てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質はモンゴル互助会の八百長・「注射」ではなく、モンゴル人差別と親方=理事制<前編>

 ようやく今回で最終回になります。最終回かと思ったら全然終わりません…。かなり前に殆ど書き終わっていたのですが、次から次へ新情報とそれに伴う書きたいことが出て来て、編集が難しくなって放置してしまいました。どこにどの文を放り込むのが一番ベストで読みやすい形になるかわからなくなってしまい、困り果ててしまいました。あと別にこれは書かなくていいかな、消した方がいいかな?と迷いながらも、書いてしまったので、いつもどおり冗長・蛇足と言われながらも駄文を垂れ流すことにしました(笑)。
 あと一度PCが落ちて消えました…。はてなブログは自動で保存されるから再起動でも大丈夫だろうと高をくくっていたら…。再起動になったら、保存されていませんでした…(涙)。
 今回は⑥です。本当は⑤で貴乃花親方の話の続きを書くはずだったのですが、どれをどう書くのがいいのかわからなくなって、簡単にまとめられそうなこちらを書くことにしました。これが今シリーズの結論になるので。んでこちらで書けなかったこと、残った文章をまとめたほうが楽だと思えたので。
 これを書いたら、貴乃花親方の話を書いておしまいと思ったら、貴乃花親方で「!?」という情報がいくつかでてきてスタンスを変えて書き直さなくてはならなくなり、大幅な修正を強いられることになってしまい、「一からやり直しかよ…」とパニックになっていました。ちょくちょく書き続けていた細かい文章たちが貴乃花親方のせいで台無しになりましたので…。おのれ貴乃花!。そのために反貴乃花派になりつつあります(笑)。

■結論:要約まとめ
 前回と同じく長いので、先に結論を書いておきたいと思います。まず、本質はモンゴル互助会による星の回しあい・八百長ではなく、「モンゴル人差別」にこそあります。
 次に、そもそも協会の制度がギルド制*1を前提とした徒弟制であることです。その二つにこそ問題の本質があるのですね。

ギルド制・徒弟制
 この独特な制度・前近代的な制度に基づいて組織を形成しているが故に近代組織としてはありえないトラブルが続発し、責任追及・きちんとした処罰がなされない業界になっているのです。お仲間だけの閉鎖的な「ムラ社会」であるから、外部のヨソの人間を排除し、ヨソのルールを一顧だにしない。内部には独特の内輪の論理だけが適用され、厳しい規律が適用されないことになっている(その逆もまた然りで、そんな取り決めがあるの?そんなことにいちいち厳しいルールが有るの?と外の世界の人間が感じる独特な厳しい規律を持っています)。我々一般社会の論理や価値基準は外部であるがゆえに、外部の世間一般の法律や価値基準は無視されることになる。故にギルド制・徒弟制を解体しない以上、独特な「ムラ社会」のルールを崩すのは難しいでしょう。
 また、ギルド制・徒弟制ということは厳格な身分制度・秩序を採用するということですから、役職・職分という論理の作動を阻む要素があるのですね。公式の制度・システムが身分制度によって機能しない、歪められることになる。典型的なものが、過去の実績で理事・理事長が決まるというところですね。
 本来、優れた経営手腕を持つ人こそが、理事や理事長になるべき。であるのにもかかわらず、現役時代の最高位・実績が優先される。100%その論理が優先されるわけではありませんが、現役時代の成績が基準となって、暗黙の身分が形成され、相撲協会での役職の序列に反映されてポストが決まるようになっている。力士としての実力と、協会・組織運営の才覚は言うまでもなく別物です。しかしその当たり前の論理が目に見えない身分制度故に反映されなくなっているわけですね。

 まあ、そもそも経営の観点から言うと、外部の人間を連れてきて任せるほうが良いに決まっていますからね。角界のことは独特すぎる世界であるがゆえに、全く相撲のことを知らない外部の人間を登用することが難しいにしても、コーポレート・ガバナンス上そしてコンプライアンス遵守上、半数は外部から優秀な人間を連れてきて経営を任せる。外部の人間の意見を聞くはずですからね。
 そういう当たり前のことが出来てないのも、ギルド制が故ですね。現役時代に成績を残した者順に、角界・協会の特権を享受するようになっている。相撲案内所・お茶屋制なんかを見ても明らかですね。チケット販売・飲食サービスなどの売上は本来協会が一括管理してしかるべきもの。それが一旦第三者に流れるなんて意味がわからない。公益社団法人・免税特権を持つ以上、お茶屋制は廃止されてしかるべきものでしょう。しかしギルド制の社会ではそういう当たり前の主張もなされないわけですね。

