てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

日馬富士暴行事件の解説⑤ 貴乃花「理事」への処分は正当、むしろ軽すぎる。貴乃花理事落選は当たり前の結果<後半>

 

―続きです。時系列的に理事解任騒動の話→貴乃花理事落選の話という順で行きたかったのですが、最後の文書の〆を考えて順番を逆にしました。チラ見する人でも興味があるのは何故貴乃花理事が落選したのかということの方でしょうしね。今回は貴乃花理事の落選と理事解任処分の話の2本立てになります。まず理事落選の話から。
 まあ、何故落選したのかというほどでもない。以前から書いてきたように、喧嘩・衝突ばっかしている貴乃花親方に協会執行部・主流派に逆らってまでついていこうとなる親方がそもそもいるはずがないだけなんですよね。角界相撲協会というのは基本互助会であって、お仲間の和を保つことが優先される。慣習や年功序列の論理を無視して身勝手な自己主張・行動をする貴乃花に支持が集まるはずがないだけですね。無理やり従わせるならばそうさせるだけの特別な力が必要。それがないなら衝突を避けて話し合いで相手の意向を最大限尊重しないといけない。衝突を最大限避ける配慮も調整・調停能力もない。であれば失敗する・支持者が出ないに決まっていますよね。
 対立事案があれば、なるべく角が立たないように話し合って妥協しようとするのが常識・普通とされる世界。そういう世界で真正面からどちらかが正しくどちらかが間違っているという図式に持ち込む人間に殆どの親方はついていけないんですね。これまで対立が起こらないようにギリギリの努力を重ねた結果、こういう事件になってしまったというのならば自分たちのリーダーを守ろうと行動する気になる可能性はありますが、そうではありませんからね。最初から衝突する気満々・妥協する気ナッシングですから、そりゃあみんなついていけないわけです。
 ハッキリ勝敗がつくようなことをする、政争で勝った・負けたということになれば永遠に政争が続く。勢力争いで業界がピリピリすることを好まない世界。まあ要するに状況・場が読めてないわけですね。勝負に必要な3つの分析、状況分析・自己(味方)勢力の分析・相手(敵)勢力の分析。そういう分析判断がぐちゃぐちゃだから味方・支持者が増えないし、離反していくのですね。今回の惨敗で貴乃花が嫌われている、支持されない・見限られたというよりも、根本的に対立の図式を持ち込んで話し合いをして物事を進めようとしない・解決に応じないその態度そのものこそが問題とされていると見るべきでしょうね(井沢元彦氏ならば、話し合い至上主義だ。「和」を乱したからだというところでしょうか)。無論、今回の事件で厳しい処罰を望まないものが多数派を占めていた。そもそも不祥事の公開そのものを望ましくないと思っていた親方が多かったということもあるんでしょうけどね。まあ、以下そんな話をしてみたいと思います。

貴乃花が理事に当選する確率は殆どなかった。しかし何故か貴乃花が理事に当選する!と煽り立てたマスコミ
 そもそも今回の理事選で貴乃花親方が当選する確率は低かった。というか殆どゼロに近いくらいありえなかった。今回の理事選での注目ポイントは、貴乃花立候補で何票彼に入るか。それでも親方の誰かが貴乃花の行動に賛同して票を入れるかもしれない。もしかしたら4~5票入るのではないか?というのが今回の理事選のポイントだった。そういう反協会・親貴乃花のスタンスを示す親方がどれくらいいるのかどうか?というのが今回の選挙のポイントだったんですね。貴乃花一門から二人立てた時点でどう考えても貴乃花理事当選の目はありえなかった。
 事前に無記名投票が記名投票になっていた云々という話があって、協会がそういう卑怯な方式に事前に変更したからだ!なんて話もありましたが、そうでなくても余り結果には大差なかったでしょう。公職選挙法のようなものがある世界ではないので、誰が誰に入れたとかすぐわかる世界ですからね*1。過去の貴の乱で一門を飛び出して当選したときも、当人が私が貴乃花親方を支持したと明言しましたが、そうでなくても誰が票を入れたかすぐわかったでしょうしね。
 不思議なのは、マスコミが貴乃花が勝つ!というような報道をしていたこと、ミヤネ屋とかフジテレビの安藤優子氏が出てた番組でしょうか?それなどで、まるで貴乃花理事当選が当然のこととして報じられていたことです。そんなことあるわけがない。なぜなら今回の理事選ではメンツをかけて「今回だけは絶対貴乃花一門に票を入れるな。入れた場合は破門にする」と各一門が徹底したはずだからです。一門や年長・先輩親方衆のメンツ、つまり組織のメンツを潰した、怒りを買った貴乃花に票が入るはずがない。二年年期ですが例年になく特別な意味合いを持つ理事選となった今回の選挙で、一門の意向に反発して貴乃花一門に票を入れるということは一門からの追放・破門を意味します。破門されて一門に所属しない風来坊の宿無し部屋か、新一門の設立か、貴乃花一門に移籍することになります。どの道を選んでも茨の道、そのリスクに見合ったリターンがどれくらいあるか?そういうことを考えれば、貴乃花親方・貴乃花一門と命運を共に出来ないですよね。
 これまで書いたように貴乃花親方の手腕に疑問符がついた。貴乃花一門が今後隆盛を極めて出羽海一門を超える最大派閥・一門になるとでも言うのなら別ですけどね。もちろんそういう見通しがあるわけでもない。前回の選挙で惨敗したように彼には多数派を形成する政治力がない。そういう人間についていくリスクを考えたら殆どの人間はそういう選択をすることは出来ないでしょう。

