てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

中国関係の本 覚え書き③

メモ置き場

【中国版】サブプライム・ローンの恐怖 (幻冬舎新書)/幻冬舎

¥777  Amazon.co.jp

 p134、暴力抗法―暴力を以って法の執行に抵抗すること。まあ、法に対して暴力で向かうことが正義というスローガンが中国の法意識の未熟さを如実に表していますけどね。暴動・デモで上が法を撤回することがありますが、これはいい事に思えて、実は正式な法プロセスというものが存在していないことだから、やはり良くない。行政府の決定を民衆が集まって覆していては政治にならないからね。どうやって透明な政府を作ってこういうことにならないか、会議・討論で決着を付ける方向に持って行かないと公平・公正性は保たれない。

 今後このようなデモ・暴動に対し、意見はきちんと聞きます・話し合いをこうしましょうという民主主義の議会プロセスをどこまで地方幹部がこなせるかというところに中国安定化の鍵がありますね。さてどの程度理解して実行しているのやら?

 p142、遼寧省の龍廟村で面白い現象があった(2010年広東省湖北省でもあった)。土下座民主主義、暴動じゃなくて全員土下座で抗議した!普通にデモ・暴動なら罰せられることがある。しかし土下座では何も出来ない。土下座という謝罪の暴力ッッッ!!なんというリアルどげせん

どげせん 1巻 (ニチブンコミックス)/日本文芸社

どげせん 2 (ニチブンコミックス)/日本文芸社

どげせん 3 (ニチブンコミックス)/日本文芸社

 謝罪の本質とは許しを請うことではなく、謝罪をアピールすることで関係を改善すること。関係を改善しないものには社会的非難が待ち受ける。直接の暴力ではなく、間接の暴力になるわけですね~。まあ、全部が全部じゃないですけども、時に謝罪は暴力を含む・攻撃性を含むという性質があるんですねぇ、実は。当事者同士だけならそうではなくとも、社会レベルになると、第三者が関与するレベルになると、許さないわけにはいかなくなるという性質を持ってますからね。

 p145、網民=ネットユーザーのこと、この意見を上も無視できない。腐敗に限ってはそれを許容しているんだろう。

 p147、ネットオピニオンリーダーの政府批判。牛刀・韓といった有名人がいる。政府批判はあれど、中国人の大衆意識への批判はまだないんだろうなぁ、きっと。まだ政府批判が珍しい段階だからそんなもんだろうけど。

 p156、移民ブーム70年代の鄧小平による開放路線で外の情報が入ってきたことで、中国より海外のほうがいいと知って出ていった。次が90年代天安門の影響、今の第三次移民ブームは環境汚染・安全や法制度など社会不安から来ている。北京師範大学金融センターの鐘偉教授によると45万人、2500億ドルがこの10年で海外に出ていったという。これを教授は党政府への不信の現れ、「足による投票」と表現しているのが興味深い。ある種ベルリンの壁崩壊であり、それを連想させる。この海外中国人が欧米などで民主的なコミュニティを作って、そこから将来の危機の際の民主政府を作るもとになれるかどうか?自由な思想培養地足りえるか、なんてのも一つの注目ポイントですね。富裕層・エリートが、主に米・カナダ・ラリア・シンガか…。日本はないんですね(´-ω-`)。こういう人々を確保していることが将来の外交のカードになるというのに…。

 p161~163、納税者意識の高まり。天則経済研究所の茅于軾氏は空母の建設計画に反対、税金の無駄遣いだ!と主張した。政府への経済政策批判は珍しくないが、軍への批判はなかった。しかも納税者の視点からの反対=民主主義の基点をわかっている。

 北朝鮮意識して先軍政治とか言ってます。軍をコントロール出来ない、する法や憲法制度がかけているって、この人、前にどっかで軍をコントロール出来ないなんて嘘、外交に利用するためのブラフだなんていってなかったっけ?

