てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

半島情勢について(2010/11)

過去記事の再掲です。元は10/11に書いたものです。

 別に取り立てて書くこともないんですけど、なんか盛り上がってる人が多かったので、ちょっと論点をいくつか書いておこうかと。六カ国協議をまたやるとかなんとか言われていますしね。実際に六カ国協議をやるとしたら、地域の安定化に向けた何らかの合意プランを設定してあると思うんですけど、中国が北に対してどこまで強硬に出るのか?そこら辺はちょっと面白いですね*1

【論点なき愚報】
 ま、いつものことですけど、相変わらず何のために報道をしているのかわからない、報道ならぬ宣伝工作機関の皆様お疲れ様です。どこで見たか忘れましたが(ついったーかな?)、フランスのグルメリポートでは必ずおいしいとは言わない。日本のグルメリポートと違うようです。私はどう思うか、それを必ず言うようですね。それもそのはず、毎回おいしいなんていうリポーターの意見なんか重視するはずありません。そのリポーターがこれは好き、これは嫌い、みんなは好きだろうが私は嫌い。そう言って初めて意味がある。別に万人に必要とされなくていい、その人のリポートが自分にとって信じられる。そういう隙間産業でいけばいい。特定のファンのために活動する方が信頼性が高まる。

 ま、基本中の基本なんですけど、そういうことがどうも日本の場合できていない。何故でしょう。自民党なんかもみんなにアピールして、誰の、どこの階層のための政党がわからない。だから戦略が立てられない。そう、大前氏は批判していましたね。日本の新聞もテレビもそうですね。自分達のスタンスをはっきりさせない。誰にも好かれようとするアイドルみたいで、きもちがわるい。

【提言なき、ビジョンなき報道は無価値を通り越して害悪である】
 別に取り立てて、己が言うまでもなく、ツイッターで既存・寡占メディアに不満を持つ人たちは、こう言ってますね。さかしらに言うまでもなく当たり前のことです。その基本、常識が出来ていないから腹を立てているわけで。ラーメン屋なのに、ラーメン頼んだらまずいみたいな話ですね。「ウチはカレーも、そばも、うどんも、スパも作ってますから、ラーメンイマイチなんすよ~」っていうバカな店みたいなものですね。
 誰からも好かれようって何なんですかね?国民的スター・アイドル?聖と賎の二分論で言ったら、聖にならなくてはならないという思い込みでもあるんでしょうか?あとは天皇でも模倣して、天皇のような存在になろう、近づこうという無意識的な行動なのでしょうか?
 半島情勢の報道を見ていて、やっぱり視点がない。提言がない。じゃあ何のためにやっているの?としか思えない。今後どうなるの?政府が選ぶ、打つ手、カードは何枚あって、その中のどれを選ぶべきなの?何の提言・提案もないです。何のために報じているのか意味不明ですね。全く理解できません。
 たとえば、競馬で予想屋っていますよね?その予想屋にこのレースはどうなの?って聞いたとします。「この馬はね~。良いよ~。この馬はだめだねぇ~。危ないよ~。」としか言わない予想屋って意味ありますか(笑)?長距離得意とか、過去のデータから、この競技場との相性はよくないとか、騎手との相性からとか、試合展開がこうなるとこの馬有利とか、具体的なデータを示さないと誰も金を払ってくれないでしょ?あんな具体的なデータ・根拠が無いニュース見て一体誰が得をするんでしょうか?

【半島の前提、国際的枠組みがないこと】
 それはさておいて、半島情勢の前提を。半島別に専門じゃないですから、たいしたことは言えませんが、いくつか論点を。どこに注目すべきか書いておきますね。
 まず叩くべきか、叩かないべきか。戦争になる、ならないなんてのは論点になりません。戦争の意志は今のところどこにもないですからね。朝鮮半島の場合独特なんですが、国際レジーム・枠組みが成立していないという背景があります。国際的な枠組みがない、この異常さはいくら強調してもしすぎるということはありません。朝鮮戦争後、休戦協定が結ばれてpowers,super powersの明確な講和条約による体制が構築されていません*2。だから不安定といえば、不安定なんですけれども、北も南も一国では戦争しようがない国ですし、周辺四大国も軍事によって国境を変化させよう、変更させよう、あるいは統一させようなんて意図がありません。アメリカも中国も北が核を持たなければ、どうでもいいというところでしょう。

