てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

日馬富士暴行事件の解説⑤ 貴乃花「理事」への処分は正当、むしろ軽すぎる。貴乃花理事落選は当たり前の結果 <前編>

 終わらない…。他にも書きたいネタがくさるほどあるのに…。前回書いたモンゴル人差別と親方理事制、徒弟制を前提とした部屋制度及び親方株云々という話で大体終わる*1。この話をして終わればいいだけだったのに、次々と書きたいことが出て来て終わらなくなってこのザマです。延々余計な話が続きます(笑)。モンゴル人差別云々という問題の本質と、どうして貴乃花改革は失敗するのか?という分析をして終われるはずが、事態の新展開で終われなくなってしまいました…(´-ω-`)。「黒幕は白鵬、黒鵬・悪鵬ではなく、黒乃花・悪乃花!?そしてマスコミである!!」と書いてビシっと絞めて終わる予定が、前回書き残していたパートとちょっと整合性がつけられない。つなげるのに無理があるので、つなげるの諦めることにしました。前中後編で無理やり三編構造にしても良かったんですけどね。流石に繋げないほうが良いだろうと、長いのをごまかすために三編構造シリーズで簡潔にまとめた感を出したかったのですが、その手法も限界に来ました(笑)。つかこれ自体長くて分割しないと無理ですし(^ ^;)。
 今回は貴乃花理事の落選という新事象もありましたし、それにつなげることでまとめてしまうことにしました。前回の貴乃花改革は何故失敗するのか*2の続きで書いていたものなので、それにつなげると収まりが良くなるので。理事落選についても触れておきたいポイントも少しとは言えあることはありますしね。貴乃花改革は何故失敗するのかという話の半分以上は、どうして貴乃花は他の親方衆に支持されないのかという話でもありますからね。日馬富士の事件で被害者側の貴ノ岩貴乃花親方の警察行きは、どうして角界の反発を招いたのか?諸親方達は反貴乃花派になったのか。改めてこれまで論じきれていなかった解説をしていきたいと思います。

■相手は~するはずという思い込みと思惑の違いから始まった事件
行き違いと考え違いから始まった 日馬富士傷害事件 (時事通信) - Yahoo!ニュース
 この文にあるように、それぞれが相手の意図を見誤ったことが積み重なって今回の事件に発展したという性質があるわけですね。
 >貴ノ岩白鵬の話が一段落し、元日馬富士と別の話をしていたので説教が終わったと思い、スマホに届いていたメールに返信したもので、非礼を働いた認識はなかった。店を出た後も、同席していた石浦*3に、なぜ殴られたのかと話し、翌日、元日馬富士に謝罪したのも、知人に「謝っておいた方がいい」と言われたからで、殴られた理由が分からないままだった。
 >暴行の翌朝、貴ノ岩が元日馬富士に謝って両者が握手したことで、周りの力士も一件落着だと考えた。後日、事件の端緒に接した相撲協会執行部もそれを伝え聞いて同様の思いを抱いた。
 >執行部が当初、貴乃花親方と元日馬富士の師匠、伊勢ケ浜親方(文中ママ)の話し合いを求めていたことも分かった。
 >本来、示談と組織としての処分は別物だが、貴乃花親方が協会のそうした姿勢から、両者による解決で済ませて主体的に日馬富士白鵬を処分するつもりがないと思い込み、態度を硬化させた可能性がある。

■お互いの意志を確認しなかった故のすれ違い、誤解が今回の事件の発端なのか?
 ―この流れから、暴行現場にいた力士達も、協会も伊勢ヶ濱親方も、事態は大した問題に発展しないだろうと捉えた。そして貴乃花親方は、協会と伊勢ヶ濱親方の態度を見て、しっかり問題に対処するつもりがないと考え独断で警察に行った―そう捉えるのが適切だと思います。こういう流れを見ると誤解、コミュニケーション不足がもたらした事件ということで落ち着きそうなものですが、果たしてそうでしょうか?結論からいうと、そうではなく業界の常識・慣習、角界の人間のそうするだろうという予想から貴乃花理事は大きく外れた行動を取ったのですね。ですから、協会・貴乃花以外の理事・執行部の面々だけでなく諸親方も反発したのです。そこをおさえないと今回の問題はよく理解できないでしょう。メディアの人間でもそういう理解がないまま語っている・論じているので、世間一般の人はなおそうでしょう。

