てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

餓狼伝 連載未だ終わらず…

  久しぶりにブックオフに行ったら餓狼伝が置いてあって、チャンピオンでコミックスが再販されていました。原作はというか、前の講談社バージョンは確か25巻までで、26巻で「あれ?連載を月刊誌とか違う媒体で載せてていつの間にか単行本新刊が出ていたのかな?」と思ってみたら、何故か再販で26巻に編集し直されて発売されていたとか。

餓狼伝 26 (少年チャンピオン・コミックス)

餓狼伝 26 (少年チャンピオン・コミックス)

 

 これですね。そりゃ紛らわしいことするなよ…。とレビューで怒る人が出てくるのも当然。講談社で連載されていた時、この漫画を買い始めて単行本の表紙が大きく変わったことを記憶しています。講談社から秋田書店にまた移って、また表装を変えて出版するというつもりなのでしょうか?ハッキリ言って連載開始から集めていた古参に対する侮辱だと思います。

 同じ形態のママ買い集めたいという心理を踏みにじる暴挙ッッッ!!!って感じがしますね。Wikiを見るとスコラのコミックバーズという雑誌に始まりですか、たしかそんな名前でしたね。この雑誌見たことないですが。アッパーズ・イブニングから知りましたねぇ。

 アッパーズが廃刊というか新路線・再出発のためイブニングという新雑誌でリスタート。この辺の事情はまあいいとして、イブニングからチャンピオンの移籍 はどういうことなんでしょうか?きっちり説明してもらわないと、理解不能なんですが…。講談社の対応に不手際があって信頼関係が破綻したためか。それとも 秋田書店が板垣大家で雑誌をもたせる!と高額で引っこ抜いたのかいずれにせよ理由をハッキリ説明して欲しい。

新・餓狼伝 巻ノ二 拳神皇帝編 (FUTABA NOVELS)

新・餓狼伝 巻ノ二 拳神皇帝編 (FUTABA NOVELS)

 

 小説の方は今、どんな感じなのかな?と気になって見たら、今新装で2巻止まりですか…。しかも12年発行で、3年近く経とうとしているのにまだ新刊が出ていないとか…。何考えてるんですかね?夢枕獏さんは、自身の小説・原作が出遅れることで、板垣が漫画を進められない、続刊がでない。故に板垣の評価も同時に落とすことになるということについては、どう考えているんでしょうかね?
 正直、漫画から入って、原作を読んだ人間としては初期は原作のほうが面白い。漫画のほうが失敗している感じだったんですよね。ああ、なるほどそういう経緯・背景があってこうなってるのねーってところを漫画はすっ飛ばしていきなり、男同士が馬鹿みたいに喧嘩始めるくらいの無茶なストーリーになっている*1
 堤城平がヤクザと喧嘩をするのも、友達か仕事の同僚だったかをヤクザから守るためというストーリーとしてきっちりした展開だったと記憶しています。漫画だといきなりヤクザと喧嘩し始めるDQN的な痛い人に見えます(無論ヤクザが喧嘩を仕掛けるわけですが)。
 小説のほうが途中まで読んでいて面白い、格闘技とか道場経営とか確かにそうだな~という小話・背景の説明などがあって、感情移入できました。ところが途中からだんだん話が変な方向に行ってしまう。

 原作が1985年スタートということもあって、時代背景が古い。古いというかプロレス・空手最強!と言われた時代があって、作者がそれをベースに書いているから、その時の常識を元に作者が話をつくり上げるので今更ついていけなくなる。グレイシーブームがあり、総合格闘技ブームがあり、その崩壊があり、路上格闘技で反則使うのが最強的な神話があり…とドンドン主流というか常識というのがあるわけですが、作者がグレイシーと反則技幻想に一時期囚われていたことがあり、作中で何が最強なのか、あるいは何を目指すべきなのかといった大事なテーマが見えない&収拾がつかなくなってしまっている。
 ハッキリ言って作品を短期というか一定期間にきっちり最終回までプラン設けないでやるからこうなるのだと思います。というかむしろよくこんな時間かけてのんべんだらりとやれるなと逆に感心しますね。こんだけ時間かけてしまえばどういうプランだったか、どういう情熱を持ってこの作品を書き始めたのか、わからなくなってしまうでしょう。30歳で連載を始めたとしたら60歳になってるわけですからねぇ…。
 原作者が話を進めないから、餓狼伝の前の話として『餓狼伝Boy』という少年時代のエピソードを漫画化したりして時間を稼いだのをどう思ってるんでしょうかね?新作小説では別に完結しなくてもいいかな~的なことをあとがきで書いているとかいう話を聞きましたが、それはダメでしょう。
 病気とかやむを得ない事情を以って、急に連載が終わってしまうとかならともかく、ここまで多くの読者に期待をさせといてそれを裏切るのは許されない。当たり前ですね。ファンに夢を売っている物書きはプロとして、それを最後まで見せる責任がある。金を取る小説・漫画は遠足と同じで完結するまでが作者の義務。それを放棄してしまえばプロ失格でしょう。