ほんとうは日本に憧れる中国人 「反日感情」の深層分析 (PHP新書)/PHP研究所

¥756 Amazon.co.jp

 前回書いたところと内容かぶっているというものがなくも無いです。深く掘り下げられてるかなぁ?とおもいきや特に何もありませんでした。それより、アマゾンレヴューなんか見るとボロクソに書かれていますね。これ、まあ良くもないですけどそんなに悪くもない。むしろレヴューの中国人の手口だ!罠だ!って言う奴があまりにも多いのがびっくりしましたけどね(^ ^;)。中国共産党は着々と日本侵略の文化政策を…!っていうのがものすごい広まっているんですねぇ。まあ警戒するのは大事ですが、そんなことしてる暇無いですよ。そういう能力を持っている指導者層じゃないですからね。

これから、中国とどう付き合うか/日本経済新聞出版社

¥1,785 Amazon.co.jp
外交官が見た「中国人の対日観」 (文春新書)/文藝春秋

¥819 Amazon.co.jp

 この二冊は外交官が書いた本。外交官ということで当り障りのないもの。普通にチャイナウォッチャーならだれでも知っているアタリマエのことが述べられているだけ、反日やってるのは下層で社会の上層は啓蒙され必ずしも反日ではなくなっているとかね。報道されるのは反日だけで、親日的な面はまずされないとかもそうかな。

 まあ、可もなく不可もなく。いちいち読む必要がある本とは言えませんね。そもそも知名度自体がないでしょうけど、中国についてこの本・この人を必ず抑えろ!なんて出てこないでしょう。なのにアマゾンレビューでは高い評価があった。なんだろう、お仲間?仲良し学者にゼミとかで使ってもらって、それでその学生がうのみにして評価したって感じ?なんか褒める文章が機械的というか、ワンパターンというか、変に洗練されているんですよね。個人の意見ではなく、な~んか人づてにまとめられたものを受け継いでいるって言うかね…。

 そんなことはさておき、宮本さんの方でインスパイアというか、一つ閃いたことがあったのでそれについて。戦略的互恵関係について外交文章についてですね。2008年に結ばれた共同声明において戦略的互恵関係を築くという二国間関係のラインというか、協調・友好関係?それを表現・宣言した文章があるんですけど(72日中共同声明→78日中平和友好条約→98中共同宣言を引き継いだものとされております)、そこで重要なポイントがあることに気づきました。

 まあ言われているように、98年のとき江沢民時代には反日・歴史を言い立てて、顰蹙を買い、韓国の外交文章に書いたように、植民地時代の反省を書くように主張して決裂しました。んで一段階低いレベルで外交的に決着した過去があります。無論、中国は植民地ではないので戦争の被害とか反省とかですが。その時の論点が韓国のように戦後日本のこの地域に果たした貢献、平和国家としての役割を評価するという一文を載せるかどうかで、中国が認めないから破断になったんですけど、この時点でようやくそれが書きこまれることになった。

 つまり胡錦濤日中関係前進させた政権だったわけですね。地味に国連改革も盛り込まれていて、日本の常任理事入りで反日でもやって問題になったあの時とは違って、もうそういうことしませんよ~と書かれているの非常に重要です。この点(あくまでこの点ですよ)、中国は日本の頼もしいパートナーというわけです。少なくとも中国側はそういう姿勢に変わってきたということを見逃してはならないでしょう。

 ちなみに外交文章・外交で村山談話とかそういうのが引き継がれるとありますので、それを破棄するとかやるとこちらがルール違反に問われます。ですから、そういうことを積極的・能動的に主張するのではなく、すっとぼけるのがベストなんですね。んで、相手がそう言ってきたら、「あれ?過去のことは問わないんじゃ?」と問いかける方がいい、せっかく曖昧に、官僚文章でごまかして書いてあるから、「果て?それはそういうことでしたっけ?問題でしたっけ?」ととぼけるのがベスト。そしてそういう蒸し返しになったら、「そういうことをすると二国間関係を阻害しますよ」と、外交の戦略的互恵関係の精神に反しますよ?と、そういう方向から責めないとダメですね。あくまで外交ルールの中で、こちらはルールを守っているという形を取りながら喧嘩すべきです。

 んでようやく本題ですが(^ ^;)、この時の外交文章に、日本の軍国主義復活はないと中国側が認識したという一文があるのです。検索すりゃ簡単に全文出てくるとおもいきや、文章出てこない…(´-ω-`)。あとでもう一回本借りて文章読みなおして書きますか…。

