てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

中国が普通の大国になる日/日本実業出版社

中国が普通の大国になる日/日本実業出版社

¥1,575 Amazon.co.jp

 柯隆氏の『中国が普通の大国になる日』です。メモがてらに。

 p14米が5%の人口が富の60%を持つのに対し、中国は1%が41%持つ。都市生活者の給与は農村住民の3倍。国有企業幹部の平均給与は一般サラリーマンの128倍。格差が暴動を生んでる。

 p16経済のパイを拡大させることには成功したけれども、富の再分配という機能が全く機能していない。富の集中と裏取引で、チェック機能が働かない。その結果が暴動、中国発表で年間10万件だが、アメリカ情報機関は15万件としている。

 p20日本企業の中国との付き合い方について。二万五千社ある中、feasibility study=事前にどれだけ実現可能かの調査があまい。よって赤字に陥っている。バランスシートを健全化すること。赤字部門を斬る、M&Aなどの事業再編でコンパクトな経営をすること。安定して黒字に出来るとは限らない。安定するにはブランド力が必要。

 p24胡錦濤の03~13年の政治は実は政治改革をやらなかった失われた十年。前政権の時代にある程度市場経済化のプランは整っていた。故に胡錦濤がすべきだったのは政治改革。実際に行われず、国有企業の改革も停滞。五輪・万博や成長に支えられたが、経済安定期に改革を先送りしたツケは大きい。

  p28リーダーはロマンチスト+リアリストの組み合わせが好ましく、胡錦濤ペシミスト温家宝がロマンチストだった。その点あまり良くない組み合わせだった(この点ちょっとイミフというかまあどうでもいい話なのでパス)。

 p31急激な政治改革は不可能。国民による監視機能、言論・報道の自由からそれが進むどころか遅れている。司法も独立してチェックできていないから権力の腐敗に歯止めをかけられない。また税金を多く取るのに所得の再分配機能が充分でない。累進課税でないから資産を持っている富裕層に税が殆どかからない。資産課税をするとなると国家主席の資産までチェックが入るので難しい。党のトップが集まって資産の殆どを寄付すると決断すればいいような気がするけどなぁ…

 p40民営企業が平均3年6ヵ月しかもたない。商業銀行から融資を受けられず、年60%というアングラマネーになる。当然やってくのが難しい。大型プロジェクトも民営が排除されたりして民営が育ちにくい。これでは一国の経済に重要な中小企業が育たない。民営企業が育たなければ経済の裾野が広がっていかない。前政権で民営化を進めたのに対し、胡錦濤政権で電気・石油・鉄鋼などを中心とした自然独占的産業を中心に国営の独占が進んでいった。これは海外で事業展開の強みもあるが、国営ゆえ非効率になる。

 p42民営化を進めて国営企業を減らしていかなくてはならないのに、「国進民退」=逆に国営化が進んでいる。

 p43中国は間接金融が主流で四大国営メガバンクが預金の五割を占める寡占状態になっている。流通株も30%程度で買収の心配がなくチェックが働かない。規制で競争もない状態。2012/7の時点で銀行貸出金利は6%で、預金金利は3%で、金融常識からするととても高い利ザヤを稼いでいる。本来4%はないとおかしい。預金者の金を国営銀行が持って行ってるのと同じ。このような不健全な体制だから、なかなか自由化に踏み切れない。自由化したら銀行が大量に破綻するおそれがある。

 p47リーマンショック以来株式市場は停滞している。国営が殆どで、ディスクローズが進んでいないために投資家が判断を下せないこと。株価操縦、市場介入が強すぎること。間接金融と並んで国家の第二の財政という感覚が抜けていない。

 p51前指導者が存命だと思い切った改革ができない。97年に鄧小平が死ななかったら、江沢民も98年の中小企業払い下げの改革も出来なかっただろう。これはかなりやりやすい部類で、胡錦濤にとっては美味しいところだけやってズルいと感じたはず。習近平も思い切った改革を初期は出来ない。彼は胡錦濤が出来なかった政治改革に手を付けなくてはならない。

 p55政治改革が胡錦濤の10年で行われなかったので、将来の飛躍へのチャンスは失われた。中国の政治は権力の同心円構造であり、その最も遠いところにいるのが農民。農民は一揆/革命に向かう。

 p58毛沢東は皇帝化し資本主義のような「失敗→検証→修正」ができなかった。そして未だ封建主義のまま。

 p60封建主義社会で権力が同族に継承されるから、その同心円の外側にいる農民は不平不満を抱く。すすめるべき言論の自由は、これを恐れて逆に後退した。それで安定しない、政治改革をすすめるべし。

 p65鄧小平が任期を導入したのは素晴らしいが、リーダー選出が密室になっている=パワーゲームだ。カリスマ性ある鄧小平が指名したリーダーという正当性がこれまでのリーダーにはあったが、習近平にはそれがない。この正当性の無さは政治リスクになる。胡錦濤江沢民二人の前指導者の意向を伺わなくてはならず、現指導者のカリスマ性低下はより深刻になる。(江沢民の病死がひとつのポイントか!?)

