てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

中国の対外強硬路線の国内的起源 T・クリステンセン

フォーリン・アフェアーズ・リポート2011年4月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

¥2,263 Amazon.co.jp

 多分、この号だと思います。やるやると言ってやってなかった。このトーマス・クリステンセンさんの話を。拙感黒字で。

中国の対外強硬路線の国内的起源―高揚する自意識とナショナリズム

トーマス・クリステンセン

 中国の近隣・対米外交は、「建設的な自己主張」、あるいは、「状況の変化に即した革新的な」ものというよりは「反動的で保守的」とみなすべき。

 国際秩序で中国の台頭というロジックが国内で必要以上に誇張されていること、プラス国内の政治情勢が不安定なことがこのような態度を取らせている。故に国内のナショナリストに非常に神経質になり、何かが起こると強行的な対応をせざるを得なくなっている。

 90年代に導入された中国の「平和的台頭」戦略から180度の路線転換。※。「平和的台頭」戦略では、大国化する中国に対して抱かれる警戒感を緩和させるために、地域的な経済統合を目指し、多国間の相互信頼を高めていくことが重視されていた。

新路線では以下の様な衝突を引き起こしている。

 09年、中国海軍調査船による、中国沿岸沖合(公海上)での米海軍音響測定艦インペッカブルの航行妨害事件。

 10年7月、ASEAN地域フォーラムで楊外相の、東南アジア諸国への「中国との領有権論争に外部パワーを巻き込まないように」という警告。

 同年、日本の海上保安庁の船に衝突した中国漁船の船長を日本が逮捕し他事件で謝罪と損害賠償を要求したケース。

 10年3月、北朝鮮軍による韓国海軍船の撃沈と、11月ウラン濃縮施設の公表と延坪(ヨンビョン)島の砲撃。この挑発で、米韓海軍の中国近海の公海上での合同軍事演習での、二度にわたる米韓への警告。

 しかしこれは新たな戦略上の方針に基づいて行動しているというよりは例外をのぞいて、他国が引き起こした歓迎できない事態、予期せぬ事態に(高圧的に)反応しているにすぎない。

 金融危機までは北、スーダンソマリアの海賊と建設的な方針を採っていた。このような国際協調路線に戻るように促すべき。核拡散、地球温暖化、世界経済の不安定化などの、グローバルな問題に非協力的あるいは反対的な立場を取られれば、上手く行かなくなる。

 05年9月、ロバート・ゼーリック国務副長官の中国への「責任ある利害共有者」ステークホルダー表明以降、部分的でも中国は米の要求に応えていった。

 06年末から07年にかけて北朝鮮に経済圧力をかけ、寧辺(ヨンビョン)の核施設の解体(これまでのところ、六者協議の唯一の具体的成果)。

 06年末、コフィ・アナン国連事務総長が示したスーダンの平和と安定に向けた3段階計画を支持し、計画の第2段階である国連アフリカ連合合同の平和維持軍を受け入れるようハルツームに働きかけた。07年初頭、米国務省との協議を経て、北京は300名を超える部隊をダルフールヘと派遣(非アフリカ系部隊として初めての現地での平和維持活動)。

 08年末、海賊の追尾をソマリア領海でも実施することを認める国連決議を受け入れた。これまでの内政不干渉原則重視路線から考えるとこれは重要な変化。

 中国が台頭して大国化するということは、その国際的責任も大きくなるということ。これらの変化は、途上国の地位を引き合いに出して、世界経済の安定や環境へのダメージ緩和に向けた国際的貢献を拒絶するという従来の姿勢は、もはや現実的ではなくなっていたことを意味している。

 しかしこの現実的な路線を放棄してしまった。一番変わったのは北朝鮮路線.