 ポイントは中国が今でも日本の軍国主義復活という事がありうると真剣に考えていたという点ですね。トップはともかく世論はそう考えている。この時期は小泉時代もあり、日中関係は相当ハードでした。そして同様日本に反中感情が著しく高まった時期でもありました。確か中国嫌いという世論データが50~70%くらい非常に危険なレベルになりましたから。胡錦濤が安倍に代わって、対日関係改善に全力で乗り出し、結果この福田&胡錦濤外交ですからね。温暖の春とかで、日本に外遊でかけましたし。

 日本人にとって中国が攻めてきても、日本が攻めるなんてナンセンス極まりないですよね。そういう感覚で中国人は世界を捉えていること。彼らは自分たちは平和民族と考えていることです。この自己像、歪んだ自己像は非常に重要。無論、どんな民族だって自分たちサイドが善、相手サイドは悪。自分たちが悪いことするはずないじゃないか!って見ますけど。相手側、相手サイドの視点という配慮が著しく欠如しているところがポイントです(まあ、日本にももし自分が中国・中国人ならどう言うように世界を見るか、捉えるだろうかという視点・分析はかけていますけどね)。

 次に日本が平和国家、ともにこの地域に発展・安定をもたらすパートナー(同盟国未満ですが)として捉えて、もはや軍国主義復活はありえないという認識をすることは、過去自分たち共産党は武力によって国家を守った。いわば革命政府や、混乱を収集するための臨時軍事政権としての性質はもう終ったと公言したにも等しいわけですね。

 すなわち、今後はこれまでの反日=祖国防衛をした偉大なる毛沢東とか共産党!ということで政権・政治を担う路線から決別するわけです。今後は中国国家の安定、平和、それに最も重要な経済発展。それをすすめる政党・政府だからこそ、共産党があるんだ!という国家として違う路線に舵を切ったんですね。

 いい言葉が見つからないんで、歴史学用語で武断政治から文治政治にしときましょう。この武断政治から文治政治へと転換したわけです。

 まあ、こんなポイントがあります。ついでに一つ目とかぶりますが、戦前の日本人と同じく中国人は世界のこと、外国に興味が無い。そして自分たちの物の見方を延長して他者を捉えている。異文化コミュニケーションがあるように、他者は違うもの、他者はどう捉えるのか、どういう発想をするのかという視点がない。全部自分ルールなんですね。これでは必ず衝突・行き詰まりますね。これに気づけたの非常に大きな収穫でした。まあ、この筆者とは全然関係ないことですがね(笑)。

中国共産党 支配者たちの秘密の世界/草思社

¥2,415 Amazon.co.jp
 ジャーナリストの書いた本。可もなく不可もなく。

舞い上がる龍 中国/共同通信社

¥2,400 Amazon.co.jp
 韓国の外務官僚が書いた本、韓国の人が中国をどう見るかという視点で何か収穫があるかな?と思いましたが、特に何もない。かなり初心者向けという感じ。民主化してそういう本とかないから、書きましたって感じですかね?まあそれはいいとして日本語訳する必要性がどこにあるのかな?という気がしました。

北京大学 超エリートたちの日本論―衝撃の「歴史認識」 (講談社プラスアルファ新書)/講談社

¥924 Amazon.co.jp
 タイトル見て、北京のエリートの事がわかるかとおもいきや、そうでもなかった。そこまでエリートちゃうし。この人も学者で奥深い分析があるわけでもなく、なんというか留学体験記程度?

巨龍・中国がアメリカを喰らう―欧米を欺く「日本式繁栄システム」の再来/早川書房

¥2,415 Amazon.co.jp

 なかなかパンチ聞いた本。いわゆるリビジョニスト(日本異質論者)ですね。

久々にパンチの聞いたトンデモ本でした。『巨龍・中国がアメリカを喰らう』というものですが。まあ、経済学・社会学・国際政治学なんでもいいけど、いったい何を学んでしょうね?この人は。こんなに出来の悪いものは久々に見た。日本在住のアイリッシュジャーナリストだというが。いかに日本や中国が歪んでみられているかがわかる。

 日本と中国が同じ儒教圏集団主義の彼らはなんだかんだ不正常なシステムを作り上げて、アメリカの自由貿易に付け込んで不正に利益を引き出すと。アメリカがチャイナマネーで汚染されてたらしこまれとる!とか本当に???な本。東アジアの高成長は貯蓄率!とかどういう理論なんだろう?不思議すぐる。

