てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

アーネスト・サトウの『一外交官の見た明治維新』からのメモ

一外交官の見た明治維新〈上〉 (岩波文庫)/岩波書店

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一外交官の見た明治維新〈下〉 (岩波文庫 青 425-2)/岩波書店

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 アーネスト・サトウの本だけど、幕末の下級士族は夷人が本土に入ってくること、定期的に交流を持つことを断固拒否した。攘夷は侵略につながるという愛国心ではなく、ただ「外国と付き合うこと」それ自体をもって排除することが正当化された。幕末の排外主義は中国の「反日」に通じるものがある。

 日常茶飯事で外国人を見たら斬りかかる事件が多発した。外国との外交をどうするか?という発想がそもそも無い。世論というか士族は交流自体を否定、鎖国政策を主張して、徹底したそれを取れない幕府弱腰!と叩く。鎖国政策を取れない、排外主義=攘夷ができないたびに幕府は正統性を傷つけられ、求心力を失っていく。「攘夷出来ない幕府」を打つべし!が倒幕論の根拠だった。

 そして長州の下級士族が外国人を斬り殺して長州に外国がまとまって制裁戦争をする。長州が実力で到底かなわないということを実感して強硬路線を放棄するのが面白い。このときサトウは関係する長州だけを叩けばいいのに関係ない民間施設にまで報復しているこういうことはすべきでないと警鐘を鳴らしている。

 外国人を見たら斬り殺せ!はテロリストのロジックそのもので、そのテロリストに所属すると思われる集団を責任有無を問わずに問答無用で叩くところも、現代の中東に対する処置と変わらない共通点が面白い。結局列強の非道行為こそが、「攘夷どころの話じゃなか!」という危機感となり見事に攘夷志士たちの方針を転換させていったのは歴史の皮肉。

 どうでもいいことだけど、サトウが両刀階級だったか?両刀士族みたいな表現をしていたのがちょっと面白かった。バイセクシュアルみたいで笑えた。日本人は敗戦で危機を抱いて、衝撃で一夜に激変。外交ルールに習熟しようとしたが、中国は変わらず国際法規を無視し続けた。その比較は今でも有効かな?まあ反日と当時の攘夷は分析する上で面白いなと思ったメモです。