てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

「強制連行」とは何か?

続きです。

 国際法には戦争に対するルールが決まっています。戦争をする際にお互いの兵士と兵士が交戦すること、つまり民間人を攻撃してはいけないことが規定されています。というのはドイツ三十年戦争で人口の3分の1が死ぬという惨禍を招いたため。戦争の被害を最小化するために民間人に対する攻撃を禁止するという決まりができました。

 国際法の初期においては時代的背景もあって、そこまで厳格になんとしても守らなくてはならない!という規範はそこまで育ていませんでしたが、時代が経って現代に近づくにつれ、より厳格に守っていこう!という意識が高まっているという傾向はあると言えます。少なくとも守れる領域、ルール化をできるかぎり増やしていこうという意識は欧州など中心にあるといっていいでしょう。

 民間人を攻撃してはいけないということは言うまでもなく、民間人に深刻な影響を与えかねない兵器の使用も禁止されるわけです。バイオ・生物兵器BC兵器が国際的に非難が高まるのもそのためですね。ベトナム戦争における枯葉剤・地雷などもまたそうですね。

 略奪・強姦など言うまでもなく犯罪です。これらは戦時中に発生するゆえに戦争犯罪と言われます(※)。本来、戦勝国・戦敗国関係なく戦争犯罪は裁かれなくてはなりませんが、現代の国際社会ではそうなってはいません。戦勝国のそれは裁かれないままに終わっています。これは国際政治の重大問題といえるでしょう。特にアメリカがイラク戦争において、東京裁判の再現のような形で戦敗国を裁きにかけたことは国際法体系を揺るがしかねない暴挙と言っていいでしょう。

 (※その他捕虜に対する取り扱い等様々な規定があります。それを無視するのも言うまでもなく戦争犯罪です。ソ連のシベリア抑留などが有名ですね)

 英米は知らず知らずのうちに国際法を自己の法のように書き換える、自己の正義と一致させてしまうとはよく言われることですが、どう考えても勝てば官軍で勝者の犯罪が許容されてしまうので国際秩序・正義・法は保てません。これをなんとかしなくては世界の安定・平和などありえないことは言うまでもないでしょう。

【今こそ必要な「従軍慰安婦制度」】

 その当時必要だったのは誰が見てもわかる―ではなく、戦争犯罪を減らすために公娼制度を整備するのは文明国の責務と言っていいでしょう。むしろ現代の特に米軍は絶対に整備しなくてはならない制度です。自らの倫理、性規範に反するからなど綺麗事を言っていないで、戦時犯罪を最小限に抑止するために公娼制度を整備せよ!同盟国の政治家ならアメリカにこう直言すべきです。風俗制度があるから、日本は売春が合法化されているから―ではありません。自国の軍隊の不始末を取り締まるために自分たちでしっかり対策を取りなさいと諫言すべき問題なのです。

 そういうことが恥だ、暴言だと感じるのならば、そう言われないように徹底的に兵士を取り締まる。米軍の規律は最高だと称賛されるくらい綱紀粛正をしっかりする。それをしないで何を言ってるのか?としか言えません。北方謙三バリにフーゾク行ってこいと橋下に言われても自業自得としか言い用がありません。

 この問題は結局地位協定不平等条約にも繋がりますが、米兵犯罪を日本裁判所で裁けない、罪も軽いなどふざけるなとしか言いようがありません(※)。なぜ戦後70年近くなっても未だに戦時占領時代の無意味な米軍優遇が続くのか、しかも犯罪まで免責されるのか?これに怒りを覚えない日本人はいないでしょう。橋下はそこを直言すべきであり、かつアメリカに謝罪するなど結局何のための発言だったのか意味がわからないです。沖縄・日本のための発言であるなら、そのようにアメリカの非道性・違法性を糺すべきだったでしょう。

 (※ようやく最近は流れが変わってきて、米兵犯罪も日本裁判所に引き渡されることが多くなりました。ただそれでも米軍を通さないといけないという構造は不変ですし、特別な事情があるといってはねのけられる可能性がなくなったわけではありません。また同時に日本の検察に引き渡すとき拷問(自白強要)が、日本の裁判が著しく遅れているという理由も米側が引渡しをためらう理由であることを我々は記憶にとどめておくことだと記しておきます)

