てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

『私(ノンキャリア)とキャリアが外務省を腐らせました』  小林 祐武

 過去記事の再掲です。元は10/10に書いたものです。カテゴリーミスでこちらになかったので新しく書いてますけどね。

私(ノンキャリア)とキャリアが外務省を腐らせました -汚れ仕事ザンゲ録

私(ノンキャリア)とキャリアが外務省を腐らせました -汚れ仕事ザンゲ録

 

 ハイ、前回の続き*1。腐朽官僚制を話す上で、警察の本を借りたんだと思い出しました。外務省がいかに腐朽官僚制であるか、自己の組織の機能要請にしたがって、国家の機能要請、命題・目的を無視して動く組織であるか。わかりやすくいうと国がどうなろうと知ったこっちゃない、外務省の方が大事だ!という疎外・倒錯・フェティシズムですね。それがいかに起こっているかよくわかります。


 よりによって、また処罰されたのはノンキャリア。
キャリアには決して罪が及ぶことはなく、本当の問題が追及されることはない。そもそも腐朽官僚制をチラッと見てみようと思ったきっかけが、検察改革・不祥事にあるわけで。検察は必ずトカゲの尻尾切りで、お手盛りの懲罰人事でこの改革を終わらせる。100%間違いない。なぜなら三井環氏でも連れてきて、裏金の問題を徹底追及しようなどという動きは微塵もないから。裏金という面ではこの問題は瓜二つ。だからこそ読んでみようと思ったわけで。また気になった点をメモするだけですけどね。

 重要なポイントはたった一つと己は考えます。まともな職務を遂行して、それが評価されない、出世につながらない構造。その一点に問題の本質があるでしょう。

 外務省では出世をするためには、本来の職能を果たすことにはない=
外交官的業績を積み重ねることではない。外交官としていかに優秀であるか、いかに成績を残すかで判断されるのではなく、いかに外務省のためになることをするかで決まる。国家ではなく、外務省に貢献した人間こそが、評価され、出世する。
 官僚組織での評価とはすなわち、自分達の裁量権、管轄領域をいかに増やすかである。それによって法律を作り、影響力・命令力を持つ。するとそこに利権が発生する。直接であれ、間接であれ予算を獲得できるものこそが出世する。
 そこには外務省のためになりさえすればよく、国家にとってよいことか、悪いことなど考慮の余地にない。無論、官僚にも良心があり、優秀なものは国家のために働く。これは間違いない。しかしいざというときには国家のためにならないことでも、外務省のために働くことが多い。彼らの忠誠心は役所・所属官庁に向くということである*2
 特に外務省というのは他の官庁と比べて独立する要素が強い。その官庁が自己の機能要請でしか動かなくなればどうなるか?外務省改革どころか、いったん廃止・解体することすら考えなくてはならない時期に来ていると己は思う。

 この本の主眼はロジ、
ロジスティックスにある。本来補給という軍事用語であるが、外務省では予算を獲得すること、いかに汚職、非合法・合法問わずにうまくカネを処理するか。つまり裏金を確保しておくかということになる。一時期うわさになったプール金などもこの流れにあると。これは組織腐敗というだけでなく、そもそもの行政上の不備がある。細かい外交の交渉時においては、すぐカネが出せないといけない。外交にはカネがかかる。特に情報・軍事力がない日本においてはそうだろう。そのカネが単年度予算や細部項目に切り分けられた今のシステムでは柔軟に対処できないのだ。だからこそ裏金を常に用意しておいて、即座に金を拠出できないといけない。制度上の不備が構造象上必然的に汚職を生むといういつものパターンですね。

 まず大本に
現システムが外交を行ううえで機能不全に陥っている現実がある。これを見ないと外務省改革など到底不可能である。率先して、外務省の予算だけは複数年度にする。そして何十年かの後に検証できるようにしないと、決して腐敗はなくならない。有名な松尾事件のように、本来外交のために作った裏金が知らず知らずのうちに、仕事と個人の目的の区別がなくなり、腐敗のみに使われていくようになる。松尾事件は個人の腐敗・汚職ならまだよかった。しかし彼の作った裏金は外務省全体に蔓延していたのだから、話は深刻。組織にとって必要な金が、いつの間にか個人の汚職、組織の汚職・腐敗に転用されていく。まこと見事な腐朽官僚制、汚職構造の典型である。いつか腐朽官僚制の時点項目が作られるとき、このケースが事例として取り上げられるんじゃないのかと思うほどである。

