てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

フォーリン・アフェアーズ・リポート 2012/10

フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年10月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

<特集 瀬戸際のヨーロッパ>
統合の危機とヨーロッパの衰退 /ティモシー・ガートン・アッシュ
 文章が長すぎる。そして文章を読んでいく上で要点がわからない。うーん、ユーロの危機にあってEU大丈夫か!?EUの未来はいかに!?ということが言いたいのだろうけども、これを読んで、「なるほど、今のEUはこういう段階で、こういうことが問題になっていて、ここが運命を分かつポイントで、それに対してこうすればいいのか」とか、なにか有意義な分析・提唱になっているんですかね?わからない。英の歴史家で欧州を代表する知識人とありますが…。オックスフォード、スタンフォードの人ですか…。


それでもユーロは存続する ―欧州版IMFとしての欧州中央銀行のポテンシャル
/C・フレッド・バーグステン
 今の状態がEUに取って危機であるのは間違いないですが、この方も書いているように、そこまで言うほどの深刻なものとは思えませんけどね。まあしっかり改革を進めないとにっちもさっちもいかないんでしょうけど。あと、EU単位のEUを主体に考えるメディアってないんですかね?既存のメディアの延長でEUを考えるのではなく、新しいメディアがEUとしてあるべき姿を論じて、EUが取るべき方向性・対策を訴える。EUとしての一体感を育てていく新メディアって必要だと思うんですけど、それは出てこないのでしょうか?


変ぼうしたロシア社会と「ロシアの春」? ― 都市と地方の不満が一体化すれば
/ミハイル・ドミトリエフ、ダニエル・トレーズマン
 ロシア人がどう思っているのかの意見調査です。大規模デモに対し、地方の人間は興味を示していないが、現在の政治の腐敗にもうんざりしている。公正や民主主義よりも行政サービスの質の改善を求めている。反政府デモへの不支持が大きく、不正選挙にもやり直しを求めない。

 地方は補助金漬け。選挙で勝つために都市出身のエリートエリツィンは地方の票を味方につけた。リベラルなメドベージェフが欧米・都市を味方につけ、プーチンが反欧米で馬に乗るパフォーマンスなどで地方の支持を得るという双頭体制の役割分担があった。地方は「石油や富の再配分」という言葉に心を動かされることがなくなった(いくらばら撒かれて予算がついてもその恩恵が民にまで回っていないからこその行政サービスの健全化が地方の要求として上がってきているのだろう)。

 近代的価値観へと転換しているのは都市だけ。ただ、これまで支持率と経済状況はリンクしていたが、11/1の調査では経済が横ばいなのにプーチンとメドベージェフへの支持率が大幅に低下している。少しづつ変化がみえている。

 フェミニストのパンクロックバンドの女性たちが大聖堂に乱入し無断で歌ったこと、「プーチン」を追い出せと叫んだことはクレムリンのプロの情報操作にも出来ない効果をもたらした(非礼な振る舞いが保守思想への賛同を強めたのだろうけど、意見調査だと懲役7年が適切というのが47%でそれは重すぎるというのが42%で、罰する必要はないが10%。むしろこういう行動でもそれはやり過ぎだと考える人が増えていることに注目すべきのような…?)。

 デモの高まりがあっても、都市と地方は断絶していますからね。民主主義とまともな生活では要求レベルが全く違いますからね。問題は賄賂がないと動かない所有観念が根付いていないことで、プーチン以外の誰かがトップについて解決する問題ではないですからね。人の心、メンタリティが変わるには相当な時間がかかる気がします。共産主義を知らない人々が大半になるくらいにならないと極端な変化は起こりえない気がします。今はまだ共産主義時代から20年くらいしか時間が経過していないわけですからね。あと30年くらいは余裕で必要なんじゃないでしょうか?


<特集 領有権対立に揺れる東アジア ―変化するパワーバランス、ナショナリズム、資源争奪戦>
復活した日中の歴史的確執 ― 徘徊する排外的ナショナリズムという怪物
/何憶南
 そのとおりですね。特に触れることはないです。

海のならず者と国連海洋法条約 ― アジアの海を混乱させる中国と米上院
/トマス・ライト
 米上院の海洋法に関する国連条約(UNCLOS)への批准拒否。すでに調印はしているものの、議会の承認がなく批准はまだという状況。米海軍・ビジネスもこれを推奨しているものの状況は変わらず。米の主権が損なわれるという伝統的な拒否反応によるものだが、国際機関ISAへの出資に対し事実上の米の拒否権が合意を得られている。UNCLOSに参加すれば、米の方管轄に入る経済・資源は増える。むしろ加入しないほうが懸念する悪夢が現実化する。