貴乃花シンパ、時津風系6親方の不支持
 週刊ポスト及びその系列だと思いますが、昔から「八百長」問題を取り上げて親貴乃花報道を繰り広げていました。女将さん効果で親方衆の半分は貴乃花支持だとか、不満を持つ大卒出の学士系力士達が新派閥を立ち上げて貴乃花一門に合流とか、時津風一門から錣山親方(元寺尾)ら3人が離脱した時、貴乃花一門へ親方衆が雪崩を打って合流・貴乃花シンパの増大が止まらない!みたいな報道をしていましたが、そんなこと普通に考えてありえないでしょう。貴乃花一門と命運をともにするという決意を持っていたら、離脱した3名の親方はそのまま貴乃花一門に即合流してますよ。即合流しなかったというのは不安要素があって、まだ判断を保留していることに他ならないに決まっているでしょうにね。何を言っているんでしょうかね。
 前回の理事選では、時津風一門から6名の親方が貴乃花一門へ票を入れた*2。しかし今回は一門を離脱した3親方すらも貴乃花一門へ票を入れなかった。貴乃花親方の行動を、貴乃花親方支持者・シンパすら否定したわけですね。言うまでもなく、今回の件で貴乃花親方の行動についていけなくなった。流石にそれはないだろうとこれまで貴乃花を支持していた一門外の6親方衆がそのスタンスにひいたわけですね。で、今回の選挙で一歩身を引いて票を入れなくなったわけです。
 勘違いしてはいけないのですが、これで15票持っていた影響力が消えてなくなってしまったわけではありません。あくまで「今回は」支持できなかったということです。次、また貴乃花親方が行動を改めたり、まっとうな姿勢になればその時はまた一緒にやりましょう、支持しましょうということですね。貴乃花派から中立派に今回は移ったということ。決して元の影響力を取り戻せないわけではないのです。流石にここから自分に近い準味方勢力である時津風系6人衆が離反する・嫌われるようなことをしないと思います(―そう思うのですが、テレビ出演などを見るとさらなる最悪もありそうな…、うーん。)。

■味方を増やすどころか減らした貴乃花の乱
 むしろポイントになるはこういう離反者を出しながら、他の一門から新しい支持者を得ることができなかったということ。政略結婚で味方にした陣幕親方の1票だけで、他の親方は誰一人として新しく貴乃花支持者にならなかったこと。味方からの反発がありながらも、中立・敵勢力から新しい味方を作り出せていたら、今回の貴乃花親方の行動は理解できない・支持できないと思う親方でも、それはそれとして理解をしてくれたでしょう。新しい勢力・派閥との関係構築というプラス要素が僅かでもあれば、今回の行動が自論とは相容れなくても角界で影響力を持つ貴乃花親方との手は切れないことになります。しかしそうではない。行動する度に敵を作り、味方の離反を招く。朝青龍ならずともそリゃあ、バカじゃねえのと笑っちゃうでしょう。
 結局、貴ノ岩の事件で彼が警察に行ったことは何の意味もなかった。親方衆の誰一人として彼の行動に同情・共感して、彼と一緒に行動しようという親方が出なかった。発信力・求心力という以前に、彼のやっていることが無茶苦茶ということに他ならないということですね。世間一般の価値観としてはともかく、貴乃花の言動は票を握っている他の親方衆からは異常なもの・支持できないものに映っているということです*3