後はメモ。例によって、太字感想。

p20 外務省はコネ社会。コネ人事が横行し、独自基準で採用するから、二世・三世当たり前、うっかり誰かの悪口を言おうものなら、閨閥の怒りに触れて左遷される。外務省こそ世襲社会の権化公家社会ですね。人事権、外務省の採用は外務省にやらせてはいけない。そして、親・親戚に外務省出身者がいる人間は、よほどの能力を証明できない限り、原則首にしなくてはいけないでしょう。この自民党にして、この外務省ありか…。2001年外務省Ⅰ試が率先して廃止になったのは、この不祥事を覆い隠すため。

 p27、田中外相就任の恐ろしさ。松尾事件が暴かれるのではないかという恐怖心。外務省の恥部を洗うということは歴代政権の恥部を洗うことであり、出来はしないと高を括っていた。人事権の凍結。英赴任ロシア課長の人事凍結が、外務省との戦いの始まり。外務省は伏魔殿のキャッチフレーズは世間の注目を集め、恐ろしかった。
確かに真紀子氏は人事権を手につけたというところでわかっていたんだなぁ。個人的には安保もわからない、能力なしのオババに過ぎないと思っていたが、今見るとかなり理解できる点もある

 p28、外務省就任前の大臣は、首相前の上がりポストでケンカをする政治家は殆どいない。票にならない外交の族議員はいない。唯一の例外が宗男議員。よって外務省は独自防衛を講じる。ポンとやってきた大臣が実権を握ろうなんて許せない!これが官僚の常識であり、本音。今一度田中改革の評価を見直すべきではないだろうか?

 個人的にはアーミテージだったか?当時アメリカの要人と会わなかったことがあるが、あのように対米追従を拒否する姿勢は、かなりまずかったと感じる。会わなかったこと=対米追従という路線自体を否定はしない。ただ、外務省改革をするのというのなら順番があり、まず外務省の体質を改めるというものを最優先事項とするのなら、それに絞るべきだった。アメリカを敵に回すのは最後にすべきだった。外務省内部でシンパをどれだけ育成できるかが鍵になるはず。

 そのうえさらに、宗男氏とも対立して、結局両方ともパージされて、得をしたのは外務省だけ。いかに戦う上でのやり方がまずかったかがよくわかる。今後外務省改革は、国共合作みたいにムネマキ合体で行われる流れになると感じるなぁ。そしてその後の変える会の座長がオリックス宮内義彦さん。この人を個人的には知らないが、改革の骨抜きに協力しているところを見るとあんまりよくない人物なのかもしれない*3

 p40、どうせ覚えなくてはならないのなら、早いうちにプール金作りを覚えよう。穢れ仕事、裏金の恩恵を最も受けたのはキャリア。

 p42、金のことはノンキャリアに任せておけ。
 p44、プール金はありませんと明言した小和田氏。つまりこれが暴露されれば、皇太子妃にも醜聞が及ぶことになる。だからこそ会計課は暴くなんてできっこないと、タカをくくっている。つまり改革の嚆矢はここにあるということになる。己が外務省改革をするなら、真っ先に、小和田氏をやる、狙う。彼の罪を暴くとすなわち、全部を暴くことになる。タブーなき改革になるからだ
 p48、裏の会計処理が出来る庶務係こそ仕事のできる人間。
 p51、そのやり方は危ないぞ、と忠告をくれる同僚もいたが、耳をかさなかった。同僚のためにやっていることだ。少しくらい汚くたってなんだっていうんだ。
 p52、そしてその忠告をした同僚が、一年以上経って何の問題もないから、今じゃみんながやっているよと述べた。新しいやり方を作ったのはこのオレだという自負があった。みよ!この汚職の構造を!まるでケンカで勝ったことを自慢する中学生の心情と一緒ではないか。犯罪という意識はかけらもない。犯罪競争をしている。犯罪自慢をすること不良のごとし
 p53、ノンキャリアのトップ庶務主任に37歳で就く。
 p59、外交機密費の官邸への上納、外遊などへの流用は間違いなくある。
 p64、愛人作りのために外務省は美人アルバイトを採用する

 p68、在外公館という聖域を守りきった。もし廃止されれば、外務省不要論に圧力が高まるのは必死だったろう。

 p70、天木氏と同じくオーストラリア大使館の不正。その後も問題を起こす。ここでも実名はない。なぜ

 ジャンタクだ、ワインだ、ミラーボールだ、運び屋だ。醜聞が色々ありイチイチ取り上げないが、知りたい人は是非チェックしていただきたい。

 p96、タイの不正ビザ発給を止めたところから、闇社会に狙われ、暴行される。その後ようやく予算がついて警備体制、ビザ発給人員も増えた。前例がないと何も改革されない。はっきりいって問題の先の手を打てない以上、国会が機能していないとしか言いようがない

 p110、改革で一つ局を減らせといわれたのをかばった宗男。以後外務省は宗男に頭があがらなくなる。

 p112、本来の任務が終わっても、関係のない仕事でも、一度就いた予算は残り続ける
 p124、奥大使が乗っていたランドクルーザーは強度が低い。強度が高いベンツなら死ぬことはなかった。つまり戦地ではないからとの理由で送られなかった。もしくはこのベンツを手放したら俺の安全はどうなるんだ!というエゴで見殺しにされた可能性が高い。