09年春に核実験とミサイルテストを強行した北朝鮮に圧力をかけるどころか、北京は、金正日体制との関係を強化した。専門家の多くは、この3年で中国と北朝鮮間の貿易と投資がさらに強化されたとみている。

 10年に金正日は中国を三度訪問し、10月には、周永康訪朝。正恩への権力移行プロセスで関係強化せざるを得なかった。北朝鮮体制崩壊は、半島への影響力が低下するという懸念から、北朝鮮支持という路線へ回帰した。

 同年に北朝鮮が引き起こした一連の危機でも中国は金正日体制を支えた。5月に、国際委員会によって韓国の哨戒艦天安(チョンアン)号を撃沈したのが北朝鮮の潜水艦だったことが事実上確認されたにも関わらず、中国は調査結果が示す証拠のレビューを拒み、北朝鮮安保理によって名指しで批判されるのを阻止した。これにより、国際社会、特に韓日米の大きな反発を買った。

 筆者が直接中国の政府高官と話した実感では、中国のグローバルなポジションについても、国内の開発上の課題についても、より冷静な判断をしているとのこと。しかし、皮肉なことにより多くの国内プレーヤーの声を政策に反映させると、強硬的な意見が多い故にそれに左右されることになってしまっていると。

 軍、エネルギー企業、主要輸出企業、地方の党エリートなど、ますます多くの官僚たちが外交政策決定に関与し始めている。これはかつてなかった現象であり、党の指導層は、こうした異なる集団の利益を調整していく意図と能力も持っていないようである。

 問題はこれら国内集団の一部が、国際社会のはぐれ者との取引、拡大主義的で厳格な主権(領有権)の主張、そしてときには、アメリカやその同盟国との緊張の高まりから利益を引き出していること。政府高官も国内のメディアもこれに表立って逆らうことができにくくなっている。タカ派ナショナリスト的な意見が通りやすい空気になっている。

 国内法を根拠に中国漁船の船長を拘束した日本に対しての反応はある程度理解できても、リアクションが強硬すぎた。日本へのレアアース輸出を打ち切り、すでに日本側が船長と乗組員を解放するように求める中国の要請に応じていたにもかかわらず、公的な謝罪と賠償を求めた。これにより日本の対中世論を大きく悪化させ、今でも対中イメージは非常に悪い。さらに、これを親中派とみなされる民主党政権でこの対応をとったこと。日中関係の進展の芽を自ら摘むんでしまった。

 まあ、アホなことこの上ないですよね。なんで親中的な時にそれをやるのか…。日本も小泉の時に胡錦濤が国際融和・協調路線をとっている時におもいっきり靖国訪問するという愚考をやらかしましたが、まあ似たようなものですね。結局このような愚考が安倍さんの靖国参拝を招くわけでもあるわけですね。負の連鎖が常に巻き起こってるわけですね。多分、コレはしばらく止まらないでしょうね。お互い相手が友好的であろうとも敵対的であろうとも配慮せずに好き勝手に行動するでしょう

 中国外務省は2010年6月と11月に、米韓は北京の許可なく中国近海に戦艦を派遣してはならないと二度にわたって警告したが、平壌の行動を大目にみて擁護するかのような路線は、ソウル、東京、ワシントンとの外交関係に大きなコストを払わせた。真の自己主張をする大国なら、はぐれ者の小国がこのような形で自国の外交政策をハイジャックするのを認めることはあり得ない―と北の挑発を寛容するような中国の外交政策・方針のまずさ・稚拙さについてもコメントしていますね。

 こういうナショナリスト的反応故、グローバルな問題への対処する国際的枠組みに参加しづらくしているとも指摘していますが、コレについて次のようなことが言えると思います。

 国家・社会が成長して、国民の声が大きくなればなるほど、その声を共産党の政治に組み込まなければならなくなってきました。こういう状況で、中国政府は自由や民主主義的制度を採用するのではなく、愛国主義ナショナリズム政策を採用することでガス抜きを図っている。このような性質を今の外交に見いだせる、読み取ることが出来るかと思います。

