てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

フォーリン・アフェアーズ・リポート 2013/05・06

フォーリン・アフェアーズ・リポート2013年5月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

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<特集 清算主義の罠と流動性の罠――アベノミクスをどう評価するか>

緊縮財政という危険思想

/マーク・ブリス

 独均衡財政はEU圏全体のためにならないという指摘をした人ですね。EU内でリセッションを抜け出すために緊縮財政を取るという政策が一定の説得力を持っているがそれは誤りだといいます。社会の下の階層に与える影響が大きい、特に米のような格差が大きい国では(つまり、緊縮財政を取るのならば貧困層や格差をなくさないといえるのかも、そうでなければ効果が無い。もしくは想定した効果を達成できない・負の影響が大きいとなると)。

 緊縮財政グループにどこが加盟するか、経済圏全体で緊縮財政を取ればその全体のパイ自体が縮むことになり悪影響が伝染する。緊縮財政を取れば将来の税負担が削減される。これによって購買意欲が高まり、消費意欲が高まるという論理もあるが、実際そのような合理的選択を取る消費者はいない。

 ヒュームやスミス以来、政府債務は毒薬、政府は愚かな判断をし、最終的に課税となって跳ね返るだけだとする。またリカードのような市場の均衡を狂わせるという市場論理の観点からも否定的な見方があり、緊縮財政の思想は伝統的に強かった。政府の積極的役割を認めるのはJSミルから、そしてケインズへ至る。シュンペーターハイエクなどは否定的と。

 ドイツのような輸出競争力がある国ならともかく、その他の国で緊縮財政を取るというのは不可能。世界大戦の前に米英独日が緊縮財政を取った結果世界経済全体がシュリンクした。米英という経済二大国が支出を減らした結果が、独日のファシズム

 80年代豪・カナダ・デンマークアイルランドが緊縮財政によって経済を立て直した実例が挙げられるが、貿易パートナーの経済拡大期であったこと。通貨切り下げが輸入インフレによって相殺されないように労組と調停して賃金上昇を抑制したこと、つまり組織された労働組合が存在することがある。当然緊縮財政で将来へのコンフィデンスが成長を―と言えるはずもない。

 東欧諸国の緊縮財政REBLLはどうみてもエストニア以外失敗している。どこか大国が経済刺激策を打って成長を促す役目を引き受けないと問題は解決しない。ユーロゾーンのような変な制限がない米しかないと。世界経済のための独の赤字や米の赤字、そしてこれは日本の赤字とも言える話になってきますね。ここらへん面白い観念。ですがそれを行うには透明かつ賢い政府でなければいけないわけで、その政府をどうやって作るかということが日本に問われることでしょうか。まあ日本の貿易赤字とか競争力云々というよりも地域や世界での経済役割の転換が起こっていること、全体の構造が変容しつつあるということなのでしょうね

アベノミクスと日本経済― 過激なケインズ主義のリスクとベネフィット

/ベイナ・シュウ

 まあ言われているアベノミクスへの肯定的評価に否定的な意見のご紹介。そういや量的緩和による円安というのは対中国上意味が大きいわけですね。中国の経済成長鈍化にやはり長期的に続くとみられる円安の影響があったのでしょうか?

ブレトンウッズを設計したアメリカ人― デクスター・ホワイトはソビエトのスパイだった /ベン・ステイル

 タイトルそのまま特になし。そういやNHK東京ローズって話がありましたね。情報戦で米兵の戦闘意欲をなくすためにラジオで日系米人の女性をMCにした云々。その話で帰国後、普通のラジオ放送だったのにもかかわらずスパイ扱いされた云々ありましたが、「戦争に急激に引きずり込まれた米人」にとってスパイがいる!的なヒステリックな歴史、赤狩りという魔女狩り時代の痛みが未だに残っているという話を示唆するものではありますね。スパイだったとか未だに重要な米史の一部ということでしょうから。

