てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

『現代アメリカ』 有斐閣アルマ

現代アメリカ (有斐閣アルマ)/有斐閣

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 『現代アメリカ』有斐閣アルマのメモ。アメリカ研究者のテーマ別のまとめ、紹介のような感じか、各分野20ページくらいでまとめてお伝えする感じ。とっかかりというかさわりというか、まあパンフレット的なものか。前書きでもそんなこと書いてありますし。20ページで面白い文章書けというのは、キツイですね。

 宇野重規・中山俊宏・渡辺靖かな、個人的に面白い、単著読みたいと思うのは。7章「日系アメリカ人」の歴史―東栄一郎は、テーマが絞られているが、なかなかアイデンティティの変容とか面白そうな感じ。8章「宗教」に現れるアメリカの特徴―藤原聖子、比較宗教学の人でいいかもしれないと思った。

 そういやイラク戦争で神の教えに反するのでは?と悩む兵士に、これは聖戦だからと神父が説得する場面があるのだが、結局緊急性も大義もない、結果も国際秩序の安定につながらないということでのような感じ、明白な侵略戦争となったのだが、「キリスト教」(もしくは原理主義)の責任はどこへ行ったのだろうか?

 ISISの事件で、イスラムへの迫害が起こっているというけども、じゃあ「間違った戦争」に引きづり込んだ原理主義(福音派)への迫害・偏見とかも起こってるんですかね?迫害・偏見がいいとは思いませんが、ちょっとは行き過ぎたキリスト教的な価値観が正される、こうなんというか、もっと米社会が平らにされていく流れが生まれるといいのですけど。

 米の政教分離はどの宗教も平等に扱うという原則。対称的に仏のそれは、公共に宗教を持ち込ませないという厳しい原則。

 だから仏は十字架のネックレスを目立つところにつけていてはならない。こっそり見えないようにつけるのならば問題ない。スカーフはあからさまに宗教性を感じさせるからダメと。この発想は、仏国民性>宗教という考え方。政治にも公共にも宗教を持ち込ませまいという「フランス教」というべきものか。

 そう考えると、独なんかまだ宗教性が政治にもあるわけだが(CDUとか)、いずれなくしていく方向に進むのだろうか?ネオナチなんか独特の格好してるらしいけど、いずれそれも禁じられるのか?米を考える時、始まりの宗教性・カウンター・カルチャーそして文化戦争という流れは結構重要かな?

 関係無いですけど、移民を受け入れるときに、ちゃんとフランスはムスリムにフランスはムハンマドでもイスラム教でもなんでも風刺する国ですよ。と説明していたのか?という話があって、その点気になる所ですよね。しかし仏という国は政教分離が徹底している国ですから、「移民」は歓迎しても「ムスリム」は歓迎しないんじゃないですかね?無論、個人の属性として信仰すること自体は自由にやっとくれってことなんでしょうけど。仏は、宗教=後進性と考えている所ありますしね。

 そもそもスカーフ問題って、ムスリムがそれで登校した時点でストップかけられなかったんですかね?最初は寛容されていたのが、許されなくなったのか。それとも「再覚醒」した移民2世が急速にスカーフを着用しだしていったのか?それによってまた話が変わってきそうですね。

 仏が宗教性を公的レベルで容認せず、ムスリムが宗教に寛容な何処か別の欧州に流れるということになると、アンリ4世のナントの勅令のようなことになりそうで面白いですね。欧州諸国でイスラム的価値観が認められるかどうかってのは、その事例のように経済的成功がキーになってくるでしょうね。

 ドイツでもあまり歓迎されていないという事情があるので、最前線であるウクライナで経済的成功を収めるとかの図式になると面白いんですけどね。

 信教の自由の侵害では?と思われるスカーフ問題は、ライシテ憲章で生徒が自分で信条や信仰を選べるように、学校には宗教を持ち込まないようにという決まりに引っかかるからということで問題になっているようですね。なので学校・教育現場から宗教が追い出されながらも、モスク建設に助成金が出されたりもしていると。ここまで余計な話。

 最後の日米関係書いてる篠原初枝(早稲田ア太)って人どうなのかな…?まあ日米関係専門じゃないから、イヤイヤ書かされたのかもしれないんだけど。原爆を巡って二国間で外交問題にならないのは、本当に二国間関係が「成熟」しているからなんでしょうかねぇ…?個人的にはむしろ「未成熟」で占領以前の関係が続いているからこそ、そういったおかしな状態になっているのだと思うのですけどね。

 そういや、スマートパワーのところの記述で、結局、米内部の文化の違いや、対立をうまーくごまかすために、「スマートパワー」という言葉が使われているとこがあるのかもなぁと思った。米の外交の問題って、ハードでもソフトでもなく米内部に存在する歪んたものの見方、世界観・価値観ですよね。

 『現代アメリカ』では、アメリカの事情を詳しく色々論じてはいたけども、内部の社会的な問題だったり、政治的問題を鋭く批判する。米の後進性・負の部分をえぐりだして、アメリカの再生を訴えるというところが弱い気がしましたね。日本に危機はあっても危機感はないとよく言われましたが、米も同じかな?

 現状認識・理解の重要性は言うまでもありませんが、それを踏まえた上での対策・解決法のロジック・記述が弱いですね。まあ、事実を書いた上で筆者が科学的に見出した解決策、当為までをきっちりかける書き手や本なんて殆ど無いですけどね。 しかもこの本はテーマ集ですしそこまで手を付けられないのが現状かな?