フォーリン・アフェアーズ・リポート 2013/10
フォーリン・アフェアーズ・リポート2013年10月10日発売号
- 作者: アクバル・ガンジ,ジョン・マケイン,ベイナ・シュウ,アンドリュー・タブラー,ロバート・カーン,他,フォーリン・アフェアーズ・ジャパン,Foreign Affairs Japan
- 出版社/メーカー: フォーリン・アフェアーズ・ジャパン
- 発売日: 2013/10/10
- メディア: 雑誌
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<特集 イランとアメリカ―特定された対話の条件>
イランは対話・交渉路線を模索する― 最高指導者ハメネイの思想
/アクバル・ガンジ
ジャーナリストによるハメネイ評。ハメネイは狂った人物でもなく、西洋の科学と進歩はイランにも必要な物で学ぶべきだと考えている。仏・露・英の小説などを愛好して育つ。まるで西洋の文化・文明に理解がない、バックボーンがない人物ではないと。しかし、イランと米の関係というのは、「介入」によって築かれてきた経緯がある。米に懐疑的なのはそのため。
イラン大使館人質事件について肯定的・好意的に見るのは、第三世界の革命の延長・一環としてみるから。イスラム革命以前のイランの知識人の主流思想は、西洋の文化と文明はいかがわしく、危機に直面して衰退過程にある。それにかわり第三世界が台頭するというもの。第三世界は表面上独立していても、結局は植民地である。新しい形の帝国主義が忍び寄っていると捉えていたと。
つまり米帝国主義との対決としてイラン大使館人質事件があるわけですね。イランの政治エリートは米のエージェントだと、故にパージするしかないと。それにはある面の正しさはあるでしょうが、その代替がイスラム革命政府というのがね…。人種差別に先住民…、そういう米の負の歴史を見て、何が人権だ・平等だ・民主主義だ笑わせるなという反発が当然起こってくると。
現在の核問題も、かつてウラン濃縮を2年間停止させた。にもかかわらず経済制裁は解除されなかった。信頼醸成措置を破壊したのは米だと。核査察を受け入れたら、フセイン・カダフィの二の舞いでないと誰が保証してくれるのか?モサデグ政権のような選挙で選ばれた政権を自分たちに都合が悪ければ倒すという矛盾への反発。
米欧の民主主義は自由だけでなく、支配・侵略・帝国主義を伴う。ウォール街デモを見て、米は1%が国を支配している、間違っておりいずれ崩壊すると捉える。このようなトップで、関係が劇的に改善するという楽観視はすべきでない。
経済制裁は中間層を没落させただけで失敗。疲弊した民からは、民主主義を求める力を奪った。
ダマスカスを見て、イランを思う― 米戦略思考の誤謬
/スザンヌ・マロニー
ブルッキングスの人なのでメモ。またいつものようにアレな人(ブッシュの大統領補佐官スティーブン・ハドレー)がシリア空爆不可避!米の力を見せつけろ!と騒いでらっしゃいますけども、イランと対話をして外交的に交渉で決着しようと言う時にそんなことやっていいわけない。イラクの失敗から何も学んでいないというスゴイですね。
イランには、革命の時にイランイラク戦争で、イラクがWMDを使った&国際社会がそれを許容したというトラウマがある。要するにダブルスタンダード、米が過去のインチキ・非道を謝罪して反省して、心を入れ替えて交渉に臨まないかぎり、事態の打開はありえないということですね。軍事力を行使できないという条件付きの話ですがね、まあイラク戦争みたいに実力行使に出てもイランで泥沼化するだけのような気がしますが。あなたにも出来る、泥沼を作る簡単なお仕事です―を、米軍がしたいのならば…空爆をしたらよろしいかと。
13年の選挙で現実主義者ハッサン・ロウハニが対米問題を平和的に解決するために権力の座についた。彼と外交キャリアのあるジャバッド・ザリフ外相はシリア空爆に否定的な見解。せっかく穏健派のトップがいる時に、シリア空爆でまたイランに強硬派政権の誕生を後押ししたいのか?