世界に汚染を拡散する中国の環境破壊― 中国による大気・海洋汚染の実態

/トーマス・N・トンプソン

特になし。

「ビックデータ」のポテンシャルと文化

/ケネス・クキエル、ビクター・メイヤー=ションバーガー

特になし。

民主化と経済体制の刷新をめぐるポーランドモデルとは何か

/ラデク・シコルスキ

特になし。

<特集 変化する中東の地政学秩序――錯綜する利害がもたらす機会と危機>

東地中海天然資源ガス資源と領有権論争

/ユーリ・M・ズーコフ

 別枠。ここで書きました→東地中海天然ガス資源と領有権論争

 なぜトルコはイスラエルとの関係修復に踏み切ったか― 変化した安全保障認識とエネルギーの必要 /マイケル・J・コプロー

 これも別枠予定、短いから追記で終わらせるかも?追記したらまた、追加しましたと告知します。

プーチンがシリアを支援する本当の理由― チェチェン紛争とシリア内戦をつなぐスンニ派の脅威 /フィオナ・ヒル まあブルッキングスだし多分大丈夫かと。

 プーチンはアサド排除に反対、必ず彼を新体制の一部に入れろとしている。武器輸出も海軍施設も周辺利益にすぎない。プーチンはシリアを「チェチェン」と見ている。シリアがバラバラになれば過激主義の基地になってしまう。チェチェン以後もロシアでテロがあり、これらテロリストがロシアを攻撃した場合・敵に回した場合、どうなるか血の報復で思い知らしめてきた。スンニ派過激主義がいかに脅威かを常に米欧に説いている。米のタリバン攻撃支持もシリア支持もこの過激主義を封じ込めるため。そういやジハード主義はスンニ派に特有なものでしょうか?シーア派過激主義ってあんまり聞いたことないような?どうだったか?ないことはないんでしょうけど、シーア派は過激主義になりにくいとかあるのかな?対ジハード主義としてシーア派国が有効・有益であるというのならシリアを同盟国として確保したいということになりますし、マリキ政権にもそういう意味合いが読み取れますね

 元反乱勢力ラムザン・カディロフを味方にして、彼独自のイスラム主義でチェチェン共和国を再建している。このケースはイラクやシリアで参考にならないのか

 アサドの父が強行手段で弾圧してきた過去があるので、同じようにコントロールと見てきたが、アサドは失敗。これでプーチンは彼を見捨てた。90年代アフガン、現リビアのように混乱&ジハード主義の養成場となるような国際介入は好ましくないと考えている。北カフカスへの過激派流入を防ぐのが第一。米欧が信頼出来ないからシリアという破綻国家を支援し続けている。

 チェチェンはシリア同じく難民が発生し、外から資金と兵士が流入してきたが、外国がそれに干渉することがなかった。ロシアはチェチェンの大統領代行をカタールで暗殺したが、シリアは外国でそのような反体制派の除去が出来ない。単純にロシアとシリアの国力の違いが混乱に歯止めがかからない要因か。問題はシリアのWMDがどうなるか、テロリストの手に渡らないか。

 国内にスンニ派を抱え込み、バランスとしてシーア派のシリアも重要だということは理解できる。しかし地政学的にシリアが重要かと言われるとどうだろうか?アサド支配地域に縮小してしまえば影響力ががくっと落ちるけど、中東外交がどうにもこうにも行かなくなるとも思えないし、どういう意味で地政学的に重要としているのだろうか?

第二次朝鮮戦争の悪夢に備えよ

/ケイル・A・リーバー、ダリル・G・プレス ジョージタウンダートマス・カレッジ准

 核問題専門家による分析。短いですがコツを抑えてありますね。有事リスクを減らすこと、そして戦争になった際に核戦争へとエスカレートさせないことを念頭に戦争計画及び一連の措置を早急に見直すべしと。問題は米の強さにある。これまでの戦術を見て開戦となれば、指導者のいるバンカー(掩蔽壕)、指揮系統、コミュニケーション・ネットワークを叩く。つまりあっという間に戦争不能に持ち込むことが可能。とすると敗戦必死の状況をひっくり返すために核へと踏み切ることがありうる。核戦略は米のそれ然り、ソ連の圧倒的優位な通常戦力からの防衛をメインにしてできたもの。通常戦力の優位は意味を成さない。かえって危険な状況を招く。

 現状では核弾頭の小型化、他の運搬手段も備えていないが、将来的にありうる。相手の核戦力を無効化するために空爆をするとなれば数百回はする必要がある(空爆はいずれ真剣に考えなければならないと思いますが、コストはどれくらいなのか気になるところですね)。

 核によって身の安全を全うしたいというのが本来の核保有の動機。ならば核の放棄・使用をしないのは、どこかの国でそうしなかった場合身の安全が保証される時だけ。中国などに「ゴールデンパラシュート」=亡命&一生の安全の約束をしておくべき。全くそのとおりですね。何があってもイラク高等法廷や東京裁判のような「野蛮な文明の裁き」をしないという確約をしない限り、核放棄だったり体制転換などはありえないでしょうね。南北統一とか平和とか論じるならば、何故これをもっと大々的に問わないのか、いつも疑問に思っていました。現北の指導層に対して、殺さない・命を奪うことはしない、裁判にかけないという外交的司法取引なしには解決しませんよ