 ズルしてアメリカから儲けた金を貯金に回すようなシステムを作り、それで成長を遂げている!なんて汚い奴らだ!と。一体どういう理屈なんだ(笑)。

 一時期通産省の産業政策が日本の高度成長に役立ったっていう本が流行ったけど、実際は彼らの政策は成功もあれば、むしろ自由競争を阻害して失敗したのもある微妙なものだった。だけど、彼らは日本人は徒党を組んで緻密な戦略でアメリカの富を奪う!と解釈しとるんよね…。日本!恐ろしい子

 んでアメリカのアマゾンのレビュー見ると、いくらなんでも経済学や文化人類学学んでこい!日本の文化をなんもわかってないアホとか。ウェーバーの宗教論をちょっとは研究しる!とかの非難、駄作評でうめつくされてるとおもいきや。高評価なんよ。日本やアジア・非キリスト教圏をいかに歪んで見ているか感じたね~。

 この人日本研究というか、日本を専門にやって、日本汚い!日本にアメリカは乗っ取られるぞ!脅威日本!なんてやっといて、日本が潰れてしまってメシのタネがなくなったから、日本研究の応用!とか言って、今度は中国で同じ商売して食っているだけでしょうね。日本脅威論から中国脅威論へと同じロジックでスライドをしている。だから皮相的で分析は浅い。まあ全く読む価値無いですね。この本で大前研一は日本の利益を代弁するための使者だってありました(笑)。日本人からはアメリカの手先扱いされ、向こうでは日本の手先扱いです(笑)。まあ、主張を読み取れないアホからすると詭弁で騙す使者になるんでしょうね~。

アメリカ帝国の悲劇/文藝春秋

¥2,940 Amazon.co.jp

 通産省リビジョニスト繋がりってわけでもないんですが、たまたまチラ見したチャルマーズ・ジョンソンさんのこの本についてちょっと。氏は日本汚い!からアメリカ軍&CIA汚い!という方向に転換した人です。ただ通産省について書いたアレは撤回したんですかね?知りませんけど。

 なんか読んでいて長い、というか雑。要点がわかりづらいし無駄な情報量が多すぎる。いかに米軍の世界展開が負担が大きい・非合理・現地の反感を買っているかということは、もっと端的にまとめられるんじゃないですかね?

 あとアメリカ人ではないから、なるほど!と納得して読めますけど、向こうの人は何でもかんでも悪口言いやがって!と反感を買うんじゃないですかね?これは素晴らしい、これはいい。ただこれはマズイ・間違っている!こうすればもっとコストが下がるし、現地の信頼も得られるんだ!とかそういう書き方じゃないと単なるアンチの人として受け入れられないんじゃないかなと思います。

 軍のこの人、この派は素晴らしい、だが強硬派・差別主義的なこの人達は戦争を煽って米国にマイナスイメージをもたらしている。却ってアメリカを弱くしている!とか割って批判しないとダメじゃないかなぁ?という気がしました。全面的批判は単なるアホ扱いで排除されてしまうんじゃないかな?アイケンベリーさんも相手にしてなかったし。チャルマーズ・ジョンソンさん亡くなって、こういう批判をする人は今いるんでしょうかねぇ…?

 軍&CIAが肥大化してアメリカが軍国主義化している。中国の軍をコントロールできるのか?というテーマよりよっぽどアメリカのほうが深刻ですね。アメリカは政府が軍をコントロールできているのか?というテーマをもっと掘り下げないといけないでしょうね。

沈黙の宗教―儒教 (ちくまライブラリー)/筑摩書房

¥1,470 Amazon.co.jp
沈黙の宗教――儒教 (ちくま学芸文庫)/筑摩書房

¥1,260 Amazon.co.jp

 なんというか尚古主義の人なのかな?儒教論じるという本がいくらあっても、たいていは儒教儒学を混同して、宗教より倫理の方に力点を置いている。ひどいものになると儒教は宗教じゃない!なんていう珍論を平気で言ったりする。まあ、宗教なんて非合理なもの!そんな宗教といっしょにするな!っていう昔の人のあれから来たものなんでしょうけども。