貴乃花派だった伊勢ヶ濱親方&理事長選後の離反、八角理事長に不祥事の責任を取れと考える親方はいない
 最初、一番悪いのは加害者の親方でありながら協会への報告を怠った伊勢ヶ濱親方だと書きましたが、これもかなり微妙になってきました。というのも前回書いたとおり、伊勢ヶ濱親方は貴乃花だったのですね。理事長選挙で惨敗した貴乃花理事を支持した数少ない仲間だったのです。
 ということを考えれば、貴乃花親方が暴行事件があったとして、その犯人が伊勢ヶ濱部屋日馬富士だとしたら、事件を大事にしないだろうと考えるのは普通の人間の発想でしょう。貴乃花理事は、直近の理事長選挙で味方をしてくれた伊勢ヶ濱親方に手心を加えるはず。悪いようにはしないはず。理事長や危機管理委員会がそう考えて問題に対処しようとするのは当然。数少ない味方をわざわざ敵に回すようなことをするはずがない。
 八角理事長も、貴乃花派同士の揉め事を律儀に上に報告してきた位の感覚しかなかったのではないでしょうか?いずれにせよ、とりあえず両親方がどういうふうな着地点に持っていくのか、落とし所を決めるのか、それを待ったというのは至極当然の感覚・発想であったと思われます。理事長の責任云々問う人もいますけど、彼は至極当然の対応をしたと見なすことが出来ます。これで八角理事長に不祥事の責任を取れというのは無理がある。シリーズのラストで語りたいと思いますが、貴乃花親方も過去に不祥事を起こして不問にされている。そういう過去の経緯を考えても貴乃花親方が問題を大事にするはずだと捉えるべきとはいえない。当事者同士の手打ちも済んでいる・貴乃花親方と関係の近い伊勢ヶ濱親方同士のトラブル、そういうことを総合的に踏まえると日馬富士を厳罰に処すべきだった・そうするのが当然の判断だったというのは無理がある。*4

伊勢ヶ濱親方の離反、貴乃花派から中立・八角派へ
 伊勢ヶ濱親方は、理事長選挙以後、貴乃花理事とは関係が悪化していたと言われています。それもそのはず、選挙で惨敗したような人についていこうとは普通思わないからです。八角理事長と関係改善に動いたと言われ、理事を辞任するまでは審判部長代理だったのですね*5。おそらく貴乃花理事長が誕生する可能性があると思い、票を投じたのでしょう。そもそも熱心な貴乃花派ではない。基本は中立派で今回は勝ち目があると思った貴乃花理事を支持した。もしくは将来のことを考えて、貴乃花理事に恩を売っておこうと考えたのでしょう。
 しかし、惨敗の結果を見て、しばらく貴乃花理事長の目はないと見切ったのでしょう。このままいけば、次の職務分掌で正式にナンバー3の審判部長に復帰したでしょうね。何かの記事で、伊勢ヶ濱理事は貴乃花理事と関係が悪化していたから、貴乃花理事は伊勢ヶ濱理事に配慮しなかったというようなものを読みましたが、それはありえません。そんな考えは論外です。

