てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

竹島放棄より、日韓同盟が外交戦略上・国益上有益になる

 

 続きです。これもカテゴリーに入ってなかったんですね。続きなので言うまでもなく、元ネタは10/10に書いたものです。


【領土を取引するという発想自体はあり】
 日韓関係上、尖閣の領有権を放棄することが良いだろうか?という話。まず領土の重要性を認めた上でも、外交の大枠、戦略を考えた上で『領有権を放棄する』という選択肢自体はありだと考える。何が何でも俺たちのものだ!なんていうのは韓国と中国にやらせておけばよい。そうすればそうするほど、自ずと取れる政策・戦略の選択肢が狭まってしまう=割を食らうわけで、ゲームで選択肢が狭いプレーヤーと広いプレーヤーどちらが有利かは言うまでもない。交渉で上に立つためには手広い選択肢を用意しておく必要がある。そういう発想自体はあり。無論、これはだからといってそうすべきだ!そうしたほうが有利・国益に叶うという意味ではない。それはまた別の話。

 ただし、実際に取引をするならば、そのときは大反発のポーズをして、苦渋の決断だ!ということにしておかねば、相手側にその対価の意義が認識されないから、本当はそう思ってなくとも、したたかに屈辱アピールをしなくてはならない。このときばかりは朝日・産経の誇大妄想報道が役に立ち、相手に高く売りつける手助けをしてくれることだろう。

【領有権放棄の代償に親日感情が生まれるか?】
 で、前回、外交というものは第三国を対象とするもの、二国間だけではなく、マルチな関係上構築されるものということを説明した。ではこの場合の第三国はどうなるのか?中国を対象に日韓関係を強めるべきか?あるいは北などでもよい(前回みたいに長くなるだろうから、今回は北やミャンマーなどのその他属する変数については触れないが)。現在喫緊の課題と思われる中国の台頭・脅威を念頭に、中国を対象に考えてみよう。対中国のために二国間を強化するとしよう。そのときに重要なのは領有権放棄の代償に何を日本が獲得するかということである。仮に竹島領有権を放棄するとして、その代償に一体我々は何を得ることが出来るのか?というのがポイントになる。

 仮に対馬の領有権を主張している韓国に、それを放棄させて、領土問題の紛争要因をなくしたとしよう。それで一体何が得られるだろうか?韓国人が日本に対して好印象を抱く、つまり爾後の日韓外交が今後50年・100年に亘って温和化する、感情が好転して安定化するというのならまだよい。しかしその可能性は根本からないと思われる。得られる対価が少ないのならば、領有権放棄は意味のある策ではない。*1

【真の問題は歴史認識、韓国は反日を捨てない】
 領土問題が日本の100%譲歩によって、韓国に配慮したことになったとしても、韓国人の対日感情は殆ど変わらないだろう。仮に変わっても、我が国では靖国参拝の圧力があって、いつか誰か必ず首相となって参拝する。そうなれば、また反日感情は高まるだろう。領土問題での譲歩の結果、靖国参拝どうぞということにはならない=取引が成立しないということ。これは日本サイドから見ると、カードを切った代償が極めて小さいことになる。韓国はリベラルデモクラシーのリベラリズム・内面の自由を理解していないから、日本に歴史認識という内政干渉を平気で押し付けるというのは以前紹介した(
小室直樹著 『これでも国家と呼べるのか : 万死に値する大蔵・外務官僚の罪』続き)。

 彼らの反日感情の源泉は歴史認識であって、領土問題ではないからだ。領土を渡すことで、反日教科書を書かせない、あるいは日本人が韓国の教科書を検定する・書くことになるということにでもなるのならば、それもいいのだろうが、それでは今度は日本がリベラリズムを理解しない蛮国になってしまう。まあそもそも実現性はゼロだろうが。まず韓国がそんなこと認めないだろう。本質は反日という感情であり、それは領土譲渡で、多少収まることになっても、根本的には改善されても完治しない、消滅することはない。領土を譲渡しても、あるいは相互承認しあって妥協しても、日韓関係は決して進展しないだろう。

