てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

大阪市職員刺青裁判の敗訴と生活保護プリペイドカード化

 タイトルに大阪といれなくても、すぐに大阪の話しだとわかるので、入れませんでした。まあそれくらい有名な話ですからね*1。以前刺青についてはこんなふうに書きました。


■刺青の話
大阪市職員の刺青、刺青を理由にする懲罰は不当である
大阪市職員の暴走、未だに見えてこない地方行政の闇
 上でこの橋下さんの政策はおかしい!と書いて、下で否定しています。なぜかというと、大阪の行政にヤクザが関わっている可能性があるから。―そうである以上、これは差別・偏見に値する施策ではない。そうせざるを得ない背景があるわけですからね。そりゃしょうがないですね。本来、己は外見やなんかで条件を課すことは反対なんですがね。こういう背景があるとそりゃ取り締まらざるをえないですね。

 刺青が問題なんじゃなくて、ヤクザとの繋がりがあることが問題。刺青=ヤクザだから排除しろ!とならざるを得ない社会状況・背景・風土の問題なんですよね、これ。それこそ大阪市職員が刺青をしていても問題のない時代が来て初めて、この問題が終わった、解決したということになるでしょうね。

 で、大阪市の入れ墨調査は「違法」…大阪地裁、拒否した職員の懲戒取り消し 市に110万円の支払い命令 (産経)―にあるように、敗訴したわけですね。

 てっきり司法がそのような背景を理解せずに否定した。おいおい司法よ、ちゃんと背景を勉強しているのかよ…とおもいきや、記事を読むと中垣内健治裁判長は調査の必要性・正当性を認定しているようですね。「プライバシー条例に違反する」から、ということで賠償と人事処分の取消を求めたとか。

 つまりその行為、処分は認めたけども、OKだけども、やり方がマズイという判断ですね。ふむ、それはわかりますが、だからといって賠償&処分の取消要求というのはいかがなものなのでしょうか?正当性を認めながらも敗訴としたということですよね。では、法に触れないやり方であったらよかったということでしょうか?自己申告のみにしておいて、果たして刺青職員≒暴力団関係者の一掃という橋下の目的は達成しうるのでしょうか?他にプライバシー侵害をせずに、目的を達成するうまいやり方があったのでしょうか?

 公共の福祉の下に人権は制限されるのが法の原則。どんな「~の自由」という概念も、一定の条件のもとで制約がかけられるのは法治国家、民主主義の論理でも当然のことですから、これは橋下の方に理があるのではないでしょうか?

 橋下が暴力団関係者との疑いがあるとする主張に根拠が無い、その根拠に正当性が認められないとして否決するなら、裁判所を納得させられる証拠・資料が足りない、持ってこい―という判断を下すなり、そのような理屈を展開するならわかりますけども、正当性を認めながら、プライバシー条例違反という理由で橋下サイドの主張を却下するというのはどうなんでしょうかね?ならばプライバシー条例違反で賠償、ただし人事はそのままでいいと正当性を認めた延長で容認してもいいのでは?

 刑事裁判のロジック、一つでも検事・警察サイドに瑕疵があれば敗北、容疑者は無罪になるというのならわかりますが、行政・民事裁判でそういうことになるのは一般的なことなのでしょうかね?

 このような裁判は前例がなさそうですし(暴力団が関わっているということで)、地裁レベルでは到底判断を下せない、重要な判例を下すことは出来ない。よって橋下に肯定的なことを述べながらも、結果は否定という形で前例踏襲主義に従ったということなのでしょうかね?まあ、間違いなく最高裁で取り上げられる事案なのでしょうけど、そうされやすいように判決を書いたということなのでしょうかね?

 そういう風に考えると裁判所の判断は特におかしなものでもないということになるのでしょうか?


生活保護の話
 そしてもう一つ、生活保護プリペイドカードという話。こんなことをしてもカードを扱う会社の利権になるだけだという意見があり、それについては己もそう思います(ひょっとしたら今のシステムを打破して新しい制度を作るためには新しい利権・支持基盤に媚びる必要性があるということかもしれませんが)。

 で、ホームレスの生活保護ピンハネで2億円...西成の貧困ビジネスで組員逮捕 こういう話があるように、要するに貧困ビジネスに切り込みたいということでしょうね。個人的に生活保護は不正だらけだ!という見方には組みしないんですけど、大阪の場合、こういう問題がかなりあると。

 生活保護などのシステムに暴力団が関わっている、間にいてカネを吸い上げるようなものがあるならば、そりゃ当然排除したいに決まってますね。大阪の場合、ことさらに生活保護が多いという事情もあるでしょうが。大阪市で15万人、一般会計の17%の予算を占めているとか、そりゃなんとかしたいでしょうからね。