伊勢ヶ濱理事を貴乃花シンパにする機会だった暴行事件
 伊勢ヶ濱理事は貴乃花理事の先輩、貴重な年下貴乃花親方を支持してくれる数少ない年上の先輩親方であり、何より理事。今は中立から八角理事長よりにシフトしたとはいえ、貴乃花理事に投票したという事実は変わらない。この恩義から言っても、伊勢ヶ濱理事を軽視することはありえません。
 伊勢ヶ濱理事が貴乃花理事に恩を売ったのではなく、逆。貴乃花一門の票を回して伊勢ヶ濱理事を誕生させたという見方もできます。貴乃花一門は20票にいかなくとも、一門外の票を動かすことが出来る。15~18票近く持っていると言われます。なので、貴乃花一門から二人目の理事を出せない分の余り票を伊勢ヶ濱理事に回して当選させたということも考えられます。票の関係から貴乃花伊勢ヶ濱という関係だったということは十分考えられますね。その裏切り者伊勢ヶ濱を見切ったという見方も可能でしょう。しかしそれでも、理事に立候補して当選するくらいの票を持っているわけですから、有力者であることには変わりない。そういう人間を味方に取り込むことでシンパを増やしていく必要性があることには変わりないので、貴乃花からすると伊勢ヶ濱親方が中小勢力であるとしても、彼を敵に回すことはありえないという結論に違いはありません。
 そういう風に考えると、伊勢ヶ濱理事は理事長選で不利であるにも関わらず、貴乃花理事に一票を投じることで票を回してもらった義理を果たしたと見るのが自然なのでしょう。票を回したことで、自分の意志に絶対服従すると考える貴乃花理事が甘いとするのならば、理事長選で票を投じたから義理を果たしたと考える伊勢ヶ濱理事も甘かったと見てもいいかもしれません。

 それはさておき、貴乃花理事は伊勢ヶ濱理事に直接話をして説得することで、また彼を中立・八角派から貴乃花派に引き戻せるわけです。警察に行く準備をしつつも、伊勢ヶ濱部屋に直接訪れてそういう話をする。
 (伊)「え、警察に?貴乃花くん、いや貴乃花理事。今回のことはどうか水に流してくれないか?この通りだ。」
 (貴)「伊勢ヶ濱親方、私と親方の仲じゃないですか。流石に日馬富士を無罪放免には出来ませんが、決して悪いようにはしませんよ。今後も角界のため、協会を良くするために、一緒に頑張ろうじゃありませんか(ニッコリ)」
 ―というようなやり取りでもして事件を収める方向に向かっておけば、伊勢ヶ濱理事に恩を売ることが出来る。今後も伊勢ヶ濱一門の票をある程度計算できる。理事長になって相撲界の大改革をしようというつもりなら、暴行事件が許すことが出来ない蛮行だとしても、譲歩して伊勢ヶ濱理事に有利な落とし所を見つけてやる必要がある。
 そういう事情・背景を考えると、八角理事長や伊勢ヶ濱理事が問題が大事にならないと考えるのは至極当然なわけですね。貴乃花が大改革をしたがっている野心家ならば尚更。

■政敵・反貴乃花派を増やした貴乃花

 何より、今回のように強硬な態度に出てしまうと、伊勢ヶ濱理事・一門を敵に回してしまう。事実の是非や経緯は置いといて、伊勢ヶ濱親方からすると、横綱まで出世した可愛がっていた大事な力士を貴乃花親方によって殺された・引退に追い込まれたわけです。この恨みを抱いた伊勢ヶ濱親方が今後協会においてどういう行動を取るか?貴乃花になるに決まっているではないですか。
 早速、伊勢ヶ濱親方は次回の理事選に立候補する意欲を示していますが(これを書いていた時は伊勢ヶ濱親方も立候補すると言われていました)、もし彼が理事に返り咲いたのなら、貴乃花絶対殺すマンとして、貴乃花理事の足を徹底的に引っ張る反貴乃花派になってしまう。現代の角界では、一門の結束はあまり強くないと言われてはいるものの、何かのきっかけで一門全体で反貴乃花になるような可能性のある行動はやってはいけないに決まっている。二所ノ関一門についで、また違う一門を敵に回すのか?こんなことでどうやって理事長になって、大改革を実行するというのか?理解できません。

伊勢ヶ濱親方・一門についで、白鵬・モンゴル派を敵に回す愚行
 もう一つ理解できないこととして、言うまでもなく日馬富士というのはモンゴル人なわけです。もし日馬富士が引退ということになれば、朝青龍についで、またモンゴル人横綱を殺すことになる。そして事実そうなった。これで完全に現代相撲界で有力勢力の一つであるモンゴル派閥を敵に回してしまった。許せないことだとしても、ぐっとこらえて日馬富士が引退しないような処分で決着させないと、反貴乃花派勢力が強大化してしまう。
 今回の貴乃花親方の行動はたとえ、正しい行動だとしても、伊勢ヶ濱親方とモンゴル力士グループと二つの敵を作ってしまったという最悪な結果となったわけです。

