てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

廣瀬陽子著 『未承認国家と覇権なき世界』

未承認国家と覇権なき世界 (NHKブックス No.1220)/NHK出版

 廣瀬陽子氏『未承認国家と覇権なき世界』読んで思いつきメモ。本書の内容に触れるのではなく、その「未承認国家」というモデルが面白いなぁというくらいの紹介ですが。まあ一応読んだのでご紹介をば。

 主権国家というルールで国際政治を語りきれなくなった昨今ですが、それでも問題の果てに国家独立ということは当然起こりうる。が、国際社会はそう簡単に国家としての承認をしない。未承認国家として存続し続ける状態になる。

 既存国際秩序にきっちり位置づけられない「未承認国家」というものが今後どうなっていくかは、極めて興味深いテーマですな。満洲国のように大国が引き起こす主張(問題)の影に未承認国家あり―という一つの型も考えられる。ロシアの周りは未承認国家だらけですね。筆者はこれを帝国の遺産としていますね。

 帝国あるとき、未承認国家あり。ここでは周辺諸国に影響を及ぼそうとする帝国の力の行使の結果引き起こされる未承認国家ということで帝国というワードを用いています。それもひとつの見方であり、わかるのですが昨今の「帝国」とは少し用語の使い方が違うかな?と感じる所。

 参考文献に帝国論で必ず触れておくべき、山本吉宣氏の著作が書いていないのは気になりますよね。それ読まずに帝国論論じるのはどうなんでしょ?アメリカも世界各国に軍事基地・地位協定を結んで「非公式な帝国」として影響力を及ぼしている。沖縄・台湾にはそういう残滓がありますよね。

 関係無いですが、ロシアのクリミア独立&編入の経緯を見て、沖縄独立はありえなくても、沖縄自治共和国化というのは十分ありえたりするのではなかろうか?と思った。独立の一歩手前の段階にステップアップすることでより強い交渉力を得られるんじゃなかろうか?まあ、このへんは思いついたアイディアを、既に手段としての沖縄独立論という観点からブログで以前書きました。

 旧ソ連からなる未承認国家、未承認四カ国が相互に承認しあって外相四会議などで協調してるとか、面白いところですよね。未承認ということは法的親国の一部としてしかみなされない、独立・実効支配をPRするためにLineを引いて、国家として示そうとする傾向があると。パレスチナの壁とかその最たるもの。

 北朝鮮もある意味、国際社会に不完全な形で関わっているので未承認国家の性質を持っているのでしょう。凍結された紛争という性質がありますし。言葉的にマイナスのニュアンスがあり、犯罪多発地域のところもあるが、台湾然り、ナゴルノ・カラバフソマリランドのように高い評価をえることもある。

 まあ要するに現在の主権国家ルールからはみ出た「未承認国家」というのは今の国際情勢の問題点、紛争地を示すわけで、現代国際問題を理解する上で一つの切り口になるということですね。

 グルジア紛争や、クリミア併合然り、ロシアの行動の背景には、EUコソヴォ独立がある。コソヴォを独立させること=現状維持の原則を破ること。いうまでもなく、これは国際法違反。そっちがそうなら、こっちも好きにするぞ!というのがロシアのスタンスと。米も対イラン名目で露を牽制するような新基地設置をしたと。

 EUコソヴォ共和国を独立させ、それをEU内に包括することで問題解決を図るという手段に出ましたが、まあ当然EU加盟というエサあって出来たこと。他に応用することは無理。この事例のように、国民は賛成・反対そう簡単に割り切れない。コソヴォという枠組みにあまりアイデンティティはない。

 今のロシアの帝国主義的な動きといいますか、領土拡大の背景にはそういうEUサイドの国際法違反があるということは理解しておくべきでしょうね。そしてコソヴォという実権が成功するしないは、EUに取っても非常に大きな意味を持つEUの政治力を試すテストになってるわけですね。

 EUという巨大な政治枠組みの中に包括する、封じ込めてしまうということで問題を解決するというやり方は言うまでもなくEUだけが出来る、EU独特のものですから、それが他所の国・地域の参考にならないことは言うまでもありません。ではその他の圏・ヨーロッパ以外の地域で、どうすればいいのか?という肝心の回答については留保が付く状態のママ今後も進んでいくだろうという話ですね。そんな簡単な解答はあるわけないですね、見つかっていたら、今頃大騒ぎになりますわな。