■不祥事はどの部屋でも抱えるリスク、そこに手を突っ込んだ貴乃花についていく親方はいない
 多かれ少なかれ、各部屋ではなんらかの問題を抱えている・力士が不祥事を起こすリスクが有る。例えば大砂嵐の運転のような事が起こりうるわけですね。そういう時、親方としては弟子を守ってやりたい、部屋を守りたいとなるわけです。そのためにできるだけ被害が小さくなるように動くもの。そういうふうに協力をするというのが暗黙の了解として角界に存在する。貴乃花親方はそれを破った。
 前述通り、敵対勢力ならともかく味方側に近い伊勢ヶ濱親方の力士・日馬富士を殺した。ということは、綱紀粛正の手は止まらない。何か不祥事があれば即力士を殺しに来るマッド親方として力士やその他親方の目には映る。味方サイドにさえ粛清の手が及ぶというのならば、こんな厳しい規律を持つ一門に自分が入った場合どうなるか?怖くて仕方がないでしょう。何かあったら不祥事に厳しい貴乃花一門の力士なのにそんなことしていいのか、またそんな甘い処分で良いのか?と言われるわけですからね。そして処分や規律の厳しさもさることながら、他の一門の力士を攻撃する≒他の一門と抗争をためらわないわけですからね。これでは貴乃花派として足並みをそろえて行動しようという親方が減るのは当然でしょう。
 前述の時津風系6親方としても、貴乃花一門に入りたくないとは思っていないでしょう。ただ、貴乃花一門に合流することで各一門・親方の反発を招くのならば御免こうむる。それこそ時津風一門から「独立はともかくよりによって貴乃花一門に行くだと!この裏切り者共が!」と敵対関係を招くのならば、相当な覚悟を必要とするでしょうからね。新一門・貴乃花一門に合流すること=裏切りではなくて、むしろ旧一門時津風系と、新一門貴乃花系との架け橋になる。移籍が自身や部屋にプラスとなるからこそ、貴乃花一門に移籍したいわけです。マイナス要素の方が多いとなるならば合流をためらったり、やっぱり辞めたと決断を変更したりするのは当然でしょう。
 また一門参加をためらうのは親方以前に人間として自然の反応でしょう。改革をしたい、貴乃花の志に共感する。が、しかしその後もうまくいくという保障がない・勝算がない。となれば、部屋を運営する≒中小企業の責任ある経営者として経営する部屋・企業を守ることを優先するのは当たり前。大事な弟子・社員を守るために行動するのは当たり前。どんなに意志・理念、志が正しくとも先立つもの・現実の生活を守る保障がなければ人はついてこない。貴乃花に票が入らなかったことはいちいち説明するまでもない、当たり前すぎることですね。

 前回も書いたように、政治というのはどういう結果につながるか想定して動かなければいけない。その結果が今回の貴乃花一門の勢力半減です。前回は貴乃花一門貴乃花系から3名の理事を輩出したわけですが(貴乃花・山響・伊勢ヶ濱の3理事)、今回は阿武松・山響親方の2名。一門ではありませんが一門外の貴乃花シンパから離反者を出して惨敗になりました。こういう結果をもたらした警察行き・警察への被害届を提出するという行為はやはりありえない行動・暴挙だったわけですね。
 貴乃花一門の最大の目的は、協会を改革すること。まっとうな組織を作り上げることだったはずです。そうするためには何をしなければいけないのか、そして何をしてはいけないのか、そういう政治的計算の元から打算に基づいて行動しなければいけない。それを怠って感情のまま暴走した彼が将来的に大改革を成し遂げることは不可能に近いと言っていいでしょう
 感情のまま暴走する、周囲の意見を聞かずに行動する。これでは今ある一門の存続すら危うくなっても何ら不思議ではないでしょうね。

 結局これまでの主張・分析の延長上にある話になりましたね。これまで書いてきたことと余り変わらないですね。なので読んでてあんまり面白くなさそう(^ ^;)。まあでもそういうこれまでのおさらい・復習をした所で今一度貴乃花親方の行動はどうしてありえないのかという話をしながら貴乃花理事への解任という処分の話をしてみたいと思います。