 また参加すればアジア太平洋などの情報収集など、海軍の単独行動が難しくなるというが、米太平洋軍の司令官サミュエル・ロックリア提督はそんなことはありえないと否定している。参加しなくても現状は米抜きで成り立たないから、世界はそれを受け入れると反論するが、参加して国際的な枠組みを作らなければ、そこを中国がついてくる。

 ARFでクリントン国務長官が多国間交渉によって国際法に則って解決すべしとしたが、中国はこれに反対している。フィリピン・ベトナムのような国と個別に交渉したほうが有利だから。中国が現状を不安定化させる試みを阻むためには、強靭な地域的枠組みを立ち上げるべき。そのためにも米がUNCLOSに批准して国際法の秩序を強化することは中国への圧力になる。

 中国の単独主義を封じ込めるためには、自身の単独主義も封じ込めたほうがいいということですね。皮肉なことに南シナ海での中国の不法行為が米の不法行為も抑止するという流れ・構造になっているわけですね。

 20世紀の米の勝利は大西洋における戦略的多国間主義。アジア・太平洋地域における調和した多国間主義をまとめずに、21世紀の米がよい結果を残せるか?

 冷戦時のソ連の脅威によりトルーマンは関与政策を正当化し、議会を説得することが出来たが、今回はその手も使えない。中国はソ連ほどの脅威ではないから。また米が中国と友好国の係争を解決するには中国との対話を閉ざすことではなく、同じ枠組みに参加することなのだが、これを上院の3分の1が理解していないということは憂慮すべき事実だろう。

 また議会は中国に、中距離核戦力全廃条約など
既存の軍備管理に参加するよう求めるべき。上院が頑なに拒むなら、有志同盟・ARFなどの非公式な形に頼らざるを得なくなる。それでは中国を縛る影響力は限定的にならざるを得ない。議会の同意を引き出すために、条約の問題点を是正する交渉もすべきだろう。

 主権にこだわって多国間主義の試みを放棄すれば、米主導の国際秩序を終わらせようとする勢力に利するだけ。
 

資源開発技術の進化とアジアの海洋資源争奪戦
/マイケル・クレア
 南シナ海東シナ海の領土の係争は、この地域のエネルギー需要の増大にある。ナショナリズムと相まって危険な試みが続くが、衝突となれば双方が損をする。そのことをどのプレイヤーも理解しているから最終的には共同開発の方向に進んでいくだろうと。


<特集 中東-アラブの春から再び混迷へ>
2012年秋、イスラエルはイランを攻撃する?
/リチャード・ハース
 特になし 

イランではなく、イスラエルに対するレッドラインを設定せよ ― アメリカのネタニヤフ問題 /マイケル・C・デッシュ
 タイトルそのまんま。イランに対する交渉、戦略方針がよくわからないこともさることながら、イスラエルの対イラン強硬姿勢もまた問題。まあ、イスラエルアメリカ、双方どっちもどっちですね。

ムハンマド侮辱動画が誘発した世界的騒乱 ―怒りを煽ったエジプト政府の真意は /ジュッテ・クラウセン
 ムバラクデンマークでのムハンマド風刺画を利用したのは、ムスリム同胞団の危険性を米欧にアピールするため。こういう事情を知れば、容易にムバラクへの政権批判、民主化要求など軽率に出来なくなるから。ところが結局は、ムバラク政権の崩壊につながった。ムスリム同胞団のモルシもまたこれを利用した。同胞団(自由公正党)に次ぐ、イスラム超保守のサラフィ主義のヌール党が宗教当局を最高裁判所に置き換えるキャンペーンをしている。現実化すれば制憲議会のプロセスすら危うくなるだろう。

出口のないシリア紛争 ― 何がバッシャール・アサドを変えたのか
/デビッド・W・レッシュ
 特になし


<特集 瀬戸際のアメリカ経済>
増税か歳出削減か― なぜアメリカの貧困率は高いのか
/アンドレア・ルイス・キャンベル
 対GDP税収が24.1%と、OECD34カ国内では下から三番目に低い数字(日本は26.9%で下から7番目)。OECDより、個人所得税収が多く、企業所得税収が少ない。なにより消費税がないことが大きい。また法人税は高いのだが、優遇制度などにより、実質法人税率は13%。

 財政規模が小さく、所得の再分配機能が弱い。税システムが複雑すぎる。内国歳入法のガイドブックが聖書の12倍ということからもよく分かる。


迫り来る「財政の崖」を考える ―世界経済、国際安全保障への余波は
/ジョナサン・マスターズ
 こっから取り上げることはありません。この号はそんなに読むものなかったですね。

社会道徳の衰退と中国の食品汚染危機 /ヤンゾン・ファン

医薬品の安全を保つには /ローリー・ギャレット