 漫画家は富樫さんが有名ですが、「絵描き」成分が強い人は、画に思い入れがある分描けなくなってしまうことがある。満足行く画じゃないと「作品としてクオリティが低いからダメだ!許せない!」と陶芸家が駄作を割りまくってしまうように、仕上げに異常にこだわるわけですね。富樫さんアシ拒否しているとかいいますもんね。締め切りというものを否定して完成度重視で作品が仕上がるまで会社と読者を待たせるレベルまで行くとああなってしまうということですね。
 大家になって、半ば芸術家扱いされるようになれば、もはや誰も文句言えないですもんね。それでもちゃんと描いていますからまだ許されるわけで。
 絵描きがクオリティにこだわるならともかく、原作がそうなるというのはどうなんだという話になるわけで。文章を舐めるんじゃない!それくらい大変なんだ!と言われればそうかもしれませんけど、どう考えても長過ぎる。それくらい長時間をかけた作家・作品ってありますかねぇ?多分歴史小説なんかであったとしても資料集めて研究して長い時間かけても、定期的に刊行し続けているタイプだと思いますし。
 で、どうして文句を言いたくなるかというと、明らかに迷走しているんですよね。作品が。途中まですごい面白かったんですが、なんとか三兄弟が出てきてメインのキャラ達が直接対決に至るまでのかませとしていきなり脈絡なく出てきて、グダグダになりだすんですよね。いいからさっさとメインキャラ同士戦えよ、その最終章バトルをしっかり煽って、結末をそこまで持っていかんかい!とイライラしてしまう。
 物語のエンディングの画が途中から全然見えなくなってしまうんですよね。で、漫画の方はグレート巽の愛弟子鞍馬彦一が出てきて、それに指導をする別作品のキャラ久我重明、ほとんどオリジナル展開に突入する。だいたいココらへんから作品の面白さが逆転していきますね。漫画版のほうが面白い、原作は迷走してスッキリしない。同じようなパターン、空手の練習が不合理だとかグレイシーが合理的だとかそういう話が何故か何度も出てきます。
 原作で脇のキャラを切り捨てるのが板垣さんはうまいというか、スパッとしているというか、北辰館のチャンピオンである立脇というキャラをスパッとカマセにして葬り去っていますね。前までは梶原に代表されるように、こんな簡単にカマセにして捨てるなんて…原作台無しだよ…という感じでした。ところが、今ではむしろ板垣流にしていかないと話の収拾がつかない、終着点が見えないため、氏の感性が光って見えるありさま。
 板垣さんがオリジナルの空手トーナメントをやりだして完全にこっちが面白い感じになりました。いろんな流派の対決は読んでてwktkしました。しかしトーナメント後の展開は…。三兄弟を切り捨てて「村瀬」だったか?柔道の石井みたいな感じのキャラを出してきましたが、彼がどう機能するのか先が見えませんし。なんか巽がプロレスラーを刺客として送り込んで、文七と3対1のバトルをするとか勝つにせよ負けるにせよ。その先はどうなるのか?

 また例によって、板垣流のかませ展開。一度使ったキャラは切り捨てるみたいな形で文七に格下扱いされる展開が出てきましたし…。苦労して倒した敵を、実はこいつのほうが全然強いからという理由付けで、別キャラがグシャッと一瞬で葬り去る、バキだと勇次郎にそうされるパターンが多くてうんざりしましたが、 こっちでもやるんですね。
 まあ、それはそれとして、もうオリジナル展開になってるんですから、板垣さんが「漫画版餓狼伝」ということで板垣流にオリジナル最終回に向かって突っ走ればいいんじゃないですかね?
 多分そうするという選択肢もあるんでしょうけど、実際それをやってしまうと、夢枕さんが下手な最終回を迎えた場合に本人のストーリー創作能力に傷がつくことになってしまうのを恐れている、遠慮してるんじゃないでしょうかね?
 漫画で描くのに時間かかるならともかく、原作・小説が何やってるの?って絶対叩かれますからね。あと格闘技とかそこら辺で書きたくなったこととかできた時にまた一からキャラ設定、ストーリー設定して、新しい作品つくるのがめんどくさいから、引き伸ばしていいかーっていう考えなんじゃないでしょうかね?3年に一度くらい、新ネタが出てくる。それを入れたいということを繰り返して、最終終着点が見えなくなって、今に至るんじゃないでしょうかねぇ?
 まあ、今では漫画版が完結すればそれでいいので、とっとと漫画の方の連載再開をしてくださいという感じですかね。本当これ終わるのかな?という気がしますねぇ。バキだって一応完結して続編ということになっていますが、わけわからん終わり方、消化不良で終わりましたからねぇ。板垣さん自身、バキシリーズでストーリーをふくらませすぎて、着地点が見えなくなった感じしますからね。
 餓狼伝漫画版の方は、果たしてスッキリした最終回になるのかなぁ?

*1:その分、展開が早くスピーディーなのでテンポがいい。漫画を見せる方法としては成功しているとは思いますが。