―ここから話のパート②貴乃花理事への処分の話。理事解任では処分として軽すぎるという話になります。
■被害者側が処分されるのはおかしいというおかしな反応
 貴乃花への処分についておかしいと思う人があまりにも多くてむしろそのことに驚いています。組織の論理から言うと何もおかしいことはない話なのに何故このような反応が多いのでしょうか?とても重要なポイントなのでそれについて触れない訳にはいかないでしょう。
 「貴乃花の乱」はなぜ勝ち目がないのか?日馬富士事件を組織力学で読む ―こちらの記事にあるように、普通の組織の論理から言えば貴乃花のやっていることは異常であり、違反行為です。相撲協会前近代的な組織であるというのなら尚更です。特に取り上げて説明することもない自明のことだと思うのですが、これを理解できない人が意外に多いようなので、引用しました。これが一番簡潔&的確に説明していましたので*4営利企業がその会社の利益を損なう行動を取った人間を処分するのは当たり前、そういう理解でかまわないでしょう。ただ、こちらの記事ではどちらかと言うと、貴乃花親方はまっとうな態度・対応だとしても会社の利益を損なう行為だからという論理で説明しているのでその点は今回の事件とは少し異なるのですけどね。まあ、あくまでわかりやすくするための例えなのでそれは些細な話ということでおきましょう。

 八代弁護士が目についたので、彼を引き合いに出させてもらいます。何回かテレビで見かけたことがあって、まともなコメントをする人だなというイメージがあったのですが、今回の事件では非常に違和感のあるコメントを発していました。端的にいうと貴乃花理事寄りであり、反協会のコメントをし続けています。彼は有耶無耶にされるから親方は警察に行ったのではないかということを言っていたのですけど、そもそも有耶無耶にされるとは一体何なのでしょうか?理事会や、理事長へ直談判しても、有耶無耶にされるなんてありえない。あるとしたら直に身体拘束をする=監禁とか、弟子や関係者などを協会から追放するというような脅迫しかないでしょう。そんなことをするはずもないし、あったとしてもそれを告発すれば、誰が聞いても貴乃花を支持するでしょうからねぇ。
 言った言わないの水掛け論を排除するために、テープレコーダーを持って録音をしておけばそれは避けられるだけですし。貴乃花親方が警察に行くという覚悟を決めた時点で有耶無耶にされるなんてありえない。*5

■理事解任でも直近の理事選出馬可能は事実上の無罪放免。これでは組織のルール違反の処分にならない。貴乃花への処分は軽すぎる
 貴乃花理事への処分がくだされた時、なんで被害者が処分されるんだ!被害者が処分されるなんておかしい!みたいな声が非常に多くて、こういうことが世論で大きな声を持っている・強い意見になっているところを見ると非常に薄ら寒い思いをします。政治的に損をするから大事にすべきではないという損得の論理の問題とは関係なく、組織の規則・ルールを破った人間が処分されるのは当然。それは事の是非とは関係がない。適切な行為であるなし関わらず、誰が見てもルールを破ったことには変わりないのですから何らかの処分が下るのは当たり前でしょう。ルールが間違っているからルールを変えるべきだというのなら理解できますが(というか殆どの人が現行ルール・システムがおかしいと思っているでしょう)、処分自体に文句をつけることは筋違いでしょう。今回の処分はむしろ軽すぎる。理事としての責任をまっとうしなかった以上、処分が下るのは当たり前
 個人的には無期限理事(選立候補)資格停止がふさわしいと思いました。野球賭博事件のとき、当時の時津風親方阿武松親方にそれぞれ5年間と10年間の昇格停止処分が下りました。それになぞらえてこれくらいの昇格停止処分が妥当だと思います。両親方とも4年で処分は解かれたので、この事例に倣って2~3年の資格停止処分にして実際は1~2年で処分解除。つまり一回理事に就けないことにするくらいの罰則が適当に思えました。しかし実際の処分は解任のみ。すぐ直近で行われる理事選に立候補できないこともない。事実上の無罪放免でした。このような軽い処分でもおかしいという反応に疑問ですし、むしろ組織のガバナンスという点で組織のルール違反者・反乱者に対して重い処罰を下さないことのほうが問題であると疑問の声が上がるべきでしょう。そういう主張をする論者がいなかったことの方に強い違和感を感じましたね(貴乃花のやっていることは正しい、しかしルール・規律違反には変わらない。厳格な処分を下し、かつ相撲協会もまた組織構造及びそのルールの改正をすべきとセットで主張すべきですね)。
 貴乃花は親方としての地位を全うするために、理事としての仕事を意図的に覚悟を持って放棄したのだから処分される前に辞めてしかるべき。それならまだしも覚悟の上、信念の行動という意味で一貫性があった。ところが自分は悪くないという一点張り…。解任よりも辞任のほうが組織との衝突を避けられる、弟子を守るという主張・持論を通しかつ組織への最低限の筋を通す・組織の論理と折り合いをつける。それならばまだ理解も出来たのですが…。この事件で貴乃花への処分に文句をつける論者も貴乃花も、どちらも態度や姿勢に論理的一貫性が見られないんですね。これは今後の情勢を考える上で非常に怖い所。