 日馬富士の引退会見直後に、引退までする必要はなかったのではないかということを言っていました。貴乃花親方は日馬富士は引退しなければならないとまで考えていなかったかもしれません。しかし、政治とはその行動がどういう結果をもたらすかを計算して行わなければなりません。貴乃花親方は結果を計算できなかったとしたら、政治能力がない無能と言わざるをえません

白鵬を敵に回す愚行
 白鵬は千秋楽で「膿を出す」発言をしました。あの真意は、「注射」を止める。貴ノ岩にもこれ以上手を出さない。場所前・中のモンゴル人同士の飲み会も止める。だから訴えを取り下げてくれ、許してくれということ。そもそもモンゴル人達は普通にやっていれば勝てる。楽に勝つため、政治上の目的のために星の回しあいをやってモンゴル勢力の拡大を狙っているに過ぎないと考えられます。日本人も、他の外国人力士も注射をしない五分の条件ならそれでいい。別にそれでも十分勝てるので、絶対譲れないラインではないですからね。
 しかし、貴乃花親方は訴えを取り下げなかった=白鵬のメッセージ・交渉を無視した。結果、日馬富士は引退となった。日馬富士の首を取られた白鵬貴乃花絶対殺すマンになりました。「巡業部長が貴乃花理事のままなら巡業に行きたくない」発言に、わざわざチームモンゴルのジャージを着てきたことを見れば、白鵬はこの件で貴乃花理事を絶対許さないと宣言したことになります。モンゴル派・白鵬派という反貴乃花派の立ち上げを宣言したわけです。着々と将来のために相撲界を変える理事長の座のために、内弟子を取るなどの準備をしてきた彼ですが、その現役最強で史上最多優勝など数々のレコードを持つレジェンドを敵に回すことになりました。
 以前、最後にモンゴル派を敵に回すことはありえないと書きましたが、白鵬一代年寄として協会に残った場合、その実績から現貴乃花と同じかそれ以上に角界に影響力を残すことになります。その彼も不満を持つ改革派である以上、貴乃花と折り合いがつけられないところが多くとも、改革で共通する点は多い。改革する度に邪魔になる反対派の理事を減らす=年寄名跡問題などの改善については彼の協力が不可欠になるはず。
 色んな親方・一門の諸利害関係者を調整するよりも白鵬のような大物実力者と交渉して取引をするほうが遥かに改革は進めやすい。本気で協会を改革しようという意志があるのならば、実力者白鵬を敵に回すようなことは絶対やってはいけないこと。理事長に上り詰めた時、若手親方白鵬が反貴ノ花として事あるごとに逆らってきたら改革は一体どうなるか?そういうことを考えれば言うまでもないでしょう。

■警察に行く、被害届を取り下げないこと=日馬富士の首を取るという意思表明に他ならない
 正直最初は、日馬富士の引退は時期尚早ではないか?そんなに早く引退を決断しなくても事態の推移を見守ってからでよかったのではないか?と思いました。しかし、報道の流れを見ていると、今日に至るまで相撲騒動の報道がやまないように*6、マスコミがひっきりなしに訪れている。協会や伊勢ヶ濱部屋を守るという意味でも、日馬富士がさっさと辞めないと、日馬富士の周囲にマスコミが押しかけて、関係者に迷惑をかけていたことは必定。これ以上の混乱を避けるためにも日馬富士の引退の決断は妥当なものだったでしょう。もし彼が引退していなければ、マスコミが押しかけて部屋や関係者周辺はその対応でパンクしていた。本来すべきことがまるで出来なかったでしょうね。また有る事無い事根掘り葉掘り探られて記事にされる、付きまとわれるという迷惑を考えれば尚更でしょう。
 もし貴乃花親方が伊勢ヶ濱親方の要請を受けて警察への訴え・被害届を取り下げて事態の早期収集を図っていたら、日馬富士の引退は避けられたかもしれません。そう考えると伊勢ヶ濱親方の怒りは察するに余りあるものがあるでしょう。
 そういうことを考えてもやはりいきなり警察に行ったのは理解できない行動。また、その後協会や伊勢ヶ濱親方の要請を受けて訴えを取り下げなかったことも理解できない行動。日馬富士伊勢ヶ濱親方、そして協会・現執行部にダメージを与える、責任を取らせるという意図があったとしか思えない。本当に何を考えているかわかりません。

