てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

日馬富士暴行事件の解説⑤ 貴乃花「理事」への処分は正当、むしろ軽すぎる。貴乃花理事落選は当たり前の結果<後半>

 

―続きです。時系列的に理事解任騒動の話→貴乃花理事落選の話という順で行きたかったのですが、最後の文書の〆を考えて順番を逆にしました。チラ見する人でも興味があるのは何故貴乃花理事が落選したのかということの方でしょうしね。今回は貴乃花理事の落選と理事解任処分の話の2本立てになります。まず理事落選の話から。
 まあ、何故落選したのかというほどでもない。以前から書いてきたように、喧嘩・衝突ばっかしている貴乃花親方に協会執行部・主流派に逆らってまでついていこうとなる親方がそもそもいるはずがないだけなんですよね。角界相撲協会というのは基本互助会であって、お仲間の和を保つことが優先される。慣習や年功序列の論理を無視して身勝手な自己主張・行動をする貴乃花に支持が集まるはずがないだけですね。無理やり従わせるならばそうさせるだけの特別な力が必要。それがないなら衝突を避けて話し合いで相手の意向を最大限尊重しないといけない。衝突を最大限避ける配慮も調整・調停能力もない。であれば失敗する・支持者が出ないに決まっていますよね。
 対立事案があれば、なるべく角が立たないように話し合って妥協しようとするのが常識・普通とされる世界。そういう世界で真正面からどちらかが正しくどちらかが間違っているという図式に持ち込む人間に殆どの親方はついていけないんですね。これまで対立が起こらないようにギリギリの努力を重ねた結果、こういう事件になってしまったというのならば自分たちのリーダーを守ろうと行動する気になる可能性はありますが、そうではありませんからね。最初から衝突する気満々・妥協する気ナッシングですから、そりゃあみんなついていけないわけです。
 ハッキリ勝敗がつくようなことをする、政争で勝った・負けたということになれば永遠に政争が続く。勢力争いで業界がピリピリすることを好まない世界。まあ要するに状況・場が読めてないわけですね。勝負に必要な3つの分析、状況分析・自己(味方)勢力の分析・相手(敵)勢力の分析。そういう分析判断がぐちゃぐちゃだから味方・支持者が増えないし、離反していくのですね。今回の惨敗で貴乃花が嫌われている、支持されない・見限られたというよりも、根本的に対立の図式を持ち込んで話し合いをして物事を進めようとしない・解決に応じないその態度そのものこそが問題とされていると見るべきでしょうね(井沢元彦氏ならば、話し合い至上主義だ。「和」を乱したからだというところでしょうか)。無論、今回の事件で厳しい処罰を望まないものが多数派を占めていた。そもそも不祥事の公開そのものを望ましくないと思っていた親方が多かったということもあるんでしょうけどね。まあ、以下そんな話をしてみたいと思います。

貴乃花が理事に当選する確率は殆どなかった。しかし何故か貴乃花が理事に当選する!と煽り立てたマスコミ
 そもそも今回の理事選で貴乃花親方が当選する確率は低かった。というか殆どゼロに近いくらいありえなかった。今回の理事選での注目ポイントは、貴乃花立候補で何票彼に入るか。それでも親方の誰かが貴乃花の行動に賛同して票を入れるかもしれない。もしかしたら4~5票入るのではないか?というのが今回の理事選のポイントだった。そういう反協会・親貴乃花のスタンスを示す親方がどれくらいいるのかどうか?というのが今回の選挙のポイントだったんですね。貴乃花一門から二人立てた時点でどう考えても貴乃花理事当選の目はありえなかった。
 事前に無記名投票が記名投票になっていた云々という話があって、協会がそういう卑怯な方式に事前に変更したからだ!なんて話もありましたが、そうでなくても余り結果には大差なかったでしょう。公職選挙法のようなものがある世界ではないので、誰が誰に入れたとかすぐわかる世界ですからね*1。過去の貴の乱で一門を飛び出して当選したときも、当人が私が貴乃花親方を支持したと明言しましたが、そうでなくても誰が票を入れたかすぐわかったでしょうしね。
 不思議なのは、マスコミが貴乃花が勝つ!というような報道をしていたこと、ミヤネ屋とかフジテレビの安藤優子氏が出てた番組でしょうか?それなどで、まるで貴乃花理事当選が当然のこととして報じられていたことです。そんなことあるわけがない。なぜなら今回の理事選ではメンツをかけて「今回だけは絶対貴乃花一門に票を入れるな。入れた場合は破門にする」と各一門が徹底したはずだからです。一門や年長・先輩親方衆のメンツ、つまり組織のメンツを潰した、怒りを買った貴乃花に票が入るはずがない。二年年期ですが例年になく特別な意味合いを持つ理事選となった今回の選挙で、一門の意向に反発して貴乃花一門に票を入れるということは一門から追放されて貴乃花一門に移籍することを意味します。貴乃花親方・貴乃花一門と命運を共に出来るかと言われれば出来ないからですね。
 これまで書いたように貴乃花親方の手腕に疑問符がついた。貴乃花一門が今後隆盛を極めて出羽海一門を超える最大派閥・一門になるとでも言うのなら別ですけどね。もちろんそういう予定があるわけでもない。前回の選挙で惨敗したように彼には多数派を形成する政治力がない。そういう人間についていくリスクを考えたら殆どの人間はそういう選択をすることは出来ないでしょう。

貴乃花シンパ、時津風系6親方の不支持
 週刊ポスト及びその系列だと思いますが、昔から「八百長」問題を取り上げて親貴乃花報道を繰り広げていました。女将さん効果で親方衆の半分は貴乃花支持だとか、不満を持つ大卒出の学士系力士達が新派閥を立ち上げて貴乃花一門に合流とか、時津風一門から錣山親方(元寺尾)ら3人が離脱した時、貴乃花一門へ親方衆が雪崩を打って合流・貴乃花シンパの増大が止まらない!みたいな報道をしていましたが、そんなこと普通に考えてありえないでしょう。貴乃花一門と命運をともにするという決意を持っていたら、離脱した3名の親方はそのまま貴乃花一門に即合流してますよ。即合流しなかったというのは不安要素があって、まだ判断を保留していることに他ならないに決まっているでしょうにね。何を言っているんでしょうかね。
 前回の理事選では、時津風一門から6名の親方が貴乃花一門へ票を入れた*2。しかし今回は一門を離脱した3親方すらも貴乃花一門へ票を入れなかった。貴乃花親方の行動を、貴乃花親方支持者・シンパすら否定したわけですね。言うまでもなく、今回の件で貴乃花親方の行動についていけなくなった。流石にそれはないだろうとこれまで貴乃花を支持していた一門外の6親方衆がそのスタンスにひいたわけですね。で、今回の選挙で一歩身を引いて票を入れなくなったわけです。
 勘違いしてはいけないのですが、これで15票持っていた影響力が消えてなくなってしまったわけではありません。あくまで「今回は」支持できなかったということです。次、また貴乃花親方が行動を改めたり、まっとうな姿勢になればその時はまた一緒にやりましょう、支持しましょうということですね。貴乃花派から中立派に今回は移ったということ。決して元の影響力を取り戻せないわけではないのです。流石にここから自分に近い準味方勢力である時津風系6人衆が離反する・嫌われるようなことをしないと思います(―そう思うのですが、テレビ出演などを見るとさらなる最悪もありそうな…、うーん。)。

■味方を増やすどころか減らした貴乃花の乱
 むしろポイントになるはこういう離反者を出しながら、他の一門から新しい支持者を得ることができなかったということ。政略結婚で味方にした陣幕親方の1票だけで、他の親方は誰一人として新しく貴乃花支持者にならなかったこと。味方からの反発がありながらも、中立・敵勢力から新しい味方を作り出せていたら、今回の貴乃花親方の行動は理解できない・支持できないと思う親方でも、それはそれとして理解をしてくれたでしょう。新しい勢力・派閥との関係構築というプラス要素が僅かでもあれば、今回の行動が持論とは相容れなくても角界で影響力を持つ貴乃花親方との手は切れないことになります。しかしそうではない。行動する度に敵を作り、味方の離反を招く。朝青龍ならずともそリゃあ、バカじゃねえのと笑っちゃうでしょう。
 結局、貴ノ岩の事件で彼が警察に行ったことは何の意味もなかった。親方衆の誰一人として彼の行動に同情・共感して、彼と一緒に行動しようという親方が出なかった。発信力・求心力という以前に、彼のやっていることが無茶苦茶ということに他ならないということですね。世間一般の価値観としてはともかく、貴乃花の言動は票を握っている他の親方衆からは異常なもの・支持できないものに映っているということです*3

■不祥事はどの部屋でも抱えるリスク、そこに手を突っ込んだ貴乃花についていく親方はいない
 多かれ少なかれ、各部屋ではなんらかの問題を抱えている・力士が不祥事を起こすリスクが有る。例えば大砂嵐の運転のような事が起こりうるわけですね。そういう時、親方としては弟子を守ってやりたい、部屋を守りたいとなるわけです。そのためにできるだけ被害が小さくなるように動くもの。そういうふうに協力をするというのが暗黙の了解として角界に存在する。貴乃花親方はそれを破った。
 前述通り、敵対勢力ならともかく味方側に近い伊勢ヶ濱親方の力士・日馬富士を殺した。ということは、綱紀粛正の手は止まらない。何か不祥事があれば即力士を殺しに来るマッド親方として力士やその他親方の目には映る。味方サイドにさえ粛清の手が及ぶというのならば、こんな厳しい規律を持つ一門に自分が入った場合どうなるか?怖くて仕方がないでしょう。何かあったら不祥事に厳しい貴乃花一門の力士なのにそんなことしていいのか、またそんな甘い処分で良いのか?と言われるわけですからね。そして処分や規律の厳しさもさることながら、他の一門の力士を攻撃する≒他の一門と抗争をためらわないわけですからね。これでは貴乃花派として足並みをそろえて行動しようという親方が減るのは当然でしょう。
 前述の時津風系6親方としても、貴乃花一門に入りたくないとは思っていないでしょう。ただ、貴乃花一門に合流することで各一門・親方の反発を招くのならば御免こうむる。それこそ時津風一門から「独立はともかくよりによって貴乃花一門に行くだと!この裏切り者共が!」と敵対関係を招くのならば、相当な覚悟を必要とするでしょうからね。新一門・貴乃花一門に合流すること=裏切りではなくて、むしろ旧一門時津風系と、新一門貴乃花系との架け橋になる。移籍が自身や部屋にプラスとなるからこそ、貴乃花一門に移籍したいわけです。マイナス要素の方が多いとなるならば合流をためらったり、やっぱり辞めたと決断を変更したりするのは当然でしょう。
 また一門参加をためらうのは親方以前に人間として自然の反応でしょう。改革をしたい、貴乃花の志に共感する。が、しかしその後もうまくいくという保障がない・勝算がない。となれば、部屋を運営する≒中小企業の責任ある経営者として経営する部屋・企業を守ることを優先するのは当たり前。大事な弟子・社員を守るために行動するのは当たり前。どんなに意志・理念、志が正しくとも先立つもの・現実の生活を守る保障がなければ人はついてこない。貴乃花に票が入らなかったことはいちいち説明するまでもない、当たり前すぎることですね。