 己が政治家ならな、そちらがこの問題に真剣に取り組まないなら、勝手に犯罪者を、米兵を捕まえて処刑するぞと言います。それくらいの覚悟がなくて一体何を守るつもりなのでしょうか?「保守」が聞いて呆れます(同時に司法の後進性についても発言して、その改善を訴えますが。そうしないと公平性・公正性が保てませんからね)。

公娼制度の前提は良い物】

 このようなことからわかるように、従軍慰安婦制度を整備せず統治や戦争を行うのならば必ず現地国とトラブルを引き起こす。特に米兵のように規範が低い、供給源から自ずと質の低い兵士が作り出されるような国は、そうなることがわかりきっているわけです。

 文明国、つまり戦時犯罪を最小化する努力を図ろうとする国ならば、公娼制度を整備して、現地で駐留している軍隊の性犯罪を最小限化にする努力を怠ってはならない。これを持ってしてもソ連や米というのは戦争犯罪を放置してきた国として、非難されるべきであり、謝罪・賠償をしなくてはならないことは論をまたないことです。橋下の言う、「他国もこの問題に向きあうべきだ」ということはまこと至極正論と言えましょう。

 日本のみが、この問題において謝罪と賠償をしっかり行なっている先進的な国であるのですから、この点をもっとアピールしないといけないでしょう。同時に他国のその姿勢・態度は「野蛮」極まるものとして糾弾しなくてはいけないことです。

 この問題の基本構造は日本の犯罪の性質はさほど酷くない、かつ日本は謝罪・賠償を行なっているのに対し、他戦勝国ははるかに悪質であったのにもかかわらず謝罪・賠償をしていないということなのです。ですから、日本としては日本を見習えと言わなくてはならないのは当然のことであり、かつ世界的機構、特に国連などのような機関が「日本を見習え!」というような流れを作らなくてはならないのです。

 ところが「公人は慰安婦sex slaveの否定をする発言をするな」など、頓珍漢なことを言っているように、この問題の本質・基本構造自体まるで理解していません。国連の無能さに、日本外交の発信力の低さを白日のもとに晒した事件といえるでしょう(まあ、元から知ってたっていう人がほとんどですが。つい最近、日本は人権先進国!(`・ω・´) キリッなんて発言して冷笑を浴びた人間がいるくらいですからね…)

【日本メディアの無責任な慰安婦制度叩き】

 また、日本は戦争はともかく今後中東・アフリカなどにPKOを展開するでしょう。かつ、安倍・橋下らが9条改正を訴えているということは、彼らの政治スタンスから言って日米同盟を理由に戦争参加することは当然視野に入っているでしょう。しからば、日本軍を海外派兵するとき、短期的ならばともかく長期的派兵となれば、現地女性に暴行事件を引き起こさないとも限らない。そうである以上、公娼制度は確実にテーマとして上がってきます。公娼制度を整備せずして、海外派兵することこそ、女性差別・女性の人権を蹂躙することになるのではないか?

 今回の出来事で、慰安婦制度を否定する流れができてしまったが、海外派兵時に日本兵による性犯罪が発生したら一体誰が責任をとるのでしょうか?極めて不可思議な論理状況になっていると言えましょう。

 今の日本批判の流れは、公娼制度=女性差別!といって断罪する悪しき流れを作り出しています。この流れが生み出すものは米軍の公娼制度整備を当然否定するものであり、この結果中東における米軍の性犯罪が高まりこそすれ、それを防止する流れに行かないのは言うまでもありません。

 もし、米軍の女性への性犯罪を抑止したいのであれば、米の治安維持作戦や占領政策を上手く進めたいのであればこれを国連などが整備せよ!と提唱しなくてはいけないでしょう。ところが、そうならない流れを形成していますから、結果的に現地女性の人権侵害は止まらない。