 p73パワーバランスは、共青団7の太子党3といったところ。胡錦濤の影響力が強く残る。中央政治局常務委員に胡錦濤色が強まれば、彼の意向がかなり反映される。5年後の二期目までかなり裁量権が小さくなるだろう。(個人的には彼は自己主張しない。ただし自己の集団は守るという感じに見える)

 p79共産主義という大義・イデオロギーが不在で、共産党の求心力は揺るがざるをえない。王立軍の亡命未遂事件に薄煕来の解任劇と不透明な政治失脚劇に人々は不信を感じている。活動家陳光誠の身柄引渡しを見ても米と中の関係は想像以上に深い。中国リスクへの懸念以上に将来の民主化合意がある?

 中央政法委員会のトップ江沢民系の周永康が陳監視の責任者だった。このため江沢民との権力闘争で、この機会を利用してアメリカと協力するという図式だったのかもしれない。こういう政治事件は今後も起こり、重大な事件の予兆になるかも。

 p86全人代閉幕の記者会見で温家宝が政治改革・民主主義を主張。マスコミに向けて話したことはあったが、国内に向かって主張するのは初めて。実務は習近平に、後ろで胡錦濤たちが政治改革をするというサインかもしれない。

 p88末端の民主化は時間がかかるので、トップの改革から。3000人の全人代は議会として機能せず実質9人の常務委員が動かしている。全人代を単なるビッグパーティーにしないために、兼務になっているのを止めて地元の声をちゃんと反映させるようにする。国会機能を備えさせるようにする。複数政党制は共産党を左派・中道派・右派など3つくらいに割って、そこから複数政党制に発展させていくといい。まずは共産党民主化から。

 p96毛沢東の対米戦争のプランで「三線建設」があり、そのため内陸部に産業基盤があるところはある。その他で産業化が進まないのが①交通インフラ②水資源。①は設備投資すればいいが、産業用の水が確保できないとどうにもならない。結果沿岸部へ人材流出。西部大開発も事態を根本的に変えられなかった。

 p103少数民族補助金があるが、漢民族でさえ分配機能が働いてないのに少数民族には言うまでもない。十分に行き届かないから不満が高まる。貧困・低所得の問題は自治では解決しない。殆ど領土・領海問題で解決は難しい。ちなみに領土問題をめぐって中国が戦争をするかもという疑念は成立しない

 沿岸部の都市設計を見ればわかるが戦争に対するリスクマネジメントがなされていないのである。前提からそれを考えていないのだ。戦闘機のミサイル一発で機能はマヒするし、巨大コンテナヤードを作り、海上部に25キロに渡る東海大橋で輸送するがこれも一発でパアになる。戦争という手段はありえない。

 結局少数民族問題解決には社会改革を進めて経済的に豊かにして、自由な社会を作るしかない。独立をして厳しくなるよりも豊かな道を選ぶようにして解決するしかない。

 p108モンゴルは草原で隠れるところがなく羊の放牧で豊か。だがチベットウイグルは違う。山と砂漠という環境でテロの慢性化がある。

 p121BRICsに続いてネクスト11と世界的な供給過剰状態、これで中国の成長も止まるか?また賃金上昇の圧力も大きい。農村出身は農民よりマシと耐えられるが、そうでない世代は何故都市より貧しいのかと我慢出来ない。また05/7以来人民元は25%切り上がり、通貨リスクが加わった。

 人件費に人民元上昇という要素で中国のsustainabilityは困難。成長を続けるには産業構造の転換が必要。生産性や資源効率を高め、内需拡大が必要。中央が地方にそれを進めろといっても、せっかく誘致してきてかつ大量の雇用を生む労働集約型産業をキレるはずがない。

 p130大量生産・労働集約型を始めたのは香港に近かった広東省。人件費などの様々なコストが上昇して移転圧力が高まり、次に何で食っていくべきか深刻な課題になっている。そこでローマ・クラブの「成長の限界」からGNH幸福度指数に目を向けている(成長を諦めた国が導入してるような…?)。