 前回も書いたように、政治というのはどういう結果につながるか想定して動かなければいけない。その結果が今回の貴乃花一門の勢力半減です。前回は貴乃花一門貴乃花系から3名の理事を輩出したわけですが(貴乃花・山響・伊勢ヶ濱の3理事)、今回は阿武松・山響親方の2名。一門ではありませんが一門外の貴乃花シンパから離反者を出して惨敗になりました。こういう結果をもたらした警察行き・警察への被害届を提出するという行為はやはりありえない行動・暴挙だったわけですね。
 貴乃花一門の最大の目的は、協会を改革すること。まっとうな組織を作り上げることだったはずです。そうするためには何をしなければいけないのか、そして何をしてはいけないのか、そういう政治的計算の元から打算に基づいて行動しなければいけない。それを怠って感情のまま暴走した彼が将来的に大改革を成し遂げることは不可能に近いと言っていいでしょう
 感情のまま暴走する、周囲の意見を聞かずに行動する。これでは今ある一門の存続すら危うくなっても何ら不思議ではないでしょうね。

 結局これまでの主張・分析の延長上にある話になりましたね。これまで書いてきたことと余り変わらないですね。なので読んでてあんまり面白くなさそう(^ ^;)。まあでもそういうこれまでのおさらい・復習をした所で今一度貴乃花親方の行動はどうしてありえないのかという話をしながら貴乃花理事への解任という処分の話をしてみたいと思います。


―ここから話のパート2貴乃花理事への処分の話。理事解任では処分として軽すぎるという話になります。
■被害者側が処分されるのはおかしいというおかしな反応
 貴乃花への処分についておかしいと思う人があまりにも多くてむしろそのことに驚いています。組織の論理から言うと何もおかしいことはない話なのに何故このような反応が多いのでしょうか?とても重要なポイントなのでそれについて触れない訳にはいかないでしょう。  「貴乃花の乱」はなぜ勝ち目がないのか?日馬富士事件を組織力学で読む ―こちらの記事にあるように、普通の組織の論理から言えば貴乃花のやっていることは異常であり、違反行為です。相撲協会前近代的な組織であるというのなら尚更です。特に取り上げて説明することもない自明のことだと思うのですが、これを理解できない人が意外に多いようなので、引用しました。これが一番簡潔&的確に説明していましたので*4営利企業がその会社の利益を損なう行動を取った人間を処分するのは当たり前、そういう理解でかまわないでしょう。ただ、こちらの記事ではどちらかと言うと、貴乃花親方はまっとうな態度・対応だとしても会社の利益を損なう行為だからという論理で説明しているのでその点は今回の事件とは少し異なるのですけどね。まあ、あくまでわかりやすくするための例えなのでそれは些細な話ということでおきましょう。

 八代弁護士が目についたので、彼を引き合いに出させてもらいます。何回かテレビで見かけたことがあって、まともなコメントをする人だなというイメージがあったのですが、今回の事件では非常に違和感のあるコメントを発していました。端的にいうと貴乃花理事寄りであり、反協会のコメントをし続けています。彼は有耶無耶にされるから親方は警察に行ったのではないかということを言っていたのですけど、そもそも有耶無耶にされるとは一体何なのでしょうか?理事会や、理事長へ直談判しても、有耶無耶にされるなんてありえない。あるとしたら直に身体拘束をする=監禁とか、弟子や関係者などを協会から追放するというような脅迫しかないでしょう。そんなことをするはずもないし、あったとしてもそれを告発すれば、誰が聞いても貴乃花を支持するでしょうからねぇ。
 言った言わないの水掛け論を排除するために、テープレコーダーを持って録音をしておけばそれは避けられるだけですし。貴乃花親方が警察に行くという覚悟を決めた時点で有耶無耶にされるなんてありえない。*5

■理事解任でも直近の理事選出馬可能は事実上の無罪放免。これでは組織のルール違反の処分にならない。貴乃花への処分は軽すぎる
 貴乃花理事への処分がくだされた時、なんで被害者が処分されるんだ!被害者が処分されるなんておかしい!みたいな声が非常に多くて、こういうことが世論で大きな声を持っている・強い意見になっているところを見ると非常に薄ら寒い思いをします。政治的に損をするから大事にすべきではないという損得の論理の問題とは関係なく、組織の規則・ルールを破った人間が処分されるのは当然。それは事の是非とは関係がない。適切な行為であるなし関わらず、誰が見てもルールを破ったことには変わりないのですから何らかの処分が下るのは当たり前でしょう。ルールが間違っているからルールを変えるべきだというのなら理解できますが(というか殆どの人が現行ルール・システムがおかしいと思っているでしょう)、処分自体に文句をつけることは筋違いでしょう。今回の処分はむしろ軽すぎる。理事としての責任をまっとうしなかった以上、処分が下るのは当たり前
 個人的には無期限理事(選立候補)資格停止がふさわしいと思いました。野球賭博事件のとき、当時の時津風親方阿武松親方にそれぞれ5年間と10年間の昇格停止処分が下りました。それになぞらえてこれくらいの昇格停止処分が妥当だと思います。両親方とも4年で処分は解かれたので、この事例に倣って2~3年の資格停止処分にして実際は1~2年で処分解除。つまり一回理事に就けないことにするくらいの罰則が適当に思えました。しかし実際の処分は解任のみ。すぐ直近で行われる理事選に立候補できないこともない。事実上の無罪放免でした。このような軽い処分でもおかしいという反応に疑問ですし、むしろ組織のガバナンスという点で組織のルール違反者・反乱者に対して重い処罰を下さないことのほうが問題であると疑問の声が上がるべきでしょう。そういう主張をする論者がいなかったことの方に強い違和感を感じましたね(貴乃花のやっていることは正しい、しかしルール・規律違反には変わらない。厳格な処分を下し、かつ相撲協会もまた組織構造及びそのルールの改正をすべきとセットで主張すべきですね)。
 貴乃花は親方としての地位を全うするために、理事としての仕事を意図的に覚悟を持って放棄したのだから処分される前に辞めてしかるべき。それならまだしも覚悟の上、信念の行動という意味で一貫性があった。ところが自分は悪くないという一点張り…。解任よりも辞任のほうが組織との衝突を避けられる、弟子を守るという主張・持論を通しかつ組織への最低限の筋を通す・組織の論理と折り合いをつける。それならばまだ理解も出来たのですが…。この事件で貴乃花への処分に文句をつける論者も貴乃花も、どちらも態度や姿勢に論理的一貫性が見られないんですね。これは今後の情勢を考える上で非常に怖い所。

■処分されたのは貴乃花「理事」で貴乃花「親方」ではない
 そもそもなんですけど、貴乃花「親方」が処分されたわけではないんですね。貴乃花「理事」が処分されたわけで。このことについて「二つの身体」という言葉を用いて説明していた記事がありましたけど、あまりうまくないので取り上げませんが、単純に兼職・兼務しているんですよね、相撲界の親方という立場の人間は。
 部屋を運営する親方でありながら、同時に相撲協会の役職を兼ねるという特性が相撲協会の人間には存在します。ですから、今回の件も警察に行った「親方」が処分されたわけではなく、事件の解決・事態収拾に全力を上げて取り組む必要がある「理事」としての職務放棄が取り上げられているわけです。行ったことではなく、行ったあとの対応が問題の焦点なわけです(もちろん行った事自体も問題とされてはいますけどね)。*6
 わかりやすく昨今話題の大谷くんで言うと、ピッチャー大谷とバッター大谷は矛盾することがある。日によってピッチングに専念するあまり、ピッチャーとして見事相手打線を抑えても、バッターとして4タコでまるでいいところがなかった―そんな日があることは珍しくもないでしょう。それをもってバッター大谷が打てないからスタメンを外れるとか、数字が落ちたので年俸が下がるとかそういうことがあると思います。しかしそれはピッチャー大谷としての評価や査定ではない。ピッチャー・バッターの別と同じように「理事」「親方」もまた別。
 今回の出来事も親方・理事という兼職故に、どちらかを取ればどちらかが犠牲になるというだけの話。協会の体制・システム的にそういう矛盾することが起こりうるシステムにそもそも成っている。そして親方としての立場を取って、理事としての立場を犠牲にしただけの話ですね。それで当然処分を受けたに過ぎない。おかしくもなんともない話。ピッチャー大谷が危険球で退場となった時、なんでバッター大谷も退場しなくちゃいけないんだ!と言うようなものですね。
 まあ、でも普通に協会の聴取に協力したり、スケジュールの調整で、今こういう状態で後援会への説明、被害にあったお店へのお詫び、警察への二回目の相談・報告云々があって、それが○日に終わるので、その後に協力できますとか、色々協会と一緒になって全力を上げて問題収拾に動けばよかった話。普通に行動していれば、まず処分されなかったでしょう。

■被害者なら何をしても良いのか?ダメに決まってる
 被害者が処分されるのはおかしいという感情論は、被害者なら何をやってもいいというのでしょうか?被害者である以上、特別な措置が取られるのは当然。それは貴ノ岩の休場による降格はないということを見ても明らか。しかし普通の企業でもそうでしょうが、交通事故のために暫く通院で休むことは認められても、怪我が軽かったにも関わらず必要以上に休んだり、怪我の状態=通院に必要な治療期間を知らせずに、勝手に業務をせず帰ったりしたら業務怠慢で処分を下すのは当然でしょう。理事としてすべきことがある。トップとして最大限組織に奉仕しなければならない職務にある以上、職務が出来ないやむを得ない理由・事情があるのならばそれを説明すべき。その説明をせずに協力しないというのならば、処分対象になるのは当たり前ではないですか。被害者であることは錦の御旗とはならない。にもかかわらずさも官軍のような振る舞いで相手を賊軍認定して一方的に殴りつける貴乃花理事の言動の方こそおかしい。「錦の御旗を握っている自分の思うどおりに行動せよ、自分の主張に従え!」という態度を取り続ける貴乃花理事のほうが異常でしょう。
 被害者であるという論理はそれはそれでいいとしても、協会の調査や事態収拾に協力しないというのはまた別の問題。となればこれはこれで不祥事収拾という業務の怠慢で処分を受けるのは当然。被害者側であるということとは全く関係がない、論理的因果関係がない話。一体何を言っているのかわかりません。

■一体どこから連れてきた謎の池坊評議員議長
 あの池坊さんという変な人が出て来て対応をしたから事態をさらにややこしくしたという一面は間違いなくあるでしょうね。礼を失しているとかわけのわからないことを言っていましたが、礼儀やマナーの問題ではなく純粋にルール違反ですからね。理事としての職務怠慢・責務の放棄=ルール違反で処罰するで十分。「親方としての貴乃花氏を処分したのではありません。それについてはノータッチ、我々が問題としているのは理事としての貴乃花氏であり、及び理事の責任・職務の放棄です」とだけ明言すればよかった。それなのに余計なことを言い出したから話がややこしくなってしまったと思います。朝青龍のときの内館牧子氏のように変な人間をどこかから連れてきている傾向があるように思えますね、相撲協会*7。 
 そりゃ新米・後輩理事が上司や先輩に従わずに自分勝手な理屈で動いていればカチンと来る。礼儀の概念がない、長幼の序がないモンゴル人かお前は!と彼らが憤ってもおかしくはない。しかしそういう感情は本来表現すべきものではない。およそまっとうな組織が役職につけるべき人間ではないですね。そもそも相撲協会は内輪の仲間だけで動かすもの、阿吽の呼吸で忖度しあって組織を回してきたという経緯があるため、内部衝突自体余り経験がない。「まあまあ、ここはひとつ」でカタがついてきたのでこうなるんでしょうけどね。