【北の目的、現存の体制維持、そしてその継承】
 そういう前提の中で北は体制維持、不可侵を=レジームチェンジをされないことを主眼としていますから、そのために核開発は必須なわけですね。もしくは核廃棄の代償に米と相互不可侵条約を結ぶ。そのために全て行動しています。
 そしてその体制を継承するためにチキンレースをしています。このチキンレースで三代目はアメリカと互角に渡り合ったというカリスマを構築して世襲準備をします。共産主義という皮をかぶった軍事独裁国家ですから、軍事的な勲章・業績が必要となります。核開発&軍事功績、そのために全精力が注がれますから、今後もそういう緊張状態は散発的に続くでしょう。

【半島情勢の論点―三代目の世襲を容認するのかしないのか】

 そこで重要なのは北の次の体制をどうすべきか?という話になってきます。今回の出来事でいくら制裁だろうが、何だろうが加えても、あの国はもともと閉鎖を前提とした鎖国状態ですから、崩壊することはありません。クーデターが起こらないとは言えませんけどね。中国が全て封鎖しない限り、北は崩壊しないでしょう。逆にいうと中国を敵に回すとその時点で崩壊です。苦々しくても北を崩壊させるわけには行かないのが中国の立場です。
 己だったら中国とアメリカと三国で枠組みを提唱しますけどね。話をつけて半島に非軍事化、軍隊も核もなくさせるから、少なくとも北の軍事国家体制を変えさせようと話をつけにいきますけどね。中国と話をつけないかぎり(合意を形成しないかぎり)、北といくら対話しても拉致問題なんか永遠に解決しませんよ。逆にいうと中国はこの問題を解決することで東アジアの主導を握れるので、こんなにおいしい話はないと思うんですけどね。保守的というか、外交で勝負に出ないですね。中国は、まあんな閉鎖的な政体ですから、さもありなんですけど。

【大国は北の体制を変えられる=世襲を打破できる】
 で、話を戻して、次の体制の話。三代目継承のために軍事的実績を積み上げようというのが彼らの目的ですから、それを壊してやればいいんですね。報復措置として、核施設やら、軍事基地を空爆しつくしてやればいいんです。これでもうおしまいです。下手に軍事手段に出て、反撃を食らってしまえば、もうどんな強硬手段に出ても叩かれるだけとなれば、軍事力で正当性を保っている国家はおしまいです。
 限定的空爆で、こらしめてやれば、中国も集団指導体制を好んでいますから、中国にもそれを後押ししてもらい、集団指導体制による改革路線に舵を切らせる。そうなれば、あとはもう一瀉千里でしょう。*3

【半島問題解決】
 エ!?そんな簡単に解決するの?って思うでしょうけども、もちろんそんなに簡単に出来るんならやってますね。これには相手の軍事基地・能力を100%正確に把握しているという前提に成り立っています。つまり卓越した諜報能力があって初めて成立する話です。何に書いてあったか忘れましたけど、テポドン・ノドンというミサイルはアメリカ側が古い資料を基につけた名前で、結局アメリカの持つ北の情報は圧倒的に古いとか。というより北にたいしてそんなに諜報能力を割いていないのでしょう。
 空爆が可能な軍事力、そして中国との将来の東アジアの枠組みを設定する外交力、この
諜報能力・軍事力・外交力三つが備わって初めて、半島情勢は解決するでしょう。その全て日本にない、というかそうしようという意思・能力が国家自体にないですから。サンフランシスコ属国レジーム以来ありませんから、どう考えても日本の独力では無理なんですね。民主が、自民が、なんていう話のはるか前の時点でもう無理なんですね。うさぎとかめみたいに、長い時間、一歩、一歩歩んで、積み重ねていなければ到底無理な話です。日本の場合眠りっぱなしのウサギで、もったいないと思うんですけどね。少なくとも日本の出る幕はどこにもない、引きずられるまま引きずられるでしょう。外交わかっている政治家も見当たらないですしね*4。日本は天気を見守るように触れえないものとして、物化されたものとして、外交を捉え続けるのでしょう。

