てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

フォーリン・アフェアーズ・リポート 2011/07&06

短いので二本まとめて

フォーリン・アフェアーズ・リポート2011年7月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

¥2,263 Amazon.co.jp

ブラックスワンの政治・経済学

―― ボラティリティを抑え込めば、世界はより先の読めない危険な状態に直面する /ナシーム・ニコラス・タレブ、マーク・ブリス

 金融危機・中東革命の予見の失敗、この2つのケースに共通することは安定を維持するということで現状が頻繁に大きく変化するボラリティを人為的に押さえつけたこと。これまでの直線型の分析を複雑系に当てはめれば分析は失敗する。これまでの経験・分析・確率では予見できないものをブラック・スワンに例えている。言いたいことは同意ですが、政治のイラク・イランなどの予想外の結末などはちょっと違う気がしますね…。米の外交政策の失敗=無知・無理解を偶発性や複雑系への無理解というのとは、ちょっと違う気がします。

原油価格大変動の時代へ― 生産調整能力を失ったサウジアラビア

/ロバート・マクナリー、マイケル・レビ

 タイトルそのまんまサウジに生産調整能力がなくなった=石油の安定が以前より見込めなくなると。イラク・イランの外交・対応も石油の安定を維持できるかどうかということで評価・正当化されそうですね。世界へのエネルギー供給の安定化=国際秩序の維持さえ達成すれば、イラクへの侵略もまあ、多少はね?ということである程度正当化される、情状酌量されるのでしょうかね。

フォーリン・アフェアーズ・リポート2011年6月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

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「アメリカ後」の世界秩序

― 中国による新秩序模索も文明の衝突も起きない/G・ジョン・アイケンベリー

 いつものアイケンベリーの多国間協調の話。中国など新興市場国がリベラルな世界秩序に挑戦するのではなく、参加して権限・リーダーシップの共有を望むとありますが、そういう国際秩序・力学を理解していない可能性は高いんですけどね、中国。今のわがまま放題、領土主張を見てもそうですし、米とのG2とか折り合おうとしないところとかもそうですし。習近平や高官が傲慢に今は中国が教師で米が弟子だ!なぜ中国に指図しようとするのだ!みたいなことを言ったりね。

米金融資産利払いへの対中課税を― 貿易戦争なき人民元切り上げ策

/ジョセフ・ギャノン、ゲリー・ハフバウアー

 人民元切り上げがないなら、中国の米国債の利益に課税しようという考えがあると。今から三年前の話ですが、とうとうそこまで行くんですかねぇ?

中東革命後のアルカイダテロリズム/ダニエル・バイマン

 エジプト、チュニジアの政変・中東革命の成果をアルカイダに持ってかれないようにすべしという話。革命で生まれた権力の空白を混乱でアルカイダがそこを埋めてしまうのが最悪のケース。独裁者や政府とジハード主義が結びついて民主的な反体制派を弾圧するという図式が、アルカイダが支配的にならずとも、またまずい事例。アルジェリア・モロッコ・イエメンなどがその例。92年アルジェリア政府は選挙でイスラム勢力が勝利したため選挙結果を破棄し、内戦になった。タクフィール派という他のイスラムを背教者とする過激な勢力の存在でビン・ラディンら他のジハード主義も手を引くほど。のち他のジハード主義とアルカイダが手を組んでAQIMを結成。

 イスラム同胞団のような勢力を排除することで、にたような事例を招いてはならない。彼らの主義主張は民主的な価値観と衝突する、容認しがたいものもあるが、それも交渉次第、ケースバイケースといったところか。まあ要するにそこら辺は認めて治安維持を最重要事項に、ジハード主義者が主流となる最悪の事例を防ぐということですね。それが一番現実的でしょう。兎にも角にも過激派を排除することが重要ですしね。

 ドローン攻撃は有効で、そのためにパキスタンの信頼を失っても続けるべきだと。このような変革にアルカイダが統一見解を出せないのは幹部が集まったらやられてしまうからだと。アルカイダはそれほど影響があって、まっさきに潰さなくちゃいけない勢力なんでしょうか?もはやアルカイダはジハード主義の一つにすぎないような気がしますが、そうでもないんでしょうか?以前取り上げたビンラディンがそれほど主導的な役割を果たしてないという話のように、アルカイダにとらわれるのはどうなんでしょうか?パキスタンで言うと未だにアルカイダが支配的ということなんでしょうけどねぇ。

 米が前面に立つと反米派を勢いづけるために、治安部隊の訓練で米は退くべしと。

パキスタンの政治から軍部を締め出すには/アキル・シャー

 ムシャラフ=シンの間で2008年画期的なカシミールの妥結案が結ばれる手前まで行った。ムシャラフの求心力低下で頓挫した。今後も進展する可能性はあるのだろうか?

 イラン革命によって勢いづいていたシーア派マイノリティを抑えつけようと、スンニ派集団を武装させた。特定宗派の過激派を国が率先して育み、支援したために、宗派間の溝は深まり、社会は軍事化され、イスラム過激派は増長した。

 パキスタン軍は対インド戦略上のツールとして、武装勢力を見ている。2009年10月に南ワジリスタン州で武装勢力を拘束、殺害してこの地域を制圧し、過激派の基地や訓練キャンプを解体した。だがパキスタン軍は「自分たちを脅かし、攻撃してくる武装勢力だけを相手に」作戦を遂行した。つまりパキスタンは自分達に脅威になる武装勢力は自国内でも無視、積極的に対処しないと。

 軍が国内のイスラム過激派に許容的な態度だったため、過激派がパキスタンの治安サービスの末端部分にまで入り込んでいる。パキスタンでもっとも大きなパンジャブ州のサルマン・タシール州知事が、神への冒涜を禁じたイスラム法の導入に反対したことを理由に、彼自身の警備隊に残忍なやり方で殺害された事件が起こっている。

 主要都市で頻発する自爆テロを前に、人々は「政府は治安を維持していく力を持っていないのではないか」と考え始めている。国民の軍への信頼が揺らいで、今の軍主導の政治が終わるか、軍が過激思想・武装勢力を徹底的に根絶するような方針に転換されない限りパキスタンの状況は変わらないと。2010年での大洪水での救助で、軍への信頼はまだ高いとあるので、そう簡単には変わらないでしょうねぇ。

 武装勢力掃討作戦で人民に犠牲を出すような作戦では相手のテロ戦士をリクルートする地域を作るようなもの。気を使うようにはなっているがそれでも被害は出ている。2005年に、当時のパキスタンタリバーンの指導者バイトゥッラー・メスードとまとめた合意では、武装勢力が外国の戦士をかくまったり、パキスタンの治安部隊を攻撃したりしないことを約束する代わりに、軍は拘束している武装勢力のメンバーを解放し、メスードの土地から撤退することを受け入れている。まあ、要するにあそこの土地柄でパキスタンに国家を統合して経営する力がそもそも無いので武装勢力が小大名化してしまうのですよね。こういう流れはそもそも変えられないのでしょうからねぇ。