てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

ヤングジャンプのプリマックス ヨクサルワールドについて

 

 ヤングジャンプの『プリマックス』って新連載、すごい独特の雰囲気、奇妙な魅力を持った新人ですごいなぁと思ってたけど、柴田ヨクサル作だとか。なるほど、あの不思議なストーリー展開はヨクサルワールドだったんですね。

 

 ヤングジャンプの試し読みページで3話まで読めます。興味ある方は是非どうぞ。『プリマックス』を読んで、改めて柴田ヨクサルワールドは面白い。やっぱすごいなぁと再確認したのでそんな話を。

プリマックス 1 (ヤングジャンプコミックス)

プリマックス 1 (ヤングジャンプコミックス)

 

 イブニングの方でも、新連載やりだして、ふーん、また新連載始まったんだ、今度は講談社系なんだと思ってたら、集英社の方でもしっかり関与していると。プリマックスで画を担当している人は、元アシさんかなんかでしょうか?ヨクサルワールドを見事に体現しているので、こういう時にこう描くって知ってる人っぽいですよね。まあ、コマ割りはヨクサルさん自身が描いて指示しているかもしれませんが。

 

 柴田ヨクサルという漫画家を知っている人にとっては、それ以前に『谷仮面 』『エアマスター』『ハチワンダイバー』と三作描いていることは常識なのですが、知らない人のために、一応これまでこの三作品を描いているということをご紹介。その三作品に続いて、4本目の連載を開始しつつ、プリマックスという作品をも手がけているわけですが、おそらく柴田ヨクサルワールドには特有の秘密がある。

 

 それは、まず強烈なキャラクター。今更珍しくもないポイントですが、第一作の『谷仮面』という作品が、普通の男子高校生が仮面を被って生活しているという意味不明な設定。特にそれがどうした、何故仮面を?という話もなく進んでいくのがすごい所(もちろんあることはありますが、それが作品のメインにはならない)。

 

 最終回辺りで、仮面を取ってネタバレ(?)というか大団円になるわけですが、主人公が普通の顔しているからインパクトに残らない。最終回で主人公の顔をみたのに、印象に残ってるのは仮面だから主人公の顔が思い出せないというすごい漫画です(^ ^;)。おそらく作者はそれを狙ったんでしょうけどね。

 

 んで、次の『エアマスター』も以前に何度か触れているのですが、キャラクターそれぞれの個性を活かすのが本当にうまい。ラストに向かって、それぞれのオチをしっかり考えて話を終わらせる。キャラクターを愛していて、このキャラが最終的に活きるには―ということをよく考えて話を作っている。ハッピーエンドまたはラストこうなればキャラが立つ、話としてスッキリするというオチを計算して初めから描いてるんでしょうね。オチがしっかりあるので読んでいてモヤモヤしない。非常に読後感がいい作品です。

 

 主人公が元体操の女王で、ストリートファイターになる。最強の女戦士という感じですが、やたらめったら強い理由が体操をする、空中戦をするというところにあるので、そのキャラの強さ・インパクトはまた言うまでもないですね。

 

 『ハチワンダイバー』は将棋の漫画なんで、ルールくらいはわかりますが、プロ棋士の高度な大局が分かるレベルではないので、最初の1巻・2巻くらいしか読んでいません。それでもメイドの受け師と呼ばれる、女性でめちゃくちゃ強い棋士が出てくるという話は知っています。

 

 まあ要するに、まず強烈なキャラありきなわけですが、そのキャラの生かし方、使い方がちょっと違うんですね、ヨクサルさんは。キャラの個性だよりにならない独特の世界観、ストーリの組み立て方という技術を持っている。

 

 『プリマックス』の導入で、金くれたら言うことを聞くという展開で、「じゃあ肩車くらいしてやるよ」となって、100円あげて肩車を本当にやる。やんのかよ!というツッコミがありますが、ツッコミはあまり強烈にならない。程々というか、「ああそうなんだ」くらいの非常に低いテンションでやる。

 

 「100万は凄いな、100万はスゲえよ」とモン太がつぶやくシーンが有りますが、この序盤の会話だけで分かるように、同じことを淡々と繰り返すという間の使い方を良くしますね。

 

 短いセリフ、単純な出来事を淡々と放り込んでいく。何気ない日常の会話、何の意味もないくだらないやりとりってだいたい、こういうワンフレーズ・ショートフレーズになりやすい。そういう何気ない、ふとした瞬間を再現するというのをヨクサルさんは意識しているのでしょうね。そして事実、その世界観に引きずり込む事に成功していると思います。自分の身の回りの大したことのない一瞬、つまり自分があたかもそこにいるんだという共感を掻き立てることに成功していますからね。

 

 ツチノコを捕まえて1億円を手にするという設定ですが、作中で友達のツバメが触れているように、ツチノコも1億も全く話の中心として置かれずに話が進んでいきます。普通はそれが一時的でもメインになるはずなのに、サブ扱い。どうでもいい扱いで脇に置かれます。こういうのもヨクサルさんらしい。ふんだんに豪華な材料を惜しげも無く使ってほっとくみたいなやり方ですね。