  <余談>日本がGNH=Gross National Happinesなんて言うものを導入しようというのは本当の豊かさを問い直そう!なんていう本質に目を向け始めたのではなく、これ以上経済成長=改革されると既得権益壊されちゃうから、こっちでごまかしとけ!っていう気がしないでもない。

 GNHという指標を導入しても、広東省は昔とメンタリティは変わっていない。知的財産権の保護を進め、付加価値の高い商品・サービスを生み出すべきなのだが進んでいない。

 p133日本の3/11の影響を受けて原発の許認可を全部止めた。沿岸部はともかく内陸部は万一の炉心冷却ができないために中止。よって中国でもエネルギー問題は深刻化する。エネルギー効率の改善が課題になる。未だに70%を石炭に頼っている。しかも質が悪く、酸性雨の原因となる。昨今注目されているシェールガスの埋蔵量が豊富なのでそちらに進むだろう。成長でエネルギー効率に目が向いていない。深刻化する前に対処すべし。

 p138中国にはブランドがない。研究開発なくしてブランド力なし。知的財産権が保護されないからこうなってしまう。日本に学んで産業構造転換政策を進めるべし。一次産業がGDPの11%で雇用が44%、第二次産業だと比率は44%の20%と真逆。一次産業には従事者が多くても生む富、金額は低い。

 農業では金にならない、工業はオートマティックが進んで他人が要らなくなる。つまりは第三次産業しかない。これは規模の産業、日本の運送会社のように大規模化して効率化が図られなければならない。中国の運送会社は1社あたりトラック3.5台というレベル。ネットはクラウド=データセンターが重要。

 ところが高度な情報処理をするデータセンターが少ない。今後このようなサービス産業を育成してそこに雇用を吸収し、格差を減らしsustainabilityを達成させていくべし。内需拡大のために社会保障の整備と労働組合の容認ということが不可欠。

 p150 2015年から人口減少社会になる。男女比のバランスも崩れており、太平天国の乱のように嫁がいない若者が爆発するおそれがある。

 p161先進国は一人あたりGDP3万ドルを超えて高齢化社会に突入したが、中国は未だ5000ドル程度。一万ドル程度になれば御の字だろう。社会に富が蓄積されていない時点での高齢化は危険。

 移民制度にしても単純に解決する問題ではない。ゆるやかな成長を維持しない限り、安定は非常に難しい。労働生産性を引き上げ無くてはならないが、資本集約型産業にふさわしい教育は年1万5千~2万ドル必要。現状の5千ドルは中卒がやっと、高卒なら十分という段階。(結局、かなり積んでると言える)

 p176朱鎔基が残した、為替レート&資本取引の自由という課題が未だに残っている。

 p184為替操作国などの指定が行われそうな米の圧力が高まるに応じてレートを切り上げてきた。

 p187人民元の自由化=金利の自由化=金融改革につながるから、前述の国有銀行の利権に抵触してそれが出来ない。

 p189ちょうど財政投融資で日本の政治家が実力を発揮したのと同じ構造になっている。権力だから銀行への影響力を手放したくない。よって欧米の圧力が強っても、目先の切り上げでごまかしていく可能性が高い。

 p191もう一つ人民元の国際化という問題がある。これは自由化とは全く別の話。通貨の国際化には2つの面がある。貿易の決済通貨と、資産運用の貯蓄通貨だ。米国債が外貨準備として利用されており貯蓄通貨としても機能している。対照的に日本はそうではない。人民元は既に近隣との貿易通貨としては機能している。次にASEANや東アジア一帯の地域通貨を目指す。

 2012/06から日本円と人民元の直接取引が始まった。それまではドルを通じて交換していた。金融機能はシンガポールや香港のほうが大きいが、中国に進出している日本企業の影響を考えると東京の取引もまた意味が大きい。また人民元の国際化は通貨協定、通貨危機を防ぐという意味合いもある。

 あと日本もブランド力やんないと、技術者上がりの人が上にいるからいいものを作ることに目が行き過ぎてるってのがあったかな。テキトーに『中国が普通の大国になる日』をまとめ終わりました。需要もないのに(^ ^;)。

 なかなかポイントを抑えた良書ではないでしょうかね?中国を論じる上で読むと理解が深まるかと思います。