 今回の一件をムラ社会の論理で、ムラ社会に逆らったからこそ、貴乃花親方が処分を受けたという主張をしているものもありましたが、筋違いも甚だしいですね。ムラ社会の独特の論理、反社会的な論理に逆らったから処分を受けているのではなく、貴乃花理事の方が自分勝手な理屈で組織の論理・都合を無視して職務放棄しているのですから。
 この筋違いな暴論、熱狂は何に基づくものなのでしょうかね?理解できないのですが、時津風部屋の暴行事件による不審死で抜本的な対策を取っていないことによる過剰反応故、協会許すまじ!協会憎し!なのか?それとも一般社会におけるイジメ事件が発生した際、まっとうな対策を学校や職場が取らない。こういう時必ず有耶無耶に処理されるものだという背景がある故に、それと同じ風に今回の事件を捉えて、いじめをした加害者&それを許した協会に厳罰を下せ!ということなのでしょうかね。まあ、そういうことはたしかにありますし、わからなくもないのですけど、今回の事件の背景・構造は明らかにそういう一般論と同質に考えられないもの。そういう解説しているものを見たことがないので、やはり知らないが故の反応ということなのでしょうか…。

貴乃花はどうすべきだったのか?
 それはともかくとして、反貴乃花論者が書いた文と捉えられるのも本意では無いので、最後にまとめもかねて貴乃花親方・理事がどういう行動を取っていればよかったかを書いて終わりたいと思います。
 ①貴ノ岩への暴行事件を知ったら、伊勢ヶ濱親方・八角理事長及び他理事へ報告をする。
 ②場所前の処分を望んだものの、場所前に処分が行われなかった。ここで怒るのではなく、伊勢ヶ濱親方や八角理事長へ最終確認を取る。何故場所前に何らかの処分をくださなかったのか?もう警察に行く準備をしてあると告げる。
 ③ここでおそらく伊勢ヶ濱親方が正式に訪問&謝罪、八角理事長も理事会で処分を検討する。
 ④場所中であるがゆえに、場所後に正式な処分を発表・実行する、二場所休場なら二場所休場で落とし所を決めて、場所後にそれを発表・処分。
 ⑤一件落着、チャンチャン。

 ―本当、これだけで終わる話だったのに、何故キレてしまったのかわからない。なんで場所前に処分しなかったんだ!俺をナメているのか!とキレてしまったのでしょうか?説明したとおり、八角理事長も伊勢ヶ濱理事も貴乃花理事は怒らないだろうと考える合理的理由がある。理事長のイスを狙うのだとしたら当然我慢して然るべき所なのに…。場所中での被害届は、他の親方・理事・力士の顰蹙を買ってしまうのに…。本当に認識能力がおかしいとしか思えないですね。そもそも場所前の処分が当然と考えていたのならば、八角理事長や伊勢ヶ濱理事に「例の件はどうなってますか?今の進捗状況はどのくらいですか?今はどの段階にあるのですか?」と確認をすればいいだけ。部下はどちらなのか?上司はどちらなのか?どっちが先輩でどっちが後輩なのか?どっちが新米理事で(以下略)。そういうことを考えれば尚更ですね。自分の思うとおりに事態が進んで当然というメンタリティは一体どこから来たもの、何由来なんでしょうか?
 おまけとして⑥で日馬富士をたらしこむということも考えられますね。そもそも改革を望む貴乃花理事は同じく自分たちの地位向上・改善を望むモンゴル派と本来相性がいい。大勢力を築く上で、孤立しがちなモンゴル派を自派閥に組み込んでしかるべき。国体云々の概念からモンゴル人を受け入れられないのかもしれませんけどね。
 それはともかく、モンゴル派をコントロールできるようにする上でも、この機会に日馬富士を取り込むことを普通は考える。白鵬が気に食わないのなら尚更ですね。日馬富士を取り込むことでモンゴル派閥を割ってコントロールできる。日馬富士貴乃花親方の父・先代貴乃花を尊敬して相撲を始めたといいます。そういう点でもアプローチしやすい背景があります。
 それこそ、今回の事件を機に「オイ、日馬。お前俺がなんで怒っているかわかるか、殴ったことを怒っているんじゃない。今回のことでお前が相撲を取れなくなったらどうするんだ!せっかくここまで来たのに、引退することにでもなって相撲が取れなくなったらどうするんだ。お前は相撲が好きじゃないのか?現役を退いて初めて自分が相撲が本当に好きだったということがわかるんだ、俺もそうだった。こんな下らないことで力士人生を終わらせたら、一生悔いが残るぞ!何より、ここまで育ててくれた伊勢ヶ濱親方がどう思うんだ!おかみさんも、応援してきてくれた後援会の人にも申し訳が立つか?立つわけ無いだろう。お前を一生懸命応援してきた人たちが悲しむんだぞ、怪我ならともかく不祥事で引退してどう説明するつもりなんだ!このバカタレが!」と説教して、理事会や記者会見などでは、今回の事件は弟子の教育不足だった私の責任でもあります。責任は私が取り、理事を辞任しますので、どうか休場で許してやってくれませんかと頭を下げる。
 謹慎中、出稽古で日馬富士に指導をして、日馬富士の稽古姿勢を褒める。「お前ら横綱があんなに練習してるんだぞ?お前らそれで強くなれるのか?横綱以上に練習しないで一体どうやって横綱になるつもりなんだ?」と自分の部屋の力士にはっぱをかける。またウチの父はもう超えた。今後はもっと精進して、日馬富士のようになりたいと言われるように頑張りなさいとリップサービスをする。
 で、休場明けに日馬富士が見事優勝して日馬富士が優勝インタビューで感謝の言葉を述べることで完璧ですね。「まず、自分が馬鹿なことをしでかして、親方・部屋の皆、関係者皆さんに迷惑をかけたことを深くお詫び申し上げます。自分にできることは相撲だけなので、土俵の上で勝つこと、こうやって優勝することで少しでも罪滅ぼしができればと思って今日まで頑張ってきました。自分のしたことは決して許されることではないですけども、その思いで今日まで頑張ってきました。これが少しでも恩返しになったら嬉しいです。」
 で、インタビュアーが今の喜びを誰に伝えたいですか?
と聞いた時、泣きながら「自分が間違いを犯した時、自分が過ちを犯した時、貴乃花親方が自分を叱って…。すいません…(涙)。自分の責任だとおっしゃって、親方は何も悪くないのに、自分をかばってくださって…。その後も色々目をかけて指導をしていただいて。本当感謝してもし足りないです。ありがとうございました」と、日馬富士が応えたら完璧ですよね。んで、土俵を降りた後、貴乃花親方に泣きながら挨拶して貴乃花親方がウンウンと褒め称えてやる。そういう絵が報道されたら、親方としての人気は天に登るでしょう。冲天貴乃花ですね。
 そういういい話を人は放っとかないですから、取材がありますよね。「私は何もしてませんよ。彼の努力が素晴らしかったんです。今でも横綱の努力を見習えとうちの力士に言ってますから。あと20回は優勝できるから、今後も相撲道に精進してがんばりなさいと言いましたよ。私は本当に何もしてません、伊勢ヶ濱親方の指導の賜物ですよ。私も伊勢ヶ濱親方を見習ってああいう優れた力士が出るように頑張らないといけませんね。優勝の後に駆け寄ってきてお礼を言われた時は嬉しかったですけど、先に私のところに来ちゃ駄目ですよね(笑)。そういう所がまだまだですかね(笑)。私じゃなくてちゃんと伊勢ヶ濱親方にお礼をするんだよと言いましたよ、ハハハ」。とでも応えたら日馬富士伊勢ヶ濱親方も貴乃花親方の心酔者・信奉者になったでしょうね。角界でも「貴乃花親方は凄い」の声で満ち溢れたでしょう。アクシデントを活かすか活かせないかはその当人の器量の問題ですけど、まあそういうものがないんでしょうね…。 この事件をどうすれば上手く活かせるか?そういうことを考えて行動して、求心力を高めないといけない。そういう発想が根本的になくて、自然と自分の思うように物事が進んでいくと考えている。そうして物事が思う通りにならないと怒り出す。なんか非常に我儘で信長チックなんですよね。無論信長はビジョンも実力もあったので、我儘やりたい放題出来たのですがそういう実力が彼にはない。鳴かぬなら鳴いたら鳴いたでブチ切れ時鳥とでもいいましょうか…。こういう例え、戦国武将的な例えをするのは余り好きではないのですけども、鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥的な忍耐・我慢だったり、鳴かせてみせようホトトギス的な巧さや人たらしだったりそういうものがないとダメなんですよね。改革を実行するためには。そういうことを理解して、そういう能力を身に着けてほしいですよね。

アイキャッチ用画像

*1:というかそもそも無記名投票でなければ貴乃花を支持できないという時点でもう駄目なんですけどね

*2:※参照―時津風一門離脱の3親方、貴乃花親方支持せず : スポーツ報知

*3:無論、角界の変わらぬ体質・昔の体育会系的な上下関係に暴力的な指導というものが根深いこと。暴力根絶が未だに出来ていないことを世間に知らしめるという効果はありました。が、少しづつ地道な対策・改革を積み上げて変えていくというまっとうな手段を選ばず、手っ取り早く内部告発して現執行部を引きずり下ろしてしまおう。自分の思うように組織を動かそうという姿勢では外部の支持は集められても内部からは強烈な反発を招くものですよね。

*4:ただし、最後の一番の被害者は貴ノ岩というのは違うでしょうね。下らない騒動に巻き込まれて、自分たちが好きな相撲がまたイメージが悪くなって苦しむ人々でしょうね。まっとうな親方(そんな親方いるのか?というのはおいといて)や相撲協会に属する人々、相撲ファンに場所中の力士こそ、本当の被害者でしょう。

*5:かなり前に書いたパートなので、今頃になって意味がわかりました。ああそうかうやむやにされるというのは、要するに刑事罰・処分を下せ。世間に公表せよ。そうするのが一般社会では当たり前―そういうことを言いたいのですね。んで、貴乃花親方がいくら相談してもそういう裁定が下ることはなかったから独断で動いた。その行動を良しとしたいのか。それでも結論は変わらず、一回相談して理事長に報告する。それでも処分はしないという言質を引き出す。で、警察に行けばいいだけですね。そこは以後の文章と何の整合性の問題も引き起こさないのですけど、ポイントは今回の事件だけ特別に便宜を図って隠蔽したという話ではないことですね。
 横綱、興行のスタープレーヤーだから組織ぐるみで今回だけ特別に不祥事を公表しなかったという話ではなく、全力士・親方の不祥事をそもそも公開しないという透明性の低い組織であるということ、これがまず一つ。次に、貴乃花親方はそういう組織の流れに逆らう清廉潔白な人士ではないということ。貴乃花が前々からそういう協会の腐った流れ・前近代的傾向に憤っていて、とうとう堪忍袋の緒が切れた。そういう事情背景であるというのならばまだしも、彼自身もその制度によって守られてきた不祥事を起こしてきた側の人物であること。そういう理解が八代氏にはないということでしょうね。そこを見過ごすと話がまるでわからなくなる。彼は決して不祥事に怒りを爆発させた正義の士ではない。良くないこととは言え、角界では暴力は日常茶飯事であり、自身も同じことをしている。にもかかわらず、何故かブチ切れて警察に行った。ポイントはそこにあるんですよね。要するに詳しいことを知らないので「暴力事件の被害者と加害者」という大きな絵の一番目立つパート・真中部分しか見ていなからそういう誤った認識をしているということですね。この話はラストで書く話だったので今書いちゃうと前後のつながりがおかしくなるので注にしました。貴乃花親方は暴力と無縁の清廉潔白な人士ではない。これが今回の事件のポイントですね