<特集 パキスタンの憂鬱――同盟関係の創造的破壊を>

パキスタン軍と最高裁と政治― 軍事クーデターからソフトクーデターへ

/C・クリスティーンフェアー ジョージタウン助教 安定の元ランドですかね

 パキスタンの筋書きはいつも同じ、軍が大衆に今の政治はダメだと思わせて、前提が整ったらクーデターに移る。そして軍のトップが大統領について、選挙を実行して議会を開いて、軍よりの政治家に与党を、諜報機関がイスラム主義勢力を動員して野党を作ると。

 民主主義の理解、議会政治の日が浅いゆえ議会政治・政党・政治家への信頼がないため裁判所も大衆も軍になびく。クーデターは死刑に相当する重罪だが軍高官が起訴された例はない。政治家は国外に逃げるか刑務所に入れられる前に資産を蓄えることに目がいってしまうと。政治家の信頼が下がれば下がるほど、軍の相対的評価が上がって軍政しかなくなるという図式。

 しかし軍への信頼は落ちつつあり、クーデターを支持するような風土はなくなった。よって与党PPPのプットとムシャラフトップ間の密約で、汚職を見逃すこととムシャラフ支持という妥協に至る。与党にだけ適用され、野党の汚職については適用外。最高裁長官のチョードリーの汚職追求とPPPの戦いの図式、ギラニ元首相は辞任に追い込まれ、アシュラフ首相も理由不明のまま来る総選挙への立候補が認められないことになっている。

 クリケット出身の政治家カーンの台頭と連立拒否。彼の政治的将来に翳りが見えると最高裁もPPPへの追求を控えるようになった。平穏期が過ぎてカナダ人イスラム法学者カドリが反腐敗運動を扇動するようになる。これは軍が密かに担いで議会の早期解散へと持っていった「ソフトクーデター」。軍にクーデターをする権威がなくなってきても、まだまだ議会を自由に動かせると。

 関係無いですが、ソフトクーデターって用語なかなかいいですね。気に入りました。アジア各国形だけの憲政・議会政治が簡単に崩壊するのは軍・最高裁・特定官庁が、「ソフトクーデター」を実行できるからとまとめるとキャッチフレーズとしてわかりやすいし、面白いかもしれない。ソフトクーデターは民衆にこれが民主主義を滅ぼすクーデターだと気づかず、知らず知らずのうちに国・民主主義を滅ぼすことに協力することになると。どこでも腐敗追求ほど民主主義を殺すものはなしですね。昔は政治を歪めるものは宗教などのイデオロギー、「狂信」だったんでしょうけど、今は「反腐敗」ですかね

米・パキスタン同盟の創造的破壊を― 同床異夢同盟の歴史と破綻

/フセイン・ハッカニ 前米駐パ大使

 米パ関係史。同盟を創造的に作り変えるべきだ!関係をゼロにして新しいスタートをというものの。それの元になる同盟理論、他国との関係・同盟の組み換えなど多国間や地域秩序を巻き込んだ複合的理屈付けがない。ちょっと抽象的かな。まあパキスタンと米の歴史を知る上でいいかも?

グローバル貿易を蝕む政治腐敗と知的財産の盗用

/パメラ・パスマン

特になし。

フォーリン・アフェアーズ・リポート2013年6月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

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<特集 歴史問題と経済課題に挑む日本と中国>

復活した日本― 安倍晋三首相との対話

 インタビュー。まあ無難にこなしたんじゃないですかね?

崔天凱駐米中国大使が語る 北朝鮮、日本、そしてアメリカ

/崔天凱(サイ・テンガイ)

北京は近く経済改革に着手する― 改革の必要性が障害を克服する

/エバン・A・フェイゲンバーム、ダミアン・マ

 中央政府が財源を一手に集約したため、地方政府は乏しい財政を解決するために土地を没収して金にかえるという荒業に出る。軍事費減らして土地収用止めろ!というロジックが効果的ですかね?領土が増えてもあなたの生活が楽になるわけじゃない、むしろより一層苦しくなっていくんだぞ!という論理が効果的でしょうか?「尖閣を取れば、あなたの土地も奪われる」ってね。

ビッグデータの台頭

ケネス・クキエル、ビクター・メイヤー=ションバーガー

 様々なデータを集めることで、事前にいろんなことが分かるようになると。まあ小説のネタみたいな話ですね。犯罪者も事前にわかるとか。どんな膨大なデータが集まっても結局はそれを活かす使い手次第でしょう。

<特集 北極圏のポテンシャルとリスク>

北極圏の未来― 北極圏サークルの立ち上げを

/オラフル・ラグナル・グリムソン

 アイスランド大統領へのインタビュー。中国の北極圏の関心。12年に中国の砕氷船アイスランドに到着している。アイスランドと13年4月に自由貿易協定。ヨーロッパ全体に広げるつもり、入り口としてアイスランドを選んだか。人権・社会問題が含まれており、これを中国が守るかどうか試金石になる。アイスランドが規模的に最適ということですかね?都合悪くなって破ってもダメージが最小限になるという腹づもりでしょうか?インドでさえ北極圏サークルに関心があると。軍事関心以外に交通ルートという関心は昔から言われてましたが、インドはなんででしょうね?気候か?ロシアも数年前は関心を示さなかったが今では積極的。北極の氷が溶けてロシアも影響するからでしょうか?