 理念と現実のバランスは学問のテーマでありますが、事実と当為を区別せずに、抽象的な理想論をぶちかまして結局一番現実で苦しんでいる人達は見殺しにされるという現実を招くでしょう。日本だけでなく、欧米も事実と当為を区別できずにより悪い結果を招くという陥穽にハマるわけです。地獄の道は善意の石で敷き詰められている。善悪の意志に関係なく、良い結果・悪い結果が引き起こされる。故に価値判断は別として事実が一体どうなるか、どういう出来事が結果として予測されるかとしか学問は論ずべきではない!―というようなことをいったウェーバーの言葉が虚しく聞こえてくるほどの、マヌケっぷりですね。禁酒法や、平和運動によっていかなる結末が引き起こされたのか、歴史に学ばない愚か者どもと蔑ずみたくなる気分です。

【「強制連行」とは何か?】

 さて、件の強制連行でありますが、ではそもそも強制連行とは一体何なのかという話をしたいと思います。拉致や強姦が「強制連行」なのか?非常に誤解されているというか、国家犯罪・戦争犯罪・個人犯罪の観念が混同され誤解されているのでしょう。理解して語っている人はあまり見たことがありません。

 先ほど、基本的には慰安婦制度・公娼制度は良い物だと論じました。当然応用においては悪いものになりうるわけです。それを考えてみましょう、どういう条件において悪いものになるのか?

 表向きはきちんとした体裁・法制度を取ってはいるものの、実態の運用においてはそれが守られない。労基法やブラック企業のごとく悪環境に置かれるという事は往々にしてよくある話です。いかに、日本がきちんと整備して問題に取り組んできたとはいえ、現実の運用において実態が悪いもの、制度が形骸化しており、実態は奴隷制度であった!とするならば、当然監督責任が問われることになります。

 わかりやすく言うとタテマエの制度はきっちり整備したけど、本音ではそれを守る気はさらさらなく、無茶苦茶に取り扱っていた。権利を守る気などさらさらなく、表面上だけ取り繕ってごまかしていたということですね。

 問題の本質は実態、設けられた制度の運用がきちんと行われていたか、施行された法が守られていたのかどうかなんですね。よってあんまり「強制連行」の有無というのは正確な論点ではないんですよ、多くの人はこれを勘違いしていますね。

 どうして勘違いしてしまったかというと、日本軍が人狩りをして、無理やりさらってきて慰安婦にしたという作り話をした人間がいて、それが「強制連行」という話・テーマになってしまったからなんですね。この強制連行が常態化しているのであれば、日本の慰安婦制度はもう無茶苦茶だったといって間違いない。法も糞もあったもんじゃない。やってることはアメリカ・ソ連と一緒の野蛮国だといえます。ですからこの「強制連行」の有無というのが一時争点になったんですね。

 前述通り、そもそも成り手がいくらでもいた時代にそんなコトする動機・背景がありませんから、あっという間に否定されたわけです。嘘こけと。そこで以後この「強制連行」の有無が争点として語り継がれていくわけです。「国家が強制連行をしたことはない、そのような指示をした事実はない」というセリフを聞いたことがあるかと思います。

 ですから、今は未だ「強制連行」の史料が存在しないだけで、今後「強制連行」の史料が出てくるかもしれない!みたいな頓珍漢なことを言う人もいるわけです。まったく事の本質を理解していないといえますね。

【「強制連行」の史料など出てくるはずがない】

 近代国家とは官僚制です。官僚制というのは一番トップが存在して、そのトップが文章で指令を出すわけです。その命令に従って中くらいの部署、小の部署と命令が伝達されて実行されていきます。頂点の人間・組織が権限を持つ、ピラミッド型構造ですね、上の命令が絶対でそれに逆らうことは許されないようなシステムになっていますから、その文章を見れば実態・国家の意志は一目瞭然でわかるわけです。

 問題は日本国家として「強制連行」、つまり現地の女は征服した兵士のものだ!好き放題にしろ!なんていう方針を取っていたのかどうかということです。言うまでもなく、そういうことを国家として否定したわけです。そんなことは当たり前だということは前回にも述べました。