*6:「親方」と「理事」という二面性があることがのちのち大事なポイントになってくるだろうということで途中からかなり気をつけて「貴乃花親方」と書くか、「貴乃花理事」と書くかその都度その都度、文脈にふさわしいように使い分けていました。しかしどっちでもいいときが多くてうーんどうしたものか…となることが多く、あとでどっちでもいい時は単に「貴乃花」とすればよかったなと気づいたのですが、もうめんどくさい&後の祭りだったので、名称の書き分けは諦めました(笑)

*7:ググったら今上天皇陛下の再従姉妹で元新進党公明党の人なんですね…。全部比例当選で創価学会員ではない公明党議員とかすごい謎キャラですね…

日馬富士暴行事件の解説⑤ 貴乃花「理事」への処分は正当、むしろ軽すぎる。貴乃花理事落選は当たり前の結果 <前編>

 終わらない…。他にも書きたいネタがくさるほどあるのに…。前回書いたモンゴル人差別と親方理事制、徒弟制を前提とした部屋制度及び親方株云々という話で大体終わる*1。この話をして終わればいいだけだったのに、次々と書きたいことが出て来て終わらなくなってこのザマです。延々余計な話が続きます(笑)。モンゴル人差別云々という問題の本質と、どうして貴乃花改革は失敗するのか?という分析をして終われるはずが、事態の新展開で終われなくなってしまいました…(´-ω-`)。「黒幕は白鵬、黒鵬・悪鵬ではなく、黒乃花・悪乃花!?そしてマスコミである!!」と書いてビシっと絞めて終わる予定が、前回書き残していたパートとちょっと整合性がつけられない。つなげるのに無理があるので、つなげるの諦めることにしました。前中後編で無理やり三編構造にしても良かったんですけどね。流石に繋げないほうが良いだろうと、長いのをごまかすために三編構造シリーズで簡潔にまとめた感を出したかったのですが、その手法も限界に来ました(笑)。つかこれ自体長くて分割しないと無理ですし(^ ^;)。
 今回は貴乃花理事の落選という新事象もありましたし、それにつなげることでまとめてしまうことにしました。前回の貴乃花改革は何故失敗するのか*2の続きで書いていたものなので、それにつなげると収まりが良くなるので。理事落選についても触れておきたいポイントも少しとは言えあることはありますしね。貴乃花改革は何故失敗するのかという話の半分以上は、どうして貴乃花は他の親方衆に支持されないのかという話でもありますからね。日馬富士の事件で被害者側の貴ノ岩貴乃花親方の警察行きは、どうして角界の反発を招いたのか?諸親方達は反貴乃花派になったのか。改めてこれまで論じきれていなかった解説をしていきたいと思います。

■相手は~するはずという思い込みと思惑の違いから始まった事件
行き違いと考え違いから始まった 日馬富士傷害事件 (時事通信) - Yahoo!ニュース
 この文にあるように、それぞれが相手の意図を見誤ったことが積み重なって今回の事件に発展したという性質があるわけですね。
 >貴ノ岩白鵬の話が一段落し、元日馬富士と別の話をしていたので説教が終わったと思い、スマホに届いていたメールに返信したもので、非礼を働いた認識はなかった。店を出た後も、同席していた石浦*3に、なぜ殴られたのかと話し、翌日、元日馬富士に謝罪したのも、知人に「謝っておいた方がいい」と言われたからで、殴られた理由が分からないままだった。
 >暴行の翌朝、貴ノ岩が元日馬富士に謝って両者が握手したことで、周りの力士も一件落着だと考えた。後日、事件の端緒に接した相撲協会執行部もそれを伝え聞いて同様の思いを抱いた。
 >執行部が当初、貴乃花親方と元日馬富士の師匠、伊勢ケ浜親方(文中ママ)の話し合いを求めていたことも分かった。
 >本来、示談と組織としての処分は別物だが、貴乃花親方が協会のそうした姿勢から、両者による解決で済ませて主体的に日馬富士白鵬を処分するつもりがないと思い込み、態度を硬化させた可能性がある。

■お互いの意志を確認しなかった故のすれ違い、誤解が今回の事件の発端なのか?
 ―この流れから、暴行現場にいた力士達も、協会も伊勢ヶ濱親方も、事態は大した問題に発展しないだろうと捉えた。そして貴乃花親方は、協会と伊勢ヶ濱親方の態度を見て、しっかり問題に対処するつもりがないと考え独断で警察に行った―そう捉えるのが適切だと思います。こういう流れを見ると誤解、コミュニケーション不足がもたらした事件ということで落ち着きそうなものですが、果たしてそうでしょうか?結論からいうと、そうではなく業界の常識・慣習、角界の人間のそうするだろうという予想から貴乃花理事は大きく外れた行動を取ったのですね。ですから、協会・貴乃花以外の理事・執行部の面々だけでなく諸親方も反発したのです。そこをおさえないと今回の問題はよく理解できないでしょう。メディアの人間でもそういう理解がないまま語っている・論じているので、世間一般の人はなおそうでしょう。

貴乃花派だった伊勢ヶ濱親方&理事長選後の離反、八角理事長に不祥事の責任を取れと考える親方はいない
 最初、一番悪いのは加害者の親方でありながら協会への報告を怠った伊勢ヶ濱親方だと書きましたが、これもかなり微妙になってきました。というのも前回書いたとおり、伊勢ヶ濱親方は貴乃花だったのですね。理事長選挙で惨敗した貴乃花理事を支持した数少ない仲間だったのです。
 ということを考えれば、貴乃花親方が暴行事件があったとして、その犯人が伊勢ヶ濱部屋日馬富士だとしたら、事件を大事にしないだろうと考えるのは普通の人間の発想でしょう。貴乃花理事は、直近の理事長選挙で味方をしてくれた伊勢ヶ濱親方に手心を加えるはず。悪いようにはしないはず。理事長や危機管理委員会がそう考えて問題に対処しようとするのは当然。数少ない味方をわざわざ敵に回すようなことをするはずがない。
 八角理事長も、貴乃花派同士の揉め事を律儀に上に報告してきた位の感覚しかなかったのではないでしょうか?いずれにせよ、とりあえず両親方がどういうふうな着地点に持っていくのか、落とし所を決めるのか、それを待ったというのは至極当然の感覚・発想であったと思われます。理事長の責任云々問う人もいますけど、彼は至極当然の対応をしたと見なすことが出来ます。これで八角理事長に不祥事の責任を取れというのは無理がある。シリーズのラストで語りたいと思いますが、貴乃花親方も過去に不祥事を起こして不問にされている。そういう過去の経緯を考えても貴乃花親方が問題を大事にするはずだと捉えるべきとはいえない。当事者同士の手打ちも済んでいる・貴乃花親方と関係の近い伊勢ヶ濱親方同士のトラブル、そういうことを総合的に踏まえると日馬富士を厳罰に処すべきだった・そうするのが当然の判断だったというのは無理がある。*4

伊勢ヶ濱親方の離反、貴乃花派から中立・八角派へ
 伊勢ヶ濱親方は、理事長選挙以後、貴乃花理事とは関係が悪化していたと言われています。それもそのはず、選挙で惨敗したような人についていこうとは普通思わないからです。八角理事長と関係改善に動いたと言われ、理事を辞任するまでは審判部長代理だったのですね*5。おそらく貴乃花理事長が誕生する可能性があると思い、票を投じたのでしょう。そもそも熱心な貴乃花派ではない。基本は中立派で今回は勝ち目があると思った貴乃花理事を支持した。もしくは将来のことを考えて、貴乃花理事に恩を売っておこうと考えたのでしょう。
 しかし、惨敗の結果を見て、しばらく貴乃花理事長の目はないと見切ったのでしょう。このままいけば、次の職務分掌で正式にナンバー3の審判部長に復帰したでしょうね。何かの記事で、伊勢ヶ濱理事は貴乃花理事と関係が悪化していたから、貴乃花理事は伊勢ヶ濱理事に配慮しなかったというようなものを読みましたが、それはありえません。そんな考えは論外です。

伊勢ヶ濱理事を貴乃花シンパにする機会だった暴行事件
 伊勢ヶ濱理事は貴乃花理事の先輩、貴重な年下貴乃花親方を支持してくれる数少ない年上の先輩親方であり、何より理事。今は中立から八角理事長よりにシフトしたとはいえ、貴乃花理事に投票したという事実は変わらない。この恩義から言っても、伊勢ヶ濱理事を軽視することはありえません。
 伊勢ヶ濱理事が貴乃花理事に恩を売ったのではなく、逆。貴乃花一門の票を回して伊勢ヶ濱理事を誕生させたという見方もできます。貴乃花一門は20票にいかなくとも、一門外の票を動かすことが出来る。15~18票近く持っていると言われます。なので、貴乃花一門から二人目の理事を出せない分の余り票を伊勢ヶ濱理事に回して当選させたということも考えられます。票の関係から貴乃花伊勢ヶ濱という関係だったということは十分考えられますね。その裏切り者伊勢ヶ濱を見切ったという見方も可能でしょう。しかしそれでも、理事に立候補して当選するくらいの票を持っているわけですから、有力者であることには変わりない。そういう人間を味方に取り込むことでシンパを増やしていく必要性があることには変わりないので、貴乃花からすると伊勢ヶ濱親方が中小勢力であるとしても、彼を敵に回すことはありえないという結論に違いはありません。
 そういう風に考えると、伊勢ヶ濱理事は理事長選で不利であるにも関わらず、貴乃花理事に一票を投じることで票を回してもらった義理を果たしたと見るのが自然なのでしょう。票を回したことで、自分の意志に絶対服従すると考える貴乃花理事が甘いとするのならば、理事長選で票を投じたから義理を果たしたと考える伊勢ヶ濱理事も甘かったと見てもいいかもしれません。

 それはさておき、貴乃花理事は伊勢ヶ濱理事に直接話をして説得することで、また彼を中立・八角派から貴乃花派に引き戻せるわけです。警察に行く準備をしつつも、伊勢ヶ濱部屋に直接訪れてそういう話をする。
 (伊)「え、警察に?貴乃花くん、いや貴乃花理事。今回のことはどうか水に流してくれないか?この通りだ。」
 (貴)「伊勢ヶ濱親方、私と親方の仲じゃないですか。流石に日馬富士を無罪放免には出来ませんが、決して悪いようにはしませんよ。今後も角界のため、協会を良くするために、一緒に頑張ろうじゃありませんか(ニッコリ)」
 ―というようなやり取りでもして事件を収める方向に向かっておけば、伊勢ヶ濱理事に恩を売ることが出来る。今後も伊勢ヶ濱一門の票をある程度計算できる。理事長になって相撲界の大改革をしようというつもりなら、暴行事件が許すことが出来ない蛮行だとしても、譲歩して伊勢ヶ濱理事に有利な落とし所を見つけてやる必要がある。
 そういう事情・背景を考えると、八角理事長や伊勢ヶ濱理事が問題が大事にならないと考えるのは至極当然なわけですね。貴乃花が大改革をしたがっている野心家ならば尚更。

■政敵・反貴乃花派を増やした貴乃花

 何より、今回のように強硬な態度に出てしまうと、伊勢ヶ濱理事・一門を敵に回してしまう。事実の是非や経緯は置いといて、伊勢ヶ濱親方からすると、横綱まで出世した可愛がっていた大事な力士を貴乃花親方によって殺された・引退に追い込まれたわけです。この恨みを抱いた伊勢ヶ濱親方が今後協会においてどういう行動を取るか?貴乃花になるに決まっているではないですか。
 早速、伊勢ヶ濱親方は次回の理事選に立候補する意欲を示していますが(これを書いていた時は伊勢ヶ濱親方も立候補すると言われていました)、もし彼が理事に返り咲いたのなら、貴乃花絶対殺すマンとして、貴乃花理事の足を徹底的に引っ張る反貴乃花派になってしまう。現代の角界では、一門の結束はあまり強くないと言われてはいるものの、何かのきっかけで一門全体で反貴乃花になるような可能性のある行動はやってはいけないに決まっている。二所ノ関一門についで、また違う一門を敵に回すのか?こんなことでどうやって理事長になって、大改革を実行するというのか?理解できません。