 不正受給をなくすこと、貧困ビジネスを取り締まること。それ自体は賛成ですが、それが生活保護というセーフティーネットワークを破壊することにならないようにして欲しいですね。橋下・維新を警戒する、否定的に見る人というのはおそらくそういった懸念があるので、批判の声を上げているという気がしますし。安倍ちゃんのように、「敵は共産主義・左翼だから、そんな声は聞く必要がない」といった態度を取らないようにして欲しいですね。

 あと、クレジットカードで全額を差し押さえるのではなく、一部だけみたいですね。全額管理することで、どういうふうに生活保護を受けている人がお金を使っているかということを把握する必要があるので行うものですよね?一部だけ流れを把握してもしょうがないんじゃないでしょうかね?

 これは生活保護者がどういう風にお金を使っているのか、変な利権団体が関与していないかを把握して、そういうものをなくすために行うはずなのですから、これで本当に有効な対策になるのでしょうか?一年とか三年とか一定期間を条件全額お金の流れを把握するテストにするべきでは?うまくいきますかねぇ?

 ググっている過程で在日利権・サヨク利権という言葉も見かけました。在日利権は聞いたことがありますが、「サヨク利権」という言葉は聞いたことがありませんでした。そこに具体的な事例、データ(サヨク関係者が斡旋して利権が生まれているという具体的な話や、関係者の生活保護の総数や送金額などですね)がないので別に信憑性はありませんので、取るに足らない話しですが、これにはちょっと注目しておくべきだろうなと思いました。
 ※市職員や公明・共産関係者が優先的に生活保護を受ける、公営住宅に入るといった事例はそりゃ、あるんでしょうけどね。それが印象論の範囲を出ないのでね。

 橋下氏の政治スタイルはともかく、外交・安保感について関係があるのではないかと思いましたのでその指摘をしておきたいと思います。戦後民主主義と言われる思想がありますが、彼はそれとは一線を画す、脱自虐史観に代表されるポスト冷戦的な思想の持ち主です。彼のそういった主義主張は、そのとおりというのもあれば、いやそれは違う。いわゆるネトウヨ的な稚拙な主張だというのもあって、時々拙記事でも批判しました。

 それはさておいて、彼がどうしてそういった価値観・思想を持っているかと言われれば、この反「サヨク」というものがあるからではないか?と思いました。大阪の改革に強烈な使命感をもって取り組んでいることからもわかるように、彼には大阪の政治を利権団体/既得権が歪めているという認識があるはずです。意識的であれ無意識的であれ、その「サヨク利権」による行政腐敗を潰す!排除する!という動機がある。故に間違っているのものを徹底的に叩く、そういうものが背景にある気がします。彼の出身の弁護士スタイルだけではないはずですね、彼がああいう過激なスタイルであるのは。

 冷戦体制崩壊後、負けたから間違っていたというわけではありませんが、「左」の人々の間違った価値観念があったのは確かです。政治を歪めたのも確か。歪めたというか、まあ正と負の面両があって、その負の面が当然あったわけですね(コレは別に「左」だけではなく、「右」でも同じですけどね)。
 「左」の人々はソ連の失敗、中国共産党北朝鮮などの失敗や日本にとって敵対的だったりマイナスの主張・行動があった。そしてそれを支持しておきながらその反省がない。
 戦後の総括がない!反省がない!―みたいな珍論をたまに見ますけど、じゃあ社会党がそれをしたのか?共産党がそれをしたか?辻元清美のように「ごめん」と組織的にやったか?と言われるとやってないわけですよね。「左」でない人がそういう主張をするのならともかく、「左」の人がそういう主張をするのはまさに滑稽極まりないわけですね。人のふり見て我がふり直せそのもので、…になります。

 この前、今の安倍政権を育てたのはマスコミであると厳しく批判しましたが(※参照自民党が「ネトウヨ」を取り込むことは合理的、正解)、橋下さんの反「サヨク」というスタイルを育てたのも、今の「左」サイドの人々ではないか?と思います。自分たちの非、間違っていたところを認めて反省する事ができなかった。今の大阪のような歪んだ状態を是正できなかった。それはおかしい!と自分たちの組織の間違ったところを指摘して、自己浄化能力を発揮できなかった。もしきちんと自己浄化能力を発揮したり、問題を今ほど大きくしていなかったら、果たして今の橋下は存在したでしょうか?橋下を強烈に支持する層があったでしょうか?

 問われるのは橋下ではなく、橋下を生み出した報道と政治能力の欠如であるということを我々は強く自覚すべきだと思いますね。

*1:―と思っていたら、大阪市でまた入墨が医療行為かそうでないかという裁判がでてきてしまったので、引っ越しついでにわかりやすくタイトル変えました。