てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

フォーリン・アフェアーズ・リポート 2012/11&12

フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年11月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン


<特集 日中対立とアメリカのアジアシフト戦略>
中国を対外強硬路線へ駆り立てる恐れと不安 ― アジアシフト戦略の誤算とは
/ロバート・ロス
 中国の現在の強硬路線は実力(※1)に裏付けられた自信によるものではない。むしろ経済の停滞・格差の拡大
など国内の不安に裏付けられたもの。アジアを重視するピボット戦略は、むしろ中国を余計に挑発する。中国の実力以上に対抗戦略として周辺同盟国と関係を強化するならば、中国の不安を煽る。必要以上の警戒策は地域を不安定化させるだけ(※2)。現に北の核について中国は協力しなくなった。南シナ海東シナ海での領有権論争から手を引くべき。大して戦略的価値がないここで中国と対立することは米の国益にかなわない。イラン制裁などで協力的だった中国が2012年反対に回ったことからも、この点中国と協調する必要がある。半島・インドシナで同盟国を守ることを明確化する一方でプレゼンスを下げて、領土問題も現状維持で中国と協調方針をとるべしと。

 ※1中国の軍事能力は米には及ばないことについて―2010年3月、ロバート・ウイラード米太平洋軍司令官(当時)は、米下院公聴会で「最近の中国は劇的な軍事的進化を遂げている」と証言したが、中国の軍事力はどうみても過大評価されている。この10年で中国軍がその能力を強化したと言えるような戦艦や空母を配備しているわけではなく、米海軍の優位に挑戦できない。米海軍に対抗し、アメリカのアジアヘの介入を抑止する主要なツールは、依然として1990年代半ばに配備された通常動力型潜水艦隊だけ。
 中国海軍の近代化については多くのことが言われているが、次世代の精密誘導兵器を搭載できる駆逐艦を建設し始めたのはごく最近。しかも、アメリカのイージス駆逐艦隊に比べ質・量どちらも大きく見劣りする。2012年8月に最初の空母を配備したが、米海軍は11隻の空母を保有しているし、しかも中国が導入したのはロシアから購入した旧式の小型空母。ペンタゴンが発表した中国軍に関する2011年のリポートも、中国軍の兵器システムのなかで近代兵器とみなせるのは、艦船の海洋戦力、空軍戦力、対空防衛戦力の30%未満、潜水艦隊の攻撃能力の55%。要するに、中国軍にはアジアの海洋における米軍の支配的優位に挑戦する力はない。

 ※2中国周辺の対米プレゼンス強化について―2010年7月、南シナ海の領有権についてクリントン長官は、「アメリカはフィリピンとベトナムの交渉上の立場を支持する」と明言。こうした領有権論争の対象とされている島嶼群には、漁業権を別にすれば、経済的価値もみるべき鉱物資源もなく、戦略的にも小さな価値しかない。実際、軍事行動を正当化するには、これらの島嶼群の価値は小さすぎる。
 半島についても不必要に中国を脅かしている。北朝鮮の脅威に対処するのに、これまでのような大がかりな米軍の支援を必要としないことを認識したブツシュ政権は、韓国の駐留米軍の4割を撤退させ、ソウルと非武装地帯の間に米軍を配備するのを止め、米韓合同軍事演習の規模と回数も少なくした。だが、オバマ政権はこの流れを完全に覆した。
 この3年間で米韓は、朝鮮戦争以降、最大規模の合同演習を行うようになり、韓国における米軍のプレゼンスも強化された。ワシントンとソウルは複数の新防衛合意をまとめた。さらに、次第に機能不全に陥りつつある北朝鮮と比べて韓国の軍事能力が大きく改善されているにも関わらず、2012年にペンタゴンは「朝鮮¥島における軍事能力をさらに強化する」と表明した。
 ワシントンはインドシナにおける軍事プレゼンスも強化した。1990年代初頭以降、アメリカの歴代政権は
北京との良好な関係を維持するために、より抜本的な防衛関係を結ぼうとするベトナムの声にこたえなかった。が、2010年に、クリントン国務長官とゲーツ国防長官(当時)はともにハノイを訪問し、クリントンベトナムとの「戦略的パートナーシップ」の形成を求め、2010年末には、ベトナム戦争後初めて、両国の海軍は合同軍事演習を実施した。以来、米海軍はベトナム海軍と年次合同演習を実施するようになり、2011年に両国は国防協力に関する覚え書きを交わした。一方、アメリカはカンボジアとの防衛協力も強化し、2010年にカンボジアは、アメリカが主導する地域諸国との一連の2国間年次合同演習に参加した。この年、クリントン長官はプノンペンに対して「中国に依存じすぎないように」と忠告している。
 さらにワシントンは、南シナ海に接する諸国との協調も強化。アメリカとフィリピン、ベトナムとのつながりを支えようと、日本も両国との戦略的パートナーシップに関する覚え書きに調印した。これによってフィリピンとベトナムの防衛協力と軍事交流の幅が広がった。2012年には、バリカタンと呼ばれる米フィリピン年次軍事合同演習に、オーストラリア、韓国、日本の関係者が初めて参加した。
 まあ、これらの米のプレゼンス拡大については、対中軍事威嚇をすることで、G2のような中国を既存の国際秩序に従わせよう、言う事を聞かせようという大国間の制度前のブラフ、力の誇示という性質もまたあるんでしょうけどね。お前らがG2要請を無視したってことはこうなることがわかってるんだろうな、この野郎という意味合いがありますわな。