 そういう儒教論の中、宗教性あまり注目されて来なかった非論理的な分野に注目するわけですね。儒教宗教的な領域を論じるわけです。それはいいんですけど、ところどころ変な点がありますね。尚古主義と言ったのも、なんか西欧の近代思想に反発して、儒教やもっと伝統の方に目を向けよう!みたいな主張があるので。まあ例によって近代化・近代思想を正確に理解した上で、わかった上で、そういう主張をしてくれれば、良かったんですがそういう理解は無さそうですね…。

 p28、インド人の世界観・宗教観では無限の時間・無限の空間である。無限の時間をかけて輪廻する。六界=空間無限ってことね。ところが中国・朝鮮・日本のような東北アジア人にはそういう観念がない。有限である。

 ※んで儒教文化圏として三国を一括りにしているんですけど、オイオイという感じです。日本は独立した文明圏であって、儒教文化圏なんてくくりには入りませんよ。儒教は有限の時間・空間を設定していることになりますが、日本人は黄泉比良坂に代表される世界観など、例を待つまでもなく有限な世界観どころか無限のそれを持っています。中国の世界観とどう見ても異なるでしょう。

 そもそも有限な世界観を中国を持つのは自分たちの文明が世界一豊かだという自負、事実当時それに匹敵するものは近辺になかったですから。そういう背景から出てきた思想であって、そんな思想が日本に備わるわけ無いでしょう。ここに書いてるように中国が印度と違って、この世を苦しいものだと考えずに、この世を素晴らしいもの・楽しいものと考えるのもそれに基づくものなんですからね。

 あと、p30にユダヤ教ヒンズー教は特定民族に支持されてるにすぎないから世界宗教ではないとか、危険すぎる言葉の使い方ですよね。宗教知っている人はこういう言葉の使い方をまずしないんですけど…。ユダヤ民族がユダヤ教を信仰しているんじゃなくて、ユダヤ教を信仰しているんだからユダヤ人・民族なんですから。あとヒンズー教を信仰している民族の数、人口知ってて言ってるのか?一国家の枠内にあるとはいえ、その規模はとんでもないですよ。それを特定民族なんて、ヘタしたらキリスト・イスラムレベルの信徒がいるのを世界宗教じゃないという言い方はマズイでしょう。

 p31、魂魄、云=雲、煙のようなそれを意味する。白は白骨、骨を意味する。天地に還った魂魄を呼び戻す儀式、招魂復魄(p32)。頭に頭蓋骨をかぶって魂を下ろす儀式、シャーマニズム。※筆者はこのシャーマニズムを、及びそこから派生する宗教意識を、なんか儒教と拡大解釈している可能性が高い。シャーマニズムや祖先崇拝は別に世界中どこにでもあるだろうとしか言いようがない。

 p38、頭蓋骨が気味悪いからマスク、木に変わっていった。―とあるけども、シャーマニズムから高度な体系に発展していく過程でこれまでどおりのやり方だと新興階級のニーズを満たせないから、新スタイルに洗練されていった方が正しい。気味悪いとか後ろ向きな理由ではない。

 p39、天を円形のドームとして捉える。そこに星とかがある。天体と地上のみ、他に地獄や天国などの世界はない。世界観はそこだけ、天と地しかない世界観。地理・空間が明確に制限されている。この限られた空間で生きている。だからその世界の中 で魂魄がずっとあることになっていて、招くとやってくるという発想になる(天意という概念が存在するけど、その天にこれまでの魂は影響しないのだろうか?天と魂の関係なんてないのかな?多分ないんだろうな)。

 p43、法の右上には、省略される前の字があった。一本角の鹿・羊のような神獣。超能力で罪がわかるという神獣でこれによって裁いていた。

 p44、日本の神道シャーマニズムか?最初はそうでもいいけど、時間が経っていったそれはもはやシャーマニズムと言うよりは風土・自然の観念と発展していく、むしろ道教に近いだろう。一~二世紀ごろ儒教東北アジアに普遍化していたねぇ…。違うなぁ。

 p69、関係ない話だが、印度では11世紀のイスラム教の侵入で仏教からヒンズー教主体へ、中国でも8、9世紀には仏教が盛んだったが、それ以降下火になり、12世紀に朱子学が出てきて以後振るわなくなる。この時代的相似はやはり遊牧民の侵入・国家危機に機能しなかったからか?鎮護仏教・護国仏教の機能を果たさなかったからポイ捨てか?教理に戦争ないもんな~。

