てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

最後は金目:石原伸晃は政治家の鑑


 しまった。野球ネタ書いていたら、書くのが間に合わなかった…(> <)。というわけで簡単に書けるネタを一つ。

 さて、皆様もよく御存知の通り、東京電力福島第1原発事故で出た汚染土の中間貯蔵施設建設をめぐる交渉で、石原伸晃氏がその経緯について「最後は金目でしょ?」と語ったとか。

 このセリフは実は交渉の本質の一部分を鋭く突いています。実際交渉を行う担当者だったり、関係者の中には、「受け入れに賛成だけども、それにはもっと多くの金額を出して欲しい。」と思っている人がいるからです。しかしそれは賛成派の意見であって、反対派の意見は「いくら積まれたって嫌なものは嫌」。反対派の意見が多ければ多いほど交渉は成立しません。

 その反対派を切り崩すために、もしくはどちらかと決めかねている中間派を切り崩すために、「当初の条件からこれだけ金額が上がった。これ以上待っていても金額は上がらない。それどころか他の候補地に持って行かれてしまい我々は損をするだけになる。」という条件を提示する必要があるわけです。賛成派はそのために交渉を入念に行い、色々な条件・事情を説明して、少しでも金額をあげようとするわけですね。もしくは代替条件をつけてもらうとか。

 そういう交渉をしていると、当然、交渉相手である政府サイドは「なんだこいつら、最終的に金がほしいだけなんじゃないか?」というふうに映る。そういうふうにうがった捉え方をする人間も出てくるわけです。

 無論、それは交渉担当だけであって、実際その後ろには反対派がいるのですから、そんなことありえないわけです。

 政治交渉とは結局、こちらの条件を釣り上げ、逆に相手の条件のハードルを下げさせるもの。相手の意見を引っ込めさせて、こちらの意見を飲ませるためのカードの切り合いですから、ある種の政治・交渉ゲームになるわけです。そのゲームにおいて、相手の本音を知っていても、それを正直に暴露することで有利になるということは殆どありえません。相手が知られないような機密情報などなら別ですけどね。

 こちらの本音だってそうですね。それを実直に、腹を割って本音を話すことで得になるというのは相手の本音を受け止めて、こちらが大幅に相手の言うことを受け入れる、譲歩をします!あなた方の条件を飲みます!という準備があるときだけですね。

 伸晃さんは何を勘違いされてしまったのか、ぶっちゃけってしまいました。多分、周辺の人はあの発言を聞いて「えっ!?」と思ったのではないでしょうか?「いやあ、それはそうなんだけどさ、なんでそれ言っちゃうの…?」と思ったはずです。それをぶっちゃけてしまうことで、誰が得をするか、交渉がスムーズに進むか否かといえば、100%交渉は難航し、説得するためのハードルは上がってしまうわけですから。

 考えられるとすれば、この問題はほぼ決まったこと。あとは最終的な金額がいくらになるかだけの話で、もうすぐ決着するから政治的な問題はもう殆ど残っていない―そんなことを言いたかったのでしょうか?実際の質問がどんなもので、どういう文脈で発せられたかわからないので想像なんですが。

 金目でしょ?という発言には、「ぐちゃぐちゃゴネやがって、こんなことは大した問題じゃない。こんなどうでもいいことでめんどくさいことさせやがって、あとは金目的の奴に金握らせればいいんだよ、金が目当てのやつがゴネてるんだろ?」という意味合いしかとれないんですよね。それともああいうセリフが出てしまうというからには、記者内でも「本来この地にこの処分場を設けるなら、まあこの金額が妥当。しかしこれは明らかに金額が通常支払われる範囲内を超えているよなぁ…。それでもまだ決着しないのか…」というコンセンサス、共通する思いがあったとしか思えないんですけどね…。実際のところはどうなんでしょうかね?

 以前、どっかで書いたと思いますが、今の自民党の人って、インナーサークル、つまり自分達が所属する人々の意見だけをもって判断する・行動する。それを正しいものとして、それ以外の意見を馬鹿なやつの戯言として切り捨ててしまう傾向があります。今回も内輪の意見、インナーサークルでの共通見解を、それが絶対的に正しいこととして、その感覚でポロっと言っちゃったということかもしれません。まあ、冷戦思想の延長で自分達が西側で、相手が東側。東側の代弁してたマスコミのバカ共の意見なんか信頼出来ないよ。ほら見ろ!俺達政治のプロの方が正しかったじゃないか!―という、まあそんな感覚ですよね。


 あれ、結構長いな(^ ^;)。まあですから、事実はどうであれ、そんな愚かな本音をさらけ出してしまった。石原伸晃さんはスゴイですね。せっかく交渉がスムーズに行きかけたところを、現地の人の感情を逆なでする。踏みにじることによって、交渉のハードルを上げてくれたのですからね。

 これによって、上がったハードルのために更に金額を積み上げるか、それともなにか特別な条件をさらに付けないといけなくなった。結果として現地の人々に中央政府から落ちるものが多くなったわけですからね。何が何でも反対だ!という反対派の人にとっては、結果は変わらないですから、心を傷つけられただけですが、賛成派・中間派にとっては施設をただ作るだけではなく、石原さんの失言のお陰で条件が良くなったのですからね。

 あれですね、きっと、石原さんは彼らのために少しでも中央から金額が多くなるように、色んな配慮がされるように失言をしてくれたんでしょうねぇ。どうやっても施設を作るのにはこの場所しかない。これを変えるのは自分には出来ない。だったら少しでも配慮がされるためにどうしたらいいか!と考え抜いた結果なのでしょう。わざわざ自分から失言することによって、問責が出されて、自身の政治生命を危うくした。今回のことで最低10年は総裁選に出馬して総理大臣なんていうことはなくなってしまったでしょうからね。自身の政治キャリアを犠牲にしても、少しでも良い条件で決まるようにと配慮をしてくれる石原さんは政治家の鑑ですねぇ。


 まあ、そんな皮肉はさておいて、政治というのはある種プロレスのような演技が求められる。悪役となって、問責を受けて大臣を辞任する代わりに法案を通すというような役割をまっとうすることが求められるわけですね。確か繊維交渉で田中通産大臣が辞任したように(うろ覚えで自信ないですが)、時に大臣となった政治家が泥をかぶって、党や内閣のために犠牲になることが必要なんですよね。政治ゲーム、交渉とはそういうものがあるのに、石原さんはそれを理解していなかったんじゃないですかね?批判を浴びた時に、なんかさっさと謝罪せずにゴネましたよね。あんま、自分の役割とか政治ゲーム・議会における交渉とかわかってないんじゃないですかね?