 

 竹雄が100万は親父の借金に消えたという重い理由を語りながら、あっさりとそれを脇に置く、ふとしたリアルと初女装をしてきたモン太が抱きついてくるという幻想というか、会話・事象のギャップをきっちり作ってくる。前後であからさまなギャップではなく、さり気なく作ってくる、ギャップで話の見せ方がうまいですよね。メリハリがある分面白く感じてくるわけですね。

 

 普段我々がよく経験するものごとだったり、「リアル」だと感じるものを描きながら、フィクション独特の「非現実」なものをぶち込んで現実なのか非現実なのかそこら辺を曖昧にする。岡本太郎さんの芸術は爆発だ!みたいなロジックと同じで非常に上手いシステムですね。

 

 なんで女装するの?という作品のテーマ、核になるものもほっとかれる。このパターンは『谷仮面』に近いものがありますね。『エアマスター』も特に理由なくストリート・ファイターしていましたし、『ハチワンダイバー』でも将棋から離れられないという理由はあれど、あてもなく将棋を繰り返す、将棋にすがりついて生きるという点では共通するのでしょうね。なんとなく模索して、モヤモヤしながら生きるというのがヨクサルワールドのポイントなんでしょうね。その上でそれぞれの作品で答えを見つけて、チャンチャンになってますし(ハチワンは知りませんが多分そうなってる気がします)。

 

 女装する理由の説明の中で、ブスの件があるんですけど、ブスをざっくりやっつけて話をまとめてしまうんですけど、この話が本当に好きですね(笑)。結局理由ないまま「カワイーの星」を目指すことになると。カワイーを突き詰めて、減量をする。減量の果てに口にする水の美味しさがこれまでの苦労を物語るという、本来格闘家が味わうものを女装で味わう(笑)というなんか間違ってる感がまたいい味出してますね。

 

 そうそう、最初の女装ではゴツくて足が太いという違和感があるのに、減量したために違和感が消えているという設定もうまいですね。

 

 メツキワル子、通称ワルコが出てきますが、自分のことを説明する時に、「私は~~で、きっと~~になって、~~になるわ」と自分のことを由来から途中経過、そして最終的な終着地点まで淡々と語るのが『エアマスター』でもあった気がします。皆口由紀かな?非常にシンプルな理由にシンプルな結論で、ストレートに伝えるっていうのがショートフレーズで畳み掛けるヨクサル流の基本なのでしょう。

 

 最新話でワルコが実は巨乳で、水に濡れて透けて見えた。それが物凄い破壊力で評価が上がったという話を回りくどーく話して、広げていくというか説明していく話法も、またヨクサルって感じですよね。本人はマイナス100点でも、巨乳が53万なんだとかそういう例えとオチへの持って行き方とかがうまい。あとは要所でズームする見せ方ですかね?アングルが上手いですよね。

 

 しかし「カワイーの星」を目指す上で、巨乳はカワイーにならないとかそういう話でしたが、最終的にどこに向かっていくのかいまいちわからないですよね。最終着地点がどうなるのか未だ見えない分、ラストがどうなるのか非常に楽しみですね。ヤンジャンは面白いのを次から次に生み出しますね。編集がいいんでしょうかね?次はどういうのが出てくるのか?

 

 猿渡先生の作品が打ち切りか?あと森田先生の『べしゃり暮らし』が最終回迎えていましたが、新人がわんさかいるなら、新人に枠与えて、大家はグラジャン・ウルジャンとか別雑誌に移動してもらったほうがいいんじゃないでしょうかね?サラ金とか読みたい人が今のヤンジャンでいるのでしょうか?今のヤンジャンってすっごいライト系なマンガというか新人・中堅漫画家が引っ張ってるというイメージがあるので、あんまり大家や少年ジャンプ系の人を載せないほうが戦略的にいいのかな?という気がしました。

 

 『しらたまくん』とか『リクドウ』とか『カコとニセ探偵』とか『潔癖男子!青山くん』とか、本当ヤンジャンの新連載というか新人にハズレがないというか、売れる・売れないはおいといて、読んでいてつまらないという作品が少ないのが凄いなぁと個人的に感じています。実際売れているとか人気がどうかわかりませんが、こんだけ新人に外れがないなら、どんどんこの勢いのまま新人抜擢していいんじゃないか?という気がしますね。サンデーはおそらくテコ入れの意味で、MAJORの続編開始したと思います。ヤンジャンはそういうのが今必要ないでしょうからね。さてヤンジャンというか集英社がどういう選択をするのか、そういう点でも注目ですね。

 

 ※追記Wiki見るとこのヤンジャンでさえも年ごとに順調に雑誌発行数減らしているんですなぁ…。本当雑誌は冬の時代ですね…。