■処分されたのは貴乃花「理事」で貴乃花「親方」ではない
 そもそもなんですけど、貴乃花「親方」が処分されたわけではないんですね。貴乃花「理事」が処分されたわけで。このことについて「二つの身体」という言葉を用いて説明していた記事がありましたけど、あまりうまくないので取り上げませんが、単純に兼職・兼務しているんですよね、相撲界の親方という立場の人間は。
 部屋を運営する親方でありながら、同時に相撲協会の役職を兼ねるという特性が相撲協会の人間には存在します。ですから、今回の件も警察に行った「親方」が処分されたわけではなく、事件の解決・事態収拾に全力を上げて取り組む必要がある「理事」としての職務放棄が取り上げられているわけです。行ったことではなく、行ったあとの対応が問題の焦点なわけです(もちろん行った事自体も問題とされてはいますけどね)。*6
 わかりやすく昨今話題の大谷くんで言うと、ピッチャー大谷とバッター大谷は矛盾することがある。日によってピッチングに専念するあまり、ピッチャーとして見事相手打線を抑えても、バッターとして4タコでまるでいいところがなかった―そんな日があることは珍しくもないでしょう。それをもってバッター大谷が打てないからスタメンを外れるとか、数字が落ちたので年俸が下がるとかそういうことがあると思います。しかしそれはピッチャー大谷としての評価や査定ではない。ピッチャー・バッターの別と同じように「理事」「親方」もまた別。
 今回の出来事も親方・理事という兼職故に、どちらかを取ればどちらかが犠牲になるというだけの話。協会の体制・システム的にそういう矛盾することが起こりうるシステムにそもそも成っている。そして親方としての立場を取って、理事としての立場を犠牲にしただけの話ですね。それで当然処分を受けたに過ぎない。おかしくもなんともない話。ピッチャー大谷が危険球で退場となった時、なんでバッター大谷も退場しなくちゃいけないんだ!と言うようなものですね。
 まあ、でも普通に協会の聴取に協力したり、スケジュールの調整で、今こういう状態で後援会への説明、被害にあったお店へのお詫び、警察への二回目の相談・報告云々があって、それが○日に終わるので、その後に協力できますとか、色々協会と一緒になって全力を上げて問題収拾に動けばよかった話。普通に行動していれば、まず処分されなかったでしょう。

■被害者なら何をしても良いのか?ダメに決まってる
 被害者が処分されるのはおかしいという感情論は、被害者なら何をやってもいいというのでしょうか?被害者である以上、特別な措置が取られるのは当然。それは貴ノ岩の休場による降格はないということを見ても明らか。しかし普通の企業でもそうでしょうが、交通事故のために暫く通院で休むことは認められても、怪我が軽かったにも関わらず必要以上に休んだり、怪我の状態=通院に必要な治療期間を知らせずに、勝手に業務をせず帰ったりしたら業務怠慢で処分を下すのは当然でしょう。理事としてすべきことがある。トップとして最大限組織に奉仕しなければならない職務にある以上、職務が出来ないやむを得ない理由・事情があるのならばそれを説明すべき。その説明をせずに協力しないというのならば、処分対象になるのは当たり前ではないですか。被害者であることは錦の御旗とはならない。にもかかわらずさも官軍のような振る舞いで相手を賊軍認定して一方的に殴りつける貴乃花理事の言動の方こそおかしい。「錦の御旗を握っている自分の思うどおりに行動せよ、自分の主張に従え!」という態度を取り続ける貴乃花理事のほうが異常でしょう。
 被害者であるという論理はそれはそれでいいとしても、協会の調査や事態収拾に協力しないというのはまた別の問題。となればこれはこれで不祥事収拾という業務の怠慢で処分を受けるのは当然。被害者側であるということとは全く関係がない、論理的因果関係がない話。一体何を言っているのかわかりません。

