てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

人質事件の残り雑感まとめ

ISISの人質事件でつぶやいたものの残りのまとめを。もうあらかた言いたいことは書き尽くしたのですけどね。


○ISISの呼称問題について
 自称イスラム国より偽称カリフ国の方がISISを呼ぶ時に適切な気がする。国家じゃないことを強調するためにState呼びを避けようとするISILよりも、イスラムの方を否定しないとまずいでしょう。ちなみに国家と見ているからISISとツイしてるわけじゃなくて一つの固有名詞で捉えております。

 あちらさんの人ならISISでなんの略かぱっと思いつくでしょうけど、日本人はそうでもないですしね。ISISと言われればそれでアイエスアイエスか、アイシスという一つの名前しか連想しませんからね。イスラムサイドの人から見ると、「僭称」カリフ国の方が呼び方として適切かもしれませんね。

 「ダーエシュ」という呼び方もあるようですが、これが用いられるのは蔑称的なニュアンスがあり、アラビア語で仲違いを引き起こす者という言葉の発音に似て、それをれんそうさせるからだからとか。まあ相手が呼ばれたくない名前をあてるのは「倭人」然り、昔からの伝統ですね。


○ヨルダンについて
 日本は中東支援でヨルダンに147億の支援をすると表明。現ヨルダン国王はムハマンドのハーシムの一門の子孫。ヨルダンへ支援をすることでパイプを確保していた。ただそれが実際機能するかどうか…。自分たちが唯一の正統という看板を掲げているだけに、はねのける可能性もあるのでは?ヨルダンにテロ仕掛けたくらいですしね。むこうで血統はかなり意味合いが大きいんですけど、同時に王族の腐敗というやつもまた、テロリストの格好のターゲット・口実になるわけですからね。

 まあ、その血統故に色んな部族長とか法学者とかとコネがあるのは間違いないですよね。しかしISISというトラブルメーカーがいると彼らも同時に潤う構造になっているのがどうなんだろうか…?という気もしますねぇ。無論彼らに悪意はないんですけどね。

 ヨルダン国王は英で訓練受けた空軍の経験があって、自らISIS戦争の指揮を執る、空爆しようとしたという話があるくらいキャラ立ってる人で面白いですね。カリフのウマルだかウスマーンだかの故事にならってこっそり市井にまぎれて庶民の暮らしを観察しているとか、物語に出てくる王様・姫さまみたいなことやってるらしいですしね。

 米英主導でISISへの武力制裁・空爆をすると、反感・反米感情が出てしまうから、ヨルダン国王が中心になる形をとる。ヨルダン国王を盟主としてISISを叩くというのもひとつの手だと思いますね。まあ、そこからムスリムの支持を集めて、ヨルダン国王がカリフに推戴されるかもしれませんが(^ ^;)。


○人質交換の展望について
 後藤さんの解放と引き替えに、自爆テロ事件実行犯の1人の女性死刑囚との交換要求がなされていました。この取引が上手くいく可能性は限りなく低いでしょう。例えるなら、もしシリアで誘拐事件が起こって、人質との交換条件が麻原彰晃の釈放・身柄引き渡しだと言われて、日本政府が応じるかと考えるとわかると思います。これで自国民との交換ならともかく、他国の民間人人質のために凶悪テロリストと交換に応じる可能性は限りなく低いでしょう。

 今回は、ヨルダンパイロットとの交換という話もありましたが、そのおまけに3対1、2対1で解放されるかどうかという線での交渉でしたが、湯川さんが先に処刑された時点でその可能性はかなり小さくなっていたでしょうね。

 交渉しない原則の米英でも人質交換をした前例があるようです。英はIT技師がバグダッドで拉致されて、武装勢力幹部二名の解放をしたと。ただ、それが交渉に応じた結果と見られないように、人質交換については複雑なプロセス(仲介をいくつも経由して)を踏んだ上で行っているようですね。今回の日本政府の交渉も単独ではなく、表面上は「テロに屈するな」とメッセージを送ってるけども、裏では最低限これこれこうして民間人解放をするノウハウを伝えていた可能性もありえますね。

 内藤先生が「ヨルダン政府がパイロットのために死刑囚を釈放したらテロに屈しことになり、米欧諸国に非難される」という話をしていたが、米兵1人(脱走兵)のためにグアンタナモの囚人5人を解放している。つまり「捕虜交換」なら話は別。ヨルダン政府の交渉に国際世論・抑圧力学はさほど問題ではないでしょう。

 関係無いですが、確か北のジェンキンスさんも脱走兵だったはず。捕虜などについては寛容というか絶対助ける!という立場であるべきだろうけど、脱走兵についてまで寛容ってのはどうなんでしょうね?なんか米軍内はどこまでも温情措置が適用されますよねぇ…。腐朽組織の匂いがしますねぇ…。

 仏もジャーナリストが誘拐されていて身代金を払ったかどうかという話がありますね。まあ直接でないにせよ、パイプ持ってる国にODAとかの支援や他の外交的なプレゼントをして、仏の代わりに金払ってもらうとか見返りを与える取引は、やってるはずですよね。多分日本も似たような感じになるんじゃないでしょうか。直接ISISに現金を渡すというような単純な事にはならないでしょう。

 テロとの戦いというのはテロリスト・武装勢力がどのような動きをしているかをつかむ諜報機関がかなり重要だから、何よりもまず諜報機関の再建に力を入れるべきなんじゃないでしょうか。また、日本の優秀なシンクタンクとして世界ランク入りするのがたった2つしかないのが現状。そこにも当然力を入れるべきでしょう。