<Classic Selection 1972>
中国と日本の相互認識― 歴史的遺産とイデオロギー的遺産の呪縛
/チャーマーズ・ジョンソン
 クラシックって、クラッシク過ぎんだろ。古すぎてあんまり役に立つとは思えませんが…。

第三の産業革命― モノをデータ化し、データをモノにする
/ニール・ガーシェンフェルド
 3Dプリンタの話でした。技術的なことはよくわかりません。


<Review Essay>
何が経済を成長させるのか― 政治体制、地勢、資源
/ジェフリー・サックス
 書評ですね。

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源/早川書房
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国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源/早川書房
¥2,520 Amazon.co.jp

 ―の書評。本屋で手にとってチラ見した記憶がありますが、あんま内容ないなと思って読みませんでした。ここでもあまり肯定的な感じではありませんね。政治制度が経済成長を決定するというテーマであり、民主主義でなければ経済成長が出来ないというお決まりのお約束で読者を安心させているが、経済成長はもっと様々な要因で決まる。政治はその一因にすぎないと評者は論じてますね。というか、そもそもですが政治制度が経済成長を決定するっていう研究は前近代であんまり意味あるんですかね?近代社会の今においてそこまで有益な研究になりうるのか?そしてテクノロジーの発展が大きく、中国などはまさに現代テクノロジーなくしてはありえない急速な発展を遂げましたが、そういう事例とこれまでの事例を有意義に比較対照できるのでしょうか?

 まあ、個人的にテーマにくいついていないので、ありきたりなテーマでつまらないなと思うのでどうでもいいのですけどね。よくある言いたいことを言うために都合の良いデータを取り集めた的なものになるのでしょうかね?評を読む限りでは。うーん、エコノミスト政治学者によるものですか…。


<CFR Meeting>
「美しいデレバレッジ」とは ― デフレとインフレの間
/レイ・ダリオ
 対談です。特になし。

<CFR Update>
韓国大統領選挙と米韓、日韓関係
/L・ゴードン・フレーク
 米韓原子力協定と新ミサイル指針の連関。韓国のウラン濃縮と使用済み核燃料再処理について米は反対している。10月の指針改訂で300キロを800キロに延長。2001年の覚書で射程と重量を500キロに限るとなっていた。現在は550キロと800キロを五年以内に配備するということになっている。なぜ北の脅威がある中で韓国が自由に決められないのかという反発がある。原子力協定とリンクして揉める可能性があったと。普段なら、朴槿恵が大統領になれば過去の党の姿勢を見て現実的な日韓関係が期待できるが、父親の関係上親日的な態度を期待するのは難しいと。


<CFR Update>
韓国の新ミサイル指針 ― 北朝鮮の反発と地域的波紋
/スコット・スナイダー
 上の文章に続いて、ミサイルの話ですね。新ミサイル指針で韓国がより安保の責任を引き受けた米のパートナーに進化したことは間違いないと。 問題は当然北の反発、地域の軍拡。そして韓国の長距離ミサイル能力の開発は加盟国に300キロ以上の射程を持つ美猿開発と輸出の自粛を求めるミサイル技術管理レジームMTCRが潜在的に揺るがされることだと。
 北の外交の基本方針として、米と交渉する。韓国は米の傀儡政権というものがあります。今回のことで韓国はやはり米の言いなりだ!と非難しているようですが、現実には韓国が安保で主体的役割を果たすようになってきた=米とより対等にシフトしてきたわけなんで、外交の主張の前提が変化してくるわけですね。この変化に基づいてどのように外交上の表現・戦略を変えてくるのか興味深いですね。