伊勢ヶ濱親方・一門についで、白鵬・モンゴル派を敵に回す愚行
 もう一つ理解できないこととして、言うまでもなく日馬富士というのはモンゴル人なわけです。もし日馬富士が引退ということになれば、朝青龍についで、またモンゴル人横綱を殺すことになる。そして事実そうなった。これで完全に現代相撲界で有力勢力の一つであるモンゴル派閥を敵に回してしまった。許せないことだとしても、ぐっとこらえて日馬富士が引退しないような処分で決着させないと、反貴乃花派勢力が強大化してしまう。
 今回の貴乃花親方の行動はたとえ、正しい行動だとしても、伊勢ヶ濱親方とモンゴル力士グループと二つの敵を作ってしまったという最悪な結果となったわけです。

 日馬富士の引退会見直後に、引退までする必要はなかったのではないかということを言っていました。貴乃花親方は日馬富士は引退しなければならないとまで考えていなかったかもしれません。しかし、政治とはその行動がどういう結果をもたらすかを計算して行わなければなりません。貴乃花親方は結果を計算できなかったとしたら、政治能力がない無能と言わざるをえません

白鵬を敵に回す愚行
 白鵬は千秋楽で「膿を出す」発言をしました。あの真意は、「注射」を止める。貴ノ岩にもこれ以上手を出さない。場所前・中のモンゴル人同士の飲み会も止める。だから訴えを取り下げてくれ、許してくれということ。そもそもモンゴル人達は普通にやっていれば勝てる。楽に勝つため、政治上の目的のために星の回しあいをやってモンゴル勢力の拡大を狙っているに過ぎないと考えられます。日本人も、他の外国人力士も注射をしない五分の条件ならそれでいい。別にそれでも十分勝てるので、絶対譲れないラインではないですからね。
 しかし、貴乃花親方は訴えを取り下げなかった=白鵬のメッセージ・交渉を無視した。結果、日馬富士は引退となった。日馬富士の首を取られた白鵬貴乃花絶対殺すマンになりました。「巡業部長が貴乃花理事のままなら巡業に行きたくない」発言に、わざわざチームモンゴルのジャージを着てきたことを見れば、白鵬はこの件で貴乃花理事を絶対許さないと宣言したことになります。モンゴル派・白鵬派という反貴乃花派の立ち上げを宣言したわけです。着々と将来のために相撲界を変える理事長の座のために、内弟子を取るなどの準備をしてきた彼ですが、その現役最強で史上最多優勝など数々のレコードを持つレジェンドを敵に回すことになりました。
 以前、最後にモンゴル派を敵に回すことはありえないと書きましたが、白鵬一代年寄として協会に残った場合、その実績から現貴乃花と同じかそれ以上に角界に影響力を残すことになります。その彼も不満を持つ改革派である以上、貴乃花と折り合いがつけられないところが多くとも、改革で共通する点は多い。改革する度に邪魔になる反対派の理事を減らす=年寄名跡問題などの改善については彼の協力が不可欠になるはず。
 色んな親方・一門の諸利害関係者を調整するよりも白鵬のような大物実力者と交渉して取引をするほうが遥かに改革は進めやすい。本気で協会を改革しようという意志があるのならば、実力者白鵬を敵に回すようなことは絶対やってはいけないこと。理事長に上り詰めた時、若手親方白鵬が反貴ノ花として事あるごとに逆らってきたら改革は一体どうなるか?そういうことを考えれば言うまでもないでしょう。

■警察に行く、被害届を取り下げないこと=日馬富士の首を取るという意思表明に他ならない
 正直最初は、日馬富士の引退は時期尚早ではないか?そんなに早く引退を決断しなくても事態の推移を見守ってからでよかったのではないか?と思いました。しかし、報道の流れを見ていると、今日に至るまで相撲騒動の報道がやまないように*6、マスコミがひっきりなしに訪れている。協会や伊勢ヶ濱部屋を守るという意味でも、日馬富士がさっさと辞めないと、日馬富士の周囲にマスコミが押しかけて、関係者に迷惑をかけていたことは必定。これ以上の混乱を避けるためにも日馬富士の引退の決断は妥当なものだったでしょう。もし彼が引退していなければ、マスコミが押しかけて部屋や関係者周辺はその対応でパンクしていた。本来すべきことがまるで出来なかったでしょうね。また有る事無い事根掘り葉掘り探られて記事にされる、付きまとわれるという迷惑を考えれば尚更でしょう。
 もし貴乃花親方が伊勢ヶ濱親方の要請を受けて警察への訴え・被害届を取り下げて事態の早期収集を図っていたら、日馬富士の引退は避けられたかもしれません。そう考えると伊勢ヶ濱親方の怒りは察するに余りあるものがあるでしょう。
 そういうことを考えてもやはりいきなり警察に行ったのは理解できない行動。また、その後協会や伊勢ヶ濱親方の要請を受けて訴えを取り下げなかったことも理解できない行動。日馬富士伊勢ヶ濱親方、そして協会・現執行部にダメージを与える、責任を取らせるという意図があったとしか思えない。本当に何を考えているかわかりません。

貴ノ岩と部屋・一門のことを考えたら普通は妥協する
 自分の改革が出来なくなるという以外にも、周囲の人間に対する配慮という観点からも問題を大事にしないのが普通だと角界の人間は考えるでしょう。弟子を守ると言っていましたが、今回の件でおそらく貴ノ岩はモンゴル派閥から追放されることになるでしょう。下手したら鳥取城北高校閥からも追放される恐れもあります(貴乃花親方も鳥取城北高校とつながりがあるようなので絶対ではないでしょうけど)。今回の一件で、チームモンゴルは目の敵として貴ノ岩の首を狙うでしょう。そういうことを考えても普通は妥協をするもの。
 江原啓之氏が貴ノ岩についてモンゴルに帰れるのだろうか?と心配していましたが、まさにそのとおりで、モンゴルでは英雄である横綱日馬富士を引退に追いやった元凶としてモンゴル人が非国民・悪魔扱いする可能性がある。モンゴルの人々がどう捉えているかわかりませんが、少なくとも将来モンゴルでまともに生活できなくなるリスクがあるのですから、貴ノ岩の将来・人生ために示談で終わらせるというのが親方として取るべき決着の付け方でしょう。そういうことをしなかった以上、貴ノ岩はモンゴルの土を踏まない覚悟がある。日本に帰化して日本人になって生きていく覚悟があると考えるべきなのでしょうが、本当に彼にその覚悟があるのでしょうか?「自分は悪くないのに…。自分が悪いように言われている」なんていうコメントを見るとどうもわかっていないように思えるのですが…。そして貴乃花は親方として一生面倒を見る覚悟が求められますがそれくらいの覚悟を持っているのでしょうか…?
 彼一人で話が済めばいいですが、今回小結に昇進した貴景勝など、貴乃花部屋の力士全員が狙われるおそれもある。貴乃花一門を切り崩すという狙いがあるのならば、一門全体が目の敵にされるおそれがある。モンゴル力士たちが、優勝は二の次・三の次で、貴乃花関係者の力士を潰しにくる可能性がある。そうなったらどうするのか?(時津風一門を離脱した3名の親方衆が一旦様子見で即合流しなかったのにはそういう背景も含まれていると見ていいでしょうね)
 ガチンコが信条の貴乃花一門が故に、却って好都合・大歓迎なのかもしれませんが、ガチンコ相撲と政争では意味が違う。ただでさえガチンコ力士の寿命は短いというのに、弟子の選手生命・力士人生のことを本当に考えているのでしょうか…?

■余談:貴乃花の暴走は皮肉にも相撲を最高に面白くした
 余談になりますが、皮肉にも今回の事件・政争をきっかけにガチンコ勝負どころか、どちらかが死ぬまでの殺し合い。モンゴル派VS貴乃花派のリアル真剣勝負の構図が実現することになりました。間違いなく真剣勝負になるこの対決は相撲を見る上でこの上なく面白い力学となって、土俵を白熱させるでしょう。WWEなんか目じゃない、生きるか死ぬかのガチバトルですからね。次の場所がどうなるか今からワクワクしますね。朝青龍引退後まるで見る気になれなかった相撲ですが、見たくなってきましたからね。
 貴乃花派VSモンゴル派また八角部屋の力士との対戦なども見どころになるでしょう。しかし、貴乃花派もモンゴル派も、その他の一門でも派閥でもいいですが、決定打にかける。多数派として主流派を占めるほどの勢力が形成されそうにもないことを考えると、潰し合いで消耗しあう。結局勝者なきまま衰退していくという流れになるんでしょうけどね。

■興行を妨害し、反貴乃花派を増やした警察行き
 伊勢ヶ濱親方・白鵬=モンゴル力士だけでなく、相撲協会の大多数の人も敵に回したと見ていいでしょう。いきなり警察に行くことで面子を潰したということだけでなく、貴乃花親方の行動でスケジュール・予定がぐちゃぐちゃになったからです。
 場所中に警察に被害届を出しに行くことで、協会はその事件についての説明責任が生じる。マスコミが押しかけることで、急遽その対策・対応をする必要が発生して色々な労力・時間を割かなければならなくなった。

 「協会に報告もせずに警察に行くなんてありえない」という言葉をおそらく何万回もメディアから聞いたと思いますが、ホウレンソウの観点以外に、どうして行ってはいけないのかというと、協会・組織に予定外の面倒をかけるからですね。営利企業ではないにせよ、興行を定期的に開いている組織。興行の収益が重要な組織であることには変わらない。どの理事・親方でも、場所・興行が重要だという意識は共通して持っている。
 暗黙の了解として、というか常識として、興行にダメージを与えるような行動を取るような協会職員は居るはずがない。まして理事においておや。しかしこういう事件が起こった以上警察に行かない訳にはいかないというのは当然。だからこそ、警察に行くなら行くで何故行く前に理事会で報告しなかったのか?理事長や他の理事に相談しなかったのか?そこが理解できないわけです。他の理事・親方もほぼそういう思いで共通しているでしょう(まあ、中には本当に警察に行くこと自体がけしからんという発想をする池坊さんのような人もいるかもしれませんけどね)。*7
 興行を開くということは、多くの仕事を担当ごとに割り振って、職務にある人間がその役目を全うするはず。人員が余剰か人手不足かどうかわかりませんが、本来の割当を超えて、事件対策にマンパワーを割くとなると、普段行っている業務に支障をきたすわけですね。いつもと違うマスコミが押しかければ、場所中の力士も取材だ何だで邪魔されて集中できないでしょうし、いい迷惑でしょう。