【日本外交は湾岸外交で破綻した】
 最近気に入っている言葉で、チャーチルの『この戦争はミュンヘン会談の時点ですでにもう負けていたのだ』という言葉。パシフィスト、何でもかんでも戦争に反対する勢力が戦争に反対したために大惨禍を招いたわけです。
 冷戦が終わって、独立の道を模索すべきときに率先して従属して、アメリカ様にホイホイ130億ドル貢いだ、独裁国家クウェートを援助した時点で、この戦争はすでに負けていた。いや、一時の戦争ならまだよい、外交での劣位ということは、永遠に負け続けるということ、ずっと相手のいいなりになるということだから。あえて言うなら、日本外交は
湾岸戦争時の対処を巡った外交で既に破綻したんですね。もうどうしようもないんです。少しでも外交の論点を整理し、問題解決しようとすれば、いかにマスコミが適当な報道をしていたかよくわかる。だから彼らが正常な報道をすることはないでしょう。政権交代なんかより、マスコミ交代が必要でしょうね。
 
 露に領土を掠め取られても、中に領海侵犯されても、教科書など内政干渉を平気でされても、米に属国扱いされ、好き放題命令されても何も出来ない。あと何十年くらいこういう構造が続くんでしょうかね?

 

※追記、書く気なかったんですがコメ見ていて気になったので。
 別に北を絶対に叩けという強硬論を主張したいわけではありません。そもそも空爆と戦争は全然違いますね。軍事国家は暴発しません。特に、ああいう指導者の意志が貫徹している国家においては。ま、でも実際に金正日・正恩政権において指導者がいかなる意思能力を発揮するか、決断をするか、その情報分析・北のdesicion makerの集団意識を研究し尽くさないといかんとも言えませんけどね。頭としての独裁者が不在になった場合、北内部で強い組織が主導を握って暴発~というロジックがあってもおかしくないですし。

 なんとなくレベルですが、確実に自分達が負けるといった段階では彼らは強硬手段に打って出てこないと思いますよ。軍事国家は「力の信奉者」ですからね。ただよほど硬直化した組織であるならば、組織の機能要請にしたがって暴発する、死ぬ覚悟で開戦する可能性もありますけど。そこら辺詳細に研究した上での話しですが。
 もちろんこちらの被害を最小限に済ませられる準備が出来て初めて出来る話ですからね、空爆というのは。限定的空爆で必ず終わらせる、地上軍を侵攻させて、レジームチェンジはない、体制は必ず保障すると明確にすれば相手は攻めてくるはずないでしょう。もっといえば、叩くだけ叩いて核能力を奪った上で*5、日米韓は不可侵・国交樹立をすべきなんですけどね。あの国は自発的には絶対核捨てませんから。

 なんかコメント読んでいて、不安になったのでね。何でもかんでも叩けばうまくいく!膺懲だ!みたいにとらわれるとアレなので。あくまで安全が確保されてからの話に決まってますからね。「ミュンヘン会談において、すでにこの戦争は負けていた」というなら、「冷戦後、この戦争・外交は平壌会談(2000の南北首脳会談)において、すでに破綻している」んですね。いや、核危機で世襲を認めてしまった時点でしょうね。世襲はともかく軍事政体に移行したのを認めてしまったことで。

 ケネディキューバ危機に見事に対応したのはこのミュンヘン会談の失敗、宥和政策のプロフェッショナルだったことにあります。学生時代徹底的に研究して論文に書いていたことは有名ですね。安保・危機管理においては相手の軍事意図に対して徹底的に譲歩しない、危機の一発目において徹底的に叩く、その時点で戦争をする。そうしなければ相手は時間を稼いで軍拡、侵略地を増やし、やがて手に負えなくなる。軍事力を外交に行使してくる相手とは初手において絶対に妥協してはならないのです。パシフィストは戦争をもたらす。国際政治学の公理、大定理ですね。これを無視した時点で、韓国・日本外交は破綻したんです。なおかつ恐ろしいのはチャーチルのような天才が警鐘を慣らすこともなく、破綻したという認識が国民にもないことですね。

