てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

ユネスコ分担金停止について

 ユネスコが中国が申請していた南京事件に関する文書を世界記憶遺産に登録。これに日本政府・外務省は厳しく批判。分担金の見直しも提唱される事態になっています(日本の分担金は約37億で、米についで2位)。

 外務省いわく、南京事件に関する文書は「中国の一方的な主張に基づいて申請されたもので、中立・公平であるべき国際機関として問題であり、極めて遺憾だ」と。今後も世界記憶遺産が政治目的に利用されないよう登録制度の改革を求めていくとのこと。

 米英が脱退しても、日本はユネスコ支えてきた。信頼・外交資産がある。これで短絡的に脱退せよ!とか、金を払うな!というのは、まあおかしなリアクションですね。

 ユネスコがおかしい!と責めるつもりはないんですけど、米英が批判しても支えてきた過去のある日本について、配慮とかしないのはどうしてなんでしょうね?日本に配慮して、南京云々については遺産登録を止めろ!自粛せよ!ということではなく、これについて登録前に日本に話を持ちかける。これこれこういう史料なんですが、どうでしょうか?と日本内部の専門家に事前打診するとか、そういう配慮があっても良さそうなんですけどね?ユネスコというのはそういうことをしないものなのでしょうか?*1

 ユネスコ内部に日本の影響力が乏しい、パイプも何もないということなんでしょうか?そういう話が持ち上がっていれば、パイプを通じて事前に何らかの打診がありそうなものなんですけどね。日本の外交官だったり、国際機関の人とかそういう影響力のある人はいないのでしょうか?

 関係ないですが、ユネスコユニセフの違いもわからずに、アグネスが悪いと言い出す輩がいるとか(笑)、もう、何でもかんでも「アグネスや!アグネスが悪いんや!」という事態になってきていますね。アグネスが、新井さんみたいになっておる(^ ^;)。

 自分たちの国益にそぐわないから、金を払わないというのはおかしい話ではないと思います。ただ自分たちに不利益の事態で即行動に出るのは露骨すぎる態度でしょう。これじゃユネスコが正しくて、日本は痛いところをつかれたから怒ってると見られても仕方ないのでは?と思います。

 そもそも、ユネスコが「日本からのお金が欲しいのでわかりました南京事件について取り上げるのはやめます&なかったことにします」―なんてことをやるわけがない。ユネスコ記憶遺産は後代のための文書を保全するという事業をやっている。むしろ圧力がかけられれば、かけられるほど自分たちの意義を再確認してしまうだけでしょう。

 なので、これにケチをつけているとみられることは避けなければなりませんね。日本とすると「南京虐殺」なのかそれとも「南京事件」として記録されているのか、疑わしい史料が混じってないかとか、そこら辺を問うべきではないでしょうか?

 南京虐殺/事件の登録けしからん!金ださん!と抗議するよりも、南京事件の証拠に通州事件のモノが入ってますよとか、きちんとした学術的指摘をやる。史料上の怪しさを指摘する。中国も同じような非人道的なことやりましたよ、と対抗して登録するものを増やすとかの方が、まだスマートなやり方になるんじゃないですかね?文革とか天安門とかいくらでもあるでしょうし。なぜ中国の悪事を記録しないのか?ふざけるな!とやるほうがまだ効果的だと思われます。

 日本と中国の国際的地位の逆転、よって金の切れ目が縁の切れ目状態にあるとかでしょうかね?分担金じゃなくて、やっぱり色んなマネーが中国から流れ込んでいるってことなんでしょうか。国連の腐敗問題はよく聞く話ですし。そもそも「南京事件/虐殺」を取り上げること事態が中国への配慮・プラスですからね。これをすることで、中国のユネスコ分担金が増えるなんていう流れがあったら露骨で面白いですけどね。


※以下は別枠で書いたものの、まとめ掲載です。分けるほどの話でもないので。
 まず、書いてなかったことから。今回のケースでの現政権の対応の仕方について。ユネスコと喧嘩しても米からは怒られない。中国に対する攻撃、あるいは中国の「歴史戦」への防御になる。これは日本の国益にかなうと、現政権は思ってるから、こういう反応になっている。アメリカに怒られるというブレーキがかからない以上、ためらう理由がないと考える政権ですからね、今の政権は。

 まあ、米に怒られても国際的にひんしゅくを買うことを平気でやるんですけども(^ ^;)。個人的にはそうなるとは思えないですけど、対中国牽制・抑止という理由・要因がここに加われば、もうホイホイやるでしょうね。今の政権は、自分たちの考える配慮をしなければならない重要な問題以外は、短絡的にやってしまえ~!と考える。ストップがかからない、ブレーキ機能がない暴走トラックというような感じかもしれませんね…。

 中国VS日本という構図になった時には、威勢よく対決姿勢・強硬姿勢を示す。そういう行動について、ちょっと待てよとか、自制・考慮というものが昔はありましたが、今はもう完全になくなりましたね(昔のそれが問題がない態度とは思いませんが)。なんというか、国際連盟脱退的なノリを連想させますが、気のせいでしょうか?