貴ノ岩と部屋・一門のことを考えたら普通は妥協する
 自分の改革が出来なくなるという以外にも、周囲の人間に対する配慮という観点からも問題を大事にしないのが普通だと角界の人間は考えるでしょう。弟子を守ると言っていましたが、今回の件でおそらく貴ノ岩はモンゴル派閥から追放されることになるでしょう。下手したら鳥取城北高校閥からも追放される恐れもあります(貴乃花親方も鳥取城北高校とつながりがあるようなので絶対ではないでしょうけど)。今回の一件で、チームモンゴルは目の敵として貴ノ岩の首を狙うでしょう。そういうことを考えても普通は妥協をするもの。
 江原啓之氏が貴ノ岩についてモンゴルに帰れるのだろうか?と心配していましたが、まさにそのとおりで、モンゴルでは英雄である横綱日馬富士を引退に追いやった元凶としてモンゴル人が非国民・悪魔扱いする可能性がある。モンゴルの人々がどう捉えているかわかりませんが、少なくとも将来モンゴルでまともに生活できなくなるリスクがあるのですから、貴ノ岩の将来・人生ために示談で終わらせるというのが親方として取るべき決着の付け方でしょう。そういうことをしなかった以上、貴ノ岩はモンゴルの土を踏まない覚悟がある。日本に帰化して日本人になって生きていく覚悟があると考えるべきなのでしょうが、本当に彼にその覚悟があるのでしょうか?「自分は悪くないのに…。自分が悪いように言われている」なんていうコメントを見るとどうもわかっていないように思えるのですが…。そして貴乃花は親方として一生面倒を見る覚悟が求められますがそれくらいの覚悟を持っているのでしょうか…?
 彼一人で話が済めばいいですが、今回小結に昇進した貴景勝など、貴乃花部屋の力士全員が狙われるおそれもある。貴乃花一門を切り崩すという狙いがあるのならば、一門全体が目の敵にされるおそれがある。モンゴル力士たちが、優勝は二の次・三の次で、貴乃花関係者の力士を潰しにくる可能性がある。そうなったらどうするのか?(時津風一門を離脱した3名の親方衆が一旦様子見で即合流しなかったのにはそういう背景も含まれていると見ていいでしょうね)
 ガチンコが信条の貴乃花一門が故に、却って好都合・大歓迎なのかもしれませんが、ガチンコ相撲と政争では意味が違う。ただでさえガチンコ力士の寿命は短いというのに、弟子の選手生命・力士人生のことを本当に考えているのでしょうか…?

■余談:貴乃花の暴走は皮肉にも相撲を最高に面白くした
 余談になりますが、皮肉にも今回の事件・政争をきっかけにガチンコ勝負どころか、どちらかが死ぬまでの殺し合い。モンゴル派VS貴乃花派のリアル真剣勝負の構図が実現することになりました。間違いなく真剣勝負になるこの対決は相撲を見る上でこの上なく面白い力学となって、土俵を白熱させるでしょう。WWEなんか目じゃない、生きるか死ぬかのガチバトルですからね。次の場所がどうなるか今からワクワクしますね。朝青龍引退後まるで見る気になれなかった相撲ですが、見たくなってきましたからね。
 貴乃花派VSモンゴル派また八角部屋の力士との対戦なども見どころになるでしょう。しかし、貴乃花派もモンゴル派も、その他の一門でも派閥でもいいですが、決定打にかける。多数派として主流派を占めるほどの勢力が形成されそうにもないことを考えると、潰し合いで消耗しあう。結局勝者なきまま衰退していくという流れになるんでしょうけどね。