 国家としてそういう方針、戦争犯罪したら処断するぞ!ということは一応徹底されていたわけであり、そんななかで「強制連行」の史料=人狩り・拉致の命令を出したものなんかあるわけがない。

 なぜならそういう命令を出したらなら、膨大な資料・行政文章にその片鱗が必ず残りますからね。仮に戦後裁判で裁かれ恐れがあるから、責任追及を逃れるために中核の一部である命令文章を抹消したとしても、ジグソーパズルの空いたピースの部分のように、ぽっかりとここが抜けているとわかるわけです。

 A~B年のこの資料がないとなれば、どんな文章がなくなったかわかる。そしてその文章の性質は必ず類推できるわけです。前後から片鱗の根拠すら見いだせないということは推定有罪すら成り立ち得ないということです。そういう近代国家の基本構造もわかっていない人がちょっと多すぎですよね…。

戦争犯罪は二種類ある、組織犯罪と個人犯罪の違い】

 このことを指摘すると、そもそも違法行為を犯すときに文章に出すわけがないとかわけの分からない事を言う人がいますが、この「強制連行」の有無という問題は、国家の意志の問題なのだという論点がそもそもわかっていないとしか言いようがありません。戦争犯罪とは戦時中の個人的な犯罪(※)、兵士だったり方面責任者だったりが個人的に犯罪を犯すそれと、国家の意志トップの司令部が起こす組織的犯罪の二種類あります。その二種類において組織的犯罪が問題になるのです。

 (※近代法推定無罪、疑わしきは罰せずですから、戦時の混乱で犯罪者になりにくい!という背景が犯罪発生率を高めているわけです。また戦時中とあればその権限を利用して大儲け出来るという可能性もあるので高まるのは言うまでもないですね。否応なく戦時中の軍隊には巨大な権限が集まりますし、かつ戦勝の軍隊は名誉・栄光を手にして疑われにくい、裁きにくいという空気があれば尚更ですね)

 大体この問題において否定されているのは組織犯罪であって、個人犯罪ではない。個人犯罪は日本でもいくらでもあったでしょう。あれほど長期間戦争していて起こらなかったら奇跡ですから。そして日本の非道さを例証することとして、元日本兵の老人がよく告白をしていますが、あれは紛うことない「個人犯罪」なのです。犯罪者が自白しているのと変わらない。それをいくつ積み重ねても今回のような「強制連行」、「組織犯罪」とは何の関係もないことなのです。それをわかっているのでしょうか?全く次元・ベクトルの違う話を一緒くたにして証明しようとしている人を時折見かけますが、うんざりしますね。論点が全然わかっていない。

 戦争が終わると、講話条約・国交回復というプロセスに至って、そこで戦争犯罪についての事後処理がなされます。このような個人犯罪は一々裁いていたら終わらないので賠償は国家同士においてのみ認められています。もし補償・賠償をするならば、交戦国とその国の被害者ではなく、自国の基金など制度を通じて補償するようになっています。そうでないと終わらないからです。それが良い事悪い事であるとを問わず、そういう制度にしないと国際社会は機能しないからですね。言うまでもなく善悪で言ったら悪いことに決まっていますからね。

 ところが、上で取り上げた「組織犯罪」、国家の意志が介在した犯罪なら話は別です。一度条約を結んで処理したとはいえ、未だ事実が明らかになっていなかった、その件が盛り込まれていなかったなら、新事実として交渉すべきテーマになりますからね。要するに韓国側は「新事実の国家(組織)犯罪」として日本を訴えているわけです。そして日本側は「新事実」でもなければ国家の意志が関与した「組織犯罪」でもないとして、その訴えを取り下げているわけです。

 そういった基本構造を理解しないと何が一体どうなっているのかさっぱりわからなくなるので注意をしなくてはいけません。

 分量が長くなり、疲れてきたのでまたこの辺で一旦切ります。前後で文脈確認しなきゃアカンですし。というか、この話、需要あるのか?(^ ^;)