<特集 ユーロを救うのはECBかドイツか>
<CFR Briefing>
ユーロ危機とECBの役割― 国債購入プログラムの功罪を検証する
/クリストファー・アレッシ
 今ECBは国債購入を禁じられているわけですが、それは認めるべきでは?という話。これってどうなんですかね?普通の中央銀行なら、国家と一蓮托生ですから買いオペしてもいいんでしょうけど、ECBは欧州政府があって、欧州政府が独自財源・財政を持っているわけではないから難しいと思うのですが、そういうことをしても何ら問題がないといえるのでしょうかね?よくわからん。


<CFR Interview>
ユーロの解体・存続の鍵を握るスペイン/ミーガン・グリーン

<Foreign Affairs Update>
ドイツの覇権という虚構 ― 追い込まれたベルリン
/ダニエラ・シュワルザー、カイオラフ・ラング

<CFR Meeting>
ユーロの課題とイタリア経済の再建/マリオ・モンティ
 ここまで特になし。


<CFR Interview>
イランの核開発プログラム ― 曖昧な意図と空爆リスク
/デビッド・オルブライト
 イランが核を兵器化するにはナタンズという施設を再稼働する必要がある。その施設再稼働は現在の米の能力を持ってすれば察知することは容易いので危機は未然に封じ込められる可能性が高い。ここを再稼働すれば流石に空爆すると。米なら大ダメージを与えることが出来ても、イスラエルには無理。イスラエル空爆には無理がある。かえってイランに核武装の口実を与えて正当化させてしまうから。

 民生用の研究や電力生産のためという口実は嘘。もう十分燃料を生産しているし、ウラン濃縮をやめて民生用のプログラムが止まることはない。これまでの交渉で明らかなのはイランに譲歩するつもりはないということ。だがイランが必ずしも核を手に入れたいと願っているかどうかは分からない。政府内でも交渉でどういう態度をとるべきか合意が出来ていないということ。

<CFR Interview>
トルコの反シリア路線と地域紛争リスク
/スティーブン・ハイデマン
 トルコのアラウィ派は2300万人(トルコの人口が7360万なので3分の1近いんですね。クルドと言いトルコの国内には複雑な背景があるということですか)。反アサドで、イラン・ロシアを敵に回しても構わないという姿勢を明確にしている。トルコ国境で紛争が起こっているものの、これが本格的なシリアとの衝突に繋がる可能性は小さい。
 シリアのクルド人地域は、米とトルコがテロ指定しているPKKクルド労働者党が支配している。
 アメリカが反政府勢力に訓練と装備を提供すれば状況は大きく変わる。シリア軍の式と能力は大きく低下し、反政府勢力の能力は度重なる戦闘で高まっている。アサド政権が勝つにはヒズボラ・イランに支援を頼むしかない。
 
独立を求めるスコットランドの真意は チャールズ・キング
 スコットランド独立運動が高まっているという話。ただし現実性は乏しいと。スコットランドが独立してメリットが何かあるんでしょうかね?他のイギリスよりも生産性が高い、富を生むから独立したいってことじゃないでしょうしね。独立してユーロを導入して経済的メリットが有るとかならまだ分かりますけどね、そんなメリットがあるような気がしませんけどね。

フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年12月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン
¥2,200 Amazon.co.jp


緊縮財政時代の米国防戦略― 日本の安全保障とA2・AD戦略
/アンドリュー・F・クレピネビッチ
 アフガン・イラクで米は、レジーム・チェンジをする意図を持たなくなった。今は安定化が第一。対中国・イランへのA2・AD戦略。アクセス・ネットワークの確保が重要になる。


<特集 新興国経済の黄昏>
BRICsの黄昏― なぜ新興国ブームは終わりつつあるのか
/ルチール・シャルマ
 タイトルそのまんまですね。十年くらいの急激な成長が
短絡的にその後もずっと続くと想定するのが誤り。

論争 中国経済の未来
/デレク・シザーズ

論争 ブラジル経済の将来
/シャノン・オニール、リチャード・ラッパー
ラリー・ローター、ロナルド・レモス
ルチール・シャルマ

曲がり角のブラジル経済 ― 輸出産業の保護か投資拡大か
/ベルナンド・ジュニスキー
 中国経済の成長が続く!世界一になる!という見込みの否定に、ブラジル経済についての同じような話。特に触れることはないですね。
 

<特集 高まる社会不満と習近平体制>
習近平政権の内憂外患 /ダミアン・マ
 経済成長を重視するあまり、格差の拡大・社会保障がなおざりに。民主化を進めて政治の権利を多くの国民に与えなくては習近平政権は危ないよ―というまあ、ありきたりな話。