■興行を妨害し、反貴乃花派を増やした警察行き
 伊勢ヶ濱親方・白鵬=モンゴル力士だけでなく、相撲協会の大多数の人も敵に回したと見ていいでしょう。いきなり警察に行くことで面子を潰したということだけでなく、貴乃花親方の行動でスケジュール・予定がぐちゃぐちゃになったからです。
 場所中に警察に被害届を出しに行くことで、協会はその事件についての説明責任が生じる。マスコミが押しかけることで、急遽その対策・対応をする必要が発生して色々な労力・時間を割かなければならなくなった。

 「協会に報告もせずに警察に行くなんてありえない」という言葉をおそらく何万回もメディアから聞いたと思いますが、ホウレンソウの観点以外に、どうして行ってはいけないのかというと、協会・組織に予定外の面倒をかけるからですね。営利企業ではないにせよ、興行を定期的に開いている組織。興行の収益が重要な組織であることには変わらない。どの理事・親方でも、場所・興行が重要だという意識は共通して持っている。
 暗黙の了解として、というか常識として、興行にダメージを与えるような行動を取るような協会職員は居るはずがない。まして理事においておや。しかしこういう事件が起こった以上警察に行かない訳にはいかないというのは当然。だからこそ、警察に行くなら行くで何故行く前に理事会で報告しなかったのか?理事長や他の理事に相談しなかったのか?そこが理解できないわけです。他の理事・親方もほぼそういう思いで共通しているでしょう(まあ、中には本当に警察に行くこと自体がけしからんという発想をする池坊さんのような人もいるかもしれませんけどね)。*7
 興行を開くということは、多くの仕事を担当ごとに割り振って、職務にある人間がその役目を全うするはず。人員が余剰か人手不足かどうかわかりませんが、本来の割当を超えて、事件対策にマンパワーを割くとなると、普段行っている業務に支障をきたすわけですね。いつもと違うマスコミが押しかければ、場所中の力士も取材だ何だで邪魔されて集中できないでしょうし、いい迷惑でしょう。

 以前紹介した記事にあったように、対応が後手後手に回ると、マスコミが少しでもいいネタを取ろうと、色んな所に押しかける。その上で違う意見が出ることになり、それを巡ってもまたズレを突かれたりで対応がめんどくさくなる。はじめに結論を皆で導き出し共有した上で不祥事というものは当たりたいもの。その不祥事対策が貴乃花理事の独断による行動のために、まるで出来なくなった。そういうことを考えると、親方や力士衆が貴乃花理事について反感を抱いたとしても何の違和感もないと思われます*8
 貴乃花親方がバッシングされても相撲協会と決裂した本当の理由 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot.ここにあるように、貴乃花親方が事件を知ったのが26日、九州場所が始まるのが翌月の12日で、二週間以上間がある。ということを考えると、貴乃花理事が考えていたように場所前とは言えど緊急理事会を開いて、処分を決めて謝罪会見を開くなど十分に可能だったように思えます。
 しかしやはり、興行を考えると場所前に不祥事を明らかにしたくないと考える理事が殆どでしょう。そして興行の顔である横綱を欠場させたくないとするのも同じ。同じ貴乃花派であり、問題を公表することに貴乃花理事に利がないことを考えると、執行部が当事者同士の手打ちがあったことも含めて処分せずで済ませたことは、角界の慣行から考えて当然の流れだったでしょうね。やるにしても場所後という判断だったんでしょう。その他の親方にしても考えは変わらないでしょう。むしろ、「そんなよくあるちょっとこづいたくらいの暴力事件で警察に行くなんてくだらないことをするなんて…。余計な耳目を集めて、興行に支障をきたすなんて理事のくせに何考えているんだ?バカじゃないか?めんどくさいことしやがって…」と迷惑極まりない行為と捉えている親方のほうが多いと思われます。