もはやアサド統治下のシリアが復活することはない、復活しても極めて限定した形になる。空爆を止めて平和裏に交渉を進めれば、少なくともイランとの交渉を閉ざさない。空爆が確実な結果をもたらさない以上、介入はナンセンス。
<特集 変貌する同盟概念>
進化する日米同盟/ベイナ・シュウ
ライターのいつもの対日感。意味なしですね。
アメリカかそれとも中国か― オーストラリアの同盟ジレンマ/ヒュー・ホワイト
これもいつもの前政権の人へのインタビュー。中国の台頭で、中か米かどっちかを選ばなくてはいけない状況。オーストラリアはそれをしたくないという当たり前のことを言っているだけです。これでラリアの国立大教授なのか…。
<特集 放置されたシリア内戦>
放置されたシリア内戦― 問題は化学兵器だけではない/ジョン・マケイン
マケイン、あっ…(察し)。インタビュー記事。空爆すべき、ロシアはリビアで安保理を棄権した。棄権してからあとからごちゃごちゃ言うなんてナンセンス*1。共和党・ブッシュのつけを払わされているという認識がかけらもないのが…。
アサド勝利後のシリア― 戦後シリアの荒涼たる現実とは
/アンドリュー・タブラー
アサド勝利後は、アサドに混乱不可能な地域がいくつも出来上がる。イランやアルカイダ支援のテロ勢力が生まれる。そうならないように空爆でアサド政権を打倒すべき。アサド政権を倒したとして、新政権を樹立したとして、その新しい政府がテロ勢力を抑えきれるとどうして言えるんでしょうかね?
プーチンとシリア― 彼はいかにオバマを孤立させ、それを利用していくか
/フィオナ・ヒル
ブルッキングスの人。プーチンは、イラクのケースを例に確実な証拠がない限りシリア介入をすべきではないとして牽制。プーチンかオバマか、どちらが勝利するかみたいなことが書いてありますけど、この単独主義のあとの敗戦処理を任されているオバマが取れる選択肢は殆ど無いわけで、これをもってプーチン>オバマにはならないのではないかと思いますが…。まあカダフィを退陣させてしまうという悪手がありましたけどね。
アサドの命運― 今も続く内戦、和平交渉 /マイケル・ヤング
どちらも交渉・戦争終結を目的としていない。有利な状況にならないかぎり交渉の座につかない。それぞれ勢力のパトロンを含めてテーブルにつかせなければいけないので、まず不可能と。首都ダマスカスは南部に近い。南部の反政府勢力は、北部のアルカイダに近い勢力とは違う。多様な勢力があって、即アルカイダと結び付けられない。ロシアは現状のシステムを維持したがっている。アサドを退陣させてそれが出来るのならば…同意もあり得るか?なんとも言いがたい微妙な状況。
米LNG輸出がエネルギー市場を変える
/エイミー・マイヤース・ジャッフェ、エドワード・モース
天然ガスのミスで天安ガスになってますね。いつもの資源の話で、米の天然ガスにより、「資源の呪縛」(資源確保のために独裁政権の維持)から解き放たれると。自分たちの問題は触れずに相手のせいと。
世界経済を左右する中国における成長と改革の行方 /ロバート・カーン
ルイスの転換点、過剰な労働力の市場投下が終わり、賃金の上昇が始まると成長は鈍化する。中国経済成長低下の懸念の話ですね。
大西洋自由貿易構想の価値はどこにあるか― 貿易合意と規制の一体化を
/トマス・ボリキー、アヌ・ブラッドフォード
特になし
インフレに苦しむミャンマー経済 /ジョシュア・クランジック
タイトルそのまんまで特にないですね。不動産に資本が流れて、地価上昇で住めなくなっていると。
ロシアのアジアシフト戦略という幻想 /フィオナ・ヒル、ボボ・ロー
タイトルPurtin'sPivotとあるように、こっちのほうが分かりやすくて良いんだけどなぁ。なんで「シフト」って訳しちゃったんだろう?まあ、オバマの太平洋シフト、Pivotに合わせたロシア・プーチンのPivotということでしょう。中国にとって、ロシアの影響力は対してない。極東のロシア人は少ないし、石油・天然ガスも大したシェアではないし、それによる影響力行使は考えづらい。そもそもこの地域、アジア太平洋でのプレゼンスは小さい。貿易はわずか1%で中国の貿易シェアも2%程度。兵器を除いて、輸出は原材料で、輸入は製品・消費財と新植民地主義状態。ロシアは中国のエネルギー企業への出資シェアを増やそうとはしない。ロシアにとって中国は「最後の投資家」でしかない。日本との国交もないし、六者協議での影響力もない。個人的外交パイプもさほどない。
新しい世界秩序を築く上で中国との関係は重要になるだろうが、興隆する中国と停滞するロシアのギャップは大きい。北極圏ルートの開拓も協調より緊張のリスク。
EU脱退という愚かで危険な火遊び― キャメロン英首相の危険なゲーム
/マティアス・マタイス
タイトルそのままですね。EU離脱なんて不合理の極み。
アフリカの大いなるポテンシャル― セネガル大統領との対話
/マッキー・サル
大統領のインタビューですね。特になし。
*1:゚Д゚