 軍事的権威を確立するのが、北の戦略目標なら、それを崩すために相手の軍事的チキンゲームを絶対に許さない。そういう戦略を設定して、外交・政治を進めるべきなんですね。

 北は韓国の首都特にソウルを人質に取っているならば、当然そんなとこ首都にしてはいけないし、被害を極力出さない、最小限にするプランを練っておいて、首都移転計画を進めておかなくてはならないわけです。 ところが韓国はそうしていない。つまり安保をサボって放棄しているわけです。

 そういう態度を取っているから、北は当然いかに挑発しても韓国は、さらには米も絶対攻めてこないとタカをくくっているわけですね。そしてそれは事実正しいわけです。これでは北にどうぞ自由に暴れてください、好き放題やって下さいといっているのと同義なんですね。外交上では、明確にここまでやったら叩くぞ、制裁するぞ―というサインを示さないと相手が軍事的冒険を止めるわけがない。つまり北に暴走的行為を許しているのは他ならぬ日韓の二国なんです。

 安全保障の原則は相手にリスクよりリターンが大きい、つまり止めとこうと思わせること、そうでなければ相手は調子に乗ってきます。この時点でもう外交は破綻しているんですね。何も経済援助のような外交が全く間違っているとは言いませんけども。安保を無視して甘い民族統一なんていう幻想に乗っかって、外交の戦略を見失った時点で、詰んでいるんですね。北の世襲政権は成立するし、それゆえの不安定な政権も続くでしょうね。

 ついでに、戦争と限定的空爆は全然違いますね。クリントン政権時代、フセインが軍拡した!って言って空爆したでしょう。あれです。つまりはじめから、ミサイル開発なんてやりだした時点から少しでもそういう兵器を開発したら、空爆して軍事能力を大きく削減する。そういう態度をとっておかなくてはならなかったんですね。そういう意味でもすでに外交は破綻しているんです。本来空爆と援助はセットでしょう。アメとムチなき外交なんて、外交とはいえませんよ。

 ま、あくまで国際政治学のあるいは安保の常識を論じただけですけど。実際に叩くことを視野に入れなくても、外交で中国と話をつけられれば終わるでしょう。というか経済危機が中国にきたら、もう持ちませんからね。ただ外交の定石から考えれば、脅威を目の前にして放置して、属国路線を選べとは到底提言は出来ませんけどね、己は。実際の中国経済危機がいつ現れて、どのように波及するかなんて全く予想が付きませんからね。

 ただ最低限の話、当たり前中の当たり前の話、言うまでもないことですが、軍事力を抜きにした外交では北は話し合いに絶対に乗ってこないですね。制裁の恐怖の前提なき援助・不干渉では外交にならないのは言うまでもありません。

*6

*1:まあ、現在の対北の制裁状況を見て分かる通り、中国は地域秩序形成について米日をスルーしていますので、やるわけながないですよね。この時点でも何らかの交渉がされていて、その時の妥協案というのがあったと思うのですけど、中国に対する妥協案というのが米サイドにあったのでしょうか?もしくは中国から提示されていたのでしょうか?もし妥協していたら…なんていうIfがあるとおもしろいのですけどね。13年に習近平がトップに就くわけですけど、バカなトップに変わる前に胡錦濤が駆け込みで国際合意を形成する意図があったが…なんていうストーリーがあると面白いんですけどね

*2:これが基本にして超重要なポイントなんですが、これがあまり語られることが少ないですね…。まあだからこそたまに平和条約を結ぼう~という話が持ち上がってきているんだなと理解しておいて下さい

*3:どっかで書きましたけど、ゴールデンパラシュートが必要、つまり現体制のトップ・要人について責任を問わない。国際裁判のようなもので処刑をしないということを確約することも欠かせないでしょうね。まあ最近は三代目暗殺で解決!みたいな話も出てきているようですけどね。解決に繋がる可能性もありますが、万一のリスクを考えるとよりそのリスクが小さい方を選択すべきでしょうね

*4:鈴木宗男なんかは、一応わかってると思いますけどね

*5:猛獣の爪と牙を奪ってペットにするが如しでしょうか?例えるなら

*6:アイキャッチ用画像、適当なのがないので地図で。これじゃちっちゃいか

一冊でわかる 日本地図・世界地図

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