 何言ってんだ!何をもってしても戦うんだよ!的なのを見ましたけど、それが本当に効果があるのか、どういう結果をもたらすのか考えずに、自分たちが立場上、金を出すという上の立場にあるから、金を止めてやれ!ざまあみろ!みたいな短絡的な思考をする人が増えましたね。中国・韓国を悪として、叩いて相手が苦しめばそれで溜飲を下げる。そういう単純な解決で国益が守れると考えるのが不思議ですね。

 それとも国連分担金とか、そういう国際機関への予算をこういう名目を機会に手を付けてやろう!みたいな動機があったりするんでしょうかね?


 ここまで書いてなかったことの付け足し。ここから書いておきたいと思った話です。

 日本はユネスコに不信感を抱いて、ユネスコに日本人委員を派遣することを決めました。しかしそれを彼らが受け入れるかどうかは不透明・未定だと。そもそもユネスコ内部の世界遺産登録のシステム・プロセスが不透明という問題がありますね。日本として、「日本人委員の派遣」ということによって問題是正を図るよりも、根本的な組織の透明化を図る方がいいと思いますね。

 利権と絡まっていてそういうことが難しい、簡単に進まないようになっているのならば、日本人委員の派遣によって、不利な決定を防ぐという対応でもいいと思いますが。

 飯島勲氏が書いてたのを見て知りましたが、99~09年には日本人松浦氏がユネスコのトップ・事務局長だった。それゆえに、まあ日本人に不利なものが通るということがなかったんでしょうね。ブルガリアのイリナ・ボコヴァ氏に代わって、そういうことになってしまったと。

 彼女の経歴見ると共産党と関係が深い、というか党員そのものでその経歴がトップになるのに疑問視されていたとか。共産党にシンパシーを感じるのが、親中的な決定を下すということなのか、それとも中国とコネを築きたいがゆえの行動か?彼女のこの決定によって、中国にコネを築けることは間違いない、見返りを求めることができるようになるわけですからね。

 南京はともかく、自然遺産登録で「奄美琉球」という、沖縄の島のそれを認めなかった。可不可の判定どころか、審議にすらかけなかったとか。それは、中国が沖縄周辺の領有権、尖閣などを主張していることが背景にあるから。どう見ても中国に配慮している状態だと。そういう問題、背景がある以上、日本としてはまあ口を出さない訳にはいかないでしょうね。しかも彼女は中国の戦勝国70周年記念行事(ぶっちゃけ軍事パレード)に参加していたとか、国際機関トップの中立性を疑わせる行為に出るかなり問題がある人物みたいですしね。

 南京の登録は、ユネスコがそもそも反戦的な価値観で作られた組織なので、戦争の悲劇的なものに食いつく遺伝子を持ってますから、まあ仕方ないことに思えます。問題は、そのトーンをどう表現するか、日本に一方的な非があるというようなことを言わないかどうかですから。

 まあ、いずれにせよ、今の事務局長に問題行動が見られる以上、この件は後を引くでしょうね。南京が登録されました―では終わらずに、何らかの中立性・透明性を確保する決定がなされなければ、終わらないでしょう。日本にとってさらなるまずい問題・決定が起こることもありうるでしょうしね。

 ケリー国務長官は分担金再開を議会に要請するとか。ユネスコを中国が利用するかもしれない。ならば米の影響力を増やすようにしよう―ということなのか?それともイラク戦争以後の米の非道行為の追求などを避けたいとかそういう思惑があったりするのでしょうかね?


 いずれにせよ、その組織の問題を問われているユネスコは、今後もなんらかの問題が発生するでしょう。いい方向に向かうか、悪いほうか、まあその変化の時まで待ちましょうか。

*1:―というか中国がそういうことをしてくる。そういうふうに自分達の国家・歴史に有利な道具として利用してくることは当然予想できるはずですから、そういうことをさせてこなかった外交的ミスですよね。