てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

報ステでロレッタナポリオーニさん観て思ったこと、イスラム国について

その”時代錯誤”は戦略なのか? 『イスラム国 テロリストが国家を作るとき』 - HONZ honz.jp/articles/-/41105 面白い。ISISは高度な会計技術を使って財務書類を作成、好業績を挙げている多国籍企業のと比べても遜色ない決算報告書だと。

 どの武装集団とも決定的に違うポイントは、近代性と現実主義を持ち合わせていることであるという。ファイナンスマーケティングの両輪をうまく活かせれば組織としては存続可能、その先を見据えており、ポイントは「国家」建国の夢を見ていること。「スンニ派イスラエル」を目指しているとのこと。なるほど。

 ロレッタナポリオーニさんね、面白そうな本ですね。読みたいですね。確かにネット戦略とか既存のものとの違いがありますが、年代の違い(指導層の若さ)だけではなさそうですね。今の人質・身代金事件などを見ると、かなり歪んだ現実主義と見えますけどね。いかに勝つかということにのみ集約された感じの。

 ※のちに、人質事件で日本を敵に回すという馬鹿な行動に出るわけですけども、結局過激派主体であり、そういった現実主義路線を貫いているのは一部、もしくはフセイン政権のバース党の残党だけなのかもしれませんね。

 まあ、詳しいことは本著を読んでからまた一本書いてみたいと思います。


 んで、この著者が報ステ出てますね。タリバンアルカイダのような組織と決定的に違い「国家」を意識していると。内政・統治のための年次報告書すら備わっていると。原点はサイクス・ピコ協定、英仏主導の勝手な国境線への不満があると。

 確かに現地の住民の意見を無視した勝手な国境線に憤りを感じるのは自然の感情でしょう。だからといってカリフを中心とした国境線のない、宗教主体の「イスラム国」をつくろう!という発想にはついていけないですけどね。だったら国民国家主権国家を作ろう!でしょ、そこは。

 ISILが予想以上の早さで拡大をしたと言っても、それは米英が空爆を自制したから。国家を目指すならば、米英に正規戦で戦えないとうまく行きっこない。当然そんなことは不可能。イスラーム版「イスラエル」建国を目指すとはいっても、それはどこかで必ず空爆にぶつかって失敗する構造が存在する。

 何故さっさと空爆しなかったのだ!という批判があるようだが、むしろ宗教を中心とした国家建設は必ず失敗するという良い教訓を与えるために一時の成功・淡い夢を抱かせるのはありだと思う。これでイスラーム版「イスラエル」を目指すなら、次は国民国家のロジックをかなり取り入れるだろうから。

 ISILはある程度成功をしながらも何故最終的に失敗したのか?現実主義、近代合理主義を取り入れたが、最終的に米英の壁を乗り越えられなかった。その壁を乗り越えるためには国民国家のロジックを取り入れよう!という「学習」が期待できますからね。逆に学習しなければ永遠に混乱が続くわけですが…。

 ここは列強への怒りが渦巻いている。米欧(もしくはキリスト教国)なにするものぞ!という「怨念」のロジックがあり、いついかなる時にそれが吹き出すか、スイッチ入るかわかりませんからねぇ。意外と米の支援を受けているクルドがISILの棚ボタひろって先に国家独立を誕生するということもありえそうなのが凄い構図ですね。クルドも国家としてやっていくだけの実力が備わっていないと言われていますけど。

 で、じゃあ空爆後にスムーズに「学習」がうまいこと働いて、カリフ制主義者が取り除かれて、脱宗教的な世俗国家、もしくは緩やかな連邦国家、理想的には近代的な国民国家などなど、うまーいこと行って、そういうものが成立するかというと…。かなりハードルが高い。決定的なピースが足りない。そういうことをしてくれる中心足りうる勢力が出てくるかというと…なわけでして。

 まあやはりイラク戦争パンドラの箱の蓋を開けたオチになりそうですね。近代国家の担い手になる人材を育成できずに終わるのならば。まあ日本の時のように、バース党みたいな人材を積極的に採用しなかった時点で、はっきり言って死亡フラグビンビンに立ってましたけどね。