貴乃花の暴走を教訓に不祥事対策の徹底・処分の一元化をすべし
 個人的には警察に行く行かないはともかく、処分はきっちりすべきだったと考えます。この点明確な処分を求めた貴乃花理事のほうが正しかったでしょう。シリーズ①で書いたように、危機管理委員会を常設化しておけば、このような誤解・イザコザは防げたでしょう。貴乃花親方が伊勢ヶ濱親方へ話を持っていった時、常設の危機管理委員会に話を持っていくことが出来るようになっていて、そこで一律的に処分が決まるようになっていたらそもそも今回のような騒動に発展しなかったでしょうからね。
 不祥事の発生で、当事者の力士や親方に危機管理委員会への報告を義務付ける。そして危機管理委員会が執行部とは関係なく規約・法に則って一元的に処分を決める。そういうシステムが整備されない限り、不祥事が発生したときに、第二第三の貴乃花親方が出て来るとみなすべきでしょうね。まあ、貴乃花親方のような行動を取る人がそう何人もいるとは思えませんが。
 前回述べたようにそもそも親方=理事制である以上、このような問題は避けられないわけですね。親方衆が協会の役職を兼務する以上、どうしたって業務は片手間になる。二刀流大谷が片方に専念すればと言われるように、本来部屋の運営も、協会の業務も片手間でこなすようなものではあっていけないはずなんです。このように兼務=兼職が当たり前である以上、お互いがお互いの業務・職分に対して、なあなあになってしまう。本来貴乃花のように理事として厳しい立場で親方に望む、親方の責任を問うということはあってしかるべきなのに、そういう責任追及が行えなくなる。こういう視点からも親方理事制は解消されるべきものといえるでしょう。

 親方衆がどうして貴乃花親方を支持しないか、どう貴乃花親方を見ているかということを書いた所で、処分の話と理事選での落選の話を後編でしたいと思います→続く。

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*1:過去記事はこちらです→日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質はモンゴル互助会の八百長・「注射」ではなく、モンゴル人差別と親方=理事制<前編>
日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質は八百長ではなく、モンゴル人差別と親方理事制<中編>
日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質は八百長ではなく、モンゴル人差別と親方理事制<後編>

*2:リンクはこちらです→日馬富士暴行事件の解説④ 理事・理事長選挙から見る貴乃花親方。貴乃花改革は必ず失敗する<前編>
日馬富士暴行事件の解説④ 理事・理事長選挙から見る貴乃花親方。貴乃花改革は必ず失敗する<後編>

*3:彼の父親が、前鳥取城北の相撲部の監督で現在は校長なんですね。その息子さんがこの石浦という力士で、彼は白鵬の付き人・内弟子なんですね。白鵬鳥取城北にも太いパイプを持っているということは注目に値する事なのであえてここでそのことに触れておきます

*4:もちろんこれは世間一般の感覚や論理とは別のモノです。あくまで角界のこれまでの慣習や論理の話です。業界のルール・常識に沿った行動をしている八角理事長を裁くべき・責任を取らせるべきと考える人間・親方衆は殆どいないということです

*5:2013年1月の理事補欠選挙で理事になり、審判部長。 2014年1月の理事選挙も当選で、審判部長留任。2016年3月の職務分掌で、審判部長から大阪場所担当部長に。2017年11月場所で二所ノ関審判部長の休場により審判部長代理になっています

*6:これを書いている時はまだ続いていました。理事選が終わって注目するようなイベントもなくなり、ようやく最近収まってきたと言えるでしょうか?

*7:※追記、おそらく、こういうタイプの組織ではそもそも不祥事を表沙汰にしない。力士同士の揉め事は当事者同士でケリを付けるという慣習があると思ってましたが、実際そういう記事がありました。慣習破りという点で、貴乃花親方に憤る・ついていけないと感じる親方がいてもおかしくないでしょうね。

*8:日馬富士の暴行で巡業での力士の飲み歩きが禁止されたり、お小遣い稼ぎになる年末テレビ出演などが自粛される流れとなったと言います。原因が貴ノ岩になくとも、「うちの弟子が迷惑かけたから」と、力士に迷惑料として現金なり何なり、他のものをあげるという気使いが普通。果たして貴乃花親方はそういうことをやったか?巡業部長で貴乃花理事は嫌だと白鵬が言ったことについても、貴乃花理事はホテルから外出しないから、力士がタニマチと飲み歩くのに気を遣う。実際多くの力士は、ハメを外せなくて嫌なタイプなのだとか。そういう人望という点でいい声が聞こえてこないのは毎度のことですね。本来、優しさと厳しさというのはコインの裏表どちらが欠けても、成立しないものなんですけどね。