 p131、天皇陛下がお泊りになられる部屋の料金がいくら高くても突っ込まない会計検査院鳩山憲法案でも独立会計検査院の必要性を提唱していましたよね。独立して憲法判断をする最高憲法裁判所とともにこの二つは改革の肝なのに何やってるんでしょうね
 p138、外務省のコンセンサンスとして沖縄が会議の舞台になることは考えられなかった。しかしサミットで沖縄になった。さてこの裏には一帯何があるのだろうか?考えられるのは2000年に北方領土の返還交渉の期限があって、正確には国交回復だけど。沖縄を選んでそこでサミットをやるということはさらに沖縄問題、日本の領土問題をクローブアップしようという意図があったのではないか?それを仕組んだのは一体誰なのか
 p141、これまでのサミット費用は6億、9億、15億。今回は200億。経済局は42億。半分でもサミットは開催できた。後は無駄遣いで、なんと財務省にいくらか返還した!役人文化では考えられない。
 p146、愛人・家族の領収書を平気で落とす。
 p151、このサミットで電通が要求してきた金額は10億。しかもその後払えないといったら、億単位で減らしてきた。一体どういう見積もりをしていたのか、不明。
 p164、中学生売春議員の接待とか、首相が女抱いた話とか、そういうのは書くなら実名で書くべきであると思う。中途半端だなぁ。書き方が。こういうときに時の首相がと書いて、いつの首相の誰だろう、とわかりにくいのが首相にとって幸いなのか?天木氏もそうだけど、実名を伏せたのは訴訟を恐れるとかではなく、強請るつもり・交渉のネタということなのでしょうか?
 p175、野中広務が沖縄候補評価×に激怒。結局沖縄に。政府に反対的な太田から経済界出身の稲嶺氏に代わったこと。このご褒美以外の何物でもなかった。官邸からの機密費も出ていた。丁度この前、野中氏に触れたしね。野中さんって実力者なんですね~。そして沖縄をいつでも中央のコントロールにおくために、カネでたらしこもうという基本姿勢が透けて見えますね。こういう政治家がいる間は沖縄問題は決して解決しないし、沖縄の人間も中央とのパイプをしっかりつながないといけません小沢氏や宗男氏のような人物を選んでパイプ作りをしないとダメでしょうね。無意味な反発、特に鳩山政権のような沖縄に好意的な政権に反発して自滅するのは論外ですね。統制されたデモ中央政治家とのパイプこれが将来の沖縄のキーワードになるでしょう
 p177、外務省の人間を呼びつけたことはないという宗男氏の答弁はウソ。俺以上の重要な用事があるか!怒鳴りつけるのはざらだった。

 p183、松尾は賭けマージャンで人脈を作っていった。
 p184、松雄の実力の裏づけは外務省の「松永スクール」=松永信雄を頂点とした。谷内正太郎や斉藤邦彦、川島裕の派閥。この松永スクールは今でも影響力を及ぼしているのだろうか?谷内正太郎が麻生氏の三島返還とか、天木氏が名指しで指名したところからそんな気がするなあ
 p196、松尾・淺川両氏は愛人をアルバイトに使った。
 p199、筆者を含めた三人が汚職の頂点と暴露されたのは「週刊ポスト」から。でた!オレたちの、ニホンノクオリティペーパー!さすが週刊ポスト!俺たちに出来ないことを平然とやってのけるゥ!(ry。SEX特集が組まれるクオリティペーパーってなんなんですかね…
 p212、野党に冷たい官僚。事前に質問の内容の詳しいことを調整する。それはわかる。しかしどうせ野党の言うことだからと、国会対策程度に野党を軽くあしらう。こんなことで国会が正常に動くわけがない。官僚が与党にべったりorz今はどうしているんだろう?自民党を足蹴にしているのだろうか?官僚は、少なくとも与党べったりでなくなったのであれば政権交代の意味はあったといえますね

 p222、むちゃくちゃな会計処理を命じる天木氏に、それを諌めたノンキャリの部下を左遷。いうまでもないが、天木氏も外務省の人間であった以上聖人君子ではなかったということだ。そしていうまでもなく、氏の能力と人格はまた別物だ。キャリア意識の凝り固まった天木氏は自分以外の人間をバカにしている。*4
 p227、雅子妃は普通の人間なら領収書を回す専門書購入を自費で払っていた。

丁度いい分量だし、もう一冊書くのに長いし、一緒に書くものもないので、この一冊で終わりにします。残りは三冊まとめちゃうことにしました。*5

*1:

 

*2:ここを見ると官僚性悪説で、国益なんか度外視だ!官僚なんて人間的に糞野郎だ!というイチャモンに見えるな…。別に煽らなくても、国益>省益>私益であるべきものが省益>国益になっているだけでいいですね。私益は人によるでしょうね、ひどい人だと私益>省益>国益になってしまい。健全な組織というのはそういうひどい人間が最小限になり、逆に腐敗組織だとそういう人間が最大になってしまうというまあ当たり前の話ですね。そういう腐敗組織を健全な組織に戻しましょうね~というだけのコメントでことたりますね

*3:外務省改革で田中真紀子さんはいずこへ?反省してムネオさんに勉強させて下さいとでも言えばいいのにね

*4:そういえばノンキャリはアホとか書いていましたね

*5:今回も誤字・誤変換が5つ以上あったな(´-ω-`)