 以前紹介した記事にあったように、対応が後手後手に回ると、マスコミが少しでもいいネタを取ろうと、色んな所に押しかける。その上で違う意見が出ることになり、それを巡ってもまたズレを突かれたりで対応がめんどくさくなる。はじめに結論を皆で導き出し共有した上で不祥事というものは当たりたいもの。その不祥事対策が貴乃花理事の独断による行動のために、まるで出来なくなった。そういうことを考えると、親方や力士衆が貴乃花理事について反感を抱いたとしても何の違和感もないと思われます*8
 貴乃花親方がバッシングされても相撲協会と決裂した本当の理由 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot.ここにあるように、貴乃花親方が事件を知ったのが26日、九州場所が始まるのが翌月の12日で、二週間以上間がある。ということを考えると、貴乃花理事が考えていたように場所前とは言えど緊急理事会を開いて、処分を決めて謝罪会見を開くなど十分に可能だったように思えます。
 しかしやはり、興行を考えると場所前に不祥事を明らかにしたくないと考える理事が殆どでしょう。そして興行の顔である横綱を欠場させたくないとするのも同じ。同じ貴乃花派であり、問題を公表することに貴乃花理事に利がないことを考えると、執行部が当事者同士の手打ちがあったことも含めて処分せずで済ませたことは、角界の慣行から考えて当然の流れだったでしょうね。やるにしても場所後という判断だったんでしょう。その他の親方にしても考えは変わらないでしょう。むしろ、「そんなよくあるちょっとこづいたくらいの暴力事件で警察に行くなんてくだらないことをするなんて…。余計な耳目を集めて、興行に支障をきたすなんて理事のくせに何考えているんだ?バカじゃないか?めんどくさいことしやがって…」と迷惑極まりない行為と捉えている親方のほうが多いと思われます。

貴乃花の暴走を教訓に不祥事対策の徹底・処分の一元化をすべし
 個人的には警察に行く行かないはともかく、処分はきっちりすべきだったと考えます。この点明確な処分を求めた貴乃花理事のほうが正しかったでしょう。シリーズ①で書いたように、危機管理委員会を常設化しておけば、このような誤解・イザコザは防げたでしょう。貴乃花親方が伊勢ヶ濱親方へ話を持っていった時、常設の危機管理委員会に話を持っていくことが出来るようになっていて、そこで一律的に処分が決まるようになっていたらそもそも今回のような騒動に発展しなかったでしょうからね。
 不祥事の発生で、当事者の力士や親方に危機管理委員会への報告を義務付ける。そして危機管理委員会が執行部とは関係なく規約・法に則って一元的に処分を決める。そういうシステムが整備されない限り、不祥事が発生したときに、第二第三の貴乃花親方が出て来るとみなすべきでしょうね。まあ、貴乃花親方のような行動を取る人がそう何人もいるとは思えませんが。
 前回述べたようにそもそも親方=理事制である以上、このような問題は避けられないわけですね。親方衆が協会の役職を兼務する以上、どうしたって業務は片手間になる。二刀流大谷が片方に専念すればと言われるように、本来部屋の運営も、協会の業務も片手間でこなすようなものではあっていけないはずなんです。このように兼務=兼職が当たり前である以上、お互いがお互いの業務・職分に対して、なあなあになってしまう。本来貴乃花のように理事として厳しい立場で親方に望む、親方の責任を問うということはあってしかるべきなのに、そういう責任追及が行えなくなる。こういう視点からも親方理事制は解消されるべきものといえるでしょう。

 親方衆がどうして貴乃花親方を支持しないか、どう貴乃花親方を見ているかということを書いた所で、処分の話と理事選での落選の話を後編でしたいと思います→続く。

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*1:過去記事はこちらです→日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質はモンゴル互助会の八百長・「注射」ではなく、モンゴル人差別と親方=理事制<前編>
日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質は八百長ではなく、モンゴル人差別と親方理事制<中編>
日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質は八百長ではなく、モンゴル人差別と親方理事制<後編>

*2:リンクはこちらです→日馬富士暴行事件の解説④ 理事・理事長選挙から見る貴乃花親方。貴乃花改革は必ず失敗する<前編>
日馬富士暴行事件の解説④ 理事・理事長選挙から見る貴乃花親方。貴乃花改革は必ず失敗する<後編>

*3:彼の父親が、前鳥取城北の相撲部の監督で現在は校長なんですね。その息子さんがこの石浦という力士で、彼は白鵬の付き人・内弟子なんですね。白鵬鳥取城北にも太いパイプを持っているということは注目に値する事なのであえてここでそのことに触れておきます

*4:もちろんこれは世間一般の感覚や論理とは別のモノです。あくまで角界のこれまでの慣習や論理の話です。業界のルール・常識に沿った行動をしている八角理事長を裁くべき・責任を取らせるべきと考える人間・親方衆は殆どいないということです

*5:2013年1月の理事補欠選挙で理事になり、審判部長。 2014年1月の理事選挙も当選で、審判部長留任。2016年3月の職務分掌で、審判部長から大阪場所担当部長に。2017年11月場所で二所ノ関審判部長の休場により審判部長代理になっています

*6:これを書いている時はまだ続いていました。理事選が終わって注目するようなイベントもなくなり、ようやく最近収まってきたと言えるでしょうか?

*7:※追記、おそらく、こういうタイプの組織ではそもそも不祥事を表沙汰にしない。力士同士の揉め事は当事者同士でケリを付けるという慣習があると思ってましたが、実際そういう記事がありました。慣習破りという点で、貴乃花親方に憤る・ついていけないと感じる親方がいてもおかしくないでしょうね。

*8:日馬富士の暴行で巡業での力士の飲み歩きが禁止されたり、お小遣い稼ぎになる年末テレビ出演などが自粛される流れとなったと言います。原因が貴ノ岩になくとも、「うちの弟子が迷惑かけたから」と、力士に迷惑料として現金なり何なり、他のものをあげるという気使いが普通。果たして貴乃花親方はそういうことをやったか?巡業部長で貴乃花理事は嫌だと白鵬が言ったことについても、貴乃花理事はホテルから外出しないから、力士がタニマチと飲み歩くのに気を遣う。実際多くの力士は、ハメを外せなくて嫌なタイプなのだとか。そういう人望という点でいい声が聞こえてこないのは毎度のことですね。本来、優しさと厳しさというのはコインの裏表どちらが欠けても、成立しないものなんですけどね。

日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質は八百長ではなく、モンゴル人差別と親方理事制<後編>

 

 続きです。シリーズ③を書き直したように、これも次の貴乃花の話を書いたらまたまとめ直すかもしれません。暴行事件の解説という視点以外に、相撲協会という組織の問題、貴乃花親方の問題、マスコミの問題。この三つでまとめ直したほうがわかりやすく読みやすくなるかもしれないなぁと今更ながらに思ったので、んでこの白鵬の話みたいに再編したほうがいいかも…と迷いつつとりあえず後編です。そういう思いついたことを列挙してるだけ感が否めないのは勘弁してつかあさい。

 

※追記、本文で論じている親方=理事制こそが問題という話、他に誰もしていないのかな?と気になったので、ちょっとググったら見つかりました。先行文献的な感じでご紹介しておきます。決してこれを読んで意見をパクったわけではないですよ(笑)。

 

要約・お品書き

○力士達のことを考える、力士の地位向上に熱心な白鵬
○力士会=選手会が機能していない異常状態
力士のための改革の要望を潰した貴乃花巡業部長
○協会が貴乃花理事の正当な訴えを潰したというなら、貴乃花理事も力士会の主張を不当に潰している
○力士としてのピラミッドの序列の上に親方のピラミッドが存在する二重の徒弟制構造となっている相撲界
○徒弟制の論理を振りかざす貴乃花親方では改革は絶対不可能
○正しかった「貴乃花巡業部長のもとでは巡業したくない」発言
○力士会はボイコットをしなくてはならない
○問題の本質、親方理事制―国籍要件は差別なのか?半分イエス・半分ノー
○親方理事制を解消して、海外国籍力士の親方の道を開くべき。年寄株制度も見直し・廃止すべき
帰化一代年寄白鵬の誕生=理事長白鵬の誕生。白鵬改革でしか相撲界は変われないという日本の恥
一代年寄白鵬をすぐに認めていれば、白鵬は理事長にはならなかったし、なれなかったはず
○現執行部・及び予備群には時代の変化に対応して政策を打ち出す能力自体がない


■力士の地位向上に邁進する白鵬力士会会長
 貴乃花親方が白鵬を嫌っているのは有名な話ですが、そのきっかけはいくつかあれど決定的なのはおそらく巡業での対立でしょう。*1―バスで白鵬を置き去りにしたり、ホテルを別にしたり大人気ないさまを見せているのは、巡業での衝突が原因のように思えます。
 白鵬は前述通り力士の地位向上・改善に熱心な力士。最近、力士たちに人間ドックを受けさせるようにしてほしいという要望を出しましたが、2015/12の時点で既に協会に力士の待遇改善の要望書を出していたんですね。トレーナーの充実や日程を減らしてその分ファンサービスをあてて補填するなど、とにかく現力士たちの巡業などのキツキツな過密スケジュールの改善を訴えたのですね。怪我が多い力士たちですが、本場所の厳しい日程以外にも巡業で酷使されているとなったら、そりゃ故障するに決まっている。それを改めようとするのは業界の人間ならば普通の発想でしょう。つい先程まで知りませんでした。さすが白鵬ですね。

■力士会=選手会がまるで機能していない異常性
 ところがそのまっとうな要求を八角理事長及び貴乃花理事は無視したわけですね*2。巡業による目先の収入・利益欲しさに聞き入れなかった。アホですね。気になって力士会の過去の改善要求案一覧をチェックしてみようと思って検索をかけたのですが、ググっても殆ど出てきませんでした。力士会と協会・執行部の交渉過程をチェックしたかったのですが、そういう交渉の歴史が存在しないようです…。
 力士会のHPすら存在しないようですね…。これは非常にまずいでしょう。八百長問題の発端となったのは、十両とそれ以下の力士の待遇が天と地ほど違うがゆえに八百長をする動機・問題の背景となったわけです。ということは力士会としても八百長防止策として、そこにメスをいれることを提案しなくてはいけない(勝敗に応じた給与ではなく、成績に応じて階級・地位が決まり、それに応じて給与が決まるという現行制度では尚更でしょう)。自分たちの力士としての権利確保以外にも公益性という観点から発言・行動していかないとまずい。にも関わらずこれでは相撲界が良い方向に変わっていくとは思えない。改革の力学に力士というアクターが欠如しているわけですからね…。
 朝青龍が過去に給与の向上を訴えたことと、大麻事件で尿検査のやり方が曖昧なのでその改善をして欲しいくらいしか他には見つかりませんでした。また、最近の大砂嵐の事件で過去に力士も運転できるようにして欲しいという要望があったことくらいですね、調べた限り。
 そういうことはともかくとして、白鵬がやったように相撲界のために抜本的に力士のためになるようなことを力士会はどんどん提案・提言していかなければならない。
 白鵬が提言したことは一見些細な事に思えますが、力士会として初めてまっとうな改革を訴えるという非常に画期的なことであり、相撲界の構造・歴史を大きく動かす重要な一歩といえるでしょう*3

■力士のための改革の要望を潰した貴乃花巡業部長
 この白鵬の態度・行動に比べ、巡業部長貴乃花理事の行動はどうだったのか?現役時代に力士会会長として、力士たちのために何か行動・発言したのでしょうか?おそらく何もしていないでしょう。これまで横綱が「何も文句を言わずに黙々と行動すること」が品格だと言われていたことを考えると間違いないでしょう。
 白鵬貴乃花の違いついでに、弟子・後進の教育というのもあるでしょうね。将来のために着々と内弟子、後輩の教育をして未来の白鵬部屋のための準備をしているのに対し、現役時代から後進の指導に無関心で、親方になってからも弟子の指導がろくにできず、新弟子自体入ってこなかった時代もあった貴乃花。とにかく横綱としての意識が強すぎて非常に偏狭なんですね、千代の富士もそうだった・プライドが強すぎて傲慢だったといいますし、そういうタイプの元横綱親方は少なくないのでしょう。