北京の新指導層は社会不満にどう対処するか /ジェローム・コーエン
 広東省党書記汪洋リベラルな改革派のホープと見なされていたが、薄煕来の失脚以来、静かになった。人畜無害化し、コンセンサスを重視する人物に。民主主義の実験などを試みることもなくなった。無論常務委員入りもなかった。今後中国の民主化進展はありえないと見ていいということでしょうね。


<特集 儒教文化とアジアの政治体制>
儒教とアジアの政治― 中国が「民主主義」という表現を使う理由
/アンドリュー・ネーサン
 アジア的価値、民主主義化せずとも独自のその価値で経済成長が出来るとするもの。ミズーリ大のドー・チュル・シンという人の研究を元に論を展開しているようですけど、日本が儒教の教えが根付いている儒教圏とか、もう完全に理解していないと思われるものが出てきますね…。民主主義と資本主義と近代化というテーマは小室直樹によって散々説かれてきたわけですが、まあ理解が足りないというか、欧米の人が見るものの見方・価値観というか…。まあそんな感じのものですので、特に取り上げることはありません。

文化は宿命である /リー・クアンユー、ファリード・ザカリア
 で、そのアジア的価値というものを理解したいがために昔のインタヴューを引っ張り出してきたようですが、こういうのを読んで「アジア的価値」を理解するのに役立つんでしょうかね?中身が無い気がしますけどね…。


衰退する独仏協調 ― 政治統合から危機対応へ変化した欧州のメカニズム
/ヤコブ・ファンク・キルケガード
 ないです。

クルド人の夢と挫折
/ジュースト・ヒルターマン
 クルドについての解説ですね。油田配分で独立への経済基盤を手に入れた。しかし、それでも中央からの補助金、予算の17%に値する金に依存していると。石油の輸出はバグダッドのパイプラインの使用許可が必要。石油収入の配分などでクルドと対立があると。クルドバグダッドの頭越しに石油を輸出したがっている。エクソン・モービルと探査契約したり、トルコと輸出ルートを探ったりという段階。トルコはマリキがシリアの現体制を支持していることもあって、手を突っ込むことにも積極的。

 が、イランとアメリカの支持を得ているマリキ政権に逆らうことに理はない。財政的な基盤もなく依存している構造が変わらない限り、根本的なパワーバランスは変わらない。米の圧力もあって元の合意に戻ると。トルコ政府高官は、イラクが領土保全を維持するのが「望ましい」という表現に変えてイラクの領土保全村長から少し踏み出した。またエルドアンはバルザニ(自治政府のトップ)に対して、バグダッドから武力攻撃を受けた場合、トルコ軍がクルド自治区の防衛にあたると約束したとも言われている。そしてトルコのダウトオール外相が2012年8月にキルクークを電撃訪問。イラクサイドからするとキルクークの管轄問題でトルコがクルド自治政府の立場を支持しているに等しい。

 これに対抗するためか、マリキはキルクークに新たな軍事本部を設置する計画を発表。この石油都市の軍事化か。一方、バルザニはトルコの支援をえるために「現在建設中のパイプラインを経由して日量100万バレル以上の原油をトルコに送る。トルコ南東部の国境沿いにおける安定したスンニ派地域としてバグダツドに対する緩衝地帯となる。クルド人独立運動がシリアのクルド人地域に飛び火しないように配慮する」という三つの約束をした。トルコにとって中東の覇権をめぐるVSイラクはリスクが大きい。

 結論としてクルド人国家は誕生しない。結局のところクルドイラクにとどまり、当面はそのなかで独自性を強めていくしかない―とあって、そのとおりでしょうね。これまでのクルドの歴史を考えて、それでも彼らにとっては非常に大きな進歩。これを
基盤に、さらに好ましい状況を手に入れるかもという現状なのでしょう。


レバノン化するシリア ― 反体制派の統合は幻想に終わる
/エドフサイン
 ないですね。

韓国の宇宙開発戦略のジレンマ
/ジェームズ・クレイ・モルツ
 独自開発にあんまり意味は無い。周辺同盟国と協調路線をとったほうが効率がいいとかそんな話。

地球温暖化と水資源争奪戦
/シュロミ・ダイナー、ルシア・デ=ステファノ
ジェームズ・ダンカン、カースティン・スタール
 また水資源の話ですね。これを巡って戦争するというのはちょっと大げさだが、紛争の要因になることはあり得る。上流と下流でモメることがあるから、協定づくりを進めてリスクを減らしておくこと。