 ヒンズー教の誕生はもっと早いが、本当のヒンズー教の真価・深化はこの頃なのかもしれないなぁ。奴隷王朝に代表される侵入の時代にこそヒンズー教の本願があるんじゃないかな。もっとも華夷の別のような形態ではなくて戦争の論理と同時に共存の論理をはらんでいそうだけど。宮崎市定御大は朱子学を宗教革命としたが、ヒンズー教もそう捉えるべきなんじゃないかな?この時代に大きなインパクト・革命的変化がありそうだ。

 さらに、インド的一神教シク教はアラブが一神教から影響を受けて初めて一神教で成功したイスラムを連想させる。インドのイスラムのようなものを思い起こさせる。しかしそのシクは外に拡大していかなかった。そこら辺も非常に面白そうなポイントである。

 一神教なんか特に顕著なんだけど、教理に戦争を組み込んでいくんだよね。キリストには本来なかったんだけども、十字軍を見ればわかるようにね。こういう仏教と戦争の関係にはもっと注目すべきかな。んで日本の場合はどうか?僧兵化していくわけだけども、教理にはもちろんない。戦争のプロフェッショナルだった信長の宗教には、戦争が教理に組み込まれるようになったのかなぁ?信長という神を信じるものは神のご加護がある。でもそれだけで、儲ける以上の価値観念はないかなぁ?

 p111、儒教の道徳性と宗教性。道徳性は落ちても、宗教性(祖先祭祀)は変わってない。では現代の無縁仏のような状況をこの人はどう説明するんだろう?

 p114新しい儒教道徳が必要で、その際に儒教の宗教性も関わってくると。うーん、なんか現代の個人主義自由主義・民主主義は失敗だから、新しい道徳・旧来の復活が必要!の逆算としてこれ書いて(主張して)ないですかね?

 p167、族譜・一族の永遠は、伝統の永遠か。すなわち家族の永遠と中国文明の永遠はおんなじ感覚でしょうね。伝統=歴史=文明の永続っていう図式でしょうなぁ。

 p192、(沈黙の宗教に続いて、)儒教とは共生の幸福論

 p196、時間が有限というのはいつか終わるという事ではない。始まり・基点から考える。すなわちいつか自分たち家族・宗族が始まることになった、一番初めの祖先が基点。その祖先から今の自分達のところまでを考える。「始祖から自分まで」という時間間隔になるから、有限。なるほど、たしかに中国語・プートンファには未来形はない。過去形・現在形しか存在しないもんなぁ。これは合点が行く話だ。子孫が途切れないように、今の自分で終わらないように、未来につながるように努力すると。中国人の集合意識は過去に生きているわけですね。

 天空・大地が崩壊するなんてありようがないから、終末もない。

 p239、東アジアの経済成長をウェーバープロ倫から説明した二つの流れ。余英時の中国を説明したものと、ロバート・N・ベラーから山本七平に至る日本資本主義精神の説明。全面的に支持できない。ウェーバーの模型をただなぞっただけだと。それは同意。ただ山本七平石田梅岩ではなく、鈴木正三であって、儒教から説明したものではないのだが。まあ、余英時とベラーだけしか書いてないので、七平さんについては保留なのかな?

 そもそも儒教に対する本質的問い、定義もなく単に道徳としてスタートしている時点で危うい。儒教理解が不十分であると否定的ですね。ココらへんはまあ同意なんですが、そもそも現代資本主義適応・発展はどこでも起こっている。中国などの発展は、有限の価値観の中の家族や組織の永続性を図るために富・力が必要それを最も生むためには合理的精神に基づく労働・経営になっているとします(´-ω-`)。

 つまり中国に近代資本主義の精神がある!というわけですね。まあ、ぜんぜん違うんだなぁこれが。山本七平はともかく、小室直樹の日本資本主義の精神の本を読まないとウェーバーの論理がわからないでしょう。今の経済成長・成功は魂無き機構化なんですけどね。魂無き仏ですから、いづれ行き詰まりますよ。