■一体どこから連れてきた謎の池坊評議員議長
 あの池坊さんという変な人が出て来て対応をしたから事態をさらにややこしくしたという一面は間違いなくあるでしょうね。礼を失しているとかわけのわからないことを言っていましたが、礼儀やマナーの問題ではなく純粋にルール違反ですからね。理事としての職務怠慢・責務の放棄=ルール違反で処罰するで十分。「親方としての貴乃花氏を処分したのではありません。それについてはノータッチ、我々が問題としているのは理事としての貴乃花氏であり、及び理事の責任・職務の放棄です」とだけ明言すればよかった。それなのに余計なことを言い出したから話がややこしくなってしまったと思います。朝青龍のときの内館牧子氏のように変な人間をどこかから連れてきている傾向があるように思えますね、相撲協会*7。 
 そりゃ新米・後輩理事が上司や先輩に従わずに自分勝手な理屈で動いていればカチンと来る。礼儀の概念がない、長幼の序がないモンゴル人かお前は!と彼らが憤ってもおかしくはない。しかしそういう感情は本来表現すべきものではない。およそまっとうな組織が役職につけるべき人間ではないですね。そもそも相撲協会は内輪の仲間だけで動かすもの、阿吽の呼吸で忖度しあって組織を回してきたという経緯があるため、内部衝突自体余り経験がない。「まあまあ、ここはひとつ」でカタがついてきたのでこうなるんでしょうけどね。

 今回の一件をムラ社会の論理で、ムラ社会に逆らったからこそ、貴乃花親方が処分を受けたという主張をしているものもありましたが、筋違いも甚だしいですね。ムラ社会の独特の論理、反社会的な論理に逆らったから処分を受けているのではなく、貴乃花理事の方が自分勝手な理屈で組織の論理・都合を無視して職務放棄しているのですから。
 この筋違いな暴論、熱狂は何に基づくものなのでしょうかね?理解できないのですが、時津風部屋の暴行事件による不審死で抜本的な対策を取っていないことによる過剰反応故、協会許すまじ!協会憎し!なのか?それとも一般社会におけるイジメ事件が発生した際、まっとうな対策を学校や職場が取らない。こういう時必ず有耶無耶に処理されるものだという背景がある故に、それと同じ風に今回の事件を捉えて、いじめをした加害者&それを許した協会に厳罰を下せ!ということなのでしょうかね。まあ、そういうことはたしかにありますし、わからなくもないのですけど、今回の事件の背景・構造は明らかにそういう一般論と同質に考えられないもの。そういう解説しているものを見たことがないので、やはり知らないが故の反応ということなのでしょうか…。

貴乃花はどうすべきだったのか?
 それはともかくとして、反貴乃花論者が書いた文と捉えられるのも本意では無いので、最後にまとめもかねて貴乃花親方・理事がどういう行動を取っていればよかったかを書いて終わりたいと思います。
 ①貴ノ岩への暴行事件を知ったら、伊勢ヶ濱親方・八角理事長及び他理事へ報告をする。
 ②場所前の処分を望んだものの、場所前に処分が行われなかった。ここで怒るのではなく、伊勢ヶ濱親方や八角理事長へ最終確認を取る。何故場所前に何らかの処分をくださなかったのか?もう警察に行く準備をしてあると告げる。
 ③ここでおそらく伊勢ヶ濱親方が正式に訪問&謝罪、八角理事長も理事会で処分を検討する。
 ④場所中であるがゆえに、場所後に正式な処分を発表・実行する、二場所休場なら二場所休場で落とし所を決めて、場所後にそれを発表・処分。
 ⑤一件落着、チャンチャン。