○偏見など対応について
 シリア難民を受け入れない日本…。それだけならまだしも来日していてシリアの混乱で帰れないから、難民と認めてほしいという54人の訴えも認めないとか対応が酷すぎますよね…。シリアで苦しんでる人を救おう!という姿勢も見せないで、日本人が困ってるから助けてね!って、相当そこの人たちから侮辱されそうなふざけた態度だと思うんですがね。

 戦後、中東諸国を裏から操ったりしていない&復興を成し遂げたという日本の良きイメージが崩れてしまう。それと同じ論理で、欧米のような否定的なイスラム観を持ってない日本が、ISISの人質事件によってイスラム教へ負のイメージを抱いてしまうという危機感が存在する気がします。

 イスラームへの偏見というのは日本では多分大丈夫だと思いますが、ずーっとテロを身内から輩出し続けている。何故政治的にそれをいつまでたっても解決できないのか?というイスラーム諸国に対する不信感には繋がるでしょうね…。ブッシュがバカやったからという良い訳がいつまで通じるでしょうか…?

 あと、イスラムのボランティアでいつものように炊き出しをしているとテロリスト扱いをされて警察に個人情報を根掘り葉掘りという話も聞きましたね。そりゃ今後日本でテロが起こり得ることを考えればやるなとはいいませんけど、やるタイミング考えて欲しいですね。


○合理的な外交が出来ないISIS
 余計に敵を増やすべきじゃないのに、わざわざ民間人を殺して、日本を敵に回した。非キリスト教・非欧国で窓口になり得る中立国をわざわざ敵に回す人質殺害はバカとしか言いようのない愚行でした。国家なのか?それともテロリスト集団なのか?まだ日本にとっては対応の余地があった、うまく立ち回ればISISという集団は国家になろうという意志があると、日本が見る余地があった。

 それなのに何考えてるんでしょうね?ISISは?アホですね。「国家」を作るのなら、国家承認のハードルを難しくするような愚行をすべきではない。バカじゃないか?の一言に尽きる。イスラム版「イスラエル」を作るつもりじゃなかったのか?

 仏のテロなんか実はISISにとってものすごいチャンスで、仏はアルカイダを叩き潰さなきゃ!という動機ができた。敵の敵は味方で、ISISは「アルカイダキラー」として仏と協力関係に持っていけるチャンスだった。蛇の道は蛇、アルカイダのやり口を熟知している頼もしいパートナーになっただろう。それによって国家承認を仏を突破口に図るいいタイミングだったのに何をやっているのか?

 結局、「国家承認」を勝ち取るのなら、テロ方針を何処かで放棄しなくちゃいけない。イラク・シリア一帯を制したら、そこが譲歩を勝ち取れるぎりぎりのライン。路線転向をしなくちゃいけないのに、何を考えているんですかね。まあ、構造的にテロリスト頼みでそんな人材いないということかもしれませんが。

 外交のハードルを上げる。つまり、ISISがいかに脅威かということを認識させて、相手よりも交渉上、上の立場に立って譲歩を引き出すということも考えられるけど、国際社会の制裁、特に武力制裁であっという間にISISは崩壊するでしょう。

 ISISとしては勝ち目がなくとも、シリア=イラク一帯を統治できる能力が国際社会にないから、ほとぼりが覚めたらまた次のテロ国家を復活させられる。だから、一時的な苦境など気にしないということなのでしょうか?まだまだ今後も民間人を狙って脅威認識を煽るつもりなんでしょうか?

 「戦争は負けだと思った時が負ける時」というように、戦争の勝敗は抗戦意志の有無で決まるものですからね。テロリストがどんなことがあっても戦い抜く!という覚悟の上なんでしょうか…。一定の規模になれば空爆で、永遠にその解(イスラムイスラエル)にはたどり着けないと思いますけどね…。

 また、ルルーシュじゃないですけど、テロをやるということは肝心の味方になりうる同国人の犠牲を招くので、決して支持は広がらない。カリフ国を作るという目的・解に辿りつけない可能性が非常に高い。

 米欧・近代国際システムへの反発を原点に掲げているため、非常識的なイスラム支配権を北アフリカからスペインまで及ぼそうというテーゼであるが故に、そういう狂信者の欲求を退けて現実的な調停・交渉を出来ない構造があるかもしれないですね。


○日本政府の対応のおかしさ
 人質事件は両名の死を以って終わったと見られているかもしれませんけど、今後も同様の事件は起こりうるわけで、手の内を晒す訳にはいかないですから、殆どのことは明らかにならないでしょうね。公式な説明はされても本当かどうかはわからない、政府の実際の対応はまずはっきりと明かされないでしょうね。米英の交渉が実際どうなったのかわかってないように。まあ30年とかよっぽど時間が経たないとわからないでしょうね。

 外務省の抗議用語では非難する、遺憾である、憂慮する、懸念するというレベルがあります。実際は4つの段階で評価するのではなく、そこにスーパーライト級みたいに、スーパーの代わりに強くとか非常にという強調表現が加わって6段階ですが、今回の人質事件では9.11テロ以来の最高表現、強く非難するになりました。

 そしてダーイッシュはこれからも日本人を殺し続けるという挑発・「宣戦布告」をしました。そこでこの最高レベルでの非難をしたのにも関わらず、安倍政権は有志連合への後方支援も資金援助も明言しませんでした。これは一体どういうことでしょうか?日本政府は口では強く抗議しても実行はしないという言動不一致の国なのでしょうか?

 日本は、米では一応有志連合扱いのようですが、今回後方支援をしていないんですよね。オバマを既にレイムダックと見限っていて、次の共和党大統領まで協力的な姿勢を示さないということなのか?靖国での恨みもありますし。17年まで先はかなり長いけど、安倍ちゃんは長期政権やる気ですからねぇ。