 国民の欲求に「民主」と「愛国」:国民の権利と国家の権利という二つの基本欲求(権利拡大要求)があって、その二本柱のうち、主に後者を聞き入れることで国内の不満の声を解消しようとしている。深刻な国内改革、民主化などをやらずに手っ取り早く&国内プレーヤーが傷つかない簡単な方向を選んだということでしょう。民主化路線は国内対立を煽り、難しい政局運営・舵取りが要求されますしね。

 民主を犠牲にして愛国を取り入れるというメカニズムをそこに見いだせるでしょう。まあ今の中国の人もそのメカニズムに気づかずに日本め!アメリカめ!ってやってたら自分たちの国民の権利をますます損なうというメカニズムがあることにいい加減に気づくべきかと思いますが、まあなかなかそういう政治方程式は気づかないでしょうねぇ。

 いずれにせよ、後者をどこまで拡大しても前者が満たされなければ、国家の権益・領土が大きくなったというのに自分たちの生活がちっとも楽にならないじゃないか!といずれ跳ね返ってきますよね。必ず前者の欲求を満たさなくてはならなくなる。一方的な要求だけ満たしていてはバランスが必ず崩れてしまうでしょうね

 オバマ政権になって米との関係が安定するという見方も、台湾への武器売却、インターネットの制限の批判、ダライラマとの会談などで、アメリカは中国の中核的利益を考慮しないとみなされることで成立しなくなった。このような態度を取られる以上、アメリカの中核的利益に配慮する必要がないという意見が出てくる。

 つまり、イランや北朝鮮による核不拡散の阻止を助けたり、財務省証券を購入することで、アメリカ経済と国際金融システムの安定化を助ける理由はないと考えるようになった。しかし中核的な国益を巧みに駆け引きすることは、米中関係の本質ではない。そもそもそういうふうにとらえるのが間違っている

 アメリカが要請していることを北京が受け入れれば、それは、直接的に中国の利益になる。これが基本構図なのである。

 核拡散の牽制や、国際海域での海賊対策はむしろ、中国の利益に合致する行為。これらの問題をめぐってアメリカとの協調態勢を低下させれば、中国は自国の外交政策ポートフォリオを損なう。六者協議が破綻すれば、北を別にすれば最も損をするのは中国。06~07年時のホスト国としての中国の国際的名声は、同じくこの停滞で損なわれている。

 弱い同盟国、経済的に自国に完全に依存している北朝鮮に影響を与えられない状況で、どうして他国・周辺諸国が中国を大国とみなすだろうか安保理決議で日本と韓国がより厳格な制裁措置をとっているのに、中国がそれに協力せず北朝鮮とノーマルな経済・外交関係を維持すれば、北朝鮮に対しての姿勢に懸念を持つし、それに対する対抗が自然と起こる。北朝鮮の核開発は、新たに地域的な軍拡競争を呼び込み、東アジアの同盟関係を強化させる。

 日本は平壌が核を小型化し、ミサイルに装填できるようになることを大きな脅威とみなしている。その可能性は低いとはいえ、もっとも劇的なシナリオは、北朝鮮の核開発がさらに進展した場合に、日本が核開発のタブーを克服して独自の核開発を進めることだ。

 あまり認識されていないのは、北朝鮮の核開発が日本軍拡を招き、中国がコレを警戒することだ(あまり認識されていないとありますが、この認識されていないという対象は国際的な言論状況なのか、それとも中国政府高官なのかどちらなんでしょうか?もし後者であるなら愚か以外の何物でもないですね)。今後、中国が「自国の抑止力を弱める」とみている米主導のミサイル防衛システムの構築に日本がさらに積極的に参加していくことになりうるし、さらに日本は攻撃的な軍事能力を整備することに対する拘束を解いて、発射される前に北朝鮮のミサイルを破壊できる通常兵器弾頭のミサイル開発に投資するようになるかもしれない。こうした攻撃用兵器は多様な目的に使用できるし、その開発に着手すれば、日本の全般的な軍事路線にシンボリツクな意味合いを持つことになる。

