侵略!イカ娘はなぜヒットしたか?
※過去記事の再掲です。元は10/12に書いたものです。
―と、大げさなタイトルをつけるまでもなく、単純に思ったことですね。イカ娘は単純なフレーズ「~じゃなイカ?」「~でゲソ」。という流行語を生み出した。今期のヒットアニメなわけですが。なぜヒットしたのでしょうか?
正直言うと、一話一話の完成度や、ギャグ漫画としてのクオリティがそれほど高いわけではないのですね。それでも面白い、中毒になる。これは何なのか?チャンピオンの漫画を読んでいると感じますが、毎回オチがあやふや。笑ってしまって、腹筋がねじりはちまきのようにねじれるなんてことはない。しかし読んだあとになんかホッとするんですね。
簡単にストーリを説明すると、海からやってきたイカ人間。イカ娘が地球を侵略するというものです。しかしイカ娘ちゃんは、物事を良く知らず。ムチャクチャな行動を繰り返すわけですね。ドジっ子、マヌケっ子。「何でこうなるでゲソ~!」というオチで、何なんだこれ?結局どこに向かうんだこの話というスッキリしない「?」で大体終わります。
これを見て連想するのは『よつばと!』なんですね。よつばという幼女が生活する日常を淡々と描く。彼女の視点で描写をして、日常のハートフルストーリーを楽しむ。祭りだとか、釣りだとか、天体観測だとか、気球だとか子供が色々遊ぶ、自分の世界を探求する。そういう子供の心情を表現する。「あ~、こういう社会って、人との交流って、地域のつながりって素敵だなぁ~」となって癒されるわけです。ヤオイ=やまなし・おちなし、いみなしそういうジャンルですね(※別の意味もあるので要注意)。
実際にはどこにでもありそうで、しかし実際はああいう単純な平凡な幸せすら手に入らない世の中になっているという病理の裏返しでしょうか。こういう萌アニメ・漫画が社会に大ヒットしてしまうというのは。
萌ってなんだ?っていわれたら、やはり子供が成長していく姿だと思いますね。そこに自分自身の子供時代を投影して、幼少体験を追体験する。人生は所詮、青春が全て。「人間は二度生まれる。一度目は誕生、二度目は青春だ」、つまり人間の人生とは青春が全て、あとは幼少期の体験の繰り返しに過ぎない。フロイトだったか?ゲーテだったか?忘れましたが実にその通り。*1
だれでしたっけ?子供のころの食べたスープだったか、アイスだったか、その初めて食べた幼少期の体験をもう一度体験することこそ人間の幸せなんだよって作品書いた人?なんかむっちゃ長いやつありましたね。読んでませんけど*2。
ロリコン・ショタコン的なもの=萌ではなくて、やっぱり幼少体験の追体験という心理学のテーマが漫画・アニメの分野に入ってきた。そういうことだと思うんですね。あと、ハレとケの話で言うと、ハレの派手な作品ばっかりで脳が疲れてしまっている。反動でケの作品、頭を使わないでただぼーっと見る作品が欲されているということでしょうか。
妹やメイドブームってのは自分より下のもの、自分を慕うものに愛情を感じるというものだけではなくて、本来どこにでもあった身近な上下の関係性、思いやりの交換の消失の裏返しでしょう。ま、そんな話はどうでもいいや。
第9話『ピンポンダッシュしなイカ/メイクしなイカ/秘密兵器じゃなイカ』 より、ピンポンダッシュをしたところを見つかって、恐怖に駆られるイカ娘ちゃん。
化粧をしてどや?顔をするイカちゃん。
ここからわかるのは、子供が成長する過程で起こる、子供ってかわいいな~というイベントを彼女が次々と引き起こしていくということですね。今回の話で特徴だったのは一番オチとしてふさわしいシーンがオチとして使われなかったことです。
化粧というものを覚えたイカちゃんが、初めて化粧に触れたことにより、どんなリアクションをするのか?どんなことを思うのか?どんなハプニングを起こしてくれるか!?そこに焦点が当てられているわけで、オチなんてどうでもいいわけです。ギャグ漫画としての完成性よりも、いかにイカちゃんがドジをするか、イカちゃんが何を感じ、何を思い、何を楽しみ、何に感動し、苦しみ、悩んだかそういう思いが表現できさえすれば良い。ギャグ漫画としての完成度、うまくオトすということはしない、必要ない。イカ娘の行動・想いさえ描けばこの作品はそれで面白くなるというロジックがあるのですね。そういう型(モデル・パターン)になってます。
『よつばと! (』だってそうですよね?主役はあくまでよつばですけど、その世界観、時間の流れこそ本当の主人公になってますからね。そういう物語、世界観・時間を描写すれば、作品として成立するという論理をもたらしたあずまきよひこは間違いなく天才でしょう。
イカちゃんにゾッコンの早苗という変体娘がいて、イカちゃんが使った口紅で間接キスをたくらむというド変態エピソードが出てくるのですが、口紅を手に入れるために大海原を猛烈に泳いで、大海から口紅を探し出してくるわけですね。
とうとう手に入れた。グフフ…となってあけてみたら、印鑑だった。釣られたというオチ。
で、早苗は、変態的な名言として、
イカちゃんのうそつき~、でも愛してる~
と、叫びます。これで、この話はオチるはず。最後にこれをもってくるのが話の完成度としてはもっとも良い。ところが実際のオチは、彼女が化粧をするにあたって、油性ペンを使ってしまって、「落ちないでゲソ~」
と嘆き悲しむ姿がオチになるわけですね。実際家庭で子供がやりそうなことです。お母さん方なら、ウチの子がそうだったわ~(笑)となるんじゃないでしょうか?
よつばと!と、比べるとまだまだ世界観だけでホッとさせる、あったかくさせるというものではありません。が、イカ娘というキャラクターの素晴らしいところはある程度成長した少女なのに、全く人間世界のことを知らない。だから新鮮に色んな物事を、感動を伴って表現できる所。触手という武器を持ち、よつばのような実際の幼児には出来ないことが出来るという選択肢の広さがあるところが作品・キャラクターとしての強みですね。
んで、もって同時に侵略しに来たというコンセプトから少年のような心情も表現できるわけです。少年と砂で城作って張り合ったり、傘を想像膨らまして悪(笑)と戦う剣として使ったりね。
イカ娘の場合、少年+少女を同時に表現できるというメリットがある。よつばもわんぱくさを全面に出していますが、少年性という意味でイカ娘の方が優れていますね。その分。『よつばと!』の世界のようなリアルな現実世界が背後にないので、少しそういう親近性、身近に感じる、親しみやすさが薄れてしまうのですけどね。ミニイカがまさに少年性、少女性「ああ、男の子ってこういうやんちゃなことするわ~」とか「女の子ってかわいいな~」と、読み手の子供を愛おしく思う感情を駆り立てる。そういう点をうまく表現していましたね~。イカ娘かわいいわ (゚∀゚ )三 三( ゚∀゚)
今のところ、ハーレム系萌とこういった家庭や子供系の萌といったものに大別されていくんじゃないでしょうかね?
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*1:今ググったら、ジャン・ジャック・ルソーの『エミール』でしたね、全然違うやん