■ギルド制・徒弟制の最大の問題は親方理事制
 この角界独特の身分制度・身分秩序の最大の問題は親方=理事制でしょう。力士で一定の成果を残したものが親方として協会に残る。そしてその親方衆の中でも特に現役時代数字を残したものが理事に選出される。現役時代に突出した成績を残したものが、引退後も組織の中枢に残って組織を動かしていくという制度は内輪の人間だけで組織を構成するギルド制・徒弟制である以上、必然的な帰結だと言えます。

■兼職が馴れ合い体質を形成し組織の機能不全をもたらしている
 親方が理事を兼職するというシステムこそ、組織としての機能不全をもたらしているのです。例えば、プロ野球NPBにおいて、各球団チームの代表が、理事を兼職していたらどうなるか?*2。何か不祥事が起こったときに、球団の責任追及・処罰が出来ないのは言うまでもないでしょう。兼職をしたら100%厳格な処分が出来ないというわけではありませんが、そういうなあなあ体質・馴れ合い業界を形成している基であり、それからの脱却が必須である以上、この制度を廃止しなくてはならないでしょう。

 この親方理事制を解消し、親方は親方で部屋運営・経営者としての職務をまっとうする。理事は理事で、角界の運営・経営に集中するという職務権限の分離をして、それぞれの責任と職務・本分を明確化しない限り、まっとうな組織として機能することはないと言えるでしょう。

■分業を進め、業務の効率化・透明性を高めるべし。また引退後の力士の受け皿を増やすためにも兼職を解消すべし
 プロ野球の例を出したのでついでに語りますが、球団にはオーナー・球団社長・球団代表・GMとそれぞれトップがいます(球団によっては球団代表・GMがいなかったり、さらにGM補佐やシニアディレクターという役職を設けている球団もあったりします)。チーム競技・競争であるという違いがありますが、それでもいくつも役職を設けて、職務に応じた役割分担・権限の細分化を図っているわけですね。相撲部屋も、相撲部屋代表・親方(指導者)・監査など職務を設けていく必要があるでしょう。部屋付き親方などもいますし、親方が理事になった場合は理事に専念するための代理人に任せる。親方代理なんていう制度の公式化もありえるでしょうね。あらゆる分業・専門化を進めていくべきでしょう。

 引退後角界に残るためには親方になるしかないという今の仕組みでは、殆どの力士は引退したらその後の人生の保障がなくなってしまう。一応厚生年金がありますが、それで人生・セカンドキャリアの保障は十分だと考える人はいないでしょう。退職金もトップクラス以外は殆どないのが現状。こういう不安定な現今制度では、角界に入ろうとする将来有望な人材を減らすことになります*3。そのためにも役職を細分化して、引退後協会に残れる元力士の総数を増やすという意味合いからも、兼職解消は避けられない改革となるでしょう。無論、それは抜本的な対策とはならず、協会として引退後のセカンドキャリアのために資格取得や企業への就職の世話など色々な対策をとるべきなのは言うまでもありません。
 引退後の力士の生活の保障というのはまた、「モンゴル人差別」のところで触れるので頭に入れておいてください。

■不祥事防止対策として部屋別ペナントレースもあり?
 NPBと比較を続けてみます。プロ野球はというか殆どの興行では、企業が母体となってチームを作り、試合を開催し収益を得るわけです。オーナー企業が部屋を開いて新規参入するということが相撲では不可能。企業イメージに関わるために不祥事に敏感なプロスポーツ・チームスポーツの興行とは根本的に異なるといえます。
 連帯責任的な発想は嫌いですが、一時的に不祥事対策として相撲は個人競技であるものの、不祥事が起こった場合は相撲部屋単位で処分・出場停止制度*4を導入しても良いかもしれません。これはボクシングで言うと、そのジム所属の選手の犯罪発覚で所属する世界チャンピオンクラスの選手が試合できないと言うようなものなので、不条理な連帯責任を取らせるものとなってしまうのであまり好ましくないシステムなのは確かですけどね。
 連帯責任の導入で不祥事防止の論理を持ち込むたに、チーム戦の論理を持ち込んでも良いかもしれません。年度単位のペナントレースのようなことをやっても面白いかもしれませんね。一年間、部屋単位で幕内力士の総勝ち星数競争をやって優勝部屋に賞金・タイトルを授与するとかもいいかもしれません。*5