 このまま状況を放置し、北朝鮮がさらに核開発を進めれば、アメリカと地域的同盟諸国の協調態勢はさらに強化される。例えば、韓国が、日本、アメリカとともに地域ミサイル防衛システムに参加する可能性もある。

 国際コミュニテイは北朝鮮が他の国家や非国家アクターに核分裂性物質を移転させることも警戒している。アメリカと地域同盟諸国は、「拡散に対する安全保障構想」に基づく北朝鮮船舶の臨検だけでなく、海軍間の協調と合同演習を強化するだろう。

 すでに北朝鮮が一連の挑発行動で米日韓の安全保障協調態勢の強化が起こっているし、長期的にますます強化される事態になりかねないリスクを持つ。中国は大規模な輸出セクターを持つエネルギー輸入国で、エネルギー価格の急騰は、生産と輸送のコストを引き上げる。米と協力してイランとの交渉に取り組む、エネルギー供給の安定化を図るのは国益に叶う。(多分違うと思いますが、イランが不安定要因として地域秩序を脅かしているとのこと。それはそのとおりですが、そこにイスラエルの問題点もまた見ないとフェアじゃないですよね、あちらさんの人なのでひょっとしたら、フェアじゃない視点があるかも?と一応メモ。まあ大丈夫だと思いますが)

 アメリカと同盟諸国にとって幸いなことに、北京では現在の外交路線のコストと利益をめぐって論争が起きている。中国の高官と話した実感では中国の北朝鮮外交が焦点。この時点ではまだ北内部での粛清事件の前だったので、わかりませんが、張成沢が粛清されたあとで中国の対北政策がどうなったのか気になるところですね。

 1990年代半ばに、北京は台湾をいたぶり、南シナ海の領有権をめぐってフイリピンに強硬姿勢をとり、日米安全保障関係の強化に過剰反応を示すなど、近隣諸国の多くとアメリカを離反させる行動をとった。だが、ワシントンとパートナー国が賢明な政策をとるとともに、日米関係強化のための「ナイ・イニシアテイブ」や1996年の台湾海峡近海への二つの空母戦闘群の派遣のような、毅然とした態度をとった結果、1997年までには、中国外交はより建設的な路線へと立ち返っていた。賢明な政策と毅然たる路線を組み合わせれば、北京におけるより穏健な勢力の台頭を側面から支援できる。

 強硬には強硬で、中国外交の政策変更を促せと。現状ではコレでいいかもしれませんが、そこにリスクが有ることもまた確かですね…。そこら辺はまあ臨機応変というところでしょうか

 2009年の共同宣言以降、米政府高官が「アメリカの中核的利益」という言葉を用いていないことからみて、すでにワシントンは、この言葉を用いることが中国の戦略思想に意図とは逆の作用を与えることを理解している。むしろ、アメリカの対中外交は、両国の立場に大きな違いがあることを認識した上で、相互利益を模索することを重視しなければならない。

 ―その後緊張緩和の動き胡錦濤訪米・ゲーツ訪中などあれど、根本的な解決には至ってない。すなわち中国サイドの国際的協調方針がない限り、オバマの対中外交は成功しないという図式がそこに存在していると。オバマが就任して以来、中東でも苦しい状況なのに、中国でも改善の兆しが存在しないという最悪の図式がそこにあるわけですね。なんて不運な大統領なんでしょうね(´-ω-`)。ババ抜きのババ引いたみたいな感がありますね。だからこそのTPPや今のキューバとの国交正常化交渉なんでしょうけど。

 氏は強硬的な外交姿勢が実ることはないと強硬的な姿勢をキッチリすべきと主張していますが、それはいいとして、その後米と強調しようという外交路線になるとはあんまり思えないですね。多分、習近平態勢が終わらない限りこの方針は基本変わらないかと思います。もしくは国内情勢の変化からなんとしても米中関係を安定化させなくてはいけないということにな利でもしない限りは。党内部のパワーバランスが崩れて外交トップに穏健派・協調派がつくということは考えにくいと思いますけどね、その可能性はあるのかしら?