てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

東アジアの地域主義とか

 東アジア云々の本を読んでの思いつき。そういや地域主義・地域統合という昨今の動き・流行りというのは、国家主権尊重・不干渉原則を基本とする国際秩序に対して、その原則から発生する国家間の問題を解消・予防しようという試みにほかならないんだよね。未承認国家というテーマと通じる話ですね。

 「人権」という価値観・規範が重くなりつつある昨今では、主権尊重原則も、「人権」という大義名分の前では内政不干渉が往々にして通じないというのが昨今の流れ。グローバル化による国家を枠を超える動きを「脱領域」とすると、「人権」概念も「脱領域」的に通用する価値観といえる。

 「脱領域」という現代社会の新しい潮流をネグリとか「帝国」という観念で説明するのだけど、まああの人達はあれなんでおいといて、ISなどの過激派の行動もまさに「脱領域」的な動きといえる。「帝国」の力学に対向する「マルチチュード」という反作用が起こるというが、まさにこれもそうなんですよね(まあ「マルチチュード」何てわけわかんない言葉使わなくても「反帝国運動」でいいんですけどね)。

 主権国家という基本的な枠組みから逸脱した未承認国家然り、「イスラム」という価値観でカリフ統治の政府=非主権国家を作るISISといい、まあ通底する力学は非常に近しいわけで。前者はスキマ産業的に生き残るという可能性が大きいですが、後者はまあ無理でしょうね。国際社会が放置しませんから。

 地域主義・地域統合を考えると、まず真っ先にEUを連想するわけですけど、別に基本的なモデルでも何でもなく、すべての地域がEUのように政治統合すべき理由はどこにもないわけで。むしろEUが特異なケースですよね。

 たまーに、EUは国家の枠を超えているのに!アジアは出来てない!けしからん!とか、だからダメなんだ!みたいな検討違いなことを言う人がいますが、地域統合の完成=政治統合なんて決まりはどこにもないわけですからね。統合すれば何でもうまくいくみたいな話ではそもそもありませんからね。

 地域主義が進展しないことを「アジア特殊論」のような形で否定的に捉えることもあれば、逆にむしろアジアはスゴイんだ!「特別論」として、捉えることも、まああるわけで。これはもうどこでもありますね。アメリカ特別論、中国特別論。通常の法則が当てはまらない特別な国という主張ありますからね。

 まあ、大抵そういうロジックは考えることを放棄してしまう事が多いのでアレですね。オリジナルの主張を展開すれば別ですが。学問ですら、そういう「特殊論」を展開して、優越感・侮蔑感=オリエンタリズムの変種みたいなことを展開する例が多いんですよねぇ~。そういう手合は本当要注意ですね。

 で、そうそう東アジアの地域主義だけど、結局あんま進展がないんですよね。ASEANの主権尊重・全会一致原則をベースとしながら、より枠を大きくしたり、開放的な地域主義に進もうという力学が働くも、やっぱりASEAN‐wayのままというね。昔っからずーっとそうですよね。

 東アジア共同体とかで、すわ!と盛り上がったんですけど、結局なあなあで尻すぼみで終わりました。ニュージや豪とかそこら辺排除して、日本からインドくらい一帯まで非白人枠でまとまるのか!?という感がありましたが、結局そこまで排他的・自律的な政治組織を構成する強い動機がなかったのですね。

 常々、東アジアに中日中心となって地域機構を作るべきだ、そして日中がリーダーシップを発揮して、問題解決に当たるべきだと主張をしているんですが、その覚悟・政治意図が両国にない。よって地域主義によって未然に国際問題を防ぐとかそういうシステムは出来ないんですよね。

 地域主義・地域統合にはまあ色々な性質がありますけど、やはり政治的な枠として自律的に問題を解決するという点に注目したいんですよね。そういう動きが今後あまり成熟していく気配はないんですが。アジア通貨危機のように経済問題ではノンゼロサムゲームで一致団結したので強まったんですけどね。

 で、その後中国が地域主義の働きに目を向けて、関係強化に動いた時くらいですかねぇ。話が盛り上がったのは。あとはもうメジャーな動きはな~んもないですね、この領域。きっと中国が危機を迎えて地域構造が変わるとか、大事件がないと暫くこの分野停滞する感じがしますね。事件待ちですね、きっと。

 アメリカが民主主義や市場開放を、ASEANを中心とした東アジア一帯に訴える。で、APECでどうぞと拒む。東アジアという地域で米のようなやかましい主張を無視した枠組みを作りたいと思うも、強硬に米のグローバル化=「脱領域」の主張を無視できず、本来の意図からそれていく―って感じですかね。

 結局、いつものって感じであやふやに終わりましたね。折衷主義で、ASEAN‐way・主権尊重&全会一致と米の民主主義・市場開放という相反する主張の折衷に。つまりはうやむや。

 そう考えるとTPPもある種の米の声を反映させる地域主義外交の一貫と言えますよね。米主導の地域秩序が出張ってくればその分、東アジア中心とした地域機構・秩序もまた後退するでしょうしね。まあ地域機構形成の力学の面からはそれが成果を上げるというものは見られないですね。しばらくはうやむやでしょう。