てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

岩本沙弓著 アメリカは日本の消費税を許さない

アメリカは日本の消費税を許さない 通貨戦争で読み解く世界経済 (文春新書)/文藝春秋

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 簡単にチラ見した印象を。話題になった『拒否できない日本』で問題とされた年次改革要望書は廃止され、名前形を変えて復活していること。「日米経済調和対話」ですか?今の安倍さんが小泉さんみたいにそういう声に積極的なタイプではないというのは、小泉以後の遺産といえるのでしょうかね?遺産に変なものがくっついてきていますけど。

 そういえば小泉さんは消費税をあげませんでしたが、人気取りという以上に、米が反対しているからという要素もあったんでしょうね。米からすると消費税を採用していないので、非関税障壁になる。輸出戻し税、輸出企業は国内で消費税がかけられると、現地でも消費税がかかって二度負担をすることになるため国内では免除される。還付されるわけですね、それを米は認めないと。

 というのも米だと、消費税を採用していない。だから、米にはこのような輸出戻し税が存在しないわけです。自分達はそれを利用しない、相手はそれを利用して競争に有利になるから反対すると。まあ、テメーのとこでも消費税やれよと言われればそれまでですが。問題は米が消費税増税で自分達の企業の競争力を削がれかねないから反対するということ。

 そもそも国際世論が消費税増税を求めるとか、国際公約だとか言うが、そんな世論は存在しない。仏の大統領選挙で経済の動向で持ち直したから、付加価値税導入を見送ったがそのような批判は存在しなかったと。

 TPPは関税障壁をなくすものなのに、消費税増税でまた障壁をつくろうというのは本来矛盾している。一部の輸出企業に便宜を図っているとみなされてもしょうがないのではないでしょうか?

 また米の経済立て直しの時に、オバマ政権に配慮したカナダでは、米企業の輸出増に配慮して消費税を下げた。上げるものではなく、状況に応じて変動させるもの。なぜ下げて様子を見る。変動させるという発想がないのか。オバマ政権とコネというかパイプを作りたいのなら、新政権は一年限りでもいいので1%・2%下げるというテストをすべきですよね、本来。

 一律~%というのがおかしいのはもちろんですが、そもそも消費をして国民から徴収しているのに、赤字企業だから納めなくても良いというのは本来おかしいですよね。消費者からぼったくってるわけですからね。まあ以前『消費税は民意を問うべし』のとこで書きましたけどね。

 日本に大型商店参入が許されたとき、日本で利益を挙げられなかった外資は撤退を決める。英だか仏だか忘れましたが、イオンはその店舗を1円で買い取った。ハゲタカなんて目じゃない。なぜ1円で手放したのか?それは従業員の雇用を守るためと。そりゃあちらさんは経営に対する批判が利益以上に、労働者だったり環境だったり、そちらの面でも厳しいですからね。外資でさえ日本の労働者のことを考えているのに、日本の企業ときたら…。まあ日本の労働者というより、自分達のルールを適用しただけなんでしょうけどね。

 1ドル=360円はサークルを意味するから導入されたという神話には根拠が無い。敗戦時の混乱で輸出レートと輸入レートが異なるという二重レートの時代があり、300円から330円が妥当というところから輸出主導で経済を活性化させようとより条件をゆるめて360円にしたと。

 角栄の自主外交で、角栄キッシンジャーへイランルートの許可を求め、無碍なく突っぱねられてそれでやりませんと下手に出る話が出る。自主外交故に米が角栄を陥れたという話を再考すべし。公開された会話記録では、真珠湾での開戦通告は到着後15分待たせたという話があり、通告が1時間も遅れていない可能性がある。

 まあ、だからと言って実際その通告遅れがなかったら結果が変わったかというと全く別物なんですけどね。時間が遅れたからサプライズになったわけじゃありませんからね、彼らの価値観から言うと。

 公文書と言えど、調べたものがいないものがある。箱で雑に放り込まれている文章も読んでいるうちに、その分類がどうしてなされているか繋がることがある。なるほど、という感じがありました。

 ただ、ところどころ反証を予定していないとか論がワンサイドじゃないか?と思うことがありましたね。まあなかなか面白いと思うので、また機会があれば別の本を読んでみましょうかね。

 ※そうそう、忘れてました。当時の360円のレートで日本の半分くらいの値段でラジオが売られていた。普通にドルになおした値段の半分くらいだった。それくらい360円レートは日本に有利であった。半値に下げても利益が上がるわけだから。逆に言うと輸出企業を成長させるために国内で高い価格で販売していたとも言えますが。そして、360円レートがこれほど日本有利であるならばいずれ是正されるに決まっている。しかし当局の意志決定を見ると、そこにそのような発想は全くなかった。誰もニクソン・ショックのような対円圧力の結果を予想していなかった。これによる失われた富を考えれば、どうしてこのような硬直した思考しかできなかったかを検証する必要があるのに、そのような検討がない。これでは再び同じ過ちを犯すと。そういう面白い話書き忘れてましたので、追記。