 ―本当、これだけで終わる話だったのに、何故キレてしまったのかわからない。「なんで場所前に処分しなかったんだ!俺をナメているのか!」とキレてしまったのでしょうか?説明したとおり、八角理事長も伊勢ヶ濱理事も貴乃花理事は怒らないだろうと考える合理的理由がある。理事長のイスを狙うのだとしたら当然我慢して然るべき所なのに…。場所中での被害届は、他の親方・理事・力士の顰蹙を買ってしまうのに…。本当に認識能力がおかしいとしか思えないですね。そもそも場所前の処分が当然と考えていたのならば、八角理事長や伊勢ヶ濱理事に「例の件はどうなってますか?今の進捗状況はどのくらいですか?今はどの段階にあるのですか?」と確認をすればいいだけ。部下はどちらなのか?上司はどちらなのか?どっちが先輩でどっちが後輩なのか?どっちが新米理事で(以下略)。そういうことを考えれば尚更ですね。自分の思うとおりに事態が進んで当然というメンタリティは一体どこから来たもの、何由来なんでしょうか?
 おまけとして⑥で日馬富士をたらしこむということも考えられますね。そもそも改革を望む貴乃花理事は同じく自分たちの地位向上・改善を望むモンゴル派と本来相性がいい。大勢力を築く上で、孤立しがちなモンゴル派を自派閥に組み込んでしかるべき。国体云々の概念からモンゴル人を受け入れられないのかもしれませんけどね。
 それはともかく、モンゴル派をコントロールできるようにする上でも、この機会に日馬富士を取り込むことを普通は考える。白鵬が気に食わないのなら尚更ですね。日馬富士を取り込むことでモンゴル派閥を割ってコントロールできる。日馬富士貴乃花親方の父・先代貴乃花を尊敬して相撲を始めたといいます。そういう点でもアプローチしやすい背景があります。
 それこそ、今回の事件を機に「オイ、日馬。お前俺がなんで怒っているかわかるか、殴ったことを怒っているんじゃない。今回のことでお前が相撲を取れなくなったらどうするんだ!せっかくここまで来たのに、引退することにでもなって相撲が取れなくなったらどうするんだ。お前は相撲が好きじゃないのか?現役を退いて初めて自分が相撲が本当に好きだったということがわかるんだ、俺もそうだった。こんな下らないことで力士人生を終わらせたら、一生悔いが残るぞ!何より、ここまで育ててくれた伊勢ヶ濱親方がどう思うんだ!おかみさんも、応援してきてくれた後援会の人にも申し訳が立つか?立つわけ無いだろう。お前を一生懸命応援してきた人たちが悲しむんだぞ、怪我ならともかく不祥事で引退してどう説明するつもりなんだ!このバカタレが!」と説教して、理事会や記者会見などでは、今回の事件は弟子の教育不足だった私の責任でもあります。責任は私が取り、理事を辞任しますので、どうか休場で許してやってくれませんかと頭を下げる。
 謹慎中、出稽古で日馬富士に指導をして、日馬富士の稽古姿勢を褒める。「お前ら横綱があんなに練習してるんだぞ?お前らそれで強くなれるのか?横綱以上に練習しないで一体どうやって横綱になるつもりなんだ?」と自分の部屋の力士にはっぱをかける。またウチの父はもう超えた。今後はもっと精進して、日馬富士のようになりたいと言われるように頑張りなさいとリップサービスをする。
 で、休場明けに日馬富士が見事優勝して日馬富士が優勝インタビューで感謝の言葉を述べることで完璧ですね。「まず、自分が馬鹿なことをしでかして、親方・部屋の皆、関係者皆さんに迷惑をかけたことを深くお詫び申し上げます。自分にできることは相撲だけなので、土俵の上で勝つこと、こうやって優勝することで少しでも罪滅ぼしができればと思って今日まで頑張ってきました。自分のしたことは決して許されることではないですけども、その思いで今日まで頑張ってきました。これが少しでも恩返しになったら嬉しいです。」
 で、インタビュアーが今の喜びを誰に伝えたいですか?
と聞いた時、泣きながら「自分が間違いを犯した時、自分が過ちを犯した時、貴乃花親方が自分を叱って…。すいません…(涙)。自分の責任だとおっしゃって、親方は何も悪くないのに、自分をかばってくださって…。その後も色々目をかけて指導をしていただいて。本当感謝してもし足りないです。ありがとうございました」と、日馬富士が応えたら完璧ですよね。んで、土俵を降りた後、貴乃花親方に泣きながら挨拶して貴乃花親方がウンウンと褒め称えてやる。そういう絵が報道されたら、親方としての人気は天に登るでしょう。冲天貴乃花ですね。
 そういういい話を人は放っとかないですから、取材がありますよね。「私は何もしてませんよ。彼の努力が素晴らしかったんです。今でも横綱の努力を見習えとうちの力士に言ってますから。あと20回は優勝できるから、今後も相撲道に精進してがんばりなさいと言いましたよ。私は本当に何もしてません、伊勢ヶ濱親方の指導の賜物ですよ。私も伊勢ヶ濱親方を見習ってああいう優れた力士が出るように頑張らないといけませんね。優勝の後に駆け寄ってきてお礼を言われた時は嬉しかったですけど、先に私のところに来ちゃ駄目ですよね(笑)。そういう所がまだまだですかね(笑)。私じゃなくてちゃん伊勢ヶ濱親方にお礼をするんだよと言いましたよ、ハハハ」。とでも応えたら日馬富士伊勢ヶ濱親方も貴乃花親方の心酔者・信奉者になったでしょうね。角界でも「貴乃花親方は凄い」の声で満ち溢れたでしょう。
 アクシデントを活かすか活かせないかはその当人の器量の問題ですけど、まあそういうものがないんでしょうね…。 この事件をどうすれば上手く活かせるか?そういうことを考えて行動して、求心力を高めないといけない。そういう発想が根本的になくて、自然と自分の思うように物事が進んでいくと考えている。そうして物事が思う通りにならないと怒り出す。なんか非常に我儘で信長チックなんですよね。無論信長はビジョンも実力もあったので、我儘やりたい放題出来たのですがそういう実力が彼にはない。鳴かぬなら鳴いたら鳴いたでブチ切れ時鳥とでもいいましょうか…。実際、信長も実力が伴わない弱いときには強者への配慮を欠かしませんでした。改革を実行する新規参入・新興勢力は当然勢力基盤が弱いもの。その弱者が強者の振る舞いをする矛盾・愚挙が彼にはある。こういう喩え、戦国武将的な喩えをするのはあまり好きではないのですけども、鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥的な忍耐・我慢だったり、鳴かせてみせようホトトギス的な巧さや人たらしだったり、そういうものがないとダメなんですよね。改革を実行するためにはそういうことを理解して、そういう能力を身に着けてほしいですよね。