■協会が貴乃花理事の正当な訴えを潰したというなら、貴乃花理事も力士会の主張を不当に潰している
 現役時代何もしてこなかったどころか、貴乃花巡業部長はこの白鵬のまともな訴えに対して、「協会上層部は師匠だと思え」ということで跳ね付けました。「たかが選手が」発言を彷彿とさせる暴言ですね。力士たちのために何が出来るか、何をすることが一番いいのか、一緒になって考えよう。話し合おうというのではなく、協会に逆らうこと&師匠の俺に逆らうことは許さん。これの一体どこが改革派なのでしょうか?執行部が貴乃花親方を不当に吊し上げた。彼の意見も聞かずに執行部に逆らうな!と貴乃花親方を抑圧したというのなら、貴乃花巡業部長が力士たちにやったことと何が違うのでしょうか?まるで同じではないですか。
 白鵬の訴えは至極まともなもの。しかし意見をされたこと、文句をつけられた事自体が貴乃花親方には気に入らなかったのでしょう。自分に逆らった「反逆行為」と捉えて「白鵬憎し!」となったと、まあそういう流れなのでしょう。偉大な日本人横綱の自分に逆らった「インチキ・偽物モンゴル人野郎」が!となった。憎いあまり「あの八百長クソ野郎!」と白鵬を否定することで、自分の行動・主張こそ正しいと、自己正当化したのでしょう。

■力士としてのピラミッドの序列の上に親方のピラミッドが存在する二重の徒弟制
 また、貴乃花理事の姿勢が問題なのは、「上層部を師匠と思え」発言・論理は、ギルド制・徒弟制の延長に基づく発想であるということです。例えば昔運動部では一年奴隷・三年天皇という考え方がありました。運動部の中学生が三年で天皇であっても、また高校に入って一年生になったらまた奴隷からスタートすることになります(流石に中学ではそういう思想はなくて、高校・大学のみだったのかな?)。新弟子から関取・横綱となって力士として頂点を極めたとしても、引退後親方として協会に入ったら、また再び一職員としてキャリアがゼロになってしまうのもこれと同じですね。新人親方として諸先輩親方・理事にペコペコしなくてはいけないわけですね。
 その上下関係自体が悪いことだとは言いませんが、ここで問題なのは、その論理を振りかざして「黙れ」の一言で済ませてしまう精神性ですね。当然運動部の高校一年生は中学三年生に対して先輩に値します。そこで中三が高一に逆らうことはありえません、普段あまり交流しないとはいっても高一>中三という序列が崩れることはありません。親方>横綱の関係も同じですね。横綱は力士としてのトップだとしても、協会職員の人間ではない。力士の上のピラミッドに所属する協会の人間・親方衆より序列が下になります。
 思うに、白鵬の審判部への疑問に対して、北の富士氏が子供でもわかるという同じ言葉を使って白鵬を批判したメンタリティも同じものでしょう。一力士が力士より上のピラミッドの協会・及び人間に意見を差し挟むこと事態がありえないというメンタリティがある(廃業した若乃花虎上氏ですら、白鵬の巡業部長が変わらないなら巡業に参加したくないという発言を力士が親方に文句をつけてはいけないというふうにコメントしていましたからね)。相談のやり方次第だと思いますが、今時運動部の学生でもそこまで極端なメンタリティはないでしょう。

■徒弟制の論理を振りかざす貴乃花親方では改革は絶対不可能
 かくも角界では徒弟制の身分秩序意識が強い。この徒弟制の論理が諸悪の根源となっている以上、完全に否定しないにせよ、その論理に強い違和感を抱いている人間でなければならない。貴乃花理事はその論理に強い違和感を抱いていて、なくさなければならないという持論の持ち主であるどころか、その論理を正統な権利を要求する力士会に対して振りかざした。また親方としても弟子に対して絶対的な存在として服従を要求するタイプに思えます*4。そんな思想を持つ貴乃花親方が改革を実現する、徒弟制をなくす方向に角界を持っていくことが出来るでしょうか?無論言うまでもなく不可能でしょう。
 ありえないと思いますが、それでも無理やり徒弟制を解体すると仮定しましょう。しかし人格は変わりませんから、師匠だから&上司だから俺に黙って従えなんていうメンタリティのままです。そんなトップが徒弟制を廃止したら組織はどうなるか?部下・目下の者の反発にあって、それを反乱と捉えてなお強烈に服従するように要求して、お互いが持論を引っ込めずに衝突する。あっという間に組織が混乱してにっちもさっちもいかなくなるのは目に見えていますね。

■正しかった「貴乃花巡業部長のもとでは巡業したくない」発言
 上述のような経緯を抑えてから振り返って見ると、白鵬が「貴乃花巡業部長のままなら、巡業に参加したくない」といったことはまるで違う意味を持ってくるわけですね。理事たちの中でも改革派として名高い貴乃花理事であるにもかかわらず、巡業部長として力士のことを考えた対応が取れる立場なのにも関わらず、力士たちのために何もせず、むしろ待遇改善要求を封殺した。そして今回また力士のことを無視して、横綱日馬富士を引退に追い込んだ。くだらない些細な揉め事を大事に発展させて、力士どころか角界全体を巻き込んだ騒動を引き起こした。これで力士会が反発しないほうがおかしいでしょう。*5

■力士会はボイコットをしなくてはならない
 力士会は自分たちの待遇改善のためにボイコットをしなくてはならないでしょうね。本場所をボイコットするとなると、相撲協会の存続に関わるので避けるべきでしょうが、待遇改善のため、巡業のあり方を変えるために巡業限定でボイコットをすべきだと思います(勧進元・ファンへの負の影響を最小限に抑えるために、相撲を取らない代わりに、サイン会や握手会に子どもたちの相撲大会などに参加するなど、ファンとの直接の触れ合いはむしろこれまで以上に増やすなどの対策を取ればいいかと思います)。
 モンゴル人は差別されている。それ故にモンゴル人力士で場所をボイコットしようという話もあったそうです。今の角界ではモンゴル人差別については鈍感なので、いきなりモンゴル人のボイコットでは失敗に終わる可能性も十分にあります。モンゴル人が差別を訴えるという点で、社会的な注目を集められても、どうなるか確証がない。今のようにモンゴル人は勝利至上主義で礼儀や品格ということがわかってない!日本文化を理解していない!なんていう因縁づけが大手を振ってまかり通る状況を鑑みるに、失敗するリスクが十分にある。そのリスクが大きすぎます。それ故にまずは力士全体の権利向上という枠組みでやるのが好ましいと思います。
 「力士会VS協会」という図式でワンクッション挟むことで、白鵬は力士や相撲界全体のことを考えて行動している立派な人物だという評判を勝ち取ることが出来る。そして次にモンゴル力士会が行動する際の観測気球にもなって、次の一手を読みやすくなる。今回の暴力事件のように、協会の異常な体質をPRしたほうが交渉を上手く進めやすいですし、それこそ今ヒーロー扱いする人が一定数いる貴乃花理事の異常性もPRできますからね。貴乃花理事は力士会の正統な訴えを一顧だにせず否定したわけですから。一度力士会でボイコットすれば、次はモンゴル人力士達がボイコット、しかも本場所でしようとしているぞという動きを見せるだけで、協会を動かせる・交渉できるようになるでしょうからね。ボイコットは伝家の宝刀ですが、なるべくなら抜きたくない。交渉材料として見せるだけにした方がいいのです。頑なな態度を取り続ければ、相撲を見れない相撲ファンからも反発を買いますし、協会のメンツも潰して上層部にアンチ・敵を作ってしまうでしょうからね。

■問題の本質、親方理事制―国籍要件は差別か?半分イエス
 さて、オチのために最後まで引っ張ってきた海外国籍の人間を親方にするのはどうか?というテーマを話して終わりたいと思います。
 確かに、日本国籍を持たないからと言って親方になれないのはおかしい。しかし、特殊公益法人である以上に、相撲というのは日本の国技ではないものの、特別な地位を占めるスポーツ・興行であり、歴史を持つ伝統芸能。である以上、日本国籍を持たない人間を協会に参画させないのは当然なのでは?力士・競技者としての参加まではギリギリの許容範囲であるが、それ以上譲歩はできないという協会の人間の感覚は正常の範囲にあるのでは?―そんな感想を持たれた方も少なからずいるはずです。その当然の疑問について応えたいと思います。
 白鵬帰化をせずに一代年寄として相撲協会に残りたいという報道、そしてその後帰化をして相撲協会に残る意向だという報道が過去にありました。この報道を受けて、日本国籍がなければ親方になれない。これは民族差別であり、訴えられれば相撲協会は敗訴するのではないか?という弁護士の方の指摘も見ました。実際に訴えた場合どうなるかはさておき、民族差別であると考える人は少なからずいることでしょう。果たしてどう見なすべきか?
 これについては、個人的に民族差別に値すると考えます。ただし、それは親方という職能においてのみです。親方という力士の育成及び部屋を経営するという役割であれば、そこに国籍を保有しているかどうかという条件は無関係なはずだからです。以前触れたように、日本(相撲)文化・伝統を理解しているかいないかという点がポイントになるのならば、それこそ全親方の理解度をテストして合格した者にのみ免許を発行するという免許制にすればいいだけですからね。
 親方においてのみ違反すると書いたとおり、理事という職能においては外国籍保持者を排除しても違反しないと考えます。理事というのは言うまでもなく経営参画者であり、意志決定の最高責任者の一人。特殊公益法人である特別な団体・相撲協会において、日本人以外のトップを入れていいかと言われれば、100%ノーとは言わないまでも、やはり海外国籍の経営者を参画させるのはまずいと判断されるのもやむなしでしょう。

■親方理事制を解消して、海外国籍力士の親方の道を開くべき。年寄株制度も見直し・廃止すべき
 親方理事制こそ問題の本質と始めの方で指摘したように、親方しか協会の人間になれない・兼職するというシステムを採用しているからこそこういう歪なことになるのです。親方と協会組織の人間・職員を分離すれば、このような国籍がないから相撲界に残れないという問題は起こりえないはずなのです。
 そもそも親方(理事)になるために、日本国籍保持者でなければならないという規定が出来た事自体がおかしいのです。伝統と言いつつ、日本人しかいなかった昔にそんな規定があったはずありません。外国人力士を受け入れて成績を残した高見山が出た辺りに作られたものでしょう。しかも今に至るまで元外国籍力士の理事がいないことを考えても、一体何のために作ったのかと言わざるをえない制度です。
 曙は年寄株が手に入らず廃業。武蔵丸横綱だったので5年間は年寄・武蔵丸で、その後年寄株の関係で振分・大島・武蔵川と名前を三度変えました。貴乃花一代年寄であったことと、貴乃花の乱を起こして実力で理事のポストを奪いとったという事情を考えても、同時期横綱だった武蔵丸武蔵川親方が未だに理事になれていないのには違和感があります。本人にその意志があるない別として、本当に元外国籍力士が帰化しても理事になれるのか、理事にする意志があるのか疑問に感じます*6
 そもそもこんな規定を作らずとも、はじめから親方理事制を廃止して、親方は親方・理事は理事というふうに職能を分ければよかったのです。
 それをしなかった、できなかったのは、親方年寄株という制度故でしょう。厳密に言うと協会に残るためには国籍と年寄株が必要になります。年寄株保有しなければ日本人でも親方として協会に残ることが出来ないというシステムを採用するからこういう問題になっている。そういうシステムはおかしい!なくすべきだ!とこれまで誰も言ってこなかった。無論誰かしら言ってはいたのでしょうけど、そういう改革を実行しようとしなかった。その時点で相撲協会の成員だけで何の改革も出来るはずがないとわかるのです。昔は寿命が短かったから年寄株が足りないということがなかったという背景一つ見ても、まるで時代の変化について行けてないですからね。