<Classic Selection 2008>

北極の海氷衰退と資源争奪競争― 地球温暖化の経済・安全保障的意味合い

/スコット・G・ボルガーソン

サイバー諜報とネットワーク破壊の垣根はない― バーチャル諜報から物理的破壊へ/リチャード・ベイトリック

「国内的成功には、まず世界で成功を」― ブラジルにおけるプログラミング言語開発の物語/ユーリ・タクテエフ

特になし。

なぜインドは大国とみなされるのを嫌がるか― 戦略なき新興大国の苦悩

/マンジャリ・チャタジー・ミラー ボストン大助教?短い文だがなかなか面白い。ライティングの指導を受けたままのような書き方というのもまたいいかも、読みやすくて本質だけズバッと書く人っぽくて。

 インドは大国となるのを嫌がっている。それが大国としての責務を引き受けざるを得なくなるから。未だに途上国という自己像が支配的。イギリスのインド亜大陸支配の「鉄の枠組み」と言われる官僚制度を独立以後も引き継いでいる。官僚は名誉ある超エリートであり、外務官僚はそのトップクラス。外相がキャリア官僚になることもしばしば、外交は基本的に外務官僚によって動く構造になっていると。しかしこのような官僚が強いシステムだと日本の腐朽官僚制のようなことになりかねないのでは?と思うのですがその危険性はどうなのでしょうか

 高官にかなり大きな裁量権が認められていて、現地のことは大使・外交官に一任され責任を取らされることもない。トップダウン型の戦略的な外交はまずないと。現地外務官僚の信頼さえ勝ち取れば、その官僚との合意を大臣が実行すると考えて良いと。

 中国と対照的に有力シンクタンクがなく、定期的に充実した議論を行って戦略を検討するということがない。インドは中国よりも更に自国中心主義、外交が重要という発想・視点が歴史的に欠けている、無関心になりがちということか

 大国とみなされて二酸化炭素排出規制や、さらなる市場の開放などをしなくてはならないと「大国」視されるのをやっかんでいるのが現状。それこそ常任理事国などの大きなメリットがない限り、「大国」という自己像を持つことはありえないだろうと。中華主義とでも言えましょうか?世界全部が、化外の地が中華になってしまったらエエんや!みたいな思想とは無縁のようですね

 ちょっとこの号ひどいですね、編集者が変わったのかな?なんか文字が小さくなって文量&掲載本数が増えましたしね。まともなものはこのインドに関する文章くらいで、あとなんか関係ない話が多すぎますね。外交誌なんだから外交関係の専門家の話をメインにすべし。政治家のインタビュー、外交官のインタビューってそれいるか?ってものになりがちなんですから、一度に何本も載せるべきじゃないでしょう。せめてその感想・分析載せて欲しいです。

 科学とか技術とかそういうものがパラダイムを変えてしまうことがあるというのはわかりますが、ビッグデータとかサイバーとかプログラミングとか多すぎます。だから?の話になるようなら載せるべきではない。アメリカの教育ってなんだよ(怒)。よそでやれと言いたくなりますね。定期購読している人怒るんじゃないですかね?これ。

なぜアメリカの教育は失敗したか― 諸外国の成功例に学ぶ

/ジャル・メータ

アフリカの経済ブーム― なぜ楽観論と悲観論が共存しているか

/シャンタ・デバラジャン、ウォルフガング・フェングラー

 数字=問題、数字=改善されました。―というパターンが非常に多い、データ羅列・指摘型といいますか。はっきり言って論文というよりルポとかレポートみたいな感じですね。まるでSAPIOイデオロギー色なくしたような感じですね。しかもあんまり面白くない。

シリア和平への困難な道筋― 米ロの役割とイラン、ヒズボラの存在

/フレデリック・ホフ

 インタビュー、既存の延長をなぞっただけ。

鉱物資源開発の最後のフロンティア― モンゴル資源開発のポテンシャルとリスク/マット・モスマン

 投資対象の話。

機能不全に陥ったポルトガルの緊縮財政路線

/マヌエル・ピニョ

 タイトルそのまま。特になし。