てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

ISISの話


 イラクの地方都市をISISが落として事態が緊迫しつつあります。彼らはここを拠点に既存の国境を変更して、スンニ派イスラム新国家建設を目指しています。イラクという中東では珍しく、軍事政権ですが近代国家を志向した国家が崩壊して、パンドラの箱が開かれてしまった感がありますね。

 結局、政権を倒して新しい国を人工的に作っても、新しい政権にすげ替えてもどうにもならない、絶対成功しない。むしろ泥沼化のために介入せざるをえなくなり、介入のために泥沼化しているのかその逆なのか、もう一体何がなんだか分からない状態になるに決まっている。だからこそブッシュ父時代に、湾岸戦争で倒せたはずの・レジームチェンジをすることが出来たフセイン政権を倒さずに戦争を終えたわけで。

 このような草の根?スンニ派の政治運動が起こってしまえば、カウンターパートとしてイラン、イラク・マリキ政権、シリア・アサド政権とシーア派系が動き出す。共同してしまう。対原理主義・過激派と既存のスンニ派政権というのはもちろん一線を画しますが、宗派対立の芽が蒔かれてしまったのは、このISISが消えたあとに大きな意味を持ってくるような気がしてなりませんね。

 イラクの場合、そもそもシーア派が多いという事情もあり、最近はイランとの関係改善が進んでいた。かといって宗主国アメリカを無視できない。そのような政治力学が働く中で微妙なバランスをとっているのが今のイラク。シーア・スンニ・クルドという三つの勢力の混合の上にフセイン・バース政権はありました。アメリカは戦後日本の時代に成立したような、米に協力的な政権・政治勢力を本当に築けているのでしょうか?養成できているのでしょうか?今回の出来事で米に協力的な勢力も米と距離を置かざるを得なくなる、関係がギクシャクせざるを得なくなるということは本当にないのでしょうか?

 でイラク内のクルド系がISISの勢力の伸張を幸いとばかりに、これを機に独自の動きを見せているよう。いくつかの都市をISISという勢力が陥落させて、クルド独立の画も想定されて、予断を許さないといったところでしょうか?ただどの大国も、このISISをバックアップしないし、クルド独立は言わずもがな。独自で国家運営出来る能力のないクルドが独立という図式も考えづらいと思いますけどね。

 そもそもクルド人達にそういう能力がないというのは以前フォーリン・アフェアーズの記事から紹介しましたけど、そんな能力あればとっくにそういう話が持ち上がっていたでしょうからね。クルド人という民族があって、彼らが独立した勢力になれるらしいというネタがあっても、それがまるで現実味を帯びなかったのはトルコなどの大国が反対しているというよりも、それを後押し・現実化させる能力がないということに尽きるわけですからねぇ。


 「クルド人が思い描く独立国家の夢はまたしても先送りを余儀なくされそうだ。現状で可能なのは、バグダッドの息の詰まるような支配から、トルコに対するより従順な依存へと移行することくらいなのかもしれない。」 bit.ly/QNOoPz

 ―そうそうこの記事にあるようにね。つい最近の情勢で、クルドが独立国家になる!とうとうクルド民族国家の誕生だ!っていうツイートを結構見るんですけど、かなりありえない話だと思いますよ。国家運営能力ある指導層がいないですし、それを後押しする大国もないですからね、地域の安定化に貢献もしないですし、まず無理かと。逆に言うと、アメリカが指導層育てて、独立国家作って、それによって今の中東情勢を安定させちゃるけんね!というプランがないとあんまり意味が無い。事態は混乱するし、自分たちの国を作ったものはいいものの…ということになると思いますね。