帰化一代年寄白鵬の誕生=理事長白鵬の誕生。白鵬改革でしか相撲界は変われないという日本の恥
 白鵬は間違いなく一代年寄として残って相撲協会を変える方向に進んでいくでしょう。国籍さえクリアすればレジェンド白鵬の協会入りを阻む条件はありませんからね。で、そもそもの話になりますが、前述通り親方=理事であることを廃止してさえしまえば、白鵬が国籍を代えてまで相撲協会に残る必要性はありません。モンゴル人のまま一代年寄を認め、白鵬親方として白鵬部屋の経営をすることを認めてやればよかったわけです。
 白鵬は父の意向で、また将来のモンゴルでのビジネスチャンスや大統領の可能性もあって、国籍を代えたくなかったのですからね。白鵬帰化をするということは、実績を考えれば間違いなく、初の元海外出身理事の誕生&初の元海外出身理事長の誕生ということになる(そうならなければそれこそ今度こそ間違いなく差別ということで大問題になるでしょう)。
 そして相撲界にとって重要な、かつ決定的な改革が「日本人」以外の手によってなされることになるでしょう。本来日本人がすべきことを元モンゴル人が行う。日本人の無能さ・改革能力の欠如を世界に発信するというこれ以上ない恥さらしになるでしょう。

一代年寄白鵬をすぐに認めていれば、白鵬は理事長にはならなかったし、なれなかったはず
 そもそも白鵬・モンゴル人嫌いの人々にとっては、この理事長白鵬を阻みたいはず。白鵬を封じ込めるためにも一代年寄自体には国籍規定がなかったのですから、特例としてさっさと認めればよかった。モンゴルでの道と、協会での理事長の道という二つの選択肢があれば、白鵬はどちらか一つに絞らずモンゴルと相撲の二刀流を選んだはず。そういう中途半端な状況であれば、理事の道を選ぶのを出来る限り伸ばして帰化を先送りにする。その結果、武蔵川親方のように理事になるまでに時間がかかってしまって、キャリア不足で理事長になれないという可能性も出てくるわけです。
 特例が嫌なら親方理事制の廃止でも良い。国籍は将来的な変更でも可とすることにして、親方理事制を廃止してしまえば、モンゴル国籍の白鵬は親方止まりで理事にすらなることが出来ないのですから尚更です。反白鵬派・反モンゴル派はなぜそうしなかったのか?まるで理解できません。白鵬派・嫌白鵬派であるからこそ、白鵬一代年寄に祭り上げて白鵬を封じ込めるというのが最上の選択肢であったはず。何故そうしなかったのか、これが本当にわからない。
 年寄株の関係もあって、親方理事制が一朝一夕に廃止できないとしたら、一代年寄を認める代わりに二枚鑑札として現役力士でありながら部屋の親方となって弟子の育成を認める。ただし日本国籍のないものは理事にはなれないと規定を改めればいい。そういうことをしようという動きもなかった。

■現執行部・及び予備群には時代の変化に対応して政策を打ち出す能力自体がない
 つまり、根本的に将来起こりうる出来事を予想して、それに対して自分たちで有効な手を打つ・変化に対する改革をするとかそういう基本的なことがそもそも出来ないのでしょうね。現実の相撲と同じ、「変化は良くない」という言葉でごまかすのでしょうね。外国人力士の受け入れなど全部なし崩し、そういうことが起こったから、まあしょうがないかくらいの感じに思えます。一度そうなったら、以後どういう風に相撲界が変化していくかを考えられないようです。力士の大型化による相撲内容の劣化・つまらない押し相撲ばかりといった昨今の土俵を見れば一目瞭然ですね。
 そもそも世界中から力士を受け入れれば、日本人が少数になることすら予測できたでしょう。その対策が各部屋一人までという人員制限ですからね。プロ野球の1チーム4人までじゃないんですから…。チームスポーツでもないのに何でしょうか、その変な制限は…。
 貴乃花親方が主張するモンゴル互助会による八百長なんて言う主張も、その最たるもので、特定の国・出身者が増えれば、その派閥からお互い有利なように星の回し合いを進めていくのは当たり前ではないですか。ご本人は兄の横綱昇進がかかった一番で手を抜いたことを非常に悔いているらしいですけど、あの一番で手を抜いたことを責める人は殆どいないでしょう。兄が、自分の所属する部屋から横綱が出るという背景があって、本気を出して勝ちに行く力士がいると考えるほうがおかしい。自分が負けることで身内・仲間の利益となって、自分自身の派閥も得をするという制度・ルールを採用したらそうなるに決まってます。
 そういうことが実際に起こりうるにも関わらず、システム・ルールを改善しなければ「不正」していいですよ、ご自由にどうぞと言っているのと同じ。そういうことをするな!卑怯だ!なんて主張するほうがおかしい。モンゴル人力士だけが急激に増えてしまえばそういうことが起こりうるのが当たり前。彼らが異人として排除・不利益を被っているのなら尚当たり前、それに応じてそういうことが出来ないシステムに改めないで、文句を言う方がおかしい。相撲という勝負が一見しただけで手を抜いているかどうかわかりにくく、格下が格上に勝ちやすい競技であるのならば尚更です。
 一部屋1人までなんていう縛りを設けているからおかしいのです。一定数を超えれば、それを緩めてそれこそ白鵬部屋を作って、強制的にモンゴル人力士を集めるようにする。モンゴル人しかいないモンゴル部屋を作ればいいだけの話。言うまでもなく同じ部屋の力士は本場所で対戦しないのですから。そうすればモンゴル人内部で星の回し合いなど絶対不可能になります。疑わしいというのならそう主張すればいいのです。
 そもそもかつて貴乃花親方が所属していた二子山部屋藤島部屋では貴乃花若乃花貴ノ浪貴闘力安芸乃島といった横綱大関・関脇という上位層の力士がひしめき合っていました。彼らが星の回し合いをしないガチンコ力士・ガチンコ部屋だったとしても、この部屋に所属する力士は上位の強豪力士4人と当たらなくていいという恩恵をうけることになる。これは果たしてフェアといえるのか?単純計算で他の部屋の力士が15日間上位力士と当たるのに対し、彼らは他4名と当たらないのですから11日間で済む。残りの4日は相対的に弱い力士との対戦が組まれることになる。これはルールを利用した八百長・不正と言えないのか?横綱大関が同一部屋から複数出たら強制的に移籍する制度が何故存在しないのか?
 また、自分の部屋の力士が優勝するのと他の部屋の力士が優勝するのどちらが嬉しいか?人情として自分の部屋の力士が勝つように終盤戦うでしょう。それはいいのか?ルール上もちろん許されたことですが、それはフェアな競争と言えるでしょうか?そういうことも含めて議論されてこなかったのがおかしいのです。
 本番直前まで割を発表しない。誰と当たるかわからないようにするということでも八百長を防ぐことは可能でしょうね。何時、何番目頃に取り組みがあるぞという大体の時間だけで誰とやるかは教えないとかもありうるでしょう。そういうシステムなら直前まで取り組みがわからない以上、同じ部屋での星の回し合いも成立しづらくなるので、同部屋対決を組むことも可能になるでしょう。
 話が少しそれましたが要するに対策はいくらでも取りうるし、抜本的な改革案はいくらでもあるのです。そういう根本的な背景を改める取り組みをせずして、~をするな!~がおかしい!などとモンゴル勢に文句をつけること自体がおかしいのです。
 今度こそ貴乃花論を語ってラストにしたい…。でもメディアこそ本当の犯人みたいなのも書きたいし…。次で終わるのか…→続く。

 ※おまけ、ギルド制・徒弟制の解体によって閉鎖的・陰湿的な体罰・暴力事件はなくせても、それに伴う別の問題が発生します。徒弟制がなくなるということは身内の結束・鉄の規律のようなものが消えることを意味します。常識のない弟子の歯止め・躾という名のストッパーがなくなりますので、人間的に屑なタイプの力士が起こす不祥事・事件や犯罪は増えるでしょう。良い悪いは置いといて、体罰・体育会的な上下関係の崩壊は、こういう程度の低い人間に対する抑圧機能をもなくすことを意味します。規律を緩め、それに伴う力士が問題を起こしやすくなる。マナーが悪くなることもまた抑えておく必要があるでしょうね。
 親方・兄弟子による部屋内部での暴行はなくなった、しかし親方や兄弟子の監視の目がなくなり、お互いまるで干渉しなくなった結果、ふしだらな弟子がトンデモナイ迷惑をかけることになるのは想像するに難くないでしょうね。その場合、やはりすぐに警察に引き渡すという手しか残されていないので、結果力士の不祥事は比較にならないほど増えるでしょう。人格ではなく力士≒アスリートとしての素質で弟子を取るのですからね。運動能力は異常にあるのにもかかわらず、人格がクソでトラブルを異常に起こすという手合いはスポーツ界で枚挙にいとまがないですからね。
 協会に出来ることは不祥事隠し以外には、特別な機関設立による力士の日常を監視。逐一怪しい行動を報告すること。むしろ率先して身内の犯罪を垂れ込むことにほかならないです。協会が自ら身内の犯罪報告をした時、その時にきちんと力士の犯罪を可視化出来るようになったと喜ぶのが正常な反応。そのときに正常な反応のまま報道されるのであれば良いのですが…。また角界で不祥事が~みたいなバカな反応が起こらないか今から心配になりますね。今回の暴力事件の本質に、メディアの問題もじつはあるんですよね…。これも書かなくちゃいけなくなってもううんざりしてます(´-ω-`)。書いても書いても終わらない…。

アイキャッチ用画像

*1:※参照―モンゴル八百長告発の裏に、貴乃花親方周辺からのリーク|LITERA

*2:※参照―貴乃花親方が巡業部長に 2年後の理事長戦見据えた布石か│NEWSポストセブン

*3:調べきれなかったので、流石に初めてではない可能性は十分あります。しかしそれをおいても今年また改善提案・要望書を出すなど継続して動いているので、その画期的な姿勢、偉大なことをやっていることにおいて変わりはありません

*4:協会から各部屋に誓約書の提出が命じられ、それに貴乃花部屋だけが最後まで提出しなかった。提出を拒んだという事件がありました。肖像権=部屋に所属する力士の収入が一旦協会に入るのが嫌だった。というか現役時代人気力士だった貴乃花自身の肖像権・権利を手放したくないからゴネていたんだろうと思っていましたが、そこには力士の待遇について譲れない項目があったことだと思えます。というのは、親方が力士を雇うという従来の構造ではなく、協会が雇ったのち改めて親方に育成を委託するという構造に変わったこと。その一点が彼には絶対に譲れなかったのでしょう。親方・師匠=力士・弟子のパワーバランスを崩されることを嫌ったのでしょう。これが単なる個人的推測にとどまらないのは、次回書く貴乃花部屋のトラブル云々で詳述したいと思います

*5:暴行事件は些細な問題ではない!という一般人・社会の感覚はここでは問題ではありません、角界の慣習から言うと揉め事は大事にはしないものなのですからね。また今回の事件を大事にすべきかどうかという点はかなり疑問が残る話です。それはまた次回に詳述。

*6:日常会話においては問題のないレベルで日本語を操れるが、読み書きができない。故に高見山武蔵丸も文書を取り扱う仕事に熱心でない・やりたがらないという可能性ももちろんありえますけどね