【真に必要なのは日同盟】
 さらに以前、ヴィクター・チャ氏の著作の業績を引いて、同盟関係の日韓モデルは歴史問題から基本構造としてまず敵対する構造になっている。そして無視できない安保上の危機があって、初めて同盟関係に入るという独特の構造なのである―というロジックを紹介した(日本の構造 附―米日韓 反目を超えた提携/ヴィクター・D. チャ )。そしてチャ氏はアメリカ頼みではなく、米を仲介した間接的な同盟関係ではない、直接的な同盟を二国間に構築することが答えだとした。それこそが二国間関係を前進させる・安定させるポイントだと提唱した。日韓同盟こそが、両国間の不毛な構造を打破する!としている。

 というのも、実利・リスクの前では、くだらない感情など吹き飛ぶからだ。強力な同盟関係の前に、そんなくだらないいがみ合いは封じ込められる。制度理論のように同盟という二国間関係を築いてしまえば、いかに反日反韓感情が高まろうとも制度の力によって、韓日関係を阻害する動きを封じ込める事ができる。両国が協力することで明らかに双方得をするwin-win構造を作る。リスクを減らせる構造を作る。そういう大きな枠組みを作ってしまえば、その枠内で必ず行動するような力学が働く。個人的に全く同意見であり、まず成熟したパートナーシップ、安全保障を共有しあうことこそが両国関係を切り開くと考える。
 たまに「まず仲良くしよう」などという妄言を吐く、オメデタイコメンテーターを目にするが、目的があって仲良くするものであって、仲良くすることは目的ではない。世界平和って良いよねなどという低俗な次元で、外交を語られてしまうと非常に困る。世間話ではないのだからそういう稚拙なものを公的な報道機関が流すべきではない。

【韓国に領土譲渡は実質実利ゼロ、安保で最も得をするのは韓国】
 仮に韓日同盟のために領土問題が不可欠なファクター・阻害要因となっているのならともかく、そうではない。そもそも韓国が実効支配をしているのだから、いまさら向こうが放棄・譲渡を宣言しようが感情の問題以外、なんら二国間に変化が生まれるものでもない。日露のように国交が正式に開かれていないわけでもない。

 というより、そういう有利な条件で、どうしてわざわざそういう挑発することを主張するのかが理解できない。主張すること自体、世界に領土問題の存在を周知・宣伝するようなもの。日本の国内世論の怒りをわざわざ駆り立てるだけで、何の得もないのだ。本来相手が領有権を主張して外交問題にしようとするものなのに、自ら損をするようなことをしている。領土問題における自爆テロとでも言えば伝わるだろうか?無視してスルーすればいいことを、なぜわざわざ自分達に不利になるように騒ぎ立てるのか根本的に理解できない。実効支配していない中国が尖閣のように、尖閣は自分達のものだ!と主張するなら理解できるのだが…。
 日韓同盟が結ばれなければ、北・中国の脅威で最も現実的な被害をこうむるのは韓国なのだから、本来韓国が(将来の統一問題も含めて)、長期的利益のために、竹島ごときで実利・日本の親韓感情を損なってはならないと考えることなのである。竹島騒動が示すのは、韓国サイドが完全にビジョン・戦略を喪失していることなのである。竹島は韓国の外交戦略の間違いの象徴的なもの、アイコンだといえるだろう。

 

【結論】
 つまり歴史認識問題・領土問題というものは解決できないし、そもそもそれが二国間の矢面に出てこないようにすることこそ、重要だと考える。目下、中国に将来の危機があり、この危機に対して成熟した韓日関係を構築しておくことは非常に重要なことだと考える。領土を譲渡してでも戦略上の実利を追求しようという視点自体は、非常に重要な発想である。しかし、現実の情勢を考えれば、リスクを抱え、関係を改善することで最も得をするのは北東アジアのバランスの中で小国である韓国だ。日本が最終的に譲るという発想はあってしかるべきだが、韓国に譲らせることをまず第一に考えるべきだろう。潜在的な危機が顕在化した時、真っ先に被害にあい・深刻な影響を被るのは韓国であることを理解させることが重要だろう。

 外交とはそもそも主権国という意味では対等だが、条件・国力で有利な方が有利に交渉を進めるものである。不利な立場にある韓国に特別に便宜を図って譲歩をする必要はないし、そういう必然性もない。韓国がそのことにいち早く気づくように動くべきではないだろうか。

*1:逆に言うと得られる対価があれば、取引ということは可能になる。そういうものがない以上、今も将来もこういった話が立ち上がることはないだろう。