからね、そこで比較してみるのが面白いところでしょう。ユンカーや保守派と同様にビスマルクも近代性と資本主義を「権力を手に入れ、社会秩序を覆すためのユダヤの陰謀」と決めつけた―と。

 ビスマルクはセーフテイネット(安全弁)を提供すれば、権威主義体制であっても正統性を確立できることを理解し、実証した最初の人物だった。この通り、反対派・不満を一定程度組み上げてこそ、上手くコントロールできる・安定をも足らせるわけですね。ここでは「この戦術は短期的には機能したが、社会民主主義勢力の影響が拡大するという問題をあげていますが、社会民主党がドイツ最大の政党になったことをビスマルクに求める、失点としていいものでしょうか?

 ビスマルクは、議会を見下して議会政治を操作し、新たな政治勢力を抑え込み、情報や規制などを担当する独立系機関を認めることはなかった。要するに彼は、ドイツが長期的に自己統治をしていくのに必要なあらゆる制度や組織を抑え込んだ。ウェーバーもドイツには民主化する要素が乏しいと言ってますが、この点は確かにビスマルクに責任を求められることでしょう。ただ、それほど自由化・民主化して望むものが得られるかどうか、本当にそれが望ましい国家制度といえるのか?という問題が当時にあったことも見逃せないでしょうけどね。

 今の競争的権威主義体制の国が選挙を導入し、新興階級と利害を分かち合えるか?エリートがその道を選択できるか?ここには書いてませんが、新興階級も選挙で手に入れる政治権力を適切に行使し、旧エリート・支配階級弾圧に使うなどという愚を犯さないか、要するに民主主義・政党政治の政治ゲームを理解し適切に使えるかどうかに尽きるでしょうね、民主主義への移行は。まあ、なかなか面白い論文ですね。フロリダ大の政治学の人ですか。

プーチン時代の終焉か?/スティーブン・セスタノビッチ

 反プーチンの風がどうなるかが、大統領選挙のテーマ。結果はプーチンが60%を越えて一回で当選した。そんなわけで、今のウクライナ情勢はその反プーチンへのカウンターアタックという性質もあるんでしょうかね?反プーチンの流れを封じ込めるための強いリーダーでなくてはいけないという要素がありそうですね。

 三回目の大統領選挙、メドベージェフの時は米欧との対決というテーマがありましたね(最初はチェチェン、対テロリストで二回目はオルガリヒですね)。毎回何らかの対決テーマを出さないとならないのがロシア政治なんでしょうかね?敵を作らないと正当性を保てないという例のやつでしょうか。正教会の下院選挙不正批判について、正教会プーチンを見限る訳にはいかないだろうが、有力者の多くは政権から距離を置き始めている。

ドイツ社会とイスラム系移民― 社会的統合に苦悶する移民たち

/ジェームス・アンジェロス

 ドイツでのイスラム系の移民、ゲストワーカーについて。ドイツに同化されない。高度な技術を持つものはトルコへ帰る(こういうところもトルコの強みなのか?欧州での教育を受けた高い技術を持つ人々が入ってくるというのが大きく貢献していたりするのかも?)。しかしそうでない人はそういうわけにもいかない。独・英・土語に堪能な女性は頭にヒジャーブをまとうことで、ドイツ人とみなされないと違和感を訴える。ムスリムでドイツ人とか、フランス人とかそういうものが成立、根付かないといけないんでしょうが、そういう試みはどうなってるんでしょうか?

 開放的な社会が必要、10歳で職業・高等教育コースに分けるような硬直した教育制度を改めるべき。神学にイスラム神学が入るようになったのはいいこと。政治階級は社会を分断しかねない、同化しないイスラムというような愚かなレトリックに乗せられるべきではないと。

台頭するアフリカ― その経済ブームの秘密とは/エドワード・ミゲル

 台頭するアフリカEmerging Africa、時代の変化による新しい若手指導者層「チーター世代」(それ以前の反植民地闘争世代はカバ世代と)。改革開放・経済発展・民主化の成功。教育=識字率民主化という単純なデータは出ない。むしろ今の現状を把握して暴力的な政治に理解を示す傾向すらある。まあ長い時間と段階・ステップを踏まなくてはならないのでそれも当然ですね。