■改革が出来る優秀な人物を実力で外部から理事・理事長に招聘し、抜本的な改革をすべし
 優秀な指導者を親方と仮定するならば、指導者として優秀な人間が必ずしも相撲協会の運営に優れた人間ではない。相撲協会の運営をする理事は、その手腕に優れた人物を能力・実力主義で選ぶべき。「ムラ社会」の解体が不可避である以上、一定期間は強制的に外部の人間であることを条件付けなければだめでしょうね。いずれにせよ、親方理事制という急所に手を付けない限り問題の本質は変わらないということだけは確かでしょう。親方理事制の廃止、そしてギルド制・徒弟制といったものを段階的に廃止していく。これをしない限り抜本的解決はありえないと見なすべきでしょう。


■今回の事件のもう一つのポイント「モンゴル人差別」
 協会の閉鎖的体質、ギルド制・徒弟制の問題。そして親方理事制の問題に触れました。そして次にもう一つの問題の本質である「モンゴル人差別」の話をしたいと思います。モンゴル互助会の八百長、「注射」・星の回し合いが事件の背景にあるなんていう主張をする人をしばしば見かけましたが、これは的を外した分析と見ていいでしょう。というか、その星の回し合いの背景にそもそも「モンゴル人差別」があるんですね。
 今の角界では、白鵬などモンゴル人力士が差別されている。果たしてこれは是か非か?人によって、意見が別れるところであるかと思いますが、そもそも今回の事件において、ここに触れない限り論ずるのは意味を成さないわけですね。「注射」のロジックに続いて、「モンゴル人差別」のロジック。これが問題の本質を理解しているかどうかのポイントになります。今後、相撲協会&その改革について及び暴行事件に語る人がいたときに、これに触れていない論者であればまず無視していいでしょう。モンゴル人が差別されているかいないか、どちらの立場を取るかさておき、これに触れていなければ問題をまるで理解していないと見て構いません。これまでの相撲界の歴史的背景・構造・流れを知らずに自分の持論・好き勝手なことを放言するだけの手合とみて間違いないでしょう。
 こんな大事なことなら一番先に書いておけよという話なんですが、編集が難しくて先延ばしの挙句ここで書くことになりました。一番大事なことはシリーズラストのオチとして書いて、見事に締めて終わりたかったので。その結果がいつまでたっても書き終わらない…。このザマです。長いので、モンゴル人差別で更に二枠にして分割することにしました。以後中編に続きます。うまいこと二つにまとめられればいいなぁ。

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*1:ギルド制にもいろいろな意味・文脈があると思うのですが、文中においては排他的というより閉鎖的な同業者組合という意味でこの言葉を用いています

*2:実際のNPBでは理事は非常勤であまり仕事をしていないようですが、話の例えとしてご理解ください

*3:他にも何らかの職に就くという選択肢もあるかもしれませんが、それで成功したという話をあまり聞いたことがないので、やはり引退後のセカンドキャリアの保障は十分ではないでしょう

*4:相撲の場合、なんて言うでしょう?場所来場or出入り禁止?どうでもいいですけど試合や出場禁止などなんか違和感ありますね。場所出場禁止って言葉なんか頭が頭痛みたいな重ね言葉感があって嫌ですね

*5:もう一つたとえとして、日本のプロスポーツで身近なサッカー・JFAを例に取り上げようとしましたが、どうもサッカーはよくわからないので断念しました。相撲協会というのはNPBJFAと違って、協会・全体としての統括機構と部屋≒チームの距離感が近い。親方理事制のために非常に近くなっているわけですね。その関係性を正すためにも、JFAJリーグのような関係性になるべき―ということを書こうと思いましたが、Jリーグを運営する機構は公益社団法人日本プロサッカーリーグのようですし、ちょっと違うのかな?と引き合いに出すの止めました。
 あと、こちらの理事もJリーグ傘下の企業の関係者が非常勤で入っているので、それもなあなあじゃないのか?と言われればそうなので。NPBも、コミッショナー天下りで採用して機能不全状態にある。巨人の裏金事件のときのようにビシっと制裁を下していませんし、ちょっと適切ではないんですよね…。あれ、なにこれ?日本にまともな運営をしているプロスポーツ興行団体って存在しないというオチ…?外部理事の高野氏が警察に電話入れて捜査妨害になるか云々問い合わせたという話がありましたが、天下りを受け入れることでスポーツ興行組織を守るという悪しき慣行はスポーツ興行団体に限ったことではありませんしね…。