アイキャッチ用画像

*1:というかそもそも無記名投票でなければ貴乃花を支持できないという時点でもう駄目なんですけどね

*2:※参照―時津風一門離脱の3親方、貴乃花親方支持せず : スポーツ報知

*3:無論、角界の変わらぬ体質・昔の体育会系的な上下関係に暴力的な指導というものが根深いこと。暴力根絶が未だに出来ていないことを世間に知らしめるという効果はありました。が、少しづつ地道な対策・改革を積み上げて変えていくというまっとうな手段を選ばず、手っ取り早く内部告発して現執行部を引きずり下ろしてしまおう。自分の思うように組織を動かそうという姿勢では外部の支持は集められても内部からは強烈な反発を招くものですよね。

*4:ただし、最後の一番の被害者は貴ノ岩というのは違うでしょうね。下らない騒動に巻き込まれて、自分たちが好きな相撲がまたイメージが悪くなって苦しむ人々でしょうね。まっとうな親方(そんな親方いるのか?というのはおいといて)や相撲協会に属する人々、相撲ファンに場所中の力士こそ、本当の被害者でしょう。

*5:かなり前に書いたパートなので、今頃になって意味がわかりました。ああそうかうやむやにされるというのは、要するに刑事罰・処分を下せ。世間に公表せよ。そうするのが一般社会では当たり前―そういうことを言いたいのですね。んで、貴乃花親方がいくら相談してもそういう裁定が下ることはなかったから独断で動いた。その行動を良しとしたいのか。それでも結論は変わらず、一回相談して理事長に報告する。それでも処分はしないという言質を引き出す。で、警察に行けばいいだけですね。そこは以後の文章と何の整合性の問題も引き起こさないのですけど、ポイントは今回の事件だけ特別に便宜を図って隠蔽したという話ではないことですね。
 横綱、興行のスタープレーヤーだから組織ぐるみで今回だけ特別に不祥事を公表しなかったという話ではなく、全力士・親方の不祥事をそもそも公開しないという透明性の低い組織であるということ、これがまず一つ。次に、貴乃花親方はそういう組織の流れに逆らう清廉潔白な人士ではないということ。貴乃花が前々からそういう協会の腐った流れ・前近代的傾向に憤っていて、とうとう堪忍袋の緒が切れた。そういう事情背景であるというのならばまだしも、彼自身もその制度によって守られてきた不祥事を起こしてきた側の人物であること。そういう理解が八代氏にはないということでしょうね。そこを見過ごすと話がまるでわからなくなる。彼は決して不祥事に怒りを爆発させた正義の士ではない。良くないこととはいえ、角界では暴力は日常茶飯事であり、自身も同じことをしている。にもかかわらず、何故かブチ切れて警察に行った。ポイントはそこにあるんですよね。要するに詳しいことを知らないので「暴力事件の被害者と加害者」という大きな絵の一番目立つパート・真中部分しか見ていなからそういう誤った認識をしているということですね。この話はラストで書く話だったので今書いちゃうと前後のつながりがおかしくなるので注にしました。貴乃花親方は暴力と無縁の清廉潔白な人士ではない。これが今回の事件のポイントですね

*6:「親方」と「理事」という二面性があることがのちのち大事なポイントになってくるだろうということで途中からかなり気をつけて「貴乃花親方」と書くか、「貴乃花理事」と書くかその都度その都度、文脈にふさわしいように使い分けていました。しかしどっちでもいいときが多くてうーんどうしたものか…となることが多く、あとでどっちでもいい時は単に「貴乃花」とすればよかったなと気づいたのですが、もうめんどくさい&後の祭りだったので、名称の書き分けは諦めました(笑)

*7:ググったら今上天皇陛下の再従姉妹で元新進党公明党の人なんですね…。全部比例当選で創価学会員